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ナサニエル・ホーソーンの若いグッドマン・ブラウンの日本語訳|アメリカの小説

十九世紀のアメリカの作家、小説家のナサニエル・ホーソーンの小説の若いグッドマン・ブラウン(1835)の日本語訳を行った。一つの文学作品として人間の洞察力に富んだ優れた内容を持つだけではなく、表現も意義深いから外国語の英語の聞き取りと読み取りの教材としても最適だと感じる。

作品の出典

椅子に座ったナサニエル・ホーソーン
Young Goodman Brown by Nathaniel Hawthorne/ナサニエル・ホーソーンの若いグッドマン・ブラウン
原文:Wikisouce作品集
朗読:LibriVoxブライアン・ロバーグ

※朗読は原文通りではない箇所が幾つかある。

両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。

日本語の訳文

セイラム魔女裁判で被告の女性が人々に囲まれて魔術のようなものを発している

日の入りに若いグッドマン・ブラウンがセイラム村の通りに出て来た;しかし頭を戻し、戸口を越えた後、若妻と別れのキスを交わした。フェイス、妻は相応しく名付けられていた、通りへ可愛い頭を突き出して風に帽子のピンクのリボンを遊ばせながら同時にグッドマン・ブラウンを呼んだ。

「愛しい人よ」と囁いた彼女、柔らかくも稍悲しげに、彼の耳へ唇が近寄ると「どうぞ日の出まで旅を延期して今夜は貴方のベッドで休んで下さい。女性は時に自分自身を恐れるくらい夢や思いに一人寂しく悩まされるのです。どうか一年の全ての夜の、大事な御方、この夜は私と留まって下さい」。

「麗しくは私のフェイス」と返した若いグッドマン・ブラウン、「一年の全ての夜の、この一夜こそ其方から離れなくてはなりません。私の旅こそ、其方はそう呼びますが、再び行って戻ります、今と日の出の合間に為される必要があるのです。何を、恋人、可愛い君よ、私に疑うのですか、予々、それとも結婚三ヵ月を除いて私たちに?」

「ならば神のご加護がありますように!」といったフェイス、ピンクのリボンだった;「帰って来るときには全てが上手く行きますことを」。

「アーメン!」と叫んだグッドマン・ブラウン。「お祈りして下さい、親愛なフェイス、夕暮れにはお眠りなさい、すれば其方に危害は加えられないでしょう」。

そうして彼らは別れた;若い男性は己の道を辿るも、集会所のそばの角を曲がりかけたところで、振り向いてまだ後ろから物憂い様子で、ピンクのリボンにも拘わらず、覗いているフェイスの頭を目にした。

「憐れな小さなフェイス!」と思った彼、咎められる心のために。「何と私は惨めな人なのか、こんな用事で彼女を置き去りにして! 彼女は夢について教えもする。喋ったときを思えば悩みが表情にあった、まるで、今夜、為される仕事のことを夢から警告されてしまったかのように。しかし、いいえ、いいえ;それは思いを殺すだろう。ままよ、彼女は地上の祝福された天使だ;この一夜の後はスカートにしがみ付いて天国まで追いかけよう」。

未来への優れた決意によってグッドマン・ブラウンは己の現在の邪悪な目的へもっと急いで行くのが理に適っていると感じた。寂れた道を通ったが、光を遮られる最も陰った木々の森の悉くが辛うじて傍らに立つ狭い小径は絡み付き、後ろは直ぐに塞がれるのだった。能うかぎり、全くの孤独だった;そんな一人きりにこうした特性があり、すなわち旅行者は頭越しの数え切れない幹と太い大枝のそばに覆い隠されているかも知れない人が分からないのだ;ゆえに孤独な歩みにより、目に見えない群衆であれ、彼は通り抜けているかも知れない。

「あらゆる木の後ろに悪魔のインディアンがいるかも知れない」と自らにいったグッドマン・ブラウン;すると後ろを恐る恐る一瞥した、「悪魔自身が私の肘に本当に付いたらどうなることだろう!」と付け加えながら。

振り戻される頭、彼は湾曲した道程を過ぎると再び前を向きながら人の姿を目にしたが、厳粛に整えられた身形で、古木の根元に腰を下ろしていた。彼はグッドマン・ブラウンが近付くと立ち上がって共々に歩を進めた。

