ランダムムーヴメントのLost On Purposeを聴く
ランダムムーヴメントのアルバムのLost On Purposeが気に入り、どうしてかの感想を述べる。
心地良さに際限なく触れるドラムンベース

- 名前
- Random Movement
- アルバム
- Lost On Purpose
- 曲目
- レーベル
- Flight Pattern Records
- 国
- アメリカ
- 発表年
- 2019
- ジャンル
- ドラムンベース
- サブスクリプション
- Spotifyほか
- ダウンロード
- Juno Downloadほか
- CD
- なし
- LP
- FLTPTRN001LP
ドラムンベースにしては比較的に落ち着いた印象を与える。ビートを前面に押し出すような激しい感じは少ない。テンポも普通に近くて全体的にバランスが取れているからむしろ音楽としての趣向が強いといえる。穏やかに心地良く聴ける作品が大半を占めている。個性がないわけではしかしない。本当にキラリと光るどころか輝きを煌々と放ち続けさえもするほどの芸術性に溢れた世界を知ることができる。
Lost On Purposeには二つの意味があると思われる。型に嵌まるか何か糞が起きた場合にわざとらしくして終わるのがその一つ、僕はキャンプ旅行で森に入って行って帰りたくなるまで外にいるだろう。最も感じるのは――自然に入って行って道に迷う。人生の虚無的な見方もある。僕は自分たちがやらなければならないことを追い求める考えに完全に我を忘れた人々がいると信じる。彼らはそのために必要なことを何でもやるだろう。すると僕は糞垂れは沢山だと考える。生活はそれを楽しむことと周りの人にそれを楽しませることが物凄く大きいんだ。つまりこんな目的を持つと考えるから多くの人々は外で糞下らないことをしている。
原文
Lost On Purpose is supposed to be a dual meaning. One of the things I end up doing artistically when I get into a rut, or some shit happens, I go into the woods on a camping trip and I’ll be out there until I want to come back. It’s the most freeing thing – to go out into nature and just get lost. I also have a nihilistic view on life. I believe there are people who are completely lost in their idea of pursuing what they’re meant to be. They’ll do anything it takes to get there. And I think a lot of that is bullshit. Life is a huge part about enjoying it and making people around you enjoy it. So many people are out there doing fucked-up shit because they think they have this purpose.
毎日の徒労や人生の虚無からの脱出を図る。聴くとアルバムの前半から後半にかけて挑みから癒しへの流れがありそうだけれども音楽の心地良さも増して来ると思う。突破口を作って桃源郷へ至る。だから芸術性が高いと称賛するべき音楽だろう。連れ去ってくれる、良い方へ。耐え難い世界を少しでも耐え易く、あるいは手放すのが惜しいほどの喜びに満ち溢れていると耳から心に刻み付ける。
曲目①Lost On Purpose(7:00)
星が瞬いたような短く高い音が望みの先を暗示している。夜の森を思わせるストリングやベースが雰囲気を高める。ドラムンベースの疾走感と共に如何にも出て行く感じがして印象深い。
曲目②Somewhere Back There(06:08)
スムーズなビートが満点の心地良さだ。良い風に吹かれながら過ごしているようだ。装飾的なピアノも本当に可愛らしい。余裕綽々と受け留めずにいない。
曲目③Bear With Me (& Anthony Kasper)(05:25)
これから何かが起きるはずの前触れを与えるけど、反復される曲想によって果てしない気分がやって来る。するともはや世界の広がりが素晴らしく面白く味わわれるんだ、終わるのも切ないほどに。
曲目④Alive(05:28)
不意に迷い込んだ楽園、どこからどう来たのかも分からず、只今を刻むばかりのリムショットこそ快い。好奇心で子供のように純真な眼差しを取り戻させられるまでに魅惑的だ、
曲目⑤Breaking The Mold(05:46)
低音から強調されたリズム、夢の中で暗闇深く落ちて行くようだ。想像するだけで汗に塗れるほどのスリリングな曲調には日々の悲しみこそ打ち消されるに相応しいと感じる。厳めしくも有り難い。
曲目⑥Living In A Dream (& T.R.A.C.)(04:42)
ドラムンベースにしてはテンポが相当に遅くてしかもポップなリズムに包まれている。またはラップと組んだヒップホップの趣きが特色を添える。翻っては粘るリズムや深いビートが興味深いドラムンベースをを生み出しているようだ。
曲目⑦Meta-data-tation(05:53)
心を奪われる今此処、さながら舞い散る桜の花びらでも彷彿させる極め付けの喜びの美しさを齎す。存在の錨を下ろして水に浮かび留まる安らぎの彼方の音楽、正しく愉快としか呼べるはずもない。
曲目⑧Impetus(05:19)
物思いに耽らせる、何をどうするのが良いかと、聴く人の心持ちによって感じ取られる世界、返って来る真実は大きく異なりそうだ。芸術的な振幅に秀でた意味深長な一曲だ。
曲目⑨Eat Your Words, Dear(04:57)
不思議な音楽で言葉に詰まる。黙って耳を傾けると現れては消える音の数々に愛しさを覚える。当たり前過ぎて普段は気にも留めないような恵みに胸打たれる。
曲目⑩The Lost Walk(05:16)
人生の分かれ道というか、重要な決断のときというか、切迫感が凄い。しかしたじろぐだけが全てではなく、むしろ充実感との繋がりを覚えるのが嬉しい。現実そのものが強力にも存在の場だ。
曲目⑪Feels Like It Used To(05:32)
フュージョン風ドラムンベースで、とてもとても和やかな気持ちにさせる。淀みなく流れるリズムにベースとフルートの自然な掛け合いが最高と受け取る他はない。気に入りのドラムンベースに決まりだ。
曲目⑫Confidence Bomb(05:17)
雨霰と降って来る喜びに打ちのめされて尚一層と盛り上がるみたいな面白さに溢れている。あるいは能天気な気持ち良さから明るい太陽が照り付ける南国的な海の景色がゆったり思い越されもする。
曲目⑬Categorized(07:09)
軽妙なボサノヴァのリズムながら不穏なイメージが広がって野生の凄まじさのような重圧感がある。互いに相反する気持ちが織り混ぜられて行くうちに又別の鍛えられた勇敢な境地に達するようだ。
曲目⑭Embers & Ashes (Dave Owen & Jaybee)(05:40)
ドラムンベースの疾走感を存分に引き出した素晴らしさに感服させられる。全てを置き去りにして風になるほどの音楽として聴きながら恍惚をはっきり受け取る。心の底から駆け抜ける放射状の喜びに包まれ捲る。
曲目⑮Taking A County(03:26)
思いがけない幸福に満ちた神秘的な音作りが無二の芸術で、よもや煙霧の漂い、硝子の騒めき、小鳥の囀りなど、人が至り付き得る一つの陶酔の極致という音楽の桃源郷を認める。
どの曲も胸に染みる良さがある。押し並べて渋好みの仕上がりで、あらゆる状況で落ち着いて聴けるようだ。ドラムンベースと余り意識せず、音楽としてのバランスに優れるけど、およそ絵画的な表現で、諸々の楽想が情景として目に浮かび易い。鮮やかに訪れる心地良さは稀有だ。
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