日本のボサノヴァの心惹かれる名曲集 結城永人 - 2022年11月6日 (日) 僕が好きな音楽のジャンルの一つにボサノヴァがあってブログでは世界的な名曲の一つのイパネマの娘について取り上げたことがあった。ブラジルのサンバから派生した軽妙なリズムと独特の緩やかなテンポの心地良さが堪らない。歌も声を張り上げず、物思いに耽ったような叙情味が溢れるものが多くて素晴らしく気に入らずにいない。 日本のボサノヴァが聴きたい Beach waves by erika m / Unsplash 日本でボサノヴァを世間的に聴くことが滅多になくて残念だけど、偶に良い曲を見付けると物凄く喜んでいた。しかし気付くと1970年代の中頃にちょっと流行したみたいで、普通に聴いても素敵だと心惹かれるボサノヴァの名曲が幾つか生まれていた。 Bossa Novaの特徴といえば、生誕地ブラジルでの勃興の経緯や初期の形態からして「都会的」「おしゃれ」「郷愁」「切なさ」、そして「柔らかいボーカル」「アコースティックギター」「ピアノ、オーケストラで味付け」というのが基本だと思うのですが、日本では「都会的」で「おしゃれ」という部分が少しばかり先鋭化しているようです。 ニッポン人、Bossa Novaに出会う。 - ニューミュージック編 -|MusicFor.Me 歌謡界で1970年代にフォークソングが台頭して来てさらにニューミュージック、そしてロックやポップスへ置き換わる流れがあった。その中にボサノヴァも少し含まれていたんだ。特徴的なのが都会的でお洒落な印象を与えるような曲作りが為されていた。 僕は風任せの人生みたいな自然体そのものの趣きがボサノヴァの音楽としての最大の魅力だと思う。聴いてみると確かに1970年代のものは総じて都会的でお洒落な印象が強いけれども良いのはやはり自然体の魅力のようなものは外さないように受け取る。 日本のボサノヴァの名曲が予想以上にあると知って探してみるとその他の時期にも、結構、あったので、折角というか、ボサノヴァが好きなかぎり、ブログに取り上げずにいられなくなった。 日本のボサノヴァの心惹かれる二十三選 日本のボサノヴァの心惹かれる名曲集/Fascinated masterpieces of Japanese bossa nova song|結城永人チャンネル 楽曲一覧ユキとヒデの白い波森山良子の雨あがりのサンバ江波杏子のさよならも云えなくて伊東ゆかりの愛するあした久美かおりの髪がゆれている長谷川きよしの透明なひとときを小林啓子の恋人中心世界荒井由実のあの日に帰りたいやまがたすみこの夏の光に丸山圭子のどうぞこのまま尾崎亜美のマイ・ピュア・レディ南佳孝のソバカスのある少女太田裕美の恋愛遊戯八神純子の思い出は美しすぎて山本達彦の夢より苦しく稲垣潤一のロング・バージョン石川セリのMartinet(雨燕)野田幹子のTravelin' HeartSpiritual Vibesのやわらかな風orange pekoeのHoneysucklecapsuleのweekend in my RoomCAYOのEstrela山下久美子&大澤誉志幸の夏の終わりの午後 ユキとヒデの白い波 歌手ユキとヒデ楽曲白い波作詞水木英二(ヒデ/出門英)作曲渡辺貞夫発表年1967ジャンルボサノヴァポリドール 日本のボサノヴァの曲としては最初期のものかも知れない。男女のデュエットで、海の白い波に託して愛を歌う。寄せては返す波の動きが如何にもボサノヴァらしく心地良いのに加えてハーモニーの美しさが素敵に際立っている。 森山良子の雨あがりのサンバ 歌手森山良子 楽曲雨あがりのサンバ作詞山上路夫作曲村井邦彦発表年1968ジャンルボサノヴァフィリップスレコード ほのぼのとした雰囲気で、雨上がりの喜び、誰かに会える期待感を歌って微笑ましい。飾り気がなくて正しくシンプルな構成が本当に良いと思う。ボサノヴァらしい自然体の魅力が凝縮されていて満点の心地良さが溢れている。 