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L・フランク・ボームの生きたマネキンの日本語訳

アメリカの作家、小説家で戯曲家のL・フランク・ボームの童話集アメリカのお伽噺(1901)の収録作品の生きたマネキンの日本語訳を行った。

作品の出典

The Dummy That Lived by L. Frank Baum/L・フランク・ボームの生きたマネキン
原文:Project Gutenberg作品集
朗読:LibriVoxマシュー・リース

※一部に誤字があってmoral eyes→mortal eyes、thn hold→the holeが正しいようだ。

両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。

日本語の訳文

マネキンが置かれた飾り窓を眺める女性

どんなお伽噺の国にも黄色いリルのタンコ=マンキー以上に悪戯好きの住民はいない。彼は、ある午後、町を飛び抜けた――人身の目には全く映らないが、自身ではあらゆるものが見えるので―― すると蝋婦人がフローマン氏の百貨店の大きな板硝子の飾り窓の後ろに立っているのに気付いた。

蝋婦人は美しい衣服で、その固まった左手に差し出されるのは言葉を記したカードだった:

   「お得な安売り!
   この今風の服装
   (パリからの輸入)
   20ドルを値下げし、
   たったの19.98ドル」

この印象的な告知は飾り窓の前に女性買い物客の人集りを呼んだが、彼女たちは蝋婦人をじろじろと注目しながら立っていた。

タンコ=マンキーは低く、いつも悪戯を意味するように喉を鳴らしながら少し自分に笑った。それから蝋婦人へ飛び寄るとその額に、二回、息を吹きかけた、

その瞬間からマネキンは生き始めたが、ぼんやりと驚かされる予期しない感覚だったゆえに外側の女性たちを愚かしく見詰めながらプラカードを前のままに見せるのだった。

リルは又笑って飛び去った。タンコ=マンキーのみ蝋婦人を確かに襲われた困難から助けるには残された者だろう:ところがこの巫山戯た小妖精は未経験の婦人を冷たく心ない世間に解き放って自活させることにお得な面白さを考えた。

幸い、マネキンが最初に自分は生きていると認めたのはおよそ六時だった、もはや彼女が新たな考えを纏めてどうするかを決める前に人が回って来て全ての窓の日除けを引き下げ、買い物客の好奇の眼差しからは閉め出されるのだった。

そのとき、店員と支払い係と売り場監督と現金取次係が帰宅した、清掃人と洗浄者が翌日のために床を手入れするべく残されたけど、店は夜に閉じられた。

蝋婦人の住んだ飾り窓は四方を囲まれ、小部屋みたく、小さなドアが飾り付け人の出入り用に横に一つあるのだった。なので洗浄者はマネキンが一人になってからプラカードを床に下ろして絹物の山の上に座りながら自分は誰なのか、どこにいるのか、偶さかどうやって生きられたのかと考えているのは気付くことがなかった。

つまりは親愛な読者よ、彼女の大きさや華やかな服装にも拘わらず、ピンクの頬やふわふわの黄色の髪にも拘わらず、この淑女はとても若い――生まれた赤ちゃんよりも半時間しか現実には年を取ってないと良く考えるべきなのだ。彼女が世間を知るのは飾り窓に面した忙しい通りに確保された一目に含まれるだけだった;彼女が人々を知るのは窓硝子の反対側の自分の前に立って自分の服装の出来具合を酷評するか今風の装いについて述べる女性たちの集団の活動に置かれるだけだった。

なので考えるには事足りなくてその考えは幾分かゆっくりと動いた;だが、彼女が決めた一つのこと、もはやそれは飾り窓に残されず、そしてさほど立派でも自分のように身形が良さそうでもない女性たちから無礼に見詰められないことだった。

彼女がこうした重要な結論に達したときには真夜中を過ぎていた;ところが店の中に微かな光が燃えていたので、自分の飾り窓のドアから抜け出すと長い通路を歩いて行き、時折、立ち止まってあらゆる方に対面する美しい服の数々を大変な好奇心で眺めるのだった。

