ドラムンベースという音楽ジャンル 結城永人 -2023年12月8日 僕が大好きな音楽ジャンルの一つにドラムンベース(Drum'n'Bass)がある。初めて知った切欠は1998年から1999年にかけてテレビ放映されたアニメのバブルガムクライシス TOKYO 2040のサウンドトラックに出て来たYou're In The Battle Fieldで、音楽を担当した是永功一が自作を解説する中で、ドラムンベースという言葉を使った。どんな音楽かは全く分からなかったし、サウンドトラックのどの曲を指しているかも定かではななかったんだけれども言葉の印象からドラムとベースが強調されているとすればYou're In The Battle Fieldしかないと思っていた。今では間違いなく、ドラムンベースだと分かる。そしてYou're In The Battle Fieldは初めて聴いてから二十年が過ぎても最高のドラムンベースの一つだと感じて止まないんだ。 目次ドラムンベースとはどんな音楽かドラムンベースを特徴付ける三つの要素ドラムンベースの成り立ちについてヒップホップのサンプリングに起源があるブレイクビーツのジャングルから生まれたドラムとベースが中心的に捉えられて完成ドラムンベースという呼び名はどこから来たかファンキーなブレイクビーツとして出発ドラムンベースのアーティスト ドラムンベースとはどんな音楽か Lenzman | Boiler Room Festival Amsterdam: SYSTEM|Boiler Room ドラムンベースは言葉通り、ドラムとベースを強調した音楽だけど、ただしそれだけでは何でも構わないとなる。一つのジャンルとして確立するためには他の音楽とは異なる内容を持っている。 ドラムンベースを特徴付ける三つの要素 ドラムンベースは1990年代の中頃にイギリスのロンドンのクラブから生まれたといわれる。 ドラムンベース(英: Drum and bass)は、イギリスサウスロンドンで1990年代に誕生した電子音楽のジャンルの1つ。非常に速いテンポの変則的なドラムビートに、うねる様なベースが重なるドラムとベースが主体となるダンスミュージック。 BPMは165〜185が多く、高速で複雑なシンコペーションを用いたブレイクビーツサウンドとキック、スネアやベースを強調した重低音が特徴。通常はサンプリングやシンセサイザーを用いて制作される。 略称としてDnB、D&B、D'n'Bなどがあり、別表記はDrum'n'Bass、Drum & Bassなど。 ドラムンベース|ウィキペディア ドラムンベースはどんな音楽かというと今は色んなバリエーションがあって昔とは正反対のもの――エレクトロダンスミュージックとの境がないに等しい――もドラムンベースに含められるから定義するのは難しい。 ドラムとベースが強調されているBPM174くらいの高速のビートを持つファンキーなリズムを有している ドラムンベースを特徴付ける要素はおよそ三つに纏められて一つでは他のジャンルと区別できないので、せめて二つ当て嵌まればドラムンベースと呼んで良いかも知れず、三つ揃うとドラムンベース以外の何物でもないといえる。 ドラムンベースの成り立ちについて ヒップホップのサンプリングに起源がある U Can't Touch This by MC Hammer / Capitol Records 1980年代からラップミュージック、所謂、ヒップホップが流行り始めてその頃は古いR&Bやソウルやファンクやディスコといった黒人音楽のレコードの気に入った部分を繰り返しながらやっていた。この切り取りをサンプリングという。日本語では元ネタという表現もある。好きな曲の良いところをループ再生するのが元々のラップミュージックだった。 だから曲自体は他人のものを使っていた。例えば日本でもヒットしたMCハマーの1989年のU Can't Touch Thisはリック・ジェイムズの1981年のSuper Freakというディスコヒットの出だしを繰り返してやっている。 もちろん著作権を侵害する恐れがあるから勝手に売り出したりしては行けない。MCハマーはリック・ジェイムズに許可を取らずにやって後から裁判所に訴えられて多額の使用料を払うことになっていた。 関連ページジェームズタウンのShe Got Soulの二十二人の正真正銘の黒人女性ソウルシンガー ブレイクビーツのジャングルから生まれた Incredible by M-Beat featuring General Levy / Renk Records ヒップホップのサンプリングを使って音楽をやることがブレイクビーツと呼ばれるようになる。ラップがあってもなくてもサンプリングを駆使したもの、好きな曲の良いところを切り貼りしたものというブレイクビーツミュージックがジャンルとして現れた。 これはサンプラーという機械が普及したことが大きかった。レコードを回すだけみたいな時代から作り方が大転換されたわけだった。 