「遅いですな。グッドマン・ブラウンさん」といった彼。「オールドサウスの時計は私がボストンを通過した時点で打ちましたが、きっかり十五分前です」。

「フェイスに暫く連れ戻されました」といった若い男性、声は怖じけた、完全に予想外だったが、同伴者の突然の出現に来して。

森の夕暮れは今や深まり、そうしてその最も深まる部分へ二人は旅していた。見定めるに二番目の旅行者はおよそ五十歳で、グッドマン・ブラウンと明らかに同程度の生活階級で、可成と似付かわしかった、恐らく面相よりは表情においてだけど。それでも父親と子供と取られるかも知れなかった。といって年上の者は年下の者と同じように簡素な服装で、態度も同じように簡素だったけれども何ともいえない空気を持っており、大層、世間を弁える人、あるいは事情があって呼ばれるとすれば知事の夕食会のテーブルかウィリアム王の宮廷で恥じ入る感じがしない人なのだった。ところが只一つ彼について顕著だと極め付きなのは杖で、大きな黒い蛇との類似性があり、とても奇妙に造形されていてそれ自体が生きる大蛇みたいに捩れて蠢いていると殆ど思われるかも知れないくらいだった。これはもちろん目の錯覚であり、不確かな光に助長されてしまったに違いない。

「さぁさ、グッドマン・ブラウンさん」と叫んだ仲間の旅行者、「これは旅の初めから足取りが鈍いですぞ。私の杖をお取りなさい、もしもそんな直ぐに疲れ切ってしまうならば」

「友よ」といったもう一人、遅い足取りを終止符と換えながら、「其方とお会いして盟約を結びますが、さて、私は来たどこからでも帰るのが今や目的です。其方がご承知の事柄に関わり合うのは遠慮します」。

「そう仰いますか?」と返した大蛇の彼、離れて笑いながら。「歩き続けましょう、とはいえ、私たちが行くように説き付けながら;もしも納得できなければ其方はお戻りなさない。私たちは森の中の少しの途上でしか未だありません」。

「遠過ぎます! 遠過ぎます!」と大声を上げた善人、無意識に歩みを再開しながら。「私の父はこんな用事で森に決して入って行きませんでしたし、その前の父もです。殉教者の日々から私たちは正直者で善良なキリスト教徒の子孫だったのです;ブラウン名がかつてこの小径を通って行ったなんて私こそ一人目でしょうか」。

「こんなお仲間、其方は仰ります」と良く見た年上の者、彼の停止を解釈しながら。「良くぞ仰られます、グッドマン・ブラウンさん! 私は嘗ての清教徒の一人と同じように貴方の家族とも面識を良く持ちました;いうに些末ではありません。貴方のお祖父さん、巡査を手助けしましたのも彼が、セイラムの通り一辺、クエーカーの女性を余りに活発に鞭打ったときです;リギダマツの節を持って行ったのが私でしたが、それは焼け付いたもので、フィリップ王の戦時中、インディアンの村を焼き払うために私の炉床に入ってました。彼らは私にとって良い友達でした、両者とも。この小径に沿った多くの散歩こそ快適でしたし、深夜の後には陽気に帰りました。彼らのために私は喜んで貴方と友達になりたいのです」。

「其方が仰られるようならば」と返したグッドマン・ブラウン、「彼らがそのことを決して喋らなかったのを驚愕しますし、または、正味、驚愕しません、その種の最も小さな噂によってそれらはニューイングランドから追い出されてしまったと分かりますので。私たちは祈りの、又、善い行いの立ち上げ人ですし、そんな曲悪には堪え切れません」。

「曲悪か否かにせよ」と捩れた杖でいった旅行者、「私はニューイングランドに本当に一般的な知り合いを持ちません。多くの教会の執事たちが私と聖体拝領ワインを飲みました;様々な町の議員たちが私を議長にしました;さらにマサチューセッツ州立法府の大部分が私の感興の厚い支援者でした。知事と私も――ただしこれらは州の秘密です」。

「こんなことがあり得ますか?」と叫んだグッドマン・ブラウン、平穏な同伴者へ驚異の眼差しだった。「けれども私は知事や評議会とは無縁です;彼らはしたいようにしますし、私みたいな素朴な農民の物差しにはなりません。ですが、其方と行くのであればセイラム村のあんな善良な老人で、私たちの聖職者をどうお見受けするべきですか。おぉ、彼の声は安息日と説教日の両方とも私を身震いさせるのです」。

