ラウリル硫酸アンモニウムとラウレス硫酸アンモニウム/ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液 結城永人 - 2019年10月15日 (火) 高級アルコール系の合成界面活性剤の中でもラウリルアルコールの硫酸系が洗浄力は強いものの皮脂を過度に減らして皮膚のバリア機能を損う恐れが大きい。 ラウリルアルコールの硫酸系の洗浄成分は色んなタイプがあるけれども巷の製品で良く見かけるラウリル硫酸アンモニウムとラウレス硫酸アンモニウム/ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムを取り上げる。 市販のシャンプーやボディーソープやハンドソープに配合されている場合、もしも肌が乾燥や角化で酷かったら止めて刺激が少ないものに変えるとか注意して使うべきだ。 Newborn and boy brothers by sathyatripodi / Pixabay ラウリル硫酸アンモニウムは洗浄力と刺激が非常に強い ラウリル硫酸アンモニウムはラウリルアルコールを硫酸化した後にアンモニアによって中和して合成される陰イオン(アニオン)界面活性剤だ。 物質上の概観 分子式 C12H29NO4S 分子量 283.43 g/mol IUPAC名 azanium dodecyl sulfate CAS番号 2235-54-3 成分名 ラウリル硫酸アンモニウム INCI名 Ammonium Lauryl Sulfate 参考サイトAmmonium dodecyl sulfate | C12H29NO4S ラウリル硫酸アンモニウムの洗浄力と刺激は非常に強いとされるラウリル硫酸Naと大差ない。というのも洗浄剤として水に溶けて機能する際の中心的な役割を担うラウリル硫酸の陰イオンの部分が同じで、そして分子量も二百八十三程度なのは、五程度、少ないだけで、殆ど変わらない。肌へ浸透すると推定される五百以下だからどちらも同じように皮膚の奥のまで皮脂を減らしてバリア機能を損う弊害を否定できない。 ラウリル硫酸アンモニウムがラウリル硫酸Naと違うのは共通するラウレス硫酸の陰イオンとは別のアンモニアとナトリウムの陽イオンの部分に由来する。 一つは溶解性が高いのが特徴らしい。室温の水1l当たり、どのくらい溶けるかで、ラウリル硫酸Naが150gなのに対してラウリル硫酸アンモニウムは500gといわれて三倍以上になる。後者は前者よりも水に良く溶けるから無力透明の洗浄剤を作り易くて製品として反対に色付けも捗るなどのデザインの幅を広げられる利点がある。 もう一つはHLB(Hydrophile lipophile balance/親水親油バランス)が低いのが特徴らしい。ラウリル硫酸アンモニウムはラウリル硫酸Naよりも油に溶け易くなっている。すると洗浄剤としては油汚れや皮脂を水から引っ張り難くなるから洗浄力と刺激が弱くなると考えられる。 ラウリル硫酸アンモニウムはラウリル硫酸Naと洗浄成分としての性能は大差ないけれども分子量が微妙に少なかったり、HLBが低かったりするので、細かく捉えれば弱いといって良い。すなわち油汚れを落とさない代わりに皮脂も減らさずに皮膚の健康を保つ可能性が幾らか高いわけだ。 ラウレス硫酸アンモニウムはラウリル硫酸アンモニウムの改良型になる ラウレス硫酸アンモニウムはラウリルアルコールにエチレンオキシドを付加重合しながら硫酸化した後にアンモニアによって中和して合成される陰イオン(アニオン)界面活性剤だ。 物質上の概観 分子式 C14H33NO5S 分子量 327.48 g/mol IUPAC名 azane 2-dodecoxyethyl hydrogen sulfate CAS番号 32612-48-9 成分名 ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液 INCI名 Ammonium Laureth Sulfate ※エチレンオキシドの付加モル数が1のラウレス硫酸アンモニウム。 ※成分名の「ポリオキシエチレン」は「POE」(Polyoxyethylene)に短縮して「POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液」のように表記される場合がある。 参考サイトAmmonium lauryl ether sulfate | C14H33NO5S ラウレス硫酸アンモニウムは洗浄力と刺激が相当に強いけれどもラウリル硫酸アンモニウムの分子量の二百八十三程度をおよそ三百二十七程度まで増やしてすなわち分子を大きくして肌への浸透力を下げた改良型として開発された。 洗浄剤に配合されるとマイルドと呼ばれたりする。一般的にエチレンオキシドの付加モル数が2~4の分子量がもっと多いタイプが使われるらしい。水溶性が上がり、粘性は下がるものの低濃度でも泡立ちに優れてさらに過度な脱脂力も抑えられるために高品位の洗浄剤に向いている。 合成上、ラウリルアルコールに対するエチレンオキシドの付加モル数が増えると分子量が増えてラウレス硫酸アンモニウムの分子のサイズが大きくなる。 付加モル数毎の成分名と分子量 ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液327.48 g/mol: Ammonium lauryl ether sulfateポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム液371.5 g/mol: Ammonium laureth-2 sulfateポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム液体415.6 g/mol: Ammonium laureth-3 sulfateポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム液459.6 g/mol: 2-[Bis(2-hydroxyethyl)amino]ethanol; 2-dodecoxyethyl hydrogen sulfate ※成分名の「ポリオキシエチレン」は「POE」(Polyoxyethylene)に短縮して「POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液」のように表記される場合がある。 ※成分名に追加される1以外の付加モル数は括弧ではなく、ハイフンによって「ポリオキシエチレン-2ラウリルエーテル硫酸アンモニウム」のように表記される場合がある。 ※簡略名、または成分名でも付加モル数が省略されて商品の成分表示からタイプを識別できない場合がある。 ラウレス硫酸アンモニウムの付加モル数の1は三百二十七程度で、ラウリル硫酸アンモニウムの二百八十三程度とさほど変わらないけど、ところが2で三百七十二程度、3で四百十六程度、4で四百六十程度に上がる。肌に浸透しないと推定される五百以上に大分と迫って来るんだ。洗浄力が油汚れなどに関して弱まるものの刺激が弱まるのは皮膚の健康を損わずに済まされる。 参考サイトラウリル硫酸アンモニウムとは…成分効果と毒性を解説ラウレス硫酸アンモニウムとは…成分効果と毒性を解説Difference Between Ammonium Lauryl Sulfate & Sodium Lauryl Sulfate コメント 新しい投稿 前の投稿
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