1990年前後にブレイクビーツが流行り始めて一部のミュージシャンがそこで使われたドラムとベースのリズムを高速でやったら面白いと気付いてさらにレゲエを合わせると良いという仕方で、1990年代の前半にジャングルという音楽が新しく生まれたんだ。 レニー・デ・アイスの1991年のWe Are I.E.を皮切りとしてM-Beatのジェネラル・リーヴィを起用したIncredibleがヒットした1994年に世界的な広がりを見せるに至った。 日本ではお笑いの浜田雅功と音楽家の小室哲哉が組んだH Jungle with tのWOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメントがジャングルの楽曲として1995年に爆発的にヒットした。以来、各所で取り上げられ続けているからジャングルはどんな音楽かは聴けば分かる人が多いかも知れない。 特にサビの部分の高速のガチャガチャしたドラムとベースの盛大に繁茂した熱帯雨林を思わせる趣きのリズムトラックがジャングルビートだ。 ドラムとベースが中心的に捉えられて完成 Brown Paper Bag by Roni Size / Reprazent / Mercury Records ジャングルはブレイクビーツとレゲエが融合していた。本来のレゲエはゆったりしたリズムだけれども高速のビートで、激しい乗りがあった。そこからもっと乗りの弱いものに変わって来たのがドラムンベースの直接の起源というか、生まれる最初の切欠になったといわれている。 LTJブケムのアートコアがドラムンベースのヒントを与えた 立役者がLTJブケムというDJで、彼のやっていたアートコアがドラムンベースのヒントを与えた。 ドラムンベース・スタイルの革新者として知られるブケムは、ブレイクビート・ハードコア系ジャンルのスピード感や攻撃的なエネルギーに代わる、親しみやすいサウンドを開発したことで知られている。彼のスタイルは、デトロイトを拠点とする初期テクノやデトロイト・テクノのサウンドに影響を受けているほか、ロニー・リストン・スミスやロイ・エアーズに代表される1970年代のフュージョンのメロウでメロディックなソノリティも取り込んでいる。 LTJブケム|ウィキペディア LTJブケムは必ずしもドラムンベースを志向したわけではないようだ。1990年代の前半にやっていたアートコア、すなわちスピード感や攻撃的なエネルギーに代わる、親しみやすいサウンドをやっていた。例えばMusic / EnchantedやAtmospherical JubilancyやHorizonsのような楽曲を聴いて触発される人が多く現れた。 ロニ・サイズが高速のビートのドラムとベースを活かした ドラムンベースの最初の完成として良く取り上げられるのがロニ・サイズのレプラレゼントでの1997年のBrown Paper Bagなんだ。 何よりもドラムとベースが目立って中心的な位置を占めていると感じさせるので、それこそドラムンベースと呼びたくなるような仕上がりになっている。 LTJブケムのアートコアがジャングルよりも落ち着いたブレイクビーツみたいなドラムンベースの原型としてあったのが1990年代の序盤で、同年代の中盤にロニ・サイズが特有のドラムとベースの高速のビートを全面的に打ち出すことで肉付けしてドラムンベースが一つのジャンルとして見えて来た。 ドラムンベース・グループ「レプラゼント」を率い、かつてマーキュリー賞を受賞した。ジャマイカ移民の息子で、ブリストルの郊外セント・アンドリュースで育つ。ゆえにレゲエに影響されている。16歳のときに放校処分を受けた。ブリストルのサウンドシステム「ワイルド・バンチ」(マッシヴ・アタックの前身)が運営するハウス・パーティーに入り浸る。 ロニ・サイズ|ウィキペディア ロニ・サイズのBrown Paper Bagなどに触発された人たちが多く現れて1990年代の後半にドラムンベースとして広まったと考えられる。 ドラムンベースという呼び名はどこから来たか Drum and Bass wallpaper by rocu / CC BY-ND ロニ・サイズはドラムンベースという呼び名を作り出したわけではない。ドラムとベースに重点を置いた音楽ジャンルとしてジャングルやアートコアと同時期にあったハードステップがドラムンベースの語源になった。メロディーも失われるくらいリズムに特化してブレイクビーツミュージックとしてジャングル以上に激しく破壊的なまでに作り変えられてドラムとベースを物凄く強調したスタイルを持っていた。 ハードステップはDJㇵイプやDJジンクやレネゲードなどが良くやっていた。 ドラムンベースという呼び名は元々はハードステップを指していたといわれる。なのでロニ・サイズのBrown Paper Bagなどの音楽は後から主流になった。そこから逆に元々のドラムンベースを振り返ってハードステップという呼び名も新しく付けられた。 ドラムンベースを音楽ジャンルとして捉えるとき、ロニ・サイズから始まったとすると単線的な歴史で分かり易いけど、しかしジャングル以外の高速なブレイクビーツの総称とする見方もある。