松尾芭蕉の十九歳頃の最初の俳句の作風

松尾芭蕉 の約三十年に亘る俳句人生で作風の変遷が幾つかあってどんなものかを探るために本稿は十九歳頃の最初の俳句について考える。 俳号は宗房で季語は年内立春の冬の句 梅の花 by ERINGI51 春や来し年や行きけん小晦日 仮名と訳文 はるやこしとしやいきけんこつごもり 春が来たのか、年が過ぎたのだろうか、小晦日に。 松尾宗房/ 千宜理記 (仮名と訳文は筆者) 松尾芭蕉の俳号が宗房だった十九歳頃に詠まれて、記録上、最初の俳句と見做されている。 奉公で伊賀上野(三重県伊賀市)に暮らしていた十八歳頃から俳人の 北村季吟 に主君の 主計良忠 と共に師事して俳句を始める。すると師匠の北村季吟が俳人の 松永貞徳 に由来する 貞門派 という俳諧の流派に属していたためにそうした影響を受けて詠むことになる。当時の世の中の主流の流派でもあったらしい。貞門派は古典に傾倒して知識や教養を披露したり、俳言という…