松尾芭蕉の三十二歳頃の談林派の俳句の作風

松尾芭蕉 の約三十年に亘る俳句人生で作風の変遷が幾つかあってどんなものかを探るために本稿は三十二歳頃の談林派の俳句について考える。 俳号は桃青で季語は菊の秋の句 Kutsukibon by Nagahito Yuki / CC BY-SA / arranged from a sixteen-petaled chrysanthemum by Kyūan 盃の下ゆく菊や朽木盆 仮名と訳文 さかずきのしたゆくきくやくつきぼん 盃の下に菊の花が流れる朽木盆とはな。 松尾桃青/ 俳諧当世男 (仮名と訳文は筆者) 松尾芭蕉は延宝三年(1675年)に江戸(東京都)に早ければ数年前から来て暮らしていて同地の俳人の 西山宗因 と知り合う。西山宗因は 談林派 という俳諧の新しい流派を代表する人で、弟子たちが宗因派を標榜したのが切欠だった。貞門派のように古典に傾倒しつつも軽口や無心所着(和歌で纏まり…