ショパンの雨だれは生きる屍への真実の祈りだ 結城永人 - 2017年1月30日 (月) ブログの記事を一生懸命に仕上げてサイト広告で生活費を稼ごうと望みながら一円にもならない毎日では呆れて心の中に雨垂れが聞こえて来るよ。 侘しく寂れた思いの極みか。好きだったけれどもイメージとして実生活で受け取るのは耐え難いものがある。触れるのは命だけだ。 顔付きも青ざめるばかりの貧乏で、喘がれない貧困では全くない。いつまで生きていられるのかと手の施せない重病人のように気分は落ち込み過ぎる。健康だからまだ益しな状態ではないんだ。 頑張っても頑張っても駄目だった。四十年以上も咲かない花を抱えながら枯れた果てた意欲に存在そのものが染み込んでしまっているとは……。 だからもう本当に生きる屍に等しい。来ない明日と潰れた未来、そして何よりも消え去られて行く将来性の数々に息も絶え絶えではどうやって夢と希望を甦らせられることか。想像も及ばない心こそは僻地だろう。 ショパンの雨だれだけだ、知りたいか聴きたいのも Cyprien Katsaris - Chopin: Prelude Op. 28, No. 15 in D flat major, "Raindrop"|Cyprien Katsaris さてや鯨が逆さまの潮吹きで海面に持ち上がって来るような現実はないか、偏に超常的な喜びだけが生きる屍には相応しい。どんな出口も見えない人生の真っ暗闇の恐ろしさを心から優しく癒してくれそうな祈りを親身に感じてしまう。 少しずつ少しずつ本当にあり得ない仕方でゆっくりと生活が幸せに囲まれて行く、いつかどこかで経験されたはずだった産声を味わいながら自分らしさが麗しく息を吹き返すように。 ショパンはスペインのマヨルカ島で雨だれを作曲した 雨だれはかねてより構想されていた24の前奏曲の十五曲目として完成したけれども発表されたのは二十九歳頃だったらしい。若々しい作品で、瑞々しい感性が特徴的ながら三十九歳で亡くなった短い生涯からすると作曲家として晩年に至る直前の最盛期だったわけで、イメージを決定付ける世界観が表現されているとも過言ではない。 世間的には「ピアノの詩人」と呼ばれるようなショパンの実像が24の前奏曲には良く出ていて考えると感性の瑞々しさが非常に大きかったに違いないだろう。 天使がやって来ないともかぎらないし、心に響く音色が人間的には素直に芸術的には清冽に奏で紡がれている味わいが認められてならない。 雨だれの当時、作曲したのは二十代だったはずだけれどもショパンは小説家のジョルジュ・サンドと恋仲にあったとされる。人生でいわば我が世の春を謳歌していたのではないか。 僕にとっては貧乏のどん底でコンビニの夜勤で細々と食い繋ぎながら作家活動にたった一人で生き甲斐を見出だす他のない二十代だったかも知れないし、精確にはその半ばの数年でしかなかったけれども羨ましいかぎりのショパンの人生、仕事も恋愛も上手く行っていて普通ならばこれ以上は何も要らないくらい満ち足りていたと憧れざるをも得ない。 ところが仰天的な事実も潜んでいてショパンの雨だれについて調べながら自分でも後頭部を鉄の棒で強か打ちのめされる感じがしたというのも他方では生死の境を彷徨いながら暮らしてもいた。 不幸にもショパンは肺結核を患っていたのだった Frédéric Chopin by Ary Scheffer / Public domain 十九世紀の人物で世の中には有効な治療法も殆ど確立されてなくてきっともはや余命宣告を受けるほどの重症患者に等しいみたいだった。生死の境を彷徨っていたとしても決して誇張ではなくて極めて深刻な状態に陥ってもいたので、本当に可哀想だった。 僕は人生そのものが災難で、健康しか取り柄のない生きる屍(これもどこまで続くだろう、老いてあちこち辛くては)だけど、本当に可哀想で、気持ちが絶望的だったショパンも遠くないわけだから愛着が湧いてしまった。 対照的ながら人生が上手く行って仕事と恋愛に満ち足りても肺結核によって言葉にすれば生きる屍だったのではないかと共感するとやはり雨だれに惹かれるのも無理はないと気付くよ。 たとえ生きる屍だとしても祈りがあれば大丈夫だ ショパンは雨だれに生きる屍への祈りを込めて作曲したと真実に想像される。それこそピアノの詩人に相応しいイメージの捉え方だったのではないか。以前から好きな音楽家の一人だったけれども頷くべき災難を知って信頼度は増すばかりだろう、いっそ。 生き延びて24の前奏曲として雨だれを十分に仕上げたならば僕も今暫くは励むべきだ、人生そのものにショパンを見習いながら。 生きる屍でも祈りがあれば大丈夫だと心で感じ入ればきっともっと長続きするんだと全ては決まってもいる。 幸せに咲いた花を思い浮かべながら自分らしさの意欲が枯れ果てないように注意して暮らすしか何一つ期待できないと知ってみると夢は尊い。 参考サイト雨だれ雨だれの前奏曲 コメント 新しい投稿 前の投稿
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