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エドガー・アラン・ポーの黒猫の日本語訳|アメリカの小説

十九世紀のアメリカの作家、詩人で小説家のエドガー・アラン・ポーの小説の黒猫(1843)の日本語訳を行った。一つの文学作品として人間の洞察力に富んだ優れた内容を持つだけではなく、表現も意義深いから外国語の英語の聞き取りと読み取りの教材としても最適だと感じる。

作品の出典

真正面を向いたエドガー・アラン・ポー
The Black Cat by Edgar Allan Poe/エドガー・アラン・ポーの黒猫
原文:Wikisouce作品集
朗読:LibriVoxドン・モーガン

※朗読は原文通りではない箇所が幾つかある。

両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。

日本語の訳文

エドガー・アラン・ポーの『黒猫』のイメージ:妻の死体の頭の上に片目の黒猫が座っている

最も野放な、未だ最も身近な物語の筆を取ろうとしている私は信用されるとは期待も懇請もしていない。証拠を除外する実際の感覚においてそう期待されるならば本物の狂気。だが、私でなければ狂気――本当に確かに夢見ているのでなければ。しかし、明日、私は死ぬ、なので、今日、胸のうちを明かしておきたいのだ。差し当たっては単に家の出来事の一続きを、明白に簡潔に論評なく、世の中へ持ち出すことが目的だ。結果、これらの出来事は怖くて――苦痛に満ちて――私を滅ぼした。未だ解説しようとはしない。私には少なくとも恐ろしい――人々には〈バロック〉よりも怖くなさそうに思われる。今後、きっと、良くあることと私の幻影を切り下げる知性が幾つか発見されるかも知れない――より穏和により論理的に私自身よりも遥かにいきり立たない知性は畏れを抱いて詳述される状況の中に実に自然な原因と結果の平凡な連続以上の何も知覚しないのだろう。

幼少から私は従順で寛容な気性の持ち主として知られた。内輪では笑い種になるほどのあからさまな心の優しさがあった。動物が取り分け好きで、色んな種類のペットを満足にも両親から与えられた。一緒に多くの時間を過ごしたけど、餌をやって可愛がるときほどの幸せは決してなかった。この性格の独自性は私が成長すると共に成長し、やがて成人男子を迎える頃には快さの中心的な源の一つが導き出された。忠実で利口な犬を大事に思って愛する人たちにはこうして導き出される満足感の性質や強度を労して説明する必要はない。獣の没我的で自己犠牲的な愛には単に〈人間〉の上辺の友情や遊糸の信義へ真価を問う機会をしょっちゅう持つという心に直結するものがある。

私は早くに結婚し、妻が私自身の性に合わない気質ではないと分かって幸せだった。家の中のペットたちへの愛顧を見て取るや何にも増して気持ち良い種類のそれらのものを手に入れようとばかりされた。私たちは鳥や金魚や立派な犬や兎や小さな猿や〈猫〉を飼った。

最後のものは目立って大きく、美しい動物、真っ黒で、驚異的なまでに利口だった。その賢さというと迷信に染まっている心では少しもないが、妻は昔ながらの世俗的な考えを、すなわち黒猫は全て変装した魔法使いだとしょっちゅう仄めかした。この点は〈真面目〉な彼女ではつとになかった――いい及んだのは何にせよ、今丁度、思い出されて来た以外ではない。

プルートゥ――これがその猫の名前さ――私のお気に入りのペットで、遊び仲間だった。私しか餌をやらず、家の中をぶら付くやどこへでも付き添った。大変でさえもあったのは町まで追って来られるのを止めることだった。

私たちの友情は続いた、こんなふうに、何年か、私のいつもの気性や性格が――魔性の酒飲みを通じて――どんどん悪い方へ(口に出すのは赤面する)劇的に作り替えられるのを経験する間だった。私は日に日により陰鬱により怒りっぽく他人の気持ちへより無頓着になって行った。妻への酒飲みの口振りが苦しかった。果ては暴力を振るいさえもした。ペットたちはもちろん私の気性の変化を感じ取った。無視されるだけではなく、酷い扱いもされた。プルートゥへはところがぶち伸めすのを抑える好意を、偶然にか、または愛情から目の前に姿を現すや遠慮なしに兎か猿か犬ですらもぶち伸めしたけど、依然として私は保持した。しかし病が徐々に高じて――アルコールみたいな病があるとはな?――果てはプルートゥでさえも、年老いて今は何かしら気難しさも生み出されていた――プルートゥでさえも疚しい機嫌の影響を受け始めた。

