英語の小説、ヘンリー・ローソンの家畜追いの妻の日本語訳で気になった英文法にHeaven help somebodyの慣用句があった。
用法①同情せざるを得ない/可哀想だ/憐れむべき
She finds all the excitement and recreation she needs in the Young Ladies' Journal, and, Heaven help her! takes a pleasure in the fashion-plates.
彼女は欲する全ての興奮と気晴らしを『ヤングレディースジャーナル』に見出だし、もはや可哀想にも! スタイル画に喜びを得ている。
Heaven help somebodyは単独で使われると「同情して心配する」や「可哀想だ」や「憐れむべき」という意味になる。
字義通りだと天が誰かを助けようという言葉だけど、そんなふうに天の助けが必要な人がいることが転じて彼、または彼女が実際に災いに見舞われたこととなり、結果、慣用句としては人にはどうしようもない悲しみを主旨として表現するに至っている。
用法②酷いことになる/大変だ/気を付けないと
条件のif節を伴うと人にはどうしようもない悲しみの主旨が悔しさや怒りをもっと滲ませるようになる。
Heaven help them if they go across that bridge.
彼らはあの橋を渡って行けば酷いことになるぞ。
差し迫った事態、退っ引きならない状況が前景化されて「酷いことになる」や「大変だ」や「気を付けないと」という意味の慌ただしい気持ち、容易ではない思いが増して来る。
Heaven help somebodyの文章は単数形の主語に複数形の動詞が付いていてたぶん「May heaven help somebody」の「May」が省略されている。
その他にGod help somebodyという同じような言葉もある。字義通りならば天の助けが神の助けとなるニュアンスの違いを除いて慣用句としては特に変わらない。人にはどうしようもない悲しみの主旨や単独かif節を伴って表現される意味は共通している。
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