野球の投球の球種の一覧/直球と変化球とその他 結城永人 - 2022年5月8日 (日) 野球の投手の投球の球種は主に直球と変化球の二つに分類される。少しだけ曲がるものはおよそ直球に含まれる。そして球速がもっと下がって曲がるものが変化球と捉えられる。 アメリカでは直球と緩急差の大きなもの(緩い球)をチェンジアップとして変化球とも大別することが多い。そして球速が遅いという点で全ての変化球をチェンジアップに含める場合もあり得る。 日本ではチェンジアップは変化球の一種として捉えられるのが普通だ。 直球(五球種)変化球(七球種)その他(四球種) 本稿では日本の直球と変化球で大別した球種の見方からチェンジアップも変化球として取り上げる。そして全くの遅球などの直球や変化球と明らかに異なるものや選手が独自開発した特殊球をその他として加える。 直球(fastball) Aroldis Chapman by Keith Allison / CC BY-SA フォーシームツーシームカットボールシンカー/シンキングスプリット 直球はボールの軌道が基本的に変わらない球種で、ストレート、真っ直ぐとも呼ばれる。 アメリカでは直球全般を「速球」の意味のfastball(ファストボール)と表す。 直球でも少し曲がるものは癖球、アメリカでは「動く速球」の意味のmoving fastball(ムービングファストボール)と呼ばれるタイプに纏めれる。 フォーシーム(four-seam fastball) フォーシームは直球そのもので、ボールの進行方向に逆回転したときに一回毎に縫い目の流れ (シーム)が四つ現れ、最も曲がり難い。 直球を投げるつもりでも投手フォームや時々の調子によって曲がることがあり、フォームシームだから完全に真っ直ぐ進むとはかぎらない。 ボールの逆回転が強いと重力で下がり難いために打者から普通よりも浮き上がって見えることがある。 フォーシームの握り方や投げ方 一般的に横になった縫い目の流れに人差し指と中指を指一本くらい開けてその真下に親指を添えて握り、ボールに指先で逆回転をかけて投げる。 藤川球児のフォーシーム(スピードが速い)吉見一起のフォーシーム(コントロールが良い) ツーシーム(two-seam fastball) ツーシームは癖球の一種で、ボールの進行方向に逆回転(バックスピン)したときに一回毎に縫い目の流れ(シーム)が二つ現れ、フォーシームよりも揚力が減って伸び難く、変化し易い。 ツーシームの握り方や投げ方 一般的に縦に二つ並んだ縫い目の流れに人差し指と中指をそれぞれにかけてその真下に親指を添えて握り、ボールに指先で逆回転をかけて投げる。 黒田博樹のツーシーム(横に曲がる)山﨑康晃のツーシーム(縦に落ちる) カットボール(cut fastball/cutter) Mariano Rivera by Keith Allison / CC BY-SA カットボールは癖球の一種で、専ら投げる腕の反対方向へ少し変化する。 カットボールの握り方や投げ方 一般的にフォーシームの人差し指を中指へ寄せて握ってボールに投げる腕の反対側への横回転を増やして投げる。 川上憲伸のカットボール(フォーシーム寄り)武田一浩のカットボール(ツーシーム寄り) シンカー/シンキング(sinkerball/sinking fastball) シンカーは癖球の一種で、投げる腕の方向へ少し曲がり落ちる。 日本ではシンカーという呼び名は変化球に使われることが多い。アメリカでは直球のシンカーは「沈む速球」の意味のsinking fastball(シンキングファストボール)とも呼ばれる。変化球のシンカーと区別するために両方を併記した。 シンカー/シンキングの握り方や投げ方 一般的にツーシームの握りで、手首を使うなどして幾らかボールに順回転を付けて落ち易くして投げる。 攝津正のシンカー スプリット(split-finger fastball/splitter) スプリットは癖球の一種で、少し縦に落ちる。 スプリットの握り方や投げ方 一般的にツーシームから人差し指と中指で浅く挟んで握ってボールの逆回転を減らして投げる。 上原浩治のスプリット(横変化も巧み)岩隈久志のスプリット(緩急差も巧み) 変化球(breaking ball) Clayton Kershaw by Arturo Pardavila III / CC BY カーブシュート/ツーシームスライダーチェンジアップシンカー/スクリューパームボールフォーク 変化球はボールの軌道が変わる球種で、基本的に直球と比べて球速が明らかに遅いものがものが含まれる。 