これまでところ、年上の旅行者は然るべく真面目に聞いたのだった;ところがついにどっと抑え切れずに笑い出し、全身を余りに震わせ過ぎては蛇並みの杖が同調して実際に蠢いているようだった。

「はっ! はっ! はっ!」と、三度、叫んだ彼;するや落ち着きながら、「ままよ、続けなさい、グッドマン・ブラウンさん、続けなさい;ただし、どうぞ、私を笑い死にさせなさるな」。

「ままよ、ならば、一旦、その事態を切り上げることです」といったグッドマン・ブラウン、相当に苛々させられて、「私には妻、フェイスがおります。愛すべき小さな心を打ち砕かれるのです;私はむしろ己を打ち砕くのです」。

「いいや、それならばそれで」と答えたもう一人、「正に其方の道をお行きなさい、グッドマン・ブラウンさん。フェイスさんは危害を加えられましょうし、私たちの目の前にちょこまかするみたいな二十人の老婆のためではないのです」。

喋りながら彼は杖で小径の女性らしい人影を差したが、グッドマン・ブラウンが認めたのは大変に敬虔で模範的なデイム、少年期には教理問答を授けられていて、今も尚、道徳と宗教の助言者だった、彼女は牧師とディーコン・グッキンと一緒だった。

「グッディ・クロイスが日没の荒野に今しもおられるとは正しく驚愕です」といった彼。「しかし貴方のお許しが頂けるならば森を切り抜けて私たちは後ろのこのキリスト教の女性から去ってしまうまででしょう。貴方のご存知ない方ですが、彼女は私が付き合うのは誰か、行くのはどこかを尋ねるかも知れません」。

「そうであれば」といった仲間の旅行者。「貴方は森へ赴いて私を小径に残しておいて下さい」。

応じて若い男性は脇へ逸れたが、同伴者を念入りに見詰めると彼は道形に柔らかく前に進んでは老デイムへ杖の長さに入って来た。彼女はそれまで最短距離を図り、大変に年老いた女性に特有の速度で、行きながら不明瞭な言葉――祈り、疑いなくは――を呟いていた。旅行者は杖を前に出すと彼女の萎びた首を大蛇の尻尾のようなもので触れた。

「悪魔め!」と敬虔な老婦人が絶叫した。

「するとグッディ・クロイスは古い友達をご存知ですな」と見て取った旅行者、彼女に立ち向かって身悶えする杖を傾けながら。

「あぁ、ないや、にしてもそちらは閣下ですか、誠に?」と叫んだ良デイム。「ええ、正しくは私の昔の悪舌、グッドマン・ブラウン、今では愚か者のお祖父さんのイメージにぴったりと沿います。ですが――閣下は信じますか?――私の箒の杖が不思議に失われ、盗まれてしまい、疑うにあの吊るされない魔女により、グッディ・コーリー、しかもです、私が野生セロリとキジムシロとトリカブトの絞り汁の聖油を塗られているときでした」。

「細粒の小麦と新生児の脂肪を混ぜ合わせて」といった古いグッドマン・ブラウンの風体。

「あぁ、閣下はレシピをご存知だ」と叫んだ老婦人、クワックワッ大きく笑いながら。「そう、申しましたように、会合の準備はすっかり整いましたが、乗って行く馬はありません、私は歩いて行くことに決めました;つまり彼らが今夜の親交に加われる素敵な若い男性がいると教えるためです。ところで今や閣下が腕を貸して下さるのですから私たちには瞬く間でしょう」。

「それは厳しいですぞ」と答えた彼女の友達。「腕は惜しみませんが、グッディ・クロイスさん;私の杖がご座います、宜しければ」。

こういいながら彼は彼女の足へそれを投げ下ろしたが、恐らくは生命を帯びている、所有者からかつてエジプトのマギへ貸された棒の一本なのだった。この事実にしかしながらグッドマン・ブラウンは理解が及ばなかった。彼は驚いて目線を上げると再び見下ろすまま、そしてグッディ・クロイスも蛇状の杖も目に入らなかったけど、仲間の旅行者のみが何事もなかったように彼を待っていた。