ある夜、出歩いた町の一つからとても酔っていたが、帰宅したときに私は猫から己の存在を避けられたと思い描いた。捕まえた;すると怖がって暴力に、猫は歯で私の手を微かに傷付けた。私は悪辣な怒りに忽ち取り憑かれた。もはや自分が見失われた。元来の胸のうちは肉体から一挙に飛び立った;魔性の悪意がジンに育まれて体躯の全ての繊維を震え上がらせるどころではない。私は胴着のポケットからペンナイフを取り出し、開き、憐れな獣を喉元から握ってわざと窪みから目玉を一つ切り取った! 忌まわしい凶行を物しながら私は赤面し、高潮し、戦慄する。

朝、我に返ったとき――その夜の堕落した毒気を眠り晴らしたとき――私は半ば恐怖の半ば悔恨の感情を有罪の過ちのために経験した;ただし、精々、僅かな紛らわしい気持ちで、胸のうちは閉ざされたままだった。私は不行跡に再び突っ込むと直ちに行為の全ての記憶をワインに溺れさせた。

その間に猫はゆっくりと回復した。失った目玉の窪みは、真実、恐るべき様相を呈したものの少しの痛みにも耐えている様子ではもはやなかった。普段通り、家の中を歩き回り、ただし想定されたように私が近付くと甚だ怖がって逃げた。十分に古い心は残されていたし、かつてとても愛された生き物からはっきりと嫌われるなんて初めは嘆かわしかった。しかしこの気持ちは直ぐに怒りへと代えられた。そしてついに訪れた、最終の取り消せない打撃のように〝天邪気〟が。この精神を哲学は全く考慮しない。未だ私には胸のうちが、天邪鬼が人類の心の原始的な衝動の一つ――人間の性格を方向付ける不可分で主要な特質か感情の一つ――である私以上に生きているとはもっと定かではない。誰が卑しくて愚かな活動に取りかかる自分に百度と気付かないのか、というのも他でもなくすべきでは〈ない〉と知らないわけではないないためだ? 私たちは永久の性向を、最善の判断に逆らって〈法律〉を犯すべく、単にそんなものでしかないと理解するから持つのか? 天邪鬼のこの精神というと最終の打撃となった。それは計り知れない〈それ自体を苛立たす〉――生得に暴力を振るう――悪事のためだけに悪事を働く――胸のうちの憧れで、私は続けるように、最終的に成し遂げるように駆り立てられて無害の獣を傷め付けたのだった。ある朝、血も凍る、首吊りの縄を獣の首へ滑らせて木の大枝に吊るした――流れる涙と共に木に吊るした、心には最も苦い悔恨を抱いて――〈なぜなら〉私は愛されているから吊るした、つまり〈なぜなら〉攻められるわけもないのだと感じたから;――〈なぜなら〉そうしながら自分が罪悪を犯していると分かるから吊るした――朽ち果てない胸のうちに認めるほどに危険に陥れられる致命的な罪悪を――もしもそんなことができるならば――神の最も慈悲深くて最も恐怖高まる無限の慈悲が届く範囲を越えてさえも。

こんな残虐な行いが為された日の夜、私は炎の悲鳴で眠りから目を覚ました。ベッドのカーテンは火に包まれていた。家全体が燃え上がっていた。非常に大変だったのは妻も使用人も私自身も大火災から逃れることだった。破壊は完全だった。私の世間並みの財産は悉く飲み込まれ、それ以来、私は絶望を甘んじて受け入れた。

災害と凶行の因果関係を成立させようと探し求めて弱るのではない。しかし事実の鎖を詳述しているし、ありそうな繋がりでさえも不完全なままにしないことを願う。火災の翌日、私は廃屋を訪れた。壁は一部分を除いて崩れ落ちたのだった。この一部分は区画壁に発見され、大した厚みはなく、家の中央付近に立つ、私がベッドで頭を休める向かい側だった。漆喰が塗られており、大いに、活動する火に持ち堪えた――事実上は最近になって塗られたせいだった。群衆が犇めき合って集ったこの壁について多くの人たちが特定された部位をあらゆる細密で熱心な注意力を傾けて検証しているようだった。口々に「不思議!」、「奇妙!」、その他と同じようにいい表すのが私には好奇心を盛り上げられた。私はまるで白い表面に〈浅浮き彫り〉で刻まれたような、巨大な〈猫〉の図像に近付いて見た。真に驚愕の正確な印象を与えた。動物の首回りには縄があった。