元々、ドラムンベースと呼ばれるものとしてハードステップがあったということを踏まえると必ずしもLTJブケムからロニ・サイズへの流れだけで、ドラムンベースの成り立ちを理解することは精確ではない。 ハードステップがドラムンベースに含まれるのはリズム特化型のスタイルも許容するという懐の深さに繋がる。極度にいえぼメロディーもリズムもなくても構わないし、それこそドラムとベースが鳴ってさえいれば良いみたいな多様性を持ち合わせることになる。ドラムンベースをジャングル以外の高速なブレイクビーツと見ると本当に色んな楽曲があって他のジャンルとの境界線かぼやけるくらい幅広く捉えられるのも良く分かる。 ファンキーなブレイクビーツとして出発 アーメンブレイク|結城永人 ドラムンベースの高速のビートはヒップホップのサンプリングから来ている。それ自体に注目した場合に重要なのがファンクになる。 ファンクのサンプリングをヒップホップが好んで普通に使ってジャングルが好んで高速で使った。そしてドラムンベースも好んで使うので、そこに重点を置けばファンキーなブレイクビーツと呼ぶことができる。 最も有名なファンクのサンプリングがウィンストンズのAmen, Brotherで、使用されたのが2835回というギネス記録にも認定されるくらい愛されている。 ドラムンベースのビートの象徴とされるアーメンブレイク ウィンストンズのAmen, Brotherの一分二十六秒から始まる四小節のドラムのソロがサンプリングの歴史的な人気を得たとので、アーメンブレイク(アーメンブラザーという楽曲のブレイクビーツの素材)という名前も付けられて色んな音楽に使われている。 アーメンブレイクはサンプリングのビートを何よりも重視するドラムンベースにおいては正しく必要不可欠なものの象徴的な存在として受け留められることになる。 2000年以降、コンピューターでの音楽作成がどんどん盛んになって来る。それと入れ替わるようにブレイクビーツのサンプリングの手法は下火になって、直接、打ち込みでやるのが主流になる。 それでもどんなリズムが良いかはアーメンブレイクのファンキーなドラムを外せないし、決定的なものがあることに変わりはないので、同じようなことをやっているミュージシャンは珍しくない。 昨今、全然、違うのものもあるし、ファンキーではないもの、例えばエレクトロに寄ったものは当初のヒップホップに由来する黒人音楽の趣きさえもなかったりするので、ドラムンベースとしてファンキーかどうかは必ずしも問題ではない状況になっている。 僕が惹かれるドラムンベースはファンキーなタイプが断トツで、最初のロニ・サイズのBrown Paper Bagに近い感じのドラムとベースの高速のビートがはっきり分かるものが良いと思う。 関連ページR&Bの成り立ちと音楽的な特徴と日本の楽曲 ドラムンベースのアーティスト Man playing red-lighted DJ terminal by Marcela Laskoski / Unsplash ドラムンベースは生まれてから、二十年以上、経って今でも人気の音楽ジャンルとして続いている。日本では一般的に知られず、世界でも普通のものではなくてロックやポップスと比べたら認知度は遥かに低いだろう。しかしクラブでは長くプレイされて数多くのアーティストが出て来ている。 僕が良く聴くようになったのは音楽のSNSのSoundCloudをやって良い曲を見付けた2014年以降だった。ブログで取り上げた気に入りのドラムンベースのアーティストを何人か挙げる。同じように気に入る人がいれば嬉しいし、または色んな音楽を数多く聴ける状況で、ドラムンベースも溢れ返っていて何を聴くべきか、分からない人の参考になれば良いと思う。 ジャスティン・ホークス(アメリカ)センスに溢れたドラムンベース。リヤ(イギリス)ドラムンベースの歌姫と呼べる存在。レンズマン(オランダ)非常に洗練されたドラムンベース。NCT(オランダ)斬新で活気に満ちたドラムンベース。ランダムムーヴメント(アメリカ)音楽性の豊かなドラムンベース。インピッシュ(ロシア)渋くて格好良いドラムンベース。 ドラムンベースでも特徴が少ないものはリキッドと呼ばれることがある。ドラムとベースを強調しなかったり、ビートが必ずしも高速ではなかったり、リズムの浮き沈みが弱かったり、漫然と漂うような感覚を与える作風だ。液体が広がって行く印象があってリキッドドラムンベースという派生になる。 ドラムンベースはブレイクビーツから来ているけれどもエレクトロと合流して本当に多彩な展開を見せている。特徴を幾らか失うか少しでも持っていれば成り立つみたいな感じがする。新しいタイプの楽曲が次々と生み出されるから音楽ジャンルとしてとても面白い。 参考サイトかまたり先生のドラムンベース講座 コメント 新しい投稿 前の投稿
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