「あの老女は教理問答を授けてくれました」といった若い男性;さてはこの単純なコメントには無限の意味が込められていた。

彼らは歩を進め続け、同時に年上の旅行者は同伴者が良い速度で行くように、さらに小路に辛抱するように熱心に勧めたが、とても適切な話し方のゆえにその主張は本人から想定されるよりもむしろ聞く者の胸の中に跳ね上がるようだった。行きながら彼は歩き棒のために楓の枝を引っこ抜くと細枝や小さな枝の夜露に濡れたのを剥ぎ取り始めた。指で触れた瞬間に不思議に萎びて乾き上がるのが一週間分の日の光を当てるみたいだった。こうして一組は進み行き、良く気儘な足取りだったものの突然から、道の陰った空洞で、グッドマン・ブラウンは木の切り株に座り込んでもはや行くのを拒んた。

「友よ」といった彼、頑なに、「心に決めました。もう一歩たりともこんな用事には動きません。老女が悪魔へ向かうのを惨めに選んだらどうなることだろう、天国へ向かっていると私が思ったときに:親愛なフェイスを置き去りに彼女へ付いて行く理由がありますか?」。

「そのうちに良く思うでしょう」といった知り合い、冷静に。「ここに座って暫しお休みなさい;再び動きたい気持ちなれば私の杖がお供しますよ」。

もはや言葉はなく、彼は楓の棒を同伴者へ投げたが、すると急速に視界から外れてまるで彼が深まる陰りへと消えてしまったようだった。若い男性は道端に幾分間か座り、素晴らしく自賛しつつは朝の散歩で牧師と会ったり、善良な古いディーコン・グッキンの目を避けたりもしなかった良心がどれだけ鮮やかだったかと考えていた。そして何と穏やかな眠りがあの本当の夜だったことか、とても意地悪に過ごされてしまったにせよ、とても清らかに甘やかな今し方、親愛なフェイスの腕の中で! これらの快適な称賛するべき瞑想の真ん中で、グッドマン・ブラウンは道程を馬が激しく踏み付けるのを耳にすると森の端っこへ身を隠すのが賢いのだと、離れてとても幸いだったが、そちらへ連れられた罪ある目的を自覚するのだと捉えた。

やって来た蹄は激しく踏み付けて乗り手の声は二人の厳粛な老いた声で、彼らに迫るほどに沈着に会話していた。これらの混ぜ合わされた音響は道程を通り過ぎ、若い男性の隠れ処から幾ヤードは出ないと思われた;しかしその地点の特徴的な陰りの深さのために疑いなく旅行者も彼らの乗り馬も見えなくなった。人影が道脇の小振りな枝を撫で付けたものの斜めに通り過ぎられていた輝く空の一条の微かな光をたとえ一瞬でも彼らが遮ったとは分からなかった。グッドマン・ブラウンは代わる代わるに屈んでは爪先立ちし、枝を払い除けて影法師すらも見定めずに挑むかぎりと頭を前へ突き出した。もっと苛立たしかったのが、そんなことが可能だったとすれば彼には確かに思われるためだった、牧師とディーコン・グッキンの声を認めたことで、静かにジョギングしており、叙階か教会評議会が決まっているときにいつもやっているようだった。まだ聞こえる一方、乗り手の一人が撓やかな小枝を引っこ抜こうと止まった。

「お二方の、聖職者様」といったディーコンみたいな声、「私は今夜の集会よりか叙階を逸しました。彼らは私たちの共同体の何人かがファルマスとその向こうから、そして他の人がコネチカットとロードアイランドから、さらに数人がインディアンのパウワウから、その様式に従って、来ることになっており、私たちの中で一番と同じくらい魔術を大方は知るのだと私に教えました。さらに美しく若い女性が親交へ加われるのです」。

「素晴らしく良いです、ディーコン・グッキンさん!」と返した牧師の厳めしい口調。「拍車をかけましょう、さもないと私たちは遅れますぞ。何もなりません、ですな、その地に着くまでは」。

蹄が再びガタガタ鳴った;声は虚空にとても不思議に話しながら森を抜けて通り過ぎたが、そこは教会がかつて集められたことがなく、キリスト教徒が人里離れて祈ったところだった。どこへ、その時、これらの聖人たちは異教徒の荒野へ余りの深みを旅していられたのか? 若いグッドマン・ブラウンは支えに木へ掴みかかり、地面に沈み込むのに備えたが、心の重病から朦朧と鈍重とするのだった。空を見上げ、己の上に天国が本当にあるかと疑っていた。依然、青い迫持があり、星々が輝いていた。