この亡霊を最初に目にしたとき――私には軽く考えることはとてもできなかったわけで――訝りと怖さは凄まじかった。しかし果ては内省が助けとなった。猫、私は思い出した、家に隣接する庭に吊るされたのだった。火災の報せで、庭は直ぐに群衆で埋め尽されたのだった――誰かが動物を木から切り外して開いた窓から私の部屋へと投げ入れたに違いない。このことは恐らく私を眠りから目覚めさせる意図で行われたのだった。他の壁の崩落によって残虐な私の犠牲者は新しく塗られた漆喰の中身へと押し込められたのだった;石灰が炎と死体からの〈アンモニア〉によってそのときに肖像画を見られたように作り上げたのだった。

私はこうして躊躇なく理由を解き明かしたけれどもかりに良心にすっかりそぐわないとしても現に詳述された仰天的な事実のために私の奇想を深く印象付けるのは殆ど必至だった。数ヵ月、猫の幻影を取り払えはしなかった;そしてこの期間に精神へ半ば感情が、違うにせよ、悔恨のように戻って来た。私は動物の喪失を後悔するに至り、ついに見回してもう習慣的に良くやる卑しい出歩きの最中、代わりになる同一種や何かしら似たような見た目のペットを他に探した。

ある夜、半ば固まり、悪名高いばかりの巣窟に座っていたら、突然、何だか黒い物体、それはジンかラムの一つのドデカい大樽というアパートに主立って設えられた家具の天辺に休んでいたのだが、注意を引かれた。目を凝らして、数分間、大樽の頂上を見ていると、まさか驚かされずにいなかったのは早くともその物体をそこで直ぐに知覚できなかったという事実だった。私は近付き、手で触った。黒猫――とても大きなやつ――プルートゥと同じくらい大きく、一点を除いて全てが良く似ていた。プルートゥは全身のどんな部位にも白い毛はなかった;しかしこの猫は大きな、不明瞭にせよ、白い斑模様が胸の略全域を覆っていた。

私が触るや猫は直ちに起き、喉をゴロゴロ強く鳴らし、手に擦り付き、厚遇に喜んでいるらしかった。そのときに探していた生き物にぴったりだった。私は即座に主人へ購入したいと申し出た;しかしこの人は何も要求せず――何も知らなかったのだが――かつてそれを見たことも決してなかったのだった。

私は可愛がり続け、そして帰り支度に入ったとき、その動物は付き従う気性を示した。そのままにさせた;進みながら、時々、屈んでは掌で軽く叩いたりして。家に辿り着いたら即座に慣れてしかも直ちに妻の大のお気に入りとなった。

私からは自ずと立ち上がる嫌悪感が直ぐに見出だされた。これは予想されていたのと真逆だった;しかし――どうしてだったかもなぜだったかも分からない――その私自身への明らかな好意がむしろ私を不快がらせて苛付かせた。ゆっくりと時間をかけ、これらの不快と苛付きの気持ちは悍ましい苦さへと立ち上がった。私はその生き物を避けた;ある確かな羞恥心、さらに残虐な以前の行いの思い出、身体的な虐待が防がれたならば。数週間は殴らず、それでなくとも暴力的な酷い扱いをしなかった;しかし徐々に――本当に徐々に――いいようのない嫌悪感を持ってそれを見ることに、さらに静かに疫病の吐息のような下劣な存在から逃れることとなった。

私の獣の悍ましさへ疑いなしに付け加えられるのは、自宅へ連れて来てからの朝、プルートゥみたく、目玉の一つが剥奪されていたという発覚だった。こうした事情はしかしながら妻の愛着を得るだけだった、既に話したけど、あの寛容な気持ちを、昔は私の目立った特性で、最も平易で最も純粋な快さの多くの源だったが、程高く有していたし。

こうした猫への毛嫌いはしかしながらその私自身への愛顧を増大させるようだった。足元を追い駆ける執拗さは読者が把握するのは困難だろう。座るといつでも椅子の下へ屈み込み、または膝の上へ跳び上がるのだ、私は嫌らしい可愛がりによって覆われるけど。歩こうと起き上がれば足の間に入り、かくて私を投げ飛ばしかけ、あるいは服装に長くて鋭い爪を留めながら、こんなふうに、胸元へ登るのだ。そんなときにはぶっ飛ばして滅ぼすことを憧れたけど、依然、そうするのは、一部には昔の罪過の記憶、ただし主要には――いわせてくれるや即座に――獣への絶対的な〈恐怖感〉によって差し控えられた。

