サックスのソプラノとアルトとテナーとバリトンの四種類の特徴 結城永人 - 2022年9月8日 (木) サックス/サキソフォンは1840年代の始め頃に楽器製作者のアドルフ・サックスによって発明された。主に真鍮製で、材質は金属の管楽器だけれどもリードを振動させて音を出すために分類上は木管楽器に含まれる。なので木管楽器の運動性能(音の進退)の高さと金管楽器のダイナミックレンジ(音の強弱)の広さを併せ持つんだ。そして移調楽器として記譜とは異なる高さの音を発する。さらに口元から先端まで殆ど一定の割合で太くなっているために演奏で整数倍の倍音を出すことができる開管楽器にも含まれる。 Libertango by Piazzolla performed by Marici Saxes - Saxophone Quartet|Marici Saxes 二百年近く、色んな種類のサックスが作られて来たけれども、現在、店で入手し易いものから最も良く使われるのはアルトサックスとテナーサックスの二種類で、さらにソプラノサックスとバリトンサックスを加えた四種類だけが一般的に演奏されている。 ソプラノサックスの特徴アルトサックスの特徴テナーサックスの特徴バリトンサックスの特徴 どれも楽器としては同じで――演奏方法は微妙に異なる場合もある――基本的に音程が違うだけだ。音程が高い方から並べるとソプラノ、アルト、テナー、バリトンという順番になる。声でいうと最初の二つが女性の高い声と低い声、最後の二つが男性の高い声と低い声のような音程だ。それぞれの特徴を紹介する。 ソプラノサックスの特徴 A member of St. Gabriel's Celestial Brass Band plays a saxophone by Pax Ahimsa Gethen / CC BY-SA 調性はアルトよりも完全5度高い変ロ (B♭) 調で、実音は記譜より長2度低い。サクソフォーン四重奏においてはリーダー的存在になる。また、テナーと同じ調性であるため、ジャズなどではテナー奏者が持ち替えて演奏することが多い。略号ではS.Saxやssと表記される。 サクソフォーン|ウィキペディア ソプラノサックスの実音の音域 The real soprano saxophone range (C diatonic scale) by Anthony Gutiérrez / CC BY-SA ※変ロ長調の音階を表した伝統的なキー音域。 ソプラノはおよそ女性の高い声を中心とした音域に相当して概してC4からE6までの範囲になる。 ソプラノサックスの上の音域はソプラニッシモ、下の音域はテナーで、丁度、テナーサックスよりも一つ上のオクターヴに入る。 ソプラノサックスの演奏者と楽曲 Sidney Bechet by The Library of Congress / Public domain シドニー・ベシェ:Petite fleur(1952)などスティーヴ・レイシー:Reflections(1958)などジョージ・ハワード:Only Human(1993)などケニー・G:The Moment(1996)などブランフォード・マルサリス:That Blossom of Parting(2008)など ソプラノサックスは高い音域で、何よりも華やかな音色を印象的に感じる。 ソプラノサックスの見分け方 ソプラノサックスの写真Yamaha soprano saxophone, model YSS-875 EX by Yamaha Corporation / CC BY-SA 全体が真っ直ぐに近い形状になっていることが多くて他の三つのサックスがネックで略直角に曲がってベルの手前で折り返されていることが多いのと比べると違いは一目瞭然だ。 管楽器は周波数を下げて低い音を出すために長くなる傾向があり、他の三つのサックスよりも高音域のソプラノサックスは最も短いのが普通なんだ。 ソプラノサックスはむしろ他の真っ直ぐの形状の管楽器、クラリネットやオーボエやフルートなどと似ていて見分け難そうだ。 大体、金属の質感で縦に持って演奏されているとソプラノサックスの可能性か高い。 参考サイトソプラノ・サクソフォーン アルトサックスの特徴 Témoins du monde : haut Débit by TEDx Paris / CC BY 調性は変ホ (E♭) 調で、実音は記譜より長6度低い。標準的な音域はヘ音記号のレ♭ (D♭) から約2オクターヴ半上のラ♭(A♭)まで、ハイF#キーを備えるものはその半音上のラ(A)までを演奏することができる。略号ではA.Saxやasと表記される。 サクソフォーン|ウィキペディア アルトサックスの実音の音域 The real alto saxophone range (C diatonic scale) by Anthony Gutiérrez / CC BY-SA ※変ロ長調の音階を表した伝統的なキー音域 アルトはおよそ女性の低い声を中心とした音域に相当して概してF3からB5までの範囲になる。 アルトサックスの上の音域はソプラニーノ、下の音域はテナーで、丁度、バリトンサックスよりも一つ上のオクターヴに入る。 アルトサックスの演奏者と楽曲 Candy Dulfer by Andreas Lawen, Fotandi / CC BY-SA チャーリー・パーカー:Donna Lee(1947)などアート・ペッパー:You'd Be So Nice to Come Home To(1957)などポール・デズモンド:Take Five(1959)などキャノンボール・アダレイ:Know What I Mean?(1962)などキャンディ・ダルファー:Pick Up The Pieces(1993)など アルトサックスは稍高い音域で、何よりも艷やかな音色を印象的に感じる。 アルトサックスの見分け方 アルトサックスの写真Yamaha alto saxophone, model YAS-62 by Yamaha Corporation / CC BY-SA 全体的な形状はネックで略直角に曲がってベルの手前で折り返されていることが多い。