「上の天国と下のフェイスにより、私は悪魔に対して未だしっかり立ち上がろう」と叫んだグッドマン・ブラウン。

彼が大空の深い迫持をじっと見据え上げて祈りに手を揚げていた一方、雲は掻き乱すことのない風を通じて天頂へ急ぎながら輝いている星々を覆った。青空は今でも見え、直に頭越しではないが、雲のこの黒い塊は北方へ素早く掃けて行った。中空には、まるで雲の深みからのように、声の音響が混乱して如何わしく出現した。一旦は聞き手は自らの町の人々のアクセント、男性たちと女性たち、敬虔と不信心の両方、聖餐式のテーブルで会ったり、あるいは酒場にごった返した他の人たちを知ったりした多くを判別することができると思い描いた。次の瞬間には音響はとても不明瞭になり、聞こえているのは古びた森の騒めきが風もなく囁いているのかと疑うのだった。するとそれらの気兼ねない調子こそ強か膨らんで来、セイラム村の日の光のうちに毎日と聞かれたものだが、夜の雲からこれまでは決してなかった。若い女性の声が一つ哀歌を朗しつつも、尚、不確かな悲しみを持ってある寵愛を、恐らくは手に入れられずに心痛するばかりなのだ、嘆願していた;目に見えない群衆は全て、聖者と罪人の両方が彼女を先へ励ましているようだった。

「フェイス!」と叫んだグッドマン・ブラウン、煩悶と絶望の声だった;すると森が真似して谺した、「フェイス! フェイス!」、叫びながら、まるで狼狽えた惨めな人が荒野を通して彼女を探し詰めているようだった。

悲嘆、激怒、震駭の叫びが夜を尚も貫通していた、不幸な夫が反応へ息を潜めたときに。絶叫があり、直ぐに声の大きな騒めさに溺れ込んだが、それらは遙か彼方の笑いへと薄れながら暗い雲が一掃されたときにはグッドマン・ブラウンの上に澄んだ静かな空が残されていた。ところが何かが空中を軽やかに旗めき落ちて木の枝に引っかかった。若い男性がそれを掴むとピンクのリボンが目に入った。

「私のフェイスは死んだ!」と叫んだ彼、固まった一瞬の後に。「この世は何ともならない;もはや罪は名称でしかない。さぁさ、悪魔め;つまり其方へなのだ、世界が与えられたのは」。

もはや絶望に狂い、大きく長く笑ってしまったが、グッドマン・ブラウンは杖を握ると再び出発したのか、歩くか走るよりもむしろ森の小径を飛んで行くような速さで。道程は広がって寂れて辿るにはもっと微かに伸びると果ては消え去り、暗い荒野の奥深くに彼は残されていたが、それでも尚死すべき人を邪悪へ案内する本能によって前へ押し寄せていた。森全体が恐ろしい音響で満たされるのだった――樹木の軋み、野獣の吠え、インディアンの喚き;一方、時に風が遠くの教会の鐘みたいに鳴るとすると時に旅行者の周りに幅広い唸りを上げてまるで万物が彼を嘲って笑っているようだった。しかし彼自身はその場の恐怖感が主で、つまり他の恐怖感から縮み上がりはしなかった。

「はっ! はっ! はっ!」と唸ったグッドマン・ブラウンは風に笑われるときだった。

「どちらの笑い声が最も大きいかをいっておくれ。貴方の魔術で私を怖がらせようと思いなさるな。この魔女よ、この魔法使いよ、このインディアンのパウワウよ、この悪魔自身よ、グッドマン・ブラウンはここですぞ。貴方は彼が貴方を恐れるくらい彼を恐れるのです」。