この恐怖感は正確には身体的な邪悪の恐怖感ではない――つまり未ださもなればどう定義するかは覚束ないのだ。持ち合わせるのは凡そ恥ずかしい――そうだ、重罪人の監房の中ですらも、持ち合わせるのは凡そ恥ずかしい――動物に触発された怖さと恐ろしさを、思い付き得るはずは唯一のキメラというものに高められながら。妻は白い毛の印された特徴へ私の注目を何度となく呼んだが、話しておいた、不思議な獣と私が滅ぼしたものとの間に構成される只一つの目に見える相違点だった。読者はこの印が大きなものの当初から大変に不明瞭だったと覚えているだろう;しかしゆっくりと時間をかけ――ほんの僅かずつでもかけて気紛れのように追い払うべく、長い間、藻掻いた理性だったが――それは外観の厳格な分離と果ては見做されたのだった。名指して戦慄する対象を今は表示しており――つまりこのためなのだ、就中、私が嫌悪して恐怖して〈敢えてやってみれば〉自身から怪物を取り除こうとするのも――今はというと醜悪なイメージ――凄絶なものの――〝絞首台〟の!――おぅ、恐ろしくは罪深くは痛ましくて怖い原動力だ――苦悶と死の!

そしてもはや単に寛容さから来る惨めさを上回って全くの惨めな私がいた。すなわち〈野獣〉――私が軽蔑して滅ぼしてしまったのは仲間――やり果せる〈野獣〉は私に――私に、人間に、高神のイメージに形作られたが――余りにも耐え難い悲痛を! 嗚呼! 夜となく昼となく、安寧の祝福をもはや私は知らなかった! 前の方の間、その生き物は一人にして瞬間もくれなかった;そして後の方において私はいいようのない恐怖の夢見から、度々、顔にかかる〈物〉の熱い吐息が、さらに莫大な体重――力なく振り払えない化身された悪夢――が永久に〈心〉に義務付けられるのを見出した!

このような苦悩の重圧の下で、私の中の僅かに残された善良さが屈服した。邪悪な思想が只一つの懇意――最も暗黒な最も邪悪な思想となった。普段の機嫌の陰鬱さはあらゆる物事と人間種の悍ましさへ増大した;他方、突然からしょっちゅう、闇雲に今は身を任せる私にせよ、御し切れない怒りの噴出、不平をいわない妻は、嗚呼! 何にも増して普段通りの我慢強い犠牲を強いられていた。

彼女が私に付き従ったある日のこと、家庭の何かの用事により、貧しさから住んでいた古ぼけた建物の地下室へ向かった。猫は急勾配の階段を下りて私を追って来、すると真っ逆さまに投げ飛ばされそうになったので、私は気が狂うまで激昂した。手斧を振り上げながら憤激に今まで私の手を止めていた子供っぽい恐怖感を忘れながらその動物をもちろん即死するのは自明だろう願い通りに見舞われればおよそぶっ飛ばすんだと狙った。しかし妻がこの一撃を手で制した。妨害から悪鬼も及ばない憤怒へ激化されたので、私は彼女の握りから自らの腕を引き抜いてその脳天に手斧を埋め込んだ。呻き声なしにばったりと死に倒れた。

こんな醜悪な殺人が成し遂げられたために私は急いで全面的な考慮から死体を隠蔽しようと努めた。家から持ち去るのは夜となく昼となく隣人たちから注視されている危険を冒さずにはできないと分かった。幾つもの計画が心に浮かんで来た。あるときは骸を微細に切り刻んで火で焼き滅ぼそうと思った。別のときは地下室の床に墓穴を掘って解決しようと思った。再度、私は庭の井戸に投げ棄てることについて――箱に詰め、まるで商品のようだ、普段通りに手配して要するに呼んだ運搬者に家から持って行かせることについて考慮した。最終的に思い当たったのがどれよりも遥かに都合好く検討されたものだった。地下室の壁に封じ込めると決めた――中世の僧侶たちが己の生け贄を壁に封じ込めたと記録されるように。

こんなふうな目的に地下室は良く適していた。壁の作りが緩く、全体が雑な漆喰で新たに塗られており、空気の湿気で固まらなかった。その上、壁の一つには突出部があり、疑似的な煙突か暖炉のためだけど、埋め上げられ、地下室の残りの部分と遜色がなかった。私はこの地点の煉瓦を移動させ、骸を挿入して一切を以前のように封じ込められるゆえ、誰の目にも不審な何かは看過されないのだと全く疑わなかった。