江波杏子のさよならも云えなくて 歌手江波杏子楽曲さよならも云えなくて作詞柴田幸一作曲柴田幸一発表年1968ジャンルボサノヴァ大映レコード ジャズ寄りの落ち着いたアレンジで、恋人同士の別れの瞬間の交錯する思いが切々と表現される。語りかけるような歌い方も相俟って歌の世界に速やかに引き込まれると共にボサノヴァの思いに触れる叙情味が良く出ていて見事だ。 伊東ゆかりの愛するあした 歌手伊東ゆかり楽曲愛するあした作詞安井かずみ作曲東海林修発表年1969ジャンルボサノヴァキングレコード 若い頃の何も振り返らずに生きる日々が悲しくも愛しく歌われるけれどもそんな容易に表現し難い気持ちの微妙なところにボサノヴァが上手く食い込んで来るようだ。たとえ考え込ませるとしても速やかに進んで重苦しくならないのも面白い。 久美かおりの髪がゆれている 歌手久美かおり楽曲髪がゆれている作詞山上路夫作曲村井邦彦発表年1969ジャンルボサノヴァコロムビアレコード 女性のボサノヴァにぴったりな大人しい声に男性の穏やかなコーラスが付いた美しさに不思議な没入感を受け取る。恋心が髪に託して歌われる夢心地、一言では揺れる想いが良く分かるし、ずっと聴いていたくなるくらい惹かれる。 長谷川きよしの透明なひとときを 歌手長谷川きよし楽曲透明なひとときを作詞長谷川きよし作曲長谷川きよし発表年1970ジャンルボサノヴァフィリップスレコード ギターと歌が中心の構成で、ボサノヴァの元来のスタイルを彷彿させる。リズムが立つのはサンバに近いけれども淡々と流れる雰囲気はボサノヴァに違いない。どうにもならない悲しみを癒してくれる酒に寄り添うような綺麗な仕上がりだ。 小林啓子の恋人中心世界 歌手小林啓子楽曲恋人中心世界作詞小平なほみ作曲中村八大発表年1970ジャンルボサノヴァキングレコード 恋の幸せ、貴方と巡り会えた奇跡を伝える。ボサノヴァの軽妙なリズムが如何にも相応しいけれどももう一つ振り返れば反対の思いもあって憂いを帯びるところまで踏まえて立体的に表現されている。今こそ全ての人生が感動を呼ぶ。 荒井由実のあの日にかえりたい 歌手荒井由実(松任谷由実)楽曲あの日にかえりたい作詞荒井由実作曲荒井由実発表年1975ジャンルニューミュージック/ボサノヴァExpress 多くの日本人がどこかで一度は耳にしたことがありそうな名曲中の名曲だけれどもニューミュージックの要素が強いかも知れない。しかし過去へ急き立つ気持ちを優しく落ち着かせる辺りにボサノヴァのエッセンスを受け取る。 やまがたすみこの夏の光に 歌手やまがたすみこ楽曲夏の光に作詞喜多条忠(喜多條忠)作曲山県すみ子(やまがたすみこ)発表年1976ジャンルボサノヴァBlow Up ボサノヴァと歌謡曲が上手く融合している。日本のボサノヴァは和ボッサ(和風ボサノヴァ)とも呼ばれるけれども固有の性質がある。緩めのテンポで心地良さを湛えながら詞をしっかり聞かせるところは脱トツではないか。完成度が極めて高いと驚く。 丸山圭子のどうぞこのまま 歌手丸山圭子楽曲どうぞこのまま作詞丸山圭子作曲丸山圭子発表年1976ジャンルボサノヴァキングレコード 日本で明らかにボサノヴァとして売れた非常に珍しい一曲だ。歌謡曲にボサノヴァのゆったりした味わいが的確に盛り込まれてアンニュイな魅力が増している。日本ならではのボサノヴァという特徴が良く出ていて本当に素晴らしいと思う。 尾崎亜美のマイ・ピュア・レディ 歌手尾崎亜美楽曲マイ・ピュア・レディ作詞尾崎亜美作曲尾崎亜美発表年1977ジャンルポップス/ボサノヴァExpress ポップスの要素が強くて曲全体に都会的でお洒落な感じが際立っている。しかし歌自体は淑やかさがあって恋に気持ちは浮立ちつつも燥ぎ過ぎないところにボサノヴァが活きているのではないか。自重する生き方の可愛さに通じる。 南佳孝のソバカスのある少女 歌手南佳孝楽曲ソバカスのある少女作詞松本隆作曲鈴木茂発表年1977ジャンルボサノヴァCBSソニー 昔を懐かしむと同時に我が身を振り返る歌だから人生を感じる。喜びと悲しみが綯交ぜられたような心境にやはりボサノヴァがしっくり来る。