魚介類に多く含まれるセレン化合物のセレノネインの解毒と抗酸化の際立った健康効果 結城永人 - 2020年3月4日 (水) 魚介類は食品として有害なメチル水銀を含んでいて取り分け大きくなるほどに食べ過ぎてはならないと考えるけれども他では得難い優れた栄養素も含んでいるから余り食べないようにするのも勿体なくて困ってしまう。 多くの魚介類等が微量の水銀を含有しているが、一般に低レベルで人の健康に危害を及ぼすレベルではない。魚介類等は、良質なたんぱく質を多く含み、飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多く含まれ、また、微量栄養素の摂取源である等、重要な食材である。 水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項|厚生労働省 概して魚介類はメチル水銀の危険性よりも特徴的な栄養素の有効性が上回っているために胎児への大きな被害が懸念される妊婦などを除けばたとえ体内にそうした毒を増やす結果となるとしても少ししか食べないよりは多めに食べる方が人間は健康を維持して長生きできるかも知れない。 Atlantic mackerel by Petar Milošević / CC BY-SA 魚介類の健康効果は凄いと感じるわけだけれども最も重要なのは解毒作用があるために有害なメチル水銀を含んでいても食品としての実際の危険性は低いという。 そして面白いのが解毒作用を発揮するものこそ特徴的な栄養素に他ならないという密接な絡み合いなんだ。 コインの裏表のように毒と命が結び付いている。あるいは美輪明宏の人生観か、良いことと悪いことはいつも一緒に付いて回るような印象を与える。互いに相反するものでしかないにも拘わらず、どうも切り離すことのできない真実の不可思議さに触れる。 魚介類が有害なメチル水銀を体内に溜め込んだまま、簡単に死なないのもそのためで、結局、特徴的な栄養素の有効性の一つとして解毒作用が捉えられるわけだったんだ。 従来、EPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸が魚介類ならではの優れた健康効果を持つ栄養素として重宝された。目や脳の神経細胞を良好に保ったり、血液サラサラを促進して全身に亘って調子を上げたりする。気付くとこれも脳に対するメチル水銀の解毒作用があって何よりもDHAが感覚を司る脳細胞のアポトーシス/細胞死を減らしてくれるらしくて素晴らしく有り難いけど、さらに脳以外で広範囲に働くのがセレンという栄養素なんだ。ミネラルの一種で色んな食品に含まれるけれども魚介類に特に多くてしかもセレン化合物のセレノネインという状態になのがメチル水銀の解毒作用を始めとして優れた健康効果を示すとされる。 図1 ■ メチル水銀の毒性発現と解毒脳ではメチル水銀曝露によってアラキドン酸が遊離してアポトーシスが生じるが,PUFAによってこれが抑制されると推定される.ほかの細胞種ではメチル水銀の無機化がセレノネインによって促進され,解毒される.山下倫明と今村伸太朗と山下由美子の水産物のメチル水銀とセレン 魚介類は有害なメチル水銀を含むけれども同時に解毒作用のあるセレノネインなどのセレンも含んでいて比率は後者が前者の何倍にも及ぶらしい。またはクジラやイルカといった哺乳類の水生生物の場合でも両方とも少なからずは含まれていて健康が守られていると推察される。 しかし注目されるのは魚介類に多く含まれる栄養素のセレン化合物のセレノネインにはメチル水銀への解毒作用を超えるもっと多くの際立った健康効果が潜んでいる。 セレノネインの生理作用として、①ラジカル生成の防止、②捕捉したラジカル・メチル水銀のエクソソームを介する分泌、③ヘム鉄の自動酸化防止、④チオール基の化学修飾、⑤セレンタンパク質遺伝子の転写・翻訳調節、⑥レドックス状態のシグナル、⑦DNA損傷修復、などが推定され、生体抗酸化と解毒を担うと考えられる。このことから、海洋生物では低酸素や深海環境、飢餓、高水温への適応、陸上動物では低酸素や高地への適応、過酸化物の解毒などへの関与が考えられる。 山下倫明と今村伸太朗と藪健史と石原賢司と山下由美子の水産物由来のセレン:セレノネインの栄養生理機能 元々、セレノネインは魚介類などの水生動物だけが持っているものではなく、人間などの陸生生物も持っていてセレンから体内で作り出される。しかし水生動物はメチル水銀に多く晒されていてそれ自体は筋肉に主に蓄積されながら力強く泳ぐための収縮活動などに上手く使われるかも知れないけど、他方では解毒するために必要性が高いためか、陸生生物よりも、そして水生生物でも餌からメチル水銀を取り込む量が増える大型種こそ多く持っている栄養素なんだ。 Rugbrød med fiskefrikadeller og makrel i tomat by cyclonebill / CC BY-SA 人間にとってはセレノネインの抗酸化力が細胞から元気付けられるためにあらゆる面で健康に役立つと考えられる。 セレノネインはエルゴチオネインの約1000倍、水溶性ビタミンE(トロロックス™)の約500倍のラジカル消去活性を示します。特異的なトランスポーターを介して培養細胞の培地から速やかに細胞内に取り込まれ、過酸化水素による酸化ストレス条件下でも細胞増殖能を増強しました。ウサギ赤血球へ投与するとヘモグロビンのメト化が抑制されました。ヘモグロビンやミオグロビンなどのヘム鉄に結合し、鉄によるラジカル生成を抑制する生理活性があります。 山下由美子の魚食のセレンは長生きの秘訣! マグロのアミノ酸「セレノネイン」の発見(PDF) セレノネインはヒラタケやエノキタケといった一部の茸などに含まれる超強力な抗酸化物質のエルゴチオネイン(ビタミンEの約七千倍)のセレンアナログ(類縁体)として発見されてそのように名付けられたけれども抗酸化力の計測値はさらに約千倍も上を行く結果を出しているんだ。 癌や心臓病や糖尿病など、魚介類にかぎれば多価不飽和脂肪酸による脳卒中や認知症も含めて予防と回復、そして不老長寿/アンチエイジングへの好影響が著しく期待されずにいない。 食品からセレノネインを得るにはマグロやカツオやサバなどの海の大型の回遊魚が有力な候補として挙げられる。一生の間に長い距離を高速で泳ぎ続けるという強靭な体力の一端がメチル水銀とセレノネインの不可思議な関係にあると推察される。 人間が食事から取り込むとセレノネインは血中に主に蓄積されて魚介類を良く食べる地域の人はそうでない人よりも有利みたいなんだ。なので大型種から一度に取るだけではなくてブリやアジやイワシなどの小型種を頻繁に食べて少しずつセレノネインを体内に増やすこともできる。 水生生物の小型種は有害なメチル水銀も大型種よりも少ないから安心できる食材になるけれども日々の栄養バランスを踏まえながらどちらでも他の食材と合わせて食べるのが良いと思う。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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