もはや算段に間違いはなかった。梃子を用いて煉瓦を容易く押し退け、死体を注意しながら内側の壁に安置してからその場所につっかい棒をした、一方では殆ど労せずに構造物の全体を立っていた当初のように置き直した。モルタルと砂と毛を手に入れてからあらん限りの用心を尽くして古いのと判別し得ない漆喰を準備し、ついにこれにより、非常に注意して新しい煉瓦造りを覆うことができた。完了したとき、全てが上手く行ったと満足に感じた。壁は差し障りのある最も些少な外観も示さなかった。床の塵は細心の注意を払って取り除かれた。私は殊勝に見て回り、ついに自らへいい聞かせた――「うん、少なくとも、無駄な仕事ではなかったぞ」。

次の段取りは余りにも惨めにさせられた獣を探し当てることだ;というのも私は果てはそれを死に至らしめることを固く決意していたためだった。会うことができたらその瞬間に悲運が訪れたのは疑い得なかっただろう;しかし動物は狡猾で前に私が頭に来て振るった暴力を警戒して陰鬱な私に姿を表すのを止めてしまったようだった。酷く嫌いな生き物がいなくなった胸の深く、愉快な安らぎの感覚を描写したり、想像したりすることはできない。夜の間にもそれは姿を見せなかった;だから従って少なくとも一夜を、家に引き入れて以来、ぐっすり落ち着いて眠った;やい、胸のうちに殺人の重荷を抱えてさえも〈眠った〉!

二三日が過ぎてもまだ私の悩みの種はやって来はしなかった。もう一度、自由な身で息をした。怖い怪物は建物から永遠に逃げ出した! もはや目にしなくて良いのだ! 至上の幸せだった! 暗黒の行いの罪に阻まれることは少しもなかった。幾らかちょっとした聞き込みを受けたのだったが、あっさりと答えられたのだった。捜査が開始されもしたのだった――しかしもちろん何も発覚することにはならかった。未来の至福は安泰と見えた。

殺害の四日目、警察の一団が全く予期せずに家に入り込んで、再度、建物の調査を厳格に進めた。隠蔽された場所はしかしながら不可解に安泰で、私はどんな気後れも感じなかった。巡査が彼らの捜査に付き従うように私へ告げた。隈なく角なく探索された。果ては三回目か四回目に地下室へ降りて行った。筋一つ震えなかった。無邪気に微睡む人のそのように穏やかに鼓動する心臓。私は地下室の端から端まで歩いた。胸に腕を組み、そしてあちこち苦もなく彷徨いた。警察はすっかり納得すると立ち去る準備に入った。心は抑え切れないくらい強い大喜びだった。一言でもいっておこうと、凱歌のつもりで、さらに己の無実を彼らの確信に重ねて確かにしようと燃えた。

「皆様」、私はついに口を開いた、一団が上がって行くとき、「不審を減らせてとても嬉しいです。貴殿方には御健勝と少しばかりの御好意を願います。序でながら、皆様、これ――これは大変に良く建てられた家ですよ」(気楽に何かをいうべき猛烈な願望により、何を発するかが全く以て分からなかった)、「私は〈優れて〉良く建てられた家と申しましょう。これらの壁は――行かれますか 皆様?――これらの壁は強固に組み合わされています」、するとここで、虚勢の単なる乱心を通して私はコツコツ多く、手持ちの細い杖で、煉瓦造りの丁度一部を叩いたが、その後ろには胸裏の妻の骸が立っているのだった。

しかし魔王の牙から防いでは救える神よ! 数打の響きが静寂へ沈む間際、私へ墓の中から声が答えた!――悲鳴により、先ずは雲ったり、割れたりしていたが、子供の啜り泣きみたいだ、するとさらに急速に膨れ上がりながら長く、大きく、ぶっ通しの叫びで、全く類例なく、非人間的な――咆哮――わんわん泣く金切り声で、半ば恐ろしくは半ば誇らしい、地獄からのみ起き上がったかのように、苦悶の呪われ人と破滅に狂喜する悪鬼の喉から結集されて。

私の思いを話すのは馬鹿げている。気絶しそうになりながら反対側の壁へ蹌踉めいた。一瞬に動きを止めた階段の一団は怖さと畏れの極みだった。次第、数十の頑丈な腕が壁に労役していた。それは、そっくりそのまま、落ちた。骸は既に大方が腐乱し、血糊で固まって目撃者の目の前に突っ立っていた。その頭上に赤く開かれた口と火の寂しい瞳で座るのが狡猾に私を殺人へ誘導して感化する声で絞首執行人を委任した醜悪な獣だった。私は墓に怪物を封じ込めたのだった!

参考:黒猫(佐々木直次郎訳)

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