L・フランク・ボームの魔法をかけられた活字の日本語訳

自分の写真結城永人 -

アメリカの作家、小説家で戯曲家のL・フランク・ボームの童話集アメリカのお伽噺(1901)の収録作品の魔法をかけられた活字の日本語訳を行った。

L・フランク・ボームの魔法をかけられた活字の原文と朗読

The Enchanted Types by L. Frank Baum/L・フランク・ボームの魔法をかけられた活字
原文:Project Gutenberg作品集
朗読:LibriVoxマシュー・リース

両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。

L・フランク・ボームの魔法をかけられた活字の日本語の訳文

鳩の剥製が付いた赤い帽子を被ったジプシーの白い衣装の女性
Stunning Gypsy Lady with Bird Hat by Unknown / Public Domain

ある時、ヌークが美しい生活に疲れ始めて何かを新しくやりたがった。ヌークはどんな他の不死の輩――きっと妖精とリルを除いてよりも素晴らしい力を持つ。なのでヌークは幸せに満ち足りる以外ではあり得ない単純な願いから欲しがるものは何でも手に入れるかも知れないと思われるだろう。しかしそんなことはポポポ、私たちが話すヌークの場合には当て嵌まらなかった。彼は何千年も生きたのだったし、己の考え得る全ての素晴らしいものを楽しんだのだった。だが、生活は只一つの願いも叶えることができない者かも知れないのと同じくらい今や彼には退屈になったのだった。

最終的に、偶々、ポポポは都市に暮らす地球人のことを考えた、そうしてから彼らを訪れてどう生きるのかを見ようと決めた。これは確かに申し分のない娯楽だし、多くの退屈な時間を過ごすのに役立つだろう。

よって、ある朝、とても想像できないくらい美味しい朝食の後、ポポポは地球へ出向いた、すると直ぐに大きな都市の真ん中にいるのだった。

彼自身の住まいは静かで安らかだったために町の喧騒にびっくりさせられた。神経に衝撃を受けたために三分と見て回る前に冒険を断念することに決めて瞬時に家に戻った。

これで、一時、地球都市を訪れるべき願望は満たされたが、忽ち自分の生活の単調さに再び落ち着かなくなると又一つ考えるのだった。夜中に人々が眠ると都市は静かだろう。夜中に訪れよう。

なので時間を見計らってポポポは大都市へ直ぐに移動し、通りを徘徊し始めた。誰もが寝入っていた。舗道をガタガタ進み行く荷馬車はなかった;叫び出して呼びかける忙しい人の集まりはなかった。警官でさえも狡賢く微睡んでいてあちこち彷徨く盗人は見かけなかった。

静寂に神経を宥められたので、ポポポは楽しく過ごし始めた。多くの家に入ると好奇心に満ちてそれらの部屋を調べた。錠も掛け金も彼は気にならなかったし、暗闇でも日中のように良く見えるのだった。

暫くの後、都市の商売の部分へとぶら付いた。店は不死の者の中では知られなかったが、彼らはお金も交換も取引も必要としなかった;なのでポポポはそんなに多くの品物や商品が集められた新奇な光景に大変な興味を持った。

徘徊する間に婦人用帽子屋に入った、すると大型の硝子箱の内側に大量の女物の帽子があり、それぞれのどこかに鳥の剥製が付いているのを見て驚いた。本当、幾つかの最も手の込んだ帽子は二三羽の鳥を備えていた。

さてもヌークは鳥の格別の守護者で、心から愛している。そんなに多くの小さな友達が硝子箱に閉じ込められるのを見ては悩まされて深く悲しまされるポポポだったが、それらが婦人帽子職人によってわざわざ帽子に置かれたのだとは思いもしなかった。そこで彼は箱の扉の一つをするりと戻し、どんな鳥も良く知るヌークの口笛を小さくチュッチュッと吹いて呼んだ:

「さぁさ、友達よ;扉は開いた――飛び出せ!」

ポポポは鳥が剥製だと知らなかった;しかし剥製か否か、あらゆる鳥はヌークの口笛と呼び声に従うと決まっている。なので帽子を離れ、箱から飛び出し、部屋を羽搏き回り始めるのだった。

「可哀想に!」といった心優しいヌーク、「もう一度、野森にいたいんだな」。

そうして彼は外の扉を開くと叫んだ:「出て行け! 飛び去れ、美しいから、ついに、もう一度、幸せになれ」

仰天した鳥たちは一斉に従った、そして夜気へと舞い去ってからヌークは扉を閉めると通り中を徘徊し続けた。

明け方まで多くの興味ある光景を見たが、都市を終える前に夜が明けて、翌夕、数時間、早く来ようと決めた。

暗くなるや否や、次の日、彼は都市に又来ると婦人帽子屋を通りかかって内側の明かりに気付いた。入ってから二人の女性を見付けたが、その一人は机に頭を傾けて酷く泣きじゃくり、一方、もう一人は彼女を慰めることに励んでいた。

