癌予防の注目食品:キャベツやブロッコリーなどのイソチオシアネートを持つアブラナ科の野菜 結城永人 - 2020年3月8日 (日) 日本人の死因の上位に癌があると聞いて久しい。近年は最新がん統計によると年間三十万人以上が亡くなり、そして百万人近くの新しい患者が現れている。三十代から少しずつ発症して最期を迎える八十代、九十代までどんどん増え続けて行く状況なんだ。 最新がん統計 from 国立がん研究センターがん情報サービス 健康と長生きを求める上では決して避けては通れない重要課題の一つが癌なのは間違いないと個人的に実感する。 健康と長生きの幸せな生活に欠かせない癌予防の考え方 いつも欠かせないのが癌予防で、もしも癌にかかっても治療と併せてやれば効果的かも知れないし、覚えて取り組んで損はないんだ。 人間は一日に約五千個の癌細胞を生み出して消し去りながら生命を維持しているらしく、体内の止まらない癌細胞の勢いに負けないためにも日々の体調管理として食事と運動と睡眠の三つから健康状態の下地をきっちり得るのが何よりも大事だと思う。 癌予防は生活の根本的な部分から図られるから取り組むほどに幸せが待っているというか、全てにおいて自らの調子を上げるのに役立つから覚えると一石二鳥の喜びだったりもする。 今まで食事では腸内環境から免疫力を着実に向上させるビフィズス菌のヨーグルトとかメラトニンを増やすトリプトファンとビタミンBと炭水化物の組み合わせなんて考えて来たけれども新しく是非とも付け加えておきたいものが見付かったからブログに取り上げる。 イソチオシアネートの有力な癌予防効果 Broccoli in the market by jackmac34 / Pixabay キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科の野菜が特徴的に持っている硫黄化合物(ファイトケミカルの一種)はイソチオシアネート(辛子油)と呼ばれるもので、これは硫黄化合物の性質として体内に取り込まれた不要な重金属の解毒に役立つけれどもさらに様々な健康効果を発揮する可能性のある非常に優れた健康成分だった。 これまでの数多くの動物実験や疫学的調査などから,イソチオシアネート化合物は最もがん予防効果の期待される食品成分のひとつとされている.イソチオシアネート化合物は,解毒酵素の発現誘導による発がん物質の無毒化・排出の促進,あるいはがん細胞に対するアポトーシスの話導によって,がん予防効果を発揮しているものと考えられている. 柴田貴広と内田浩二のイソチオシアネート化合物ーアブラナ科野菜に含まれる機能性食品成分ー(PDF) アブラナ科の野菜のイソチオシアネートは百種類以上も見付かっていてそれぞれの健康効果は異なるけれども同じ仲間として似たものもあって最も注目されるのが正常な細胞の癌化/悪性腫瘍化をきっちり食い止めるという有力な癌予防効果なんだ。 有力な癌予防の二つの性質について イソチオシアネートの癌予防は大きく分けて二つの性質から有力と考えられる。 解毒酵素誘導 第一相酵素誘導シトクロムP450によって発癌性物質の代謝の活性化を抑制する、酸化還元、または加水分解から水溶性化するように誘導する。第二相酵素誘導グルタチオン-S-トランスフェラーゼやグルクロノシルトランスフェラーゼの抱合反応、アルデヒドデヒドロゲナーゼやキノンレダクターゼなどによって発癌性物質を無毒化するように誘導する。 アポトーシス/細胞死誘導 細胞が増殖に関与する遺伝子の変異の積み重ねから癌化する三つのフェーズ:イニシエーション/DNAの損傷か複数エラーから細胞が変異する段階とプロモーション(プロモーターによって細胞が増殖する段階とプログレッション(遺伝子がさらに異常を来して腫瘍性変化を起こす段階においてアポトーシスを引き起こすように誘導する。 ※癌細胞はプログレッションの腫瘍の悪性化によって最終的に生じる。 癌予防効果が認められるイソチオシアネートの全てが共通の性質というわけではなさそうで、大きく分けて二つの性質のどちらか、または両方を備えるものがある。 有力かどうかについては解毒酵素誘導の第一相酵素誘導は発癌性物質を体外へ排出するわけではないからさほど重視されないようで、むしろ発癌性物質を直接的に無毒化して体外へ排出する第二相酵素誘導とさらに発癌性物質を消滅させるアポトーシス誘導がイソチオシアネートの癌予防効果として中心的な位置を占めている。 癌予防が期待されるイソチオシアネートの主な種類と野菜 山葵田橋 by lienyuan lee / CC BY イソチオシアネートの二つの癌予防効果のどちらか一つ、または両方を発揮するだろう主な種類とそれぞれのアブラナ科の含有野菜を挙げる。 解毒酵素誘導を得られるもの スルフォラファン_キャベツ、ブロッコリー(スプラウト/新芽に豊富)、ルッコラ、ケールなど。