心の底から絞り出される声色があってたとえ小さくても胸を締め付けられる現実味を受け取る。 太田裕美の恋愛遊戯 歌手太田裕美楽曲恋愛遊戯作詞松本隆作曲筒美京平発表年1977ジャンルポップス/ボサノヴァCBSソニー ボサノヴァにポップスの要素が加味されて恋に弾む感じが可愛らしく表現されている。詞の内容は真剣そのもので、正反対の気分を伝えるのが逆に滑稽なんだ。つまり喧嘩するほど仲が良いとか気付いたら失われる世界に心を擽られる。 八神純子の思い出は美しすぎて 歌手八神純子楽曲思い出は美しすぎて作詞八神純子 作曲八神純子発表年1978ジャンルニューミュージック/ボサノヴァディスコメイトレコード 高くて伸びやかな歌声がいつも囁くようなボサノヴァと存分に合うのが凄い。ニューミュージックから捉え返されたか、新しい感触を与えてくれている。ボサノヴァとしては貴重な仕上がりだと思うし、一聴で忘れ難い衝撃を残す。 山本達彦の夢より苦しく 歌手山本達彦楽曲夢より苦しく作詞来生えつこ作曲山本達彦発表年1983ジャンルニューミュージック/ボサノヴァEastworld 付き合ってさえも擦れ違う二人の苦しさが已むなく続く感じがボサノヴァに重なる。その間に取り留めない心が醸し出されて来る。ボサノヴァのリズムの淀みない流れがそれ自体でビートとして摑まれているのは格好良いと感じる。 稲垣潤一のロング・バージョン 歌手稲垣潤一楽曲ロング・バージョン作詞湯川れい子作曲安部恭弘 発表年1983ジャンルボサノヴァExpress バラード調でじっくり聴かせる。メロディーも非常に美しくて引き付けられずにいない。抜け出せなくなる恋のドラマチックな魔力と計り知れないボサノヴァの音楽的な魅力が一つに合わさったようだ。本当に素晴らしく良いと称えたい。 石川セリのMartinet(雨燕) 歌手石川セリ楽曲Martinet(雨燕)作詞かしぶち哲郎作曲かしぶち哲郎発表年1984ジャンルボサノヴァフィリップスレコード ボサノヴァがニューミュージックを経て日本的に再構成されたようにお洒落感が満載で、都会的な部分は新たにフレンチポップの様相を呈している。もはやラウンジのような快適ささえも受け取る。感性を刺激する芸術的に仕上がりだ。 野田幹子のTravelin' Heart 歌手野田幹子楽曲Travelin' Heart作詞野田幹子作曲鈴木智文発表年1990ジャンルポップス/ボサノヴァCBSソニー ボサノヴァとポップスの理想的な出会いか。予想もしないような新しい音楽の世界を本当に魅惑的に表現している。何よりもビートが素晴らしい。只でさえも滑らかなリズムの推進力がさらに増して喜びが生き生きと伝わる。 Spiritual Vibesのやわらかな風 歌手Spiritual Vibes楽曲やわらかな風と作詞KiKu作曲Spiritual Vibes発表年1995ジャンルボサノヴァIdyllic Records 高く細い歌声が特徴的で、繊細な感受性を受け取る。そして間奏では胸の奥に静けさが広がって瞑想的な気分に誘われるのが比類ない。心地良いボサノヴァのリズムに乗ったまま、心が洗われるという。聴きながら癒される感じがとても良い。 orange pekoeのHoneysuckle 歌手orange pekoe楽曲Honeysuckle作詞ナガシマトモコ作曲藤本一馬発表年2002ジャンルボサノヴァNew World Records 華やかな印象に加えて歌声も強めなのはボサノヴァとして異色かも知れないけど、とにかくリズムの熱気が歌われる恋する思いと重なって正しく心躍る仕上がりだ。創造性の溢れる音楽になっていて自由度が非常に高い。 capsuleのweekend in my ROOM 歌手capsule(CAPSULE)楽曲weekend in my ROOM作詞中田ヤスカタ作曲中田ヤスカタ発表年2003ジャンルポップス/ボサノヴァcontemode 乗りが物凄く良くてビートが存分に活かされたボサノヴァで、抜群の心地良さを与える。