英語の小説、アンブローズ・ビアスのアウルクリーク橋の出来事の日本語訳で気になった英文法にifの直後に形容詞が来る仮定表現があった。
条件節を導く名詞と動詞がない
No service was too humble for him to perform in aid of the South, no adventure too perilous for him to undertake if consistent with the character of a civilian who was at heart a soldier, and who in good faith and without too much qualification assented to at least a part of the frankly villainous dictum that all is fair in love and war.
彼にとって南部を援助できないほどに詰まらない兵役はなく、かりに心から兵士で、誠意を持って少なくとも恋と戦は道を選ばずという率直に悪党の格言に同意する条件を大して有さない民間人の性格と一致するならば引き受けられないほどに危険な冒険はなかった。
仮定の条件節を導くifに直接と形容詞が続いていてどう捉えるべきかと面食らったけれども調べてみると双方の間に名詞と動詞が省略された表現だと分かった。
通常のif節に書き換えた場合
No service was too humble for him to perform in aid of the South, no adventure too perilous for him to undertake if it was consistent with the character of a civilian who was at heart a soldier...
例文の場合、条件文の帰結節がif節の前に置かれていてその主語の「adventure」が省略されたif節の主語、動詞は今の場合は前の文章がさらに前の文章との同型の繰り返しを避けるために省略されているので、if節からすると二つ前の文章の「was」が省略されたif節の動詞と考えられる。
一般的に節内の名詞と動詞が揃ってないとそうした文章として捉え難いけど――主語と述語の一部を欠いていては文章として成り立たないからどんな節でもあり得ないのではないか――しかしifの直後に形容詞が来るのは英語で良く行われる同型の繰り返しを避けるために後の文章を部分的に省略する表現の一つと捉えて良い。
主語と述語が省略されたif節の特徴
形容詞によっては慣用的に多く使われるものもある。
- if any_もしも何かがあれば
- if possible_もしもできれば
- if necessary_もしも必要ならば
- if applicable_もしも該当すれば
- if appropriate_もしも適切ならば
- if available_もしも利用できれば
- if requested_もしも要望があれば
※ifの解釈から「たとえ~だとしても」の意味合いでも使われ得る。
ifの直後は形容詞だけではなくて過去分詞が使われることも珍しくないようで、訳すと名詞的に「もしも~があれば」とか受動的に「もしも~されれば」なんて仕方になる。
その他、双方の間に形容詞を修飾する副詞が挿入されることもあって必ずしもifの直後に形容詞は来ないかも知れない。
- if really necessary_もしも本当に必要ならば
- if very applicable_もしも非常に該当すれば
- if fully available_もしも完全に利用できれば
とはいえ、捉え方は変わらない。副詞は形容詞を修飾するかぎり、文章の要素としては形容詞と纏めて受け取れる。するとifの直後に形容詞が来る場合と同じに捉えられる。
意味を理解するにはif節の前の文章が重要で、一連の流れの中で省略された主語と述語を想像しなくてはならない。
例文のように想像するべき名詞か動詞が前の文章でも省略されている場合は見付かるまでさらに前の遡る必要があるから注意したい。
英語の表現として基本的に文語調/書き言葉の趣きが強くて会話にはさほど向いてないといわれる。
因みにwhenも形容詞を続けてifと同様に使われて「〜のときに」のような意味合いになる。
コメント
「※ifの解釈から「たとえ~だとしても」の意味合いでも使われ得る。」このパターンは"if not"で使われる場合の方が圧倒的に多い印象です。
2023年1月18日 17:03