森累珠の人間の喜怒哀楽を刺激するブルース・リーの再現動画 結城永人 - 2023年4月28日 (金) 俳優の森累珠のYouTubeチャンネル、るいちゅーぶへの道でシリーズ化されて幾つも公開されているブルース・リーの格闘物の映画を中心とした再現動画が非常に面白いと思った。 親子のコント仕立ての新感覚の物真似の演技 【完全再現】ブルース・リーVSチャックノリス戦 / Way Of The Dragon Bruce Lee vs Chuck Norris|るいちゅーぶへの道 森累珠と母親の俳優の森田ヨーコの二人だけで基本的にやっているけれども色んな面でオリジナルからの落差が激しいコント仕立ての物真似の演技に笑わされるというのが大きな魅力だと思う。 しかしそれだけではない。ブルース・リーの魅力も良く捉えながらオリジナルにもない新感覚の良さを打ち出しているようだ。森累珠はYouTubeの概要や公式サイトのプロフィールによると十三歳でブルース・リーに憧れを抱いて彼が創出した格闘技の截拳道やトレードマークのヌンチャクを始めた。そうした特別な気持ちがあるから再現動画とはいえ、オリジナルの物真似を越えた良さを作り出すことに成功しているのではないか。 近年、将棋で画期的な活躍を見せる藤井聡太もブルース・リーの映画から勝負根性を学んで強くなったと聞くし、今の若い人が世界的に活躍したといっても五十年以上前のブルース・リーを率先して好むのが面白いと思う。 よもやコンピューターが隆盛する時代で、人間の捉え方が頭脳に寄り過ぎて感情が衰えるみたいな状況があるので、体一つで敵に立ち向かうブルース・リーの気合いの入った世界に触れることは生きる喜びという忘れかけた良さを取り戻させてくれそうだ。 森累珠のブルース・リーの再現動画はドンピシャで、人間の喜怒哀楽を的確に表現しているのが良いと思うので、一つずつ取り上げながら僕も奮い立ちたい。 森累珠のブルース・リーの再現動画①喜 【完全再現】燃えよドラゴン 鏡の間の決闘!Enter the dragon BRUCE LEE vs HAN|るいちゅーぶへの道 森累珠がブルース・リーが好きで、真似しているということが喜びとして何よりも伝わる。 笑えるのは普通の人がやっているみたいなところで、森累珠も森田ヨーコもブルース・リーや敵並みに素晴らしく鍛え上げた肉体で凄まじい格闘を演じているわけではない。 憧れの現実が上手く出ている。人は自分にない何かの良さを求めて他人に憧れを抱く。そのとき、相手の良さが自分にないという現実を忘れている。または悪さとして悲しく気付かせないのが憧れの有り難さだろう。 傍目から見ると落差によって笑ってしまうけど、しかし好きな気持ちが本気で、本物の憧れに対しては逆に羨ましくて嫉妬してもおかしくないくらいの喜びを知らされることになる。 森累珠のブルース・リーは只笑って済ませられないから伝わる喜びもガツンと来て相当なものだと驚く。 ヌンチャクでも截拳道でも流石の動きだし、その他の演技でもブルース・リーの特徴を良く掴んでいる。注目した時間の長さが表現の深さに繋がっているのではないか。 物真似は気持ちが入ってないと相手を馬鹿にしたように見えることがあるはずでもそれがなくてさらに必死に近付こうとする感じがするのは凄い。 森累珠のブルース・リーの再現動画②怒 【完全再現】燃えよドラゴン オハラ戦 ENTER THE DRAGON,Bruce Lee vs Ohara,|るいちゅーぶへの道 ブルース・リーは只の俳優ではなくて本物の格闘家で、しかも哲学的というのが普通とは、全然、違って本当に凄いと驚く。昔、誰かが彼の映画を評して「悲しい怒り」といった言葉を聞いてピッタリだと今でも頷く。 最も分かり易いのは燃えよドラコンの敵を踏み付けながら複雑極まりない表情を見せる場面で、他の誰にもできないか、普段の感覚から遠く離れた印象を与える。 考考えると争いを伴う怒りに対して何でこんな嫌なことをするのかと悲しみつつも今此処の他に生きるすべはないという慈しみを覚えて知的に救われた思いから微かな笑みを浮かべさえもするようなんだ。 