英語の小説、マーク・トウェインの幽霊物語の日本語訳で気になった英文法に前置詞と接続詞のtillとuntilの違いがあった。
tillもuntilも同じ意味で使われる
tillが使われた例文
I covered up in bed, and lay listening to the rain and wind and the faint creaking of distant shutters, till they lulled me to sleep.
ベッドですっぽり包まれながら雨と風と遠い鎧戸の微かにキーキー鳴る音が落ち着いて眠れるまでそれらを聞きながら横になった。
untilが使われた例文
And so I lay thinking it over until I convinced myself that it WAS a dream, and then a comforting laugh relaxed my lips and I was happy again.
もはやだからそれは夢「だった」と納得するまで考え込みながら寝た、するとそして安堵の笑いに唇を緩まされて再び幸せだった。
tillもuntilも意味が同じ言葉で、訳すと「~まで」のように表され、基本的に変わらずに使うことができる。
どちらも互いに共通するのは前置詞と接続詞の用法だ。前置詞は句(動詞を介さずに文章化されないもの)を、接続詞は節(動詞を介して文章化されるもの)を導く。それぞれのどちらの用法でも意味はやはり変わらず、共通して扱われ得る。
tillとuntilは印象や感覚が幾らか異なる
tillとuntilは意味が同じだけれども印象や感覚が幾らか異なるので、両者が全く使い分けられないわけではない。
- tillの傾向
- 印象は軽く、口語/話し言葉になり易い。
- 感覚は早く、一つの音節しかない(ティル)。
- untilの傾向
- 印象は重く、文語/書き言葉になり易い。
- 感覚は遅く、二つの音節がある(アン|ティル)。
印象を比べると軽いtillは口語調で略式的/普段的な言葉の日常会話などに、重いuntilは文語調で形式的/儀礼的な言葉の社交辞令などに合うかも知れない。
感覚を比べると一音節で早いtillはテンポが縮まり、二音節で遅いuntilはテンポが伸びるので、使い分けると文章の流れを微妙に調整して趣きを変えられる。
その他、文頭で句や節を導く場合は専らuntilが好まれてtillが使われることはないといわれる。
tillとuntilの成り立ちについて
見た目からするとtillがuntilの省略のような気もするけれども実際は後者よりも前者の方が古くてuntilはtillなしに生まれなかったとされる。
tillの語源:前置詞と接続詞
tillは中英語(十一~十五世紀頃)と古英語(五~十二世紀頃)の「til」(~へ、~まで)に由来するとされる。それらの英語のtilは古ノルド語(八~十四世紀頃)の「til」(~へ)に、さらに古ノルド語のtilはゲルマン祖語(紀元前五世紀頃)の「*tilą」(目的地)か「*til」(~へ、~の方へ)に由来するかも知れない。
※動詞のtill(耕す)や名詞のtill(レジスター、現金用の引き出し、現金箱)には又別の語源がある。
untilの語源:前置詞と接続詞
untilは中英語の「until」や「untill」や「ontil」や「ontill」に由来している。意味はどれも同じで、現在と変わらず、「until」だけが残ったような感じだ。
中英語の何れも接頭辞の「un-」(~に対して、~の方へ、~までに)を既存の「till」に付けたものに等しい。接頭辞のun-が「to」(~へ)に付いた「unto」(~までのとき、~までくらい)が先にあって中英語のuntilなどは北方での変形として後から生まれたと考えられるようだ。
中英語のun-は古ノルド語の「und-」(~のかぎり、~までに)に、古ノルド語のund-はゲルマン祖語の「*und-」(~までに)に由来するかも知れない。
tillやuntilと似た綴りの言葉
同じ意味の言葉が二つあってしかも綴りが似ているせいか、さらに色んな言葉が出て来ている。
- til(lが一つのtill)
- untill(lが二つのuntill)
- 'til(untilの短縮)
- 'till(untillの短縮)
何れも元の二つの紛らわしい綴りから誤ったものかも知れない。積極的に使うべき言葉ではなさそうだ。出て来たときはtillやuntilと大差なくて少なくとも同じ意味で捉えて構わない。
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