アメリカでは変化球全般をbreaking ball(ブレーキングボール)と表す。 なぜかは球道を変える、ボールの直進する流れを断ち切って方向を曲げるという意味で、そう呼ばれる。 カーブ(curveball) カーブは変化球の一種で、投げる腕の反対方向へ緩く曲がり落ちる。 通常のカーブの他に縦に大きく落ちるドロップ/縦割れカーブ、球速が非常に遅いスローカーブ、球速が落ち難いパワーカーブ、人差し指を立てて投げるナックルカーブなどのタイプが良く使われる。 カーブの握り方や投げ方 一般的に揃えた人差し指と中指の二本と親指をそれぞれにボールの縫い目にかけて握り、手首を捻ったり、指先で弾いたり、腕の振りで抜いたりして投げる腕の反対側への回転をかけながら投げる。 工藤公康のカーブ(通常のカーブ)金田正一のカーブ(ドロップ)今中慎二のカーブ(スローカーブ)五十嵐亮太のカーブ(ナックルカーブ) シュート/ツーシーム(shootball/two-seam fastball) シュートは変化球の一種で、投げる腕と同じ方向へ曲がる。 アメリカではシュートという球種はなくてツーシームと同じものといって良いけれども二十世紀末からメジャーリーグで活躍する日本人の投手が良く投げることが知られて、日本語のシュートの呼び名が、そのまま、使われる場合も出て来ている。 シュートの語源は十九世紀の終わりから二十世紀の初めにカーブの変形のような意味で使われていたらしい。アメリカでは廃れて使われなくなったものの日本では残っていてカーブの反対に泣ける腕の外側に曲がるものがシュートとして捉えられるようになった。 シュートの握り方や投げ方 一般的にツーシームの握りで、中指を人差し指に寄せるなど、ボールに投げる腕の外側への回転が付き易くして投げる。 西本聖のシュート(曲がりが大きい)平松政次のシュート(スピードが速い) スライダー(slider) スライダーは変化球の一種で、投げる腕の反対側へ曲がる。 カーブとの違いとしてスライダーは縦の変化が非常に少なくて横の変形も少なく、球速は大きく下がらないことが挙げられる。 通常のスライダーの他に縦に落ちるVスライダー、カーブのように斜めに落ちるスラーブなどが良く投げられる。 スラーブはカーブともスライダーとも区別される場合がある。 スライダーの握り方や投げ方 一般的にボールの進行方向に縫い目が一本になるワンシームの位置から揃えた人差し指と中指の二本と親指をそれぞれの縫い目に外側から寄せて握り、投げる腕の反対側への回転を付き易くして投げる。 北別府学のスライダー(通常のスライダー)内竜也のスライダー(Vスライダー)石井一久のスライダー(スラーブ)伊藤智仁のスライダー(スピードが速い)槙原寛己のスライダー(真横に曲がる) チェンジアップ(changeup) While I’m a #Boston guy through and through, I learned a lot from my time with the Mets|Pedro Martinez チェンジアップは変化球の一種で、速度が直球よりも遅い。打者のタイミングを外すために敢えて球速を下げたものだ。 アメリカでは縦の変化球が全般的にチェンジアップと呼ばれて変化球自体と良く区別される。チェンジアップは調子の変更(change of pace)と同義なので、場合によって変化球の大部分が比較的に遅い球速で、打者のタイミングを外すものとしてチェンジアップと呼ばれることもある。 日本ではチェンジアップは変化球の一種として良く捉えられるけど、または球種に関わらず、球速が遅いものが全てチェンジアップとかチェンジアップ効果を持つものなんて捉えられたりもする。 通常のチェンジアップの他に人差し指と親指を丸く付けたサークルチェンジ/OKチェンジや中指と薬指で挟んだバルカンチェンジや人差し指と中指で挟んだフォッシュなどが良く投げられる。 縦に落ちるものは特にスプリットチェンジ(スプリットと球道が似ているため)と呼ばれる。 チェンジアップの握り方や投げ方 一般的に投球で最も力が入り易い人差し指を避けて中指や薬指をボールの中心に寄せるなどして握り、直球と見せるために同じ仕方で投げる。 