もちろんポポポは人身の目に映らなかった、なのでそばに立って彼女たちの会話を聞いた。

「元気を出して、姉妹」といった一人、「貴方の可愛い鳥が全て盗まれてしまったとしても帽子自体は残されている」。

「嗚呼!」と叫んだもう一人、婦人帽子職人だったが「誰も部分的に飾り付けられた私の帽子を買わないよ、流行はそこに鳥を装うことなのだから。もはや私の製品が売れないとすれば私は完全に破産するしかない」。

そうして彼女が繰り返して泣きじゃくるとヌークはこっそり抜け出した、鳥への愛情から図らずも地球人の一人に悪いことをして不幸にしてしまったと認めて少し恥ずかしいと感じながら。

こんな考えで彼は婦人帽子屋に夜遅く戻って来た、二人の女性が帰宅していたとき。哀れな女性が、もう一度、幸せになれるように何かの方法で帽子の鳥を置き換えたかった。そこで彼は探しては小さな灰色の鼠たちが一杯の近所の地下室を見付け出すまでだったが、それらは全く邪魔されずに暮らしており、隣の家へと壁を齧り通してはその食料貯蔵室から食料を盗みながら生計を立てていた。

「生き物が、丁度、いるんだ」と考えたポポポ、「女性の帽子に載せられる。毛皮が殆ど鳥の羽毛と同じくらい柔らかで、私には際立って綺麗で優美な動物だと思い当たる。その上、今は盗みの生活を送るし、女物の帽子にいつも留まらざるを得なければ道徳がもっと改善されるだろう」。

なので彼は全ての鼠を地下室から引き出して硝子箱の帽子に身を置く魔力を振るったが、そこで鳥たちの空けてしまった場所が占められて非常に相応しく――少なくともこの世のものではないヌークの目には見えた。走り回って帽子を離れるのを防ぐためにポポポはそれらを動かなくした、そしてさらに己の仕事に喜んだので、店に残って婦人帽子職人が見て今や如何に上品に飾り付けられた自分の帽子だろうと嬉しがるのを見届けようと決めた。

彼女は朝早く来、姉妹に付き添われたけど、もはやその顔は悲しい諦めの表情だった。店を掃いて埃を払って日除けを引いた後、彼女は硝子箱を開けて帽子を取り出した。

しかし非常に小さな灰色の鼠がリボンとレースの中に気持ち良く横たわっているのを見たとき、大きな悲鳴を上げると帽子を落としながら机の上へボーンと弾んだ。姉妹は悲鳴に恐ろしいものがあると気付きながら椅子に跳んで声を上げた:

「何なのか? おぅ、何なのか?」

「鼠!」と喘いだ婦人帽子職人、怯えて震えながら。

ポポポはこの騒動を見たとき、やっと鼠が人間には格別に嫌だと、しかも帽子に乗せる重大な過ちを犯してしまったと認めた;なので鼠たちにしか聞こえない号令の口笛を低く吹いた。

瞬時に全てが帽子から跳び、硝子箱の開いた扉から急行し、自分たちの地下室へ走り去った。しかしこの動作に婦人帽子職人と姉妹は恐がらされる余り、大きな悲鳴を叫び声を、数回、上げた後、床に背中から倒れて気を失うのだった。

ポポポは心優しいヌークだったが、こんな悲惨を全て見届けては自身の人間の振る舞いへの無知によって引き起こされたけど、一直線に家にいたいと願った、そのため、哀れな女性たちは自分たちでどうにか回復するままにされた。

だが、悲しい責任感を免れることはできなかった、そしてその問題を考えた後、彼は鳥たちを解き放つことで婦人帽子職人の不幸を引き起こしてしまったので、硝子箱に取り戻すことで後始末することができると決めた。彼は鳥たちを愛するし、再び奴隷の身分に追い遣るのは嫌だった;しかしそれが厄介事を終わらせる唯一の方法だと思われた。

なので彼は鳥たちを見付けに出発した。遠方へ飛んでしまっていたが、ポポポに一秒で到着することは何でもなかった、すると大きな栗の木の枝に留まって愉快に歌っている鳥たちを発見した。

ヌークを見たとき、鳥たちは叫んだ:

「ありがとう、ポポポ。自由にしてくれてありがとう」

「私に感謝するな」と返したヌーク、「というのも君たちを婦人帽子屋へ送り返しに来たためだ」。

「なぜ?」と強く訊ねた青懸巣、怒って、一方で他の鳥たちは歌を止めた。

「なぜなら女性が君たちを自分の財産と見做すし、君たちの喪失が彼女に不幸を多く引き起こしてしまうと分かったからだ」と答えたポポポ。

「しかし私たちが彼女の硝子箱でどんなに不幸だったかを思い起こしなよ」と真面目にいった駒鶇。「すると彼女の財産であることに関して君はヌークであって全ての鳥の生来の守護者だ;だから自然が私たちを自由に創造したと知るんだ。確かに悪どい人たちが私たちを撃ち殺して剥製にして婦人帽子職人に売った;しかし私たちが彼女の財産であるという考えは無意味だ!」

