Cinematic in secret|長編詩 結城永人 - 2019年6月29日 (土) Woman leaning on the glass table by Maksim Istomin / Unsplash Prologue 心の畑を耕すとき Scene 1 天使以外の近寄りを断る 本当だ 嘘ではない ちっぽけな人間臭さでも立ち入りを禁じると 魔法の言葉でしか得られない作物があるんだ Scene 2 準じるや異性かも知れない たとえ気に入っても縦書きか横書きの違いというな 野菜を 同情ならば全て井戸に沈むだろう まるでブラックホールのように吸い込まれる Scene 3 吸い込むのは掃除機のノズルか 確かに似ていて象も耳をぱた付かせる 近未来的な景色だ 高速道路の八重洲インターチェンジこそ頭に残るが…… ともかくうねうね回りながら空こそ開けていた Scene 4 濃い緑の低い森が刈り入れ後の田圃を挟んで延びるばかりの 恋人探しかも知れない 勝手なことをいいながら誤魔化しているつもりではなく 三期目なので 親しみしか奮わなくなってしまったとか Scene 5 籠一杯の茄子らしく蓄えずにはいられないようだ 手拭いで吸収した汗は素より へのへのもへじも御飯茶碗の柄ならば 落語の高座と寄席で笑い転げた客たちが少しずつ潮を引いて行くのだった 海は荒浪によって俄かに暗転した空を押し返しながら Scene 6 右下隅に血痕のある 白地図へ 日本列島の 降り出した雨が物々しく点描を打つのだから 終局 Scene 7 傘を差す間もなかった 念じ込んでいると 様々に世話を焼いて貰えるのも良さそうな身持ちになり 内面の綺麗さに優る 取り決めもないのではないか Scene 8 自身において根性にとって 愛苦しい星たちというものは 如何にも 手を付ければ鉤型に曲げた肘を捻りながら見出される 港の埠頭辺りでクレーン車が何台も並んでいたりすると胸が震えるほどの感覚を被ったかぎり Scene 9 灰色に空を棚引いている雲の ざっくり大味な気配の元で 自由は外された右手の中指の指輪のルビーのように 澄んだ炎を早速と催させて止まなかった 考えてや正しくだ Scene 10 望むだけで細くなった太股で意欲の重要性を説くにしろ 資質が問われるまでは 力も咲かないのだから いっそ雪割草を捧げるしかない 受け取って貰えたらどんなにか元気に違いないと想うので Scene 11 腹筋が凝れ ムエタイの真似事に励んだりしたのも 当たり前なんだ 出会いを動かすのは並大抵の策動ではない 誰にも不可能だと喚かざるを得なかったりもする Scene 12 羊水の中の胎児が 余りに静か 却って 過ぎるにしろ 山頂へのふりかけに等しくて Scene 13 あり得ないくらい報いられたにも拘わらず なんて“叡智”だろう 目に見えない途方もなく大きな実体に自然がきっちり包まれていた ピーチクパーチク 近所の小鳥と共に朝が来て Scene 14 メッセージも届いたのだった 通って行く昔馴染みな鳥居の柱のどちらかしら 均しく断面図を指し示している鉄則は洗濯機では必ずやないにしろ 愛×存在÷二人=安寧と読み取られて かねてよりも経験されなかった対象へのジャンプをむしろ Scene 15 暗に仄めかしているせいか 掘り下げよう神経は生卵の鉱脈を探り当てたんだ 固くても柔らかくても構わない 歴史を過ぎ去るままにしてはならないとしか掬えない喩えだった 極太のペンで真しやかに囁かれるほどのオススメでも Scene 16 うししで 異論の生じ得る隙間も伴わなかった 長丁場なのは認めるし 旅の途中と 休みがてら俳句を詠むべきでは脱線するものの Scene 17 青草や森の木陰の毒茸 といった受けるんだ そのあのこの 風情を 串刺しの印象とは屋台骨を失い Scene 18 制服を畳んだ石像ではなかったのも すなわち暴風雨が帰宅していて 気がかりは靴下ばかりかボストンバックでさえもあり 錆止め加工済みの食い付きを引き離してみるや ボウッ Scene 19 まるでマシュマロが広がるために 枝分かれした 軌跡を描き出して来たのではないか いても立っていられなくなり 強く深く重く覚知されるのだった Epilogue 負けてはならないと Cinematic in secret:全一篇 詩や小説などの文芸作品 コメント
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