真実、取り憑かれた森に至ってはグッドマン・ブラウンの人影よりも恐ろしいものはあり得なかった。黒松の中を飛び上がる彼は狂乱した身振りで杖を振り回しながら今や忌まわしい冒涜の感応を発散していてしかも今や自分の周りに魔物みたいに森の全ての谺を笑わせているのと等しい笑いを叫び出していた。その状態の魔性は彼が人の心情に激怒するときよりも醜悪ではない。従って残忍さこそ彼の方針に栄えたが、木々の中で震えながら、目の前に赤い光を、まるで開拓地の切り倒された幹や枝が火を付けられては真夜中の時刻に空に向かってギラギラ炎を投げ上げているときのように、見たときまでだった。彼は停止した、自らが追い込まれてしまった暴風雨の静まりの中で、そして讃美歌のようなものを聞いたが、多くの声の重さを伴って遠方から粛として流れていた。調子が分かった;村の集会所の合唱団でお馴染みの一つだった。詩句は次第に重苦しく消えると合唱の、人間の声ではなく、未開の荒野の物凄いハーモニーが響き合ったあらゆる音によって伸展された。グッドマン・ブラウンは叫び出した、すると己の叫びは砂漠の叫びのユニゾンで耳へ入らなかった。

沈黙の間に彼は光が己の目に煌めき切るまでそっと前に出た。空き地の片隅で、森の暗い壁に囲われていたが、現れたのが岩で、祭壇か説教台と粗く自然に似付いており、四本の燃える松、天辺は炎で、幹は手付かず、夜会の蝋燭みたいなものに取り巻かれていた。岩の頂上に繁茂する群葉は全て火の上にあり、夜へと高く燃えていて辺り一面は途切れがちに照されていた。垂れ下がる細枝と緑豊かな花綱の何れも炎に包まれるのだった。赤い光が浮き沈みするために数多の会衆が代わる代わるに示し出され、次いで影に姿を消し、さらに再び、いわば、暗闇から来て人里離れた森の奥深くを一気に満たしていた。

「厳粛で暗い服装のお仲間」といったグッドマン・ブラウン。

真実に彼らはそんなだった。彼らの中の陰りと彩りの間を行ったり、来たりして震えている面々は、翌日、州の評議会の席で見られるだろうと、又別には、安息の毎度、信心深く天国へ、そうして有り難く密集した会衆席を見渡すと土地の最も神聖な説教台からは見えた。何人かは知事の妻がいたと確言する。少なくとも高貴なデイムがいて彼女や名誉ある夫の妻や未亡人、大群衆や老齢乙女、世評に優れた誰彼や母親に見付かるまいかと身震いする綺麗な若い女性へ良く知られるのだった。ぼんやりした辺りにパッと放たれてグッドマン・ブラウンの目が眩んだ閃光か彼は特別の尊厳において有名なセイラム村の教会員の二十人を認めた。善良な古いディーコン・グッキンが到着し、由緒ある聖者、自らの崇敬する司祭のスカートを待ったのだった。ところがそれらの厳粛で令名で敬虔な人々とそれらの教会の長老とそれらの貞潔なデイムと純心な処女と不遜に付き合いつつ、自堕落な生活の男性たちや染み垂れた名誉の女性たち、全くの卑しくて淫らな悪徳へ身を捧げる、しかも恐ろしい犯罪でさえも疑われる惨めな人たちがそこにはいた。不思議だったのは善人が不届き者に縮み上がらず、聖者に恥じ入る罪人でもないと見えることだった。彼らの青白い顔の敵の中に散らばるのがインディアンの僧侶、それともパウワウだったけど、土着の森を英語の魔法に知られる以上に醜悪な呪術で、屡々、怯えさせたのだった。

「しかしフェイスはどこにいるのか?」と思ったグッドマン・ブラウン;望みが心に来るほどに身震いした。

讃美歌の別の詩句が起こり、緩やかで憐れみ深い調べ、敬虔な愛のようだが、私たちの天性が罪を考え付くことができると表現し切って遥かに多くを暗く仄めかす言葉と繋がっていた。単に人間が底知れないのは魔性の知恵こそだった。次々と詩句は歌われた;未だしも砂漠の合唱が強力なオルガンの最も深い音色みたいに間に膨らんだ;恐い聖歌の最後の響きによって音はまるで唸る風、急ぐ小川、吠える獣、そして野生の頓着ない他のものの声の悉くが混ざり合って全ての上品な人々へ敬意を表する有罪者の声と調和しているように現れた。四本の松の木は火炎を投げ上げて不敬虔な会合の上で煙の花輪に慄然の姿と顔を見出だした。同じ瞬間に岩の火は赤く噴き出して土台の上で煌めく迫持を形成し、今や一つの人影と思われた。深い尊敬を持っていわれると、ニューイングランド教会の厳粛な聖職者と似たところは装束と態度の両方において僅かもなかった。