歌声が低めの掠れ気味で、打って付けなんだ。どんなに跳ねても特有の静けさを保たせるし、アレンジの良さも含めて聴き惚れずにいられない。 CAYOのEstrela 歌手CAYO楽曲Estrela 作詞CAYO作曲CAYO発表年2005ジャンルボサノヴァVoicellar Records タイトルのEstrelaはボサノヴァの母国のブラジルのポルトガル語で星を意味する。大事な人と出会えた奇跡的な幸せを星に準えて歌う。素敵な歌に加えて伴奏と録音はブラジルのミュージシャンとスタジオらしくて出色の出来映えだ。 山下久美子&大沢誉志幸の夏の終わりの午後 歌手山下久美子&大澤誉志幸楽曲夏の終わりの午後作詞西田恵美作曲大沢誉志幸(大澤誉志幸)発表年2013ジャンルエレクトロ/ボサノヴァコンチネンタルスター 抑揚の少ないボサノヴァの曲調に相応しいハスキーな声の男女のデュエットが興味深い音楽を作り上げている。エレクトロの現実に聞くことはないだろう仮想の楽園のようなアレンジが新しい未来への希望を与えてくれる。 日本のボサノヴァの移り行き Sunflower field by Nagatoshi Shimamura / Unsplash ボサノヴァが誕生したのは1950年代のブラジルで、その後、1960年代の中頃にジャズと結び付いて英語で歌われた作品がヒットして世界的に広まる切欠となった。 日本でボサノヴァの楽曲が発表されたのは1960年代の終盤だった。最も古そうな1968年のユキとヒデの白い波は日本のジャズのサックス奏者として名高い渡辺貞夫が作曲しているから海外の音楽的な動向を逸早く察知したせいかも知れない。 当時のボサノヴァの印象は海外のブラジルのラテンやアメリカのジャズのスタイルを踏襲して日本語の歌詞を付けるという感じが多くて日本ならでほボサノヴァという感じは少ないようだ。 1960年代の終盤から1970年代の冒頭まで日本のボサノヴァが多く作られたけれども発表されるのはシングルのB面が多くてA面でヒットすることは殆どなかったんだ。 日本のボサノヴァがシングルのA面でヒットして世間的に注目去れるようになったのなぜか。荒井由実の登場から歌謡界にフォークソングからニューミュージックの勢いが増して来た中で、1975年に当人のあの日にかえりたいがヒットして累計で、六十万枚以上、売れた。只、ジャンルはニューミュージックでもあるので、全くのボサノヴァとしては1976年の丸山圭子のどうぞこのままが挙げられる。累計で、五十万枚以上、売れて明らかに多くの人が耳にするようになってボサノヴァという音楽を知り始めた。 1976年7月5日、シンガー・ソングライター丸山圭子の「どうぞこのまま」が発売された。マイナー・コードのボサノバで、彼女のソフトなヴォーカルが耳に心地よく、同年秋から翌年にかけて売れ続け、オリコン最高5位まで上昇する大ヒットを記録した。 1976年7月5日、丸山圭子「どうぞこのまま」が発売~プチ流行した女性シンガーによるボサノバ|ニッポン放送 当時のボサノヴァの印象はニューミュージックや歌謡曲と結び付いた日本ならでほのボサノヴァという感じが増したようだ。 日本人の好みに合ったようで、それから1970年代の終盤まで以前と入れ替わってシングルのA面で発表されるボサノヴァが、全然、珍しくなくなった。 1980年代以降はロックやポップスが隆盛してニューミュージックの勢いが衰えると共にボサノヴァも減った。探してもアルバムの収録曲に見付かる程度で、シングルで発表されること、特にA面に入ることは殆どなくなってしまったんだ。 さらに今に至るまで音楽が細分化されて色んなジャンルが増える状況の中で、日本のボサノヴァは決して多くはないにしても好きな人がそれぞれの仕方で好きにやっている。 関連ページ日本のフォークソングの心温まる名曲集 コメント 新しい投稿 前の投稿
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