仏教の般若の面のような表情に見えるし、そうした世の中を見抜く一番の智慧を得た状態に近いともいえる。 僕は「悲しい怒り」を一つの人生哲学としてブルース・リーの何よりも人としての最高の魅力(並外れた優しさの持ち主)だと思うけれども森累珠の再現動画はそれを良く捉えているのではないか。 本人のコメントでは表現に惹かれて良く考えている(ブルース・リーを愛し過ぎた女子に、思う存分語ってもらった【森累珠ちゃん】)ということなので、見た目だけではなく、内面から滲み出さずにいない部分まで出せるはずだし、だからこそコント仕立てでも笑えるだけで終わらない物真似という独特なものになっていると思う。 森累珠のブルース・リーの再現動画③哀 「死亡遊戯」完全再現【GAME OF DEATH,BRUCE LEE】|るいちゅーぶへの道 演技だけではなくて舞台も良く写し取られているけれども自宅で印刷した紙を貼っただけみたいな安っぽさが又一つのオリジナルからの落差として笑えると共に哀しみを示してもいる。 日本の現実といって良い。昨今、三十年来の不況とはっきり呼ばれていて多くの人たちが最低限を予感させる衣食住を強いられている。ほんの少しのところで、発展途上国への逆戻りを免れているに過ぎない日本ではないか。一部の富裕者は飽くまでも一部として定まってしまって大勢の貧困者は生活が良くなる兆しすらも殆どない。 哀しいかぎりの社会だけど、しかしそれだけにブルース・リーの力強さが輝きを増すことにも繋がり得る。 今の若い人がブルース・リーに惹かれるとしたら日本の好景気を全く知らず、不景気が当たり前で、貧しさこそ多く経験しながら暗い気持ちに包まれざるを得ないのをすっかり弾き飛ばすためかも知れない。 再現動画が如何にも安っぽい舞台で作られることの貧しさなどの哀しみは当のブルース・リーの象徴というべき屈強な正しく負けない魂そのものを煽って何倍にもして受け取らせる。 森累珠のブルース・リーの再現動画④楽 【完全再現】ドラゴン怒りの鉄拳 ブルース・リーvsペトロフ / FIST OF FURY Bruce Lee vs Robert Baker(精武門)|るいちゅーぶへの道 再現動画で、一番、笑えるのは森田ヨーコの七変化で、男性の分けても格闘家のキャラクターと合わない落差が甚だしい。 最初は分からず、観ていて何となく森累珠の母親なのかと思って調べたらやはりそうだった。ずっと俳優だったらしいので、演技はできるとしても格闘技が素人だから森累珠との対決の場面はズッコケ気味なのが完全に笑ってしまわずにいない。それでもどことなく息が合ったような感じがするのが親子ならではの演技なんだろう。同調して全てが一体になって作品の完成度を高めていると思う。 そして楽しさが醸し出される。表現が上手く行っているという印象がある。母親と娘で仲良くやっている微笑ましさも相俟って楽しさを実感する。 世の中では虐待や引き篭もりといった問題が親子関係に多く取り沙汰されるけれども森累珠と森田ヨーコの共演には一つの希望も受け取る。 共に生きることが重要ではないか。不景気ではもちろん力を合わせた方が良いと思うし、社会の情報化や高齢化で、親子の差が相当に縮まっているのは確かだ。教える者と教えられる者でなくて良いし、少なくとも同じ人間としての対等の立場を外しては行けない。 森累珠と森田ヨーコの共演は親子関係の原点に立ち返らせるところが本当に素晴らしい。 森累珠のブルース・リーの再現動画は今こそ引き付けられるべきブルース・リーの魅力に触れられる。人間の喜怒哀楽を改めて気付かせてくれる。これから知能を備えたロボットが人の代わりにどんどん増えて来る世の中になるだろう。同じように働けないとか過ごせないなんて悩まされることもあるのではないか。生きることの虚しさにくれぐれも陥らないようにしたい。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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