5‒メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート_白菜、蕪、小松菜、水菜、チンゲン菜、クレソンなど。6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート_山葵、クレソンなど。7‒メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネート_クレソンなど。8‒メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート_クレソンなど。 アポトーシス誘導を得られるもの フェニルイソチオシアネート_キャベツ、クレソンなど。ブチルイソシオチオネート_キャベツ、クレソンなど。アリルイソチオシアネート_山葵、生姜、山椒、辛子菜(マスタード)、大根など。 二つの癌予防効果を得られるもの フェネチルイソチオシアネート_キャベツ、クレソン、ブロッコリー、カリフラワー、蕪、白菜、チンゲン菜など。ベンジルイソチオシアネート_キャベツ、クレソン、パパイアなど。 上記の他にも癌予防効果の認められるイソチオシアネートの種類があって二つの性質のうちではどちらかというとアポトーシス誘導よりも解毒酵素誘導が多くのアブラナ科の野菜から得られるようだ。 イソチオシアネートは高濃度で接触すると反対に毒性を示してしまう危険性もないわけではないらしい。実際に「毒性を発現するためには通常の食事の数十倍の摂取が必要であり,非現実的であると思われる」(イソチオシアネートによるがん予防の可能性/PDF)とされる。サプリメントなどで誤ってか万一でも大量に摂取しないようにだけは注目しておきたい。 イソチオシアネートの癌予防以外の健康効果 癌予防だけがアブラナ科の野菜のイソチオシアネートの健康効果ではなく、種類によって異なるけれども優れた健康成分として色んな面で注目されずにいない。 抗酸化作用キャベツやブロッコリーなどの解毒酵素誘導を行い得る多くのアブラナ科の野菜のイソチオシアネート:増加する第二相酵素が抗酸化作用も併せ持っていたり、その遺伝子発現に影響するKEAP1系のNrf2転写因子が第二相酵素以外の内因性抗酸化物質を活性化したりする。抗菌作用山葵や生姜などのアリルイソチオシアネート:黴や酵母や腸炎ビブリオや腸管出血性大腸菌の0-175やピロリ菌などを撃退する可能性がある。神経突起伸長作用山葵やクレソンなどの6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート:脳内の神経成長因子のシングル伝達を負に制御するPTP1B(チロシン脱リン酸化酵素)の働きを阻害して増強させる。炎症抑制作用キャベツやカリフラワーなどのイベリン:炎症応答に関与するTLR4(Toll様受容体4)に結合して二量体化を阻んでシングルを止めるために炎症誘導を減らすことができる。 それぞれの研究はまだ始まったばかりというか、癌予防以外の健康効果は特定のイソチオシアネートにかぎって少しずつ明らかにされている状況みたいなので、実際はもっと多くのイソチオシアネートに同じような優れた健康効果が得られるかも知れないし、現時点で候補に上がらないアブラナ科の野菜でも期待しながら食べて良いと思う。 アブラナ科の野菜のイソチオシアネートに有利な調理法 Shredded cabbage by cookbookman17 / CC BY イソチオシアネートはアブラナ科の野菜から取れるけれども通常は成分として最初から含まれているわけではない。葉っぱなどが虫に齧られた際に身を守るために発生する、すなわち辛味を放って虫を遠ざけると考えられている。 どのような仕方かというとアブラナ科の野菜が保有するグルコシノレート(辛子油配糖体)が分解酵素のミロシナーゼと接触するとイソチオシアネートが初めて出て来る。 なので葉っぱが虫に齧られたように良く噛んで食べるのはもちろんのこと、切ったり、砕いたりするような調理法がアブラナ科の野菜からイソチオシアネートを得るためには有利なんだ。 巷で良く見かけるけれどもキャベツの千切りや大根下ろしや練り山葵などはイソチオシアネートに適した調理法に他ならない。 その他の特徴として水に溶け易い、熱に弱い、揮発するなどが挙げられるので、水を避けるか含んだ水を汁やソースに回す、熱を避ける(生食)か長く強く加熱しない、切ったり、砕いたりした下拵えの素材としては早めに使うといった調理法が求められる。 参考サイトNo.277 イソチオシアネートの抗ガン作用とその含量に及ぼす栽培条件の影響がん細胞の成り立ち秋から冬に市販される日本産アブラナ科野菜のグルコシノレート組成および含有量 コメント 新しい投稿 前の投稿
コメント