インピッシュのHushを聴く 結城永人 - 2021年3月3日 (水) インピッシュのアルバムのHushが気に入り、どうしてかの感想を述べる。 真夜中の静けさのドラムンベースの美しさ Hush by Impish / Occulti Music 名前 Impish アルバム Hush 曲目 Can't FeelThat's RightLet Me (feat Julia Marks)Solid (Zero T remix)Shadows (feat Kate Wild)Changing ColoursHushSolid (feat Julia Marks) レーベル Occulti Music 国 ロシア 発表年 2017 ジャンル ドラムンベース サブスクリプション Spotifyほか ダウンロード Juno Downloadほか CD OCCLT010 LP OCCLT010LP 複雑なビートを駆使して、または清澄なリズムを鏤刻して静けさを織り上げて行く。真夜中を思い起こさせる。青春期に午前一時か二時頃に人気のない道路を車で走ったりするのが妙に惹かれたけれども何かが起こりそうなまま、結局は何も起こらず、ただ安らぎだけが過ぎて行くような感じがした。振り返ると本当に美しさが透き通っている。正しく初めての経験で、気付かせる音楽に驚くけど、長らくも自分から探りはしない世界だった。 苦もなく転がる『Can't Feel』や『Shadows』のような曲から『Changing Colours』やLPの表題曲のもっと内省的な感じの方へと共通の題目がアルバム全体をはっきりと貫く:完璧への狙い、真の職人芸、ビートとブレイクを音楽的な要素と高品質なまでに結び付ける気迫。 原文 From effortlessly rolling tracks such as "Can't Feel" and "Shadows" towards more introspective vibes on "Changing Colours" and the LP's title track a common thread runs clearly throughout the album: the aim for perfection, true craftmanship and a drive to combine to high-quality beats and breaks with musical elements. Impish — Hush [Album]|Occulti Music(訳出)|Occulti ドラムンベースだけれどもビートへの拘泥りが物凄く強いし、そうした意味では非常に面白い。普通に聴けるのは殆どないみたいに変わり種のリズムを多く味わえる。しかし飽くまでも雰囲気は真夜中を駆け抜けるドラムンベースの静けさをそれこそジャケットの煙のように奥深くから立ち上らせながら美しく湛えた仕上がりに他ならない。骨太というか、一本気というか、ドラムンベースの醍醐味の高速ビート、または特有の軽妙なリズムを研ぎ澄ました魅力を受け取る。 曲目①Can't Feel(4:34) ビートは激しいけれども曲自体は大きく盛り上がらないというか、強いヴォーカルと相俟って大きく盛り上がるにしてはビートに物凄く抑制が利いているのが他でもなく、独創的な魅力だと感じる。 曲目②That's Right(4:54) パーカッションの使い方がとてもユニークで、複雑なリズムを作り上げるけど、曲想は雨漏りした家の中でひっそり過ごすような日本のわびさびにさえも通じるくらい趣きがある。 曲目③Let Me (feat. Julia Marks)(3:53) セクシーな声が徐々に変化して詞を伴いながら意味を帯びて最終的に叫びにまで到達する。間奏で超高音の裏声も挿入されたり、焦点が当てられた声の聞き応えが正しく満点だ。 曲目④Solid (Zero T remix)(4:54) ゼロ・Tのリミックスだけれどもアルバムのインピッシュならでの夜の雰囲気にぴったりで驚かされる。深い響きのビートと心の奥底から這い上がって来る呻きのようなヴォーカルが印象的だ。 曲目⑤Shadows (feat Kate Wild)(5:40) ファンキーなドラムとベースの感触を鋭く活かしたような格好良さに溢れている。ドラムンベースの王道の極みか。本当に素晴らしいけど、ただし雰囲気は飽くまでも暗いし、華々しさは余程と薄い。 曲目⑥Changing Colours(4:54) 物悲しい気分に寄り添う軽妙なリズム、または穏和なビートが本当にありそうでなかったかも知れない。ベースの息を潜めて見守るような控え目な素敵さが分かるほどに涙物の世界に触れる。 曲目⑦Hush(5:13) 妙趣の一曲、静寂を醸し出すばかりの穏やかなグルーヴの前半から一転して後半はヴォーカルが沈黙を破って妖艶に打ち出されるも決して長くは続かずに余韻だけを残して去って行く。 曲目⑧Solid (feat Julia Marks)(4:13) 叙情味が溢れる本当に良い曲だ、途中の吹き晒しの空き瓶が転がるような音が耳から離れない。どんなドラマよりも強烈なリアリティーがある。親身に惹かれる心は記憶力も研ぎ澄まされるせいだ。 総じて落ち着き払った曲調の中で、ビートやヴォーカルが劇的な様相を呈するのが出色の仕上がりだと感嘆する。ミスマッチの良さが取り分けドラムンベースを拘泥って追求する珍しいリズムの音作りの面白さによって触媒されるようにインピッシュならではの芸術性として伝わって来る。どの曲も音数は少ないけれども纏まりはしっかりいるし、音楽の緊密な味わいに堪らなく引き付けられる。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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