テナーサックスとバリトンサックスと酷似していて見分けが付き辛い。 アルトサックスはテナーサックスとバリトンサックスよりも大きさが小さくて長さが短い。 管楽器は周波数を下げて低い音を出すために長くなる傾向があり、テナーサックスやバリトンサックスよりも高音域のアルトサックスは短いのが普通なんだ。 アルトサックスと大きさが近くて最も見分け辛いテナーサックスとの違いとしてネックの口元から付け根までの部分が余り湾曲せず、比較的に真っ直ぐになっていることが挙げられる。 参考サイトアルト・サクソフォーン テナーサックスの特徴 Saxophonist Pekka Mikkonen of Don Johnson Big Band by Tuomas Vitikainen / CC BY-SA 調性はアルトよりも完全4度低い変ロ (B♭) 調で実音は記譜より1オクターヴと長2度低い。標準的な音域はヘ音記号のラ♭(A♭)から約2オクターヴ半上のミ♭ (E♭) まで、ハイF#キーを備えるものはその半音上のミ (E) までを演奏することができる。略号ではT.Saxやtsと表記される。 サクソフォーン|ウィキペディア テナーサックスの実音の音域 The real tenor saxophone range (C diatonic scale) by Anthony Gutiérrez / CC BY-SA ※変ロ長調の音階を表した伝統的なキー音域。 テナー(テノール)はおよそ男性の高い声を中心とした音域に相当して概してC3からC5までの範囲になる。 テナーサックスの上の音域はソプラノ、下の音域はバスで、丁度、ソプラノサックスよりも一つ下のオクターヴに入る。 テナーサックスの演奏者と楽曲 Stan Getz by SAS Scandinavian Airlines / Public domain コールマン・ホーキンス:Body and Soul(1939)などジョン・コルトレーン:A Love Supreme(1965)などグローヴァー・ワシントン・ジュニア:Mister Magic(1974)などロニー・ロウズ:Always There(1975)などスタン・ゲッツ:Chega De Saudade(1976)など テナーサックスは稍低い音域で、何よりも勇ましい音色を印象的に感じる。 テナーサックスの見分け方 テナーサックスの写真Yamaha tenor saxophone, model YTS-62 by Yamaha Corporation / CC BY-SA 全体的な形状はネックで略直角に曲がってベルの手前で折り返されていることが多い。アルトサックスとバリトンサックスと酷似していて見分けが付き辛い。 テナーサックスはアルトサックスとバリトンサックスの中間の大きさや長さがある。 管楽器は周波数を下げて低い音を出すために長くなる傾向があり、アルトサックスとバリトンサックスに跨った音域のテナーサックスはそれらの中間の長さが普通なんだ。 テナーサックスと大きさが近くて最も見分け辛いアルトサックスとの違いとしてネックの口元から付け根までの部分が少し湾曲して比較的に真っ直ぐではないことが挙げられる。 参考サイトテナー・サクソフォーン バリトンサックスの特徴 Baritonsaxofoon Gentse Feesten 2019 Paul Hermans / CC BY-SA 調性は変ホ (E♭) 調で、実音は記譜より1オクターヴと長6度低く、アルトよりも1オクターヴ低い。略号ではB.Saxやbsと表記される。 サクソフォーン|ウィキペディア バリトンサックスの実音の音域 The real baritone saxophone range (C diatonic scale) by Anthony Gutiérrez / CC BY-SA ※変ロ長調の音階を表した伝統的なキー音域。 バリトンはおよそ男性の低い声を中心とした音域に相当して概してG2からG4までの範囲になる。 バリトンサックスの上の音域はアルト、下の音域はコントラバスで、丁度、アルトサックスよりも一つ下のオクターヴに入る。 バリトンサックスの演奏者と楽曲 Gerry Mulligan by William P. Gottlieb / Public domain ボブ・ゴードン:Meet Mr. Gordon(1954)などジェリー・マリガン:Night Lights(1963)などサヒブ・シハブ:Bohemia After Dark(1965)などペッパー・アダムス:Jitterbug Waltz(1974)などニック・ブリグノラ:Poinicana(1997)など バリトンサックスは低い音域で、何よりも大らかな音色を印象的に感じる。 バリトンサックスの見分け方 バリトンサックスの写真Conn 12M Baritone Saxophone (1956) Museum of Making Music / CC BY-SA 全体的な形状はネックで略直角に曲がって根元で巻いてベルの手前で折り返されている。アルトサックスとテナーサックスと雰囲気が似ているけれどもネックの根元の卷きはバリトンサックスだけだ。 管楽器は周波数を下げて低い音を出すために長くなる傾向があり、他の三つのサックスよりも低音域のバリトンサックスは最も長いのが普通なんだ。 バリトンサックスはとても長くてネックの根元に巻きがあるけど、さらにベルの折り返しも、半分以上、あってネックに近付くから似ているアルトサックスとテナーサックスと見分けるのは案外と易しいかも知れない。 参考サイトバリトン・サクソフォーン サックスは人気の四種類にかぎらず、どれでもキー配置と運指が殆ど同じなので、一種類だけではなく、何種類か持ち替えて演奏することはさほど難しくない。その他の細かい奏法や音楽的な感覚の違いがあって演奏者によって好んで使う得意なサックスの種類が決まっているとしても他の種類を使うことも珍しくはない。 参考サイトサックスの種類:ソプラノ〜バリトンまで コメント 新しい投稿 前の投稿
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