「転向者をお出しなさい!」と叫んだ声は辺りを通じて響き渡ると森へと流れた。

その言葉にグッドマン・ブラウンは木陰から踏み出すと会衆へ近付いたが、心の曲悪な全ての同調から苦々しい聖職者団だと彼らを感じるのだった。彼は間近で自身の亡くした父親の姿が前進するように自分を手招きし、煙の花輪から見下ろしており、同時に女性が、絶望の薄暗い面相で、注意して自分を戻そうと手を投げ出すのだと確かに思われた。それは彼の母親だったのか? しかし彼は一歩も退いたり、抗ったりする力もなかった、考えてさえも、牧師と善良な古いディーコン・グッキンに腕を掴まれながら燃える岩ヘ導かれたときに。ベールの女性の細身の形もそちらへ来ると、グッディ・クロイス、敬虔な教理問答の先生とマーサ・キャリアー、地獄の女王になるべき悪魔の約束を受け取った人との間に導かれた。跋扈する鬼婆とは彼女だった。そうして火の張り出しの下に改宗者が立った。 

「ようこそ、私の子供たち」といった暗い人影。「貴方がたの同類の親交へ。若い貴方の天性と貴方の運命が見付かるのです。私の子供たち、後ろをご覧なさい」。

彼らは回った;するとパッと放ち出しながらいわば一枚の火炎の中に魔性の参拝者が見られた;あらゆる顔に歓迎する笑顔が暗く輝いていた。

 

「そちらに」と再開した暗黒の姿。「若い頃から汝らが深く尊敬していた全員がいらっしゃいます。汝らはご自身よりも彼らを神聖と捉えましたし、彼らの公正と天国へ信仰厚い向上心の生活を自らの罪と対比させながら、ご自身において縮み上がりました。未だしも彼らは私の参拝の会合に全ていらっしゃるのです。貴方がたに彼らの秘密の行いが知らされることになりましょう今夜:どんなにか教会の白髭の長老たちが自宅のの若い使用人たちへ無茶苦茶な言葉を囁いていたことだろう;どんなにか多くの女性たちが未亡人の喪服を強く求めて己の夫にベッドに就くと飲み物を与えながら眠らせては胸の中で最後に眠らせていたことだろう。どんなにか髭も生やさない若者たちが己の父の財産を急いで引き継ごうとしていたことただろう;そしてどんなにか綺麗な少女たちが――赤面せず、優しい人たち――庭に小さな墓穴を掘り、しかも私へ告げていたことだろう、只一人の来客へ嬰児の葬式なのだと。罪への人間的な心の同調によって汝らは全ての場所を嗅ぎ付けるでしょう――教会、寝床、通り、田畑、または森にかしら――悪事が働かれてしまい、そして全地球の一つの罪の汚点、一つの強かな血溜まりを目に入れて大喜びするでしょう。これよりももっと多いのです。貴方がたのものでしょう、あらゆる胸の中で、罪の深い神秘、非道な芸術の全ての泉を貫き通すことが、それらは人間の能力以上――行いを明らかにするその最高の私の能力以上に邪悪な衝動を無尽蔵に供給するのです。ついにもはや、私の子供たち、互いにお目にかけなさい」。

彼らはそうした;すると地獄の燃える松明の炎により、惨めな男性が己のフェイスを目に入れた、彼女も己の夫を、その不浄の祭壇の前で身震いしながら。

「見なされ、汝らはおられる、私の子供たち」といった人影、口調は深くて厳めしかった、絶望する畏怖から殆ど悲しげで、まるで自らの嘗ての天使的な天性が依然として私たちの情けない同類を嘆くようだった。「一人一人が心から信頼し合うゆえに汝らは徳が夢物語ではないとしっかり望んだのでした。真実を悟るのは今こそです。邪悪は人類種の天性です。邪悪は貴方がたの一つだけの幸せに違いありません。再度、ようこそ、私の子供たち、貴方がたの同類の親交へ」。