ポポポは戸惑った。

「たとえ私が君たちを自由のままにしても」、彼はいった、「悪どい人たちは君たちを再び撃ち殺そうとするし、君たちは以前よりも良くはならないだろう」。

「ふーん!」と声を上げた青懸巣、「私たちはもう撃ち殺されはしない、というのも私たちは剥製にされたためだ。実際、二人が、今朝、数発、撃ったが、弾丸は私たちの羽根をくしゃくしゃにして詰め物に埋まるだけだった。私たちは人をもう恐れないよ」。

「聞け!」といったポポポ、厳しく、というのも鳥たちが議論に勝つだろうと感じたためだった;哀れな婦人帽子職人の商売は破産するだろう、かりに私が君たちを彼女の店に返さなければ。帽子をちゃんと飾り付けるために必要だと思われる。被り物に鳥を装うのが女性の流行なんだ。なので哀れな婦人帽子職人の製品はレースとリボンで美しくされるけれども君たちが置かれなければ価値がない」。

「流行は」といった椋鳥擬、重々しく、「人によって作られる。何の法律があって鳥かヌークの間で私たちを流行の奴隷にするべく命じるのか?」。 

「私たちに流行と何の関係があるか、とにかく?」と絶んだ胸赤鶸。「もしも女物の帽子に置かれるヌークで装うことが流行ならば君はそこにいて満足するだろうか? 私に答えろ、ポポポ!」。

さてやポポポは望みを絶たれた。鳥たちを婦人帽子職人へ送り返す悪いことはできなかったし、彼女が鳥たちの喪失で苦しむのも望まなかった。なので何ができるのかを考えようと家に帰った。

多くの熟慮の末、ヌークの王に相談することに決めると陛下へ直ぐに赴いてから物語の全体を彼に話した。

王様は眉を顰めた。

「これは地球人に干渉した愚かしさを教えるに違いない」、彼はいった。「しかし其方が総じてこの厄介事を引き起こしたのだから救済することが其方の義務である。我々の鳥が奴隷にされてはならない、そのことは確かだ;よって其方は例の流行を変えさせなくてはならない、つまり帽子に鳥を装うことはもはや女性にとってお洒落ではなくなるんだ」。

「どうやってそんなことができますか?」と訊いたポポポ。

「いとも容易く。流行はしょっちゅう地球人の間で変わるが、彼らはどんな一つのことにも素早く飽きる。お洒落が何々と新聞や雑誌で読んだとき、彼らはその事柄を疑うことがなく、直ぐに流行の要求に従うだけだ。だから其方は新聞社や雑誌社を訪れて活字に魔法をかけるべきだ」。

「活字に魔法をかける!」とそっくり復唱したポポポ、驚いて。

「その通り。帽子に鳥を装うことはもはや流行ではないと読ませよ。それが哀れな婦人帽子職人に安堵を与えると同時に余りに惨く使われてしまう何千もの我々の最愛の鳥たちを自由にするだろう」

ポポポは賢い王様に感謝しながらその助言に従った。

都市のあらゆる新聞と雑誌の事務所にヌークが訪れた、そしてさらに他の都市へ向かってはその土地に「新しい流行の特徴」の頁がない出版物がなくなるまでだった。時にポポポは活字に魔法かけた、印刷された字体を読んだ誰もがヌークが彼らに願うことだけを知るように。時に彼は忙しい編集者を訪ねて自分が彼らに欲することを正確に書くまで彼らの脳を惑わせた。人身は滅多に自らが如何に大きく妖精やヌークやリルによって影響されているかに気付かないが、彼らはしょっちゅう人々にそんな賢い小さな不死の者たちだけが抱き得たような考えを思い付かせる。

翌朝、哀れな婦人帽子職人が新聞に目を通したとき、「女性は今や帽子に鳥を装ってお洒落ではあり得ない、最新の流行はリボンとレースだけを必要とするのだから」と読んで大喜びした。

ポポポはこの後に己の見付け得たあらゆる婦人帽子屋を訪れて新たな命をぞんざいに使い物にならないと投げ遣られた鳥の剥製に与えることに大きな楽しみを見付けた。するとそれらは自分たちを救出した良いヌークへの感謝の歌の共に野山へ飛んだ。

時に狩人が銃を鳥に撃ってそれからなぜ当たらなかったかと思う。しかしこの物語を読んだら鳥はどこかの婦人帽子屋の剥製のもので、銃で殺されることはもちろんなかったに違いないと理解されるだろう。

関連:L・フランク・ボームの魔法かけられた活字の原文と注解

参考:アメリカお伽話10 『活字に魔法』 L・フランク・ボーム

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