飾り付けられた帽子で一杯の硝子箱に来たとき、彼女は通りの女性たちの頭に同様の産物を見ていたことを思い出した。そこで自分の好みに適った一つを選ぶとそれを自分の黄色い頭髪の上に慎重に置いた。私はどんな本能から彼女が近くの鏡を帽子は真っ直ぐかどうかを確かめようとちらりと見たのかを説明しようとはしないが、これは確かに行われた。彼女の服装ととても良く調和していたが、可哀想なことに色が合致しているとしっかり味うには若過ぎるのだった。

手袋のカウンターに着いたとき、彼女は手袋も自分が見ていた女性たちによって着けられていたことを思い出した。箱から一組を取るとそれらを自分の固まった、蝋塗りの指に合わそうと試した;しかし手袋は小さ過ぎて縫い目が破けた。それから彼女はもう一組、さらに幾つか他のものも試した;しかし最終的に黄緑のキッド手袋の一組で手を覆うことに成功するまでには数時間が過ぎるのだった。

次、彼女は日傘を店の後部の大きな様々な品物の取り揃えから選んだ。それが何のために使われるかは少しも考え付かなかった;しかし他の淑女たちがそんなものを携えていたので、彼女も一つ持つのだった。

再び鏡でじろじろと自分を顧みたとき、彼女は自分の衣装が今や万全だと決めた。そしてその未経験の目に自分と窓の外側に立っていた女性たちとの間に感知できる違いはなかった。そうすると店を離れようとしたが、あらゆるドアには鍵が固く締められていると気付くのだった。

蝋婦人は急がなかった。忍耐強さをその前の存在から受け継いでいた。生きて美しい服を着ることは正に現在の自分の十分な楽しみだった。なので彼女は腰掛けに座り込んで夜明けまで静かに待った。

玄関番がドアを朝に解錠したとき、蝋婦人は彼を抜き去ると固くも堂々とした大股で通りへ歩いて行った。憐れな輩は良く知られた蝋婦人が飾り窓を離れて店から進み去る光景に完膚なくびっくり仰天した余り、ドタッと転倒しながら戸口の踏み段に尺骨の端を打つけて失神を免れるばかりだった。正気に返ったとき、彼女は角を曲がって消え去ってしまっていた。

蝋婦人は命を宿してから自分の明白な務めは世間と交わりながら他の皆がやるようにやることだと未熟な精神で論断したのだった。自分と肉と血の人々との間にどんな違いがあるのかは認めることができなかった;自分が今までに生きた最初のマネキンだとも自分がタンコ=マンキーの悪戯への愛から独特な経験を負わされているとも知らなかった。なので無知から正当に権利を与えられない自分自身に信頼を置くのだった。

まだ日の早いうちに彼女が出会った幾人かは通りを急いで行っていた。彼らの多くはレストランや飲食店に向かった、すると見習いながら彼女も一つの店に入って軽食用カウンターの前の腰掛けに座った。

「珈琲とロールパン!」といった隣の腰掛けの女店員。

「珈琲とロールパン!」と繰り返したマネキン、すると直ぐにウェイターがそれらを彼女の前に置いた。もちろん彼女に食欲はなかった、その体質は大半が木だけれども食べ物を要しなかった;ところが女店員を注視しながら彼女が珈琲を口へ入れて飲んだのが分かった。よって蝋婦人は同様にした、すると次の瞬間は熱い液体が彼女の木製の肋から漏れ出すという感じの驚きだった。珈琲はその蝋の唇を水膨れにもしたし、余りに不快な経験で、彼女はウェイターの「20セントですよ、おばさん」の要求にも注意を払わず、立ち上がってレストランを去った。彼から詐取するつもりはなかったものの憐れな生き物に「20セントですよ、おばさん」が何を意味するかは考え付かなかった。

彼女は出て来たとき、飾り窓の飾り付け人とフローマンの店で会った。その人は相当な近視ながら婦人の姿に何か見覚えがあって自分の帽子を丁寧に上げた。蝋婦人も自分の帽子を上げた、そうするのが適切なことだと考えたので、するとその人は怖くなった顔で急ぎ去った。

それから女性が彼女の腕に触れていった:

「恐れ入りますが、奥様;正札が服の背中に付いております」

「はい、そうです」と返した蝋婦人、固まって;「元は20ドルでしたが、19.8ドルに下げられました」

女性はそんな無関心に驚いたようで、歩いて行った。幾つかの四輪馬車が歩道の端に立っており、躊躇うマネキンに気付いたとき、運転手が彼女に近付いて自分の帽子に触れた。

「辻馬車ですか、奥様?」と訊いた御者。

「いいえ」と返した彼女、彼を誤解しながら;「蝋です」

「おぅ!」、彼は声を上げると彼女を不思議そうに見送った。

「朝刊が来たよ!」と叫んだ新聞売り子。

「私の、貴方がいったのは?」、彼女は訊いた。

「そうさ! 『年代記』、『質問者』、『共和国』、『至急報』! どれにするの?」

「何のためのものですか?」と尋ねた蝋婦人、単純に。

「まあ、読むため、もちろん。どれもニュースなんだ」

彼女は頭を振りながら新聞を一瞥した。

「どれも小さな点が付けられて混ぜ合わされたようです」、彼女はいった。「私には読めそうにありません」。

「今まで学校には?」と訊いた売り子、興味が湧いたので。

「いいえ;学校とは何ですか?」、彼女は尋ねた。

売り子は彼女に憤慨した目を向けた。

「いやさ!」、彼は叫んだ、「全くのマネキンだな、あんたって奴は!」、するともっと有望なお客を探そうと走り去った。

「いうものかな」と思った憐れな婦人。「私は現実に全ての他人とどこかしら違うのか? 彼らと同じみたいに思える、確かに;つまり彼らみたいに行動しようとする;けどもあの売り子は私をマネキンと呼んだし、奇異に行動すると思うようだった」。

この考えに彼女は少し心配になったが、角へ歩いて行った、そこで市街電車が止まって何人かを乗せていると気付いた。蝋婦人は尚も他人のようにしようと決めて電車に乗り込むと片隅に静かに腰を下ろした。

幾区間の乗車の後、車掌が彼女に近付くといった;

「運賃、お願いします!」

「それは何ですか?」、何気なく、彼女は尋ねた。

「貴方の運賃ですよ!」といった人、やきもきと。

彼女は彼を愚かしく見詰めた、彼のいうことを考え倦ねながら。

「さぁ、さぁ!」と唸った車掌、「支払うか降りるかにして!」

尚も彼女は理解できなかった、すると彼は彼女の腕をぞんざいに掴んで持ち上げて立たせた。ところが手が硬質な木で作られた相手の腕と接触したとき、その輩は驚きで一杯になった。彼は屈み込んで彼女の顔を覗き込んだ、するとそれは肉ではなしに蝋だと分かったので、恐れの叫び声を上げてまるで幽霊を見たように走りながら電車から跳び出た。

これに他の乗客たちも叫んで電車から跳ね出た、衝突を恐れながら;そして運転士は何か問題があると気付いてから人々に追従した。蝋婦人は他人が走るのを見てから電車から全員の最後に跳び出た、すると対向して全速力で来る又別の電車の前に踏み出した。

恐れの叫び声と警告する声が全ての側から聞こえたが、彼女は危険を理解する前に打ち倒されて、半区、引き摺られた。

電車が停止してから警察官が到着すると彼女を車輪の下から引き出した。彼女の服装は破れて汚れていた。その左耳は完全に失われており、その頭の左側は崩壊させられていた;ところが彼女は素早く急に立ち上がると自分の帽子を願い出た。これを紳士が既に取り上げていた、そして警察官がそれを彼女へ手渡しながら彼女の頭の大きな穴と露出した空洞の箇所に気付いたとき、憐れな輩は膝が本当にガタガタ打つかり合うくらい脅かされてぶるぶる震えた。

「おや――おや、奥様、お亡くなりですよ!」、彼は喘いだ。

「お亡くなりとは何を意味するのですか?」と訊いた蝋婦人。

警察官は戦きながら己の額の汗を拭った。

「貴方がそうです!」、呻き声で警察官は答えた。

集まった人集りが婦人を不思議そうに眺めていた、すると中年紳士が今や声を上げた:

「おや、蝋だぞ!」

「蝋だ」と復唱した警察官。

「確かに。飾り窓に置かれたあれらマネキンの一つだ」と宣した中年紳士。

集まった人々は叫び出した:「正しいな!」、「そうなんだよ!」、「マネキンだ!」

「なのか?」と尋ねた警察官、厳しく。

蝋婦人は返さなかった。自分が厄介事に巻き込まれるのが不安になり始めた、そして見詰める人々には辱しめられるようだった。

突然、靴磨きが発言によって問題を解決しようと試みた:「皆々、全て間違っている! マネキンが話せるか? マネキンが歩けるか? マネキンが生きられるか?」

「しっー!」と呟いた警察官。「ここを見てくれ!」、つまり彼は婦人の頭の穴を指した。新聞売り子は見ると青褪めながら戦慄から免れようと口笛を吹いた。

二人目の警察官が今や着くと簡単な協議の末に不可解な生き物を本署へ連れて行くことが決められた。なので彼らは急用車を呼んだ、そして傷付いた蝋婦人は内側に助けられながら警察署へ駆られた。そこで警察官は彼女を独房に施錠すると急いでマグ警視に自分たちの驚くべき語を伝えた。

マグ警視は貧しい朝食を取ったばかりで、良い気分ではなかった;なので彼ら自身が分別ある者にそんなお伽噺を持って来るマネキンだといいながら不運な警察官たちに吠えて怒鳴った。彼らが飲酒の罪を犯したのだと仄めかしもした。

警察官たちは説明しようと努めたが、マグ警視は聞かないのだった;そして彼らが論争する間に走り込んだのがフローマン氏、百貨店の持ち主だった。

「大勢の刑事を要する、直ぐ、警視!」、彼は叫んだ。

「何のためです?」と強く訊ねたマグ。

「蝋婦人の一つが私の店から逃げて19.98ドルの服装と4.23ドルの帽子と2.19ドルの日傘と76セントの一組の手袋で出て行った、もはや捕まえて欲しいんだ!」

彼が一息を挟んだ間、警視は彼を驚異で睨んだ。

「皆が同時に狂っているのですか?」、皮肉を込めて彼は尋ねた。「どうやって蝋人形が逃亡できましたか?」。

「分からない;しかしやった。私の玄関番がドアを、今朝、開けたとき、走り出るのを見た」

「なぜ止めなかったのですか?」と訊いたマグ。

「脅かされ過ぎた。さてや私の財産は盗まれてしまった、台下、もはや捕まえて欲しいんだ!」と宣した店主。

警視は、ちょっとの間、考えた。

「告訴することはできないでしょう」、彼はいった。「つまりはマネキンの盗みに対する法律がありません」。

フローマン氏は酷く溜め息を吐いた。

「私は失うしかないか、あの19.98ドルの服装と4.23ドルの帽子と――」

「そうでもないです」と遮ったマグ警視。「この町の警察はいつでも私たちの尊重される市民を守るために迅速に行動しています。私たちは既に蝋婦人を捕まえていますし、十六番房に拘置されてます。貴方はそこに行って自分の財産を取り戻して構いません、もしもお望みならば、ですが盗みで告訴する前にはマネキンに適用される法律を調べ出すのが宜しいです」。

「望みの全ては」といったフローマン氏、「あの19.98ドルの服装と――」。

「ご同行を!」と遮った警察官。「独房へお連れします」。

しかし十六番に入ったとき、彼らはマネキンが生気なく床に俯伏せに横たわるのを見付けた。その蝋は割れて水膨れ、その頭は酷く傷付き、その服装は埃塗れに汚れて泥だらけだった。というのも悪戯好きのタンコ=マンキーが飛び寄って、もう一度、憐れな蝋婦人へ息を吹きかけてしまったのだったし、そんな瞬時に儚い命が尽きたためだった。

「正に思った通りだ」といったマグ警視、椅子に満足げに背中を凭せながら。「私はそんなのはいんちきだと、始終、分かっていた。全世界が狂い出すかのように時に思われるんだ、正気に戻すべき誰か冷静な人が周りにいなければ。マネキンは木と蝋で、それがそこにある全てだ」。

「それが常態かも知れない」と自分に囁いた警察官、「ただしこの一つは生きるようなマネキンだった!」。

参考:アメリカお伽話09 『生きていてマネキン』 L・フランク・ボーム

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