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些細な日常

セルフコントロールによって真面目に生きなくてはならない

もう二十年近く前になるか。アパートの大家が部屋に訪ねて来て珍しいと思って用事の内容は覚えてないんだけれどもちょっと何かを告げて帰った。ドアを閉めて部屋の奥へ戻ろうとすると又直ぐに呼び鈴が鳴らされてドアを開けると大家だった。用事ならば一回で済ませてよ。別に構わないし、腹も立てなかったのは普段から嫌味のないような老女で、気持ち悪くもなかったせいか、しかもしっかり者の雰囲気が漂っていたし、むしろ二回も続けて来るなんて何だろうというふうな印象を受け取った。

聞くと今月の家賃を払ってないわけだったんだ、僕が。払った気はするというか、当時、何回かあって家賃を払うと領収書に判子を押して渡してくれる感じの大家だったので、全て纏めておけば分かるのに全くやってなくて探したけれども見付からなくて払うことにした。

大家がなぜ一回でいわなかったのかと訝った

家賃を払いたくなくて僕が逃げ回っていると考えて先ずは難癖ない用事で、在宅を掴んでおいてから本題の家賃の話に入ろうということだったんだろう。

姑息としか捉えられなかった。気持ちでは僕が家賃を払いたくなくて逃げ回っているような人間だと考えさせてしまった申し訳なさが大きかった。大家にとってはたぶん個々の事情も踏まえて貧しければ仕様がなくて自分に助ける力があれば良いのに無理だからせめて出て行って貰うしかないという思想があるのかどうかは確かめてないにせよ、人柄ではそのような匂いがしたし、僕としても最初から家賃を求めて来なかった大家へかりに家賃を踏み倒されるほどの経験に基づいているとしたら可哀想(悲しみを潜り抜けて来たとしたら不憫)だという気持ちが全くなかったわけではないにせよ、考えても本当に悪いと感じるばかりだった。逃げ回ってなくて家賃は払いたくないけれども無料で住まわせて貰えないかぎり、間違いなく払うべきだから已むを得ない理由もないままに巫山戯ているとなると心外ではないかしら。生きているのも恥ずかしいくらい。僕は僕を戒めた。大家が姑息だったのは自分のせいにしてやはり真面目に生きなくてはならないと認める他はなかった。

身に付くのは結構な時間がかかったと感じる

詩を書いて自分は詩人だと素性を弁えるのに七八年は必要だったので、最低限、素性を弁えないと生き方は定まらないはずだし、真面目に生きたいと心で叫んでも実際は「セルフコントロール」が難しかった。いい換えると他人か世の中に振り回されないことだけれども触れ合い方まで含めると気がかりな点は多岐に及ぶ。心外に思われたくなくて思わせないようにするための方法は一筋縄では括れなくて努めても努めても落ち込み得る。素性は人生の柱なんだ。柱がないと人生は巫山戯るのもありかとなる。しかしやはり真面目が良いと、心外では困ると感じ返したり、まるでピンボールのようにあちこち跳ね回りながら定まって行くものなんだ。

とにかく大家には内面的な葛藤を覚えた。自分が思われたいように思われないことは少なくないかも知れない。概して見えない部分も多いし、どうするべきかは一人で決め込まなくてはならなかったりもしがちだ。ところが大家は分かり易かったから家賃さえ払ってくれるや他愛もない追及に過ぎなかったみたいなので、深く落ち込まなくて済んだ。浅いところで冷静に対処できたのではないかな。

逆の立場に置き換えると僕も他人か世の中を落ち込ませないふうに励まなくてはならず、すなわち倫理が求められるにせよ、思い遣りを如何に与えるかで胸一杯になる。しかし塞ぎ込んでも辛い。面白くないなんて人生は堪らないや。分かって貰えるようには頑張るしかない。潮吹く鯨も椰子の木の離れ小島を回って行く。すればきっとの何とかだ。良いんだ、慌てなくても。

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