「ようこそ」と繰り返した魔性の参拝者、絶望と勝利の一つの叫びだった。

彼らが立ち上がったそこに、一組だけ、そのようだったが、この闇世界の惨めさの端っこにまだ躊躇していた。ある窪地が岩に自然に刳り貫かれていた。水をギラギラの光で赤くして含んだのか? または血だったのか? はたまた、ひょっとして、液体火炎? この中でこそ邪悪な姿は自らの手を稍浸しながら彼らの額に洗礼の印を置くように準備したけど、すなわち彼らは罪の神秘の与り人となり、他人の秘められた自責の念を、行いと考えの両面において彼ら自身が今あり得る以上にもっと自覚するのかも知れなかった。夫は蒼白の妻へ一目を放った、フェイスも彼へ。何と汚辱された惨めな人が次いだ一瞥からお互いに示され、彼らが見付けたことと彼らが知ったことのように戦慄していたことか!

「フェイス! フェイス!」と叫んだ夫、「天国を見上げなさい、そして曲悪な者に抗いなさい」。

フェイスが従ったかどうかは彼には分からなかった。とても喋れはしなかった、穏やかな夜と孤独の只中に自己発見したのはいつか、森を通して次第に重苦しく消える風を聞きながら。彼は岩に向かってふら付くと冷気と湿気を感じた;かかる細枝ながらそれは全て火の上にあって何にしても冷たい露を頬に振りかけたのだった。

翌朝に若いグッドマン・ブラウンはセイラム村の通りへとゆっくりと出て来、自らの周りを道に迷った人みたいに見据えていた。善良な古い牧師が朝食の食欲と己の説教の瞑想を得ようと墓地沿いを散歩しており、そしてグッドマン・ブラウンに過ぎ去るときに祝福を与えた。彼は由緒ある聖者にまるで破門を避けるように縮み上がった。古いディーコン・グッキンは家庭内で礼拝してその祈りの尊い言葉が開いた窓を通して聞かれた。「どんな神を魔法使いは祈ったのか?」といったグッドマン・ブラウン。グッディ・クロイス、あの優秀な古いキリスト教徒は早い日の光の中の格子戸に立ち、1パイントの朝の牛乳を持って来た小さな少女に教理問答を行っていた。グッドマン・ブラウンはその子供をまるで魔物自身の一掴みからのように連れ去った。集会所の角を曲がりつつ、彼はフェイスの頭を見付けたが、ピンクのリボンで、前を心配そうに見据えながらそして彼を目にするととても嬉しがり、通りをスキップして来ては村全体の前で夫に殆どキスするくらいだった。ところがグッドマン・ブラウンは彼女の顔を厳しくも悲しげに見通すと挨拶なしに過ぎ去った。

グッドマン・ブラウンは森で眠り込んで魔女集会の突飛な夢を夢見ていただけだったのか?

そうであれ、宜しければ;しかし、嗚呼! それはグッドマン・ブラウンにとって邪悪な前兆の夢だった。厳しくこそ、悲しげにこそ、暗く瞑想的にこそ、不信にこそ、かりに絶望的な男性でないとしてもそんな恐ろしい夢の夜から彼はなった。安息日には会衆が神聖な詩編を歌っているが、彼は聞くことができず、なぜなら邪悪な聖歌が耳に大きく押し寄せて祝福された調べが全て溺れ込むからだった。司祭が説教台から迫力と熱気の雄弁で説教したとき、開いた聖書に手を置き、私たちの宗教の聖なる真実についてや聖者並みの生活についてや勝利の死滅についてや未来の至福かいいようのない無情についてだったが、そのときこそグッドマン・ブラウンは天井が銀髪の涜神者とその聴衆に叩き付けられるのではないかと恐がりながら青褪めた。屡々、深夜に突然と歩いていた、フェイスの胸の中から縮み上がって;朝か晩に家族が祈りに跪いたならば顔を顰めながら自分にぶつぶつ不平をいって己の妻を厳しく見据えると背を向けた。ついに長寿を遂げて己の墓へ霜のように白い骸を運ばれてしまったならばフェイス、高齢の女性に子供たちに孫たち、沢山の行列、その上に少なくない隣人たちにも伴われるが、彼らは望みある詩句を彼の墓石に刻まなかった、というのも臨終が陰鬱なためだった。

参考:ヤンググッドマンブラウン(ウォルトンみちよ訳)

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