井川慶のチェンジアップ(サークルチェンジ)前田健太のチェンジアップ(スプリットチェンジ) シンカー/スクリュー(sinkerball/screwball) シンカー/スクリューは変化球の一種で、投げる腕の方向へ曲がり落ちる。 日本ではシンカーは主に変化球として捉えられる。アメリカではシンカーは直球の一種で、球速の遅い変化球はスクリューと呼ばれる。 日本でも変化球のシンカーとスクリューは同じ意味で使われることが多いので、直球のシンカーと区別するために両方を併記した。 それぞれを敢えて区別する場合は球道が直球に近いものがシンカーで、カーブのように出だしが浮き上がるものをスクリューとしたり、右投手のときがシンカーで、左投手のときがスクリューとしたりすることがある。 シンカー/スクリューの握り方や投げ方 一般的にボールの中心に中指を置いて握り、腕の方向へ回転をかけるように投げる。 潮崎哲也のシンカー(サイドハンド)山田久志のシンカー(アンダーハンド)山本昌のスクリュー(スリークォーター) ※サイドハンドやアンダーハンドの投法だと球道自体が浮き上がっているからシンカーでもスクリューに見え易い。 パームボール(palmball) パームは変化球の一種で、非常に遅い球速で緩やかに落ちる。 パームボールの握り方や投げ方 一般的に掌でボールを包み込んで人差し指と中指を立てて握り、ボールを押し出すように投げる。 浅尾拓也のパームボール フォーク(forkball) フォークは変化球の一種で、縦に落ちる。 フォークの握り方や投げ方 一般的に人差し指と中指でボールを挟んで握り、逆回転を減らして投げる。 佐々木主浩のフォーク(曲がりが大きい)斉藤和巳のフォーク(コントロールが良い)牛島和彦のフォーク(バランスに優れる) その他(other) Donald Zackary "Zack" Greinke by Keith Allison / CC BY-SA スローボールナックルボールヨシボールシェイク 全くの遅球や選手の独自開発の特殊球を取り上げる。 スローボール(slowball) スローボールは遅球そのもので、大抵、80キロ前後で投げられる。 アメリカでは遅投(eephus pitch)と主に呼ばれる。 試合では不意討ちを狙って稀に使われることがあり、山形の軌道だと打者は慣れなくてバットを振っても当たらなかったりする。 スローボールの握り方や投げ方 どんな握りでも構わず、何はなくとも力を抜いて投げる。 ナックルボール(knuckleball) R.A. Dickey by apardavila / CC BY-SA ナックルボールは遅球の一種で、不規則に揺れながら落ちる。 日本では変化球の一種として捉えられることも多い。 ボールの回転が殆どないに等しく、僅かに移動する縫い目の空気抵抗や球場の気流などによって簡単に予測できない動きをするために球速が遅くても打つのは非常に難しく、魔球とも呼ばれる。 ナックルの握り方や投げ方 一般的にボールに人差し指と中指と薬指を曲げてそれぞれの指先を立てて握り、極力、回転を減らすように押し出して投げる。 ナックルボールを使える投手をナックルボーラー、試合でナックルボールばかり使う投手をフルタイムナックルボーラーと呼ぶ。 前田幸長のナックルボール ヨシボール(yoshiball) 佐藤義則 が開発した特殊球で、縦に落ちる。 指が短くてフォークを上手く投げられなくても同じような投球が可能になるのが一つの利点だ。 ヨシボールの握り方や投げ方 カーブの握りで、ボールの出だしが浮き上がらないように手を前に出して投げる。 佐藤義則のヨシボール シェイク(shake) 小宮山悟が開発した特殊球で、不規則に揺れながら落ちる。 指を曲げてナックルボールを上手く投げられなくても同じような投球が可能になるのが一つの利点だ。 シェイクの握り方や投げ方 人差し指と中指でボールを挟んで握り、極力、回転を減らすように押し出して投げる。 野球の投手の球種は他にもあるし、今度も続々と新しく生み出されるだろうけれども現時点で広く使われるか偶にでも強い印象を残したものを集めている。 参考サイト球種PitchPitch TypesWhat is the difference between pitches? And why are there so many? コメント 新しい投稿 前の投稿
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