唇詩篇|長篇詩 結城永人 - 2019年6月29日 (土) lips by dangthuynhu2710 / Pixabay 自分であろうとすることは いなくなってしまう他人を 刻み付けられるという心で たぶんありたかったのかも 主情的でなくてはならない * 他人が訴える魂を持ちつつ 餅を搗いた兎の月の夜には 庭先で一層と草花も喜べた 想像しても染み込みはせず どうも感受性は膨らむのか * 柔らかい兎の巣穴の片隅に キュービック・ジルコニア 闇に紛れて薄々と光を放ち 考えれば考えるほど現実の マグ・カップだろうなんだ * 現実の朝で目覚める気持ち 誰が聞こうとするのだろう 局面の不確かな祈りの声を または願いの姿が何なのか 灯火が消え尽きたとすれば * 本当は命の灯火を絶やして しまいたくなかったという けれど一人が皆ではなくて 皆も全員ではなかったのに かく思わしく生きるだけで * もしや宇宙が超大なように まるで無重力でないならば 遊星は動きを止めるはずだ 引っ張られざるを得なくて ついに創られもしなくなり * 今は太陽を公転する遊星の 一個として地球へ棲み着く 経験できる此処でした行為 メディテーションが永らく 精神も安らげて窓を開いた * 曇天の予期しない地球だと いうにも拘わらず知り得た 螳螂がカサコソと音を発て 認めたくないわけではなく やはり新しさを驚かされる * カサコソで連想してたのは 泥棒が唐草模様の丸い袋を 背負いながら少しずつ来る そして憤怒の表情を変えて 本当は俳優と出す舌が厚い * なぜ泥棒と決め付けたのか 相手が嘘吐きでないかぎり 悪かったのは誤りなかった たとえ非現実的だとしても パニックに陥ってしまって * せめて非現実的だったんだ ゴミこそ持ち去らせながら 呼び留めたつもりというか 内実は可哀想に承りたくて 表した遁辞で空漠を堪えた * 空漠とした地域では大工が 鋸や鉋で木材を誂えていた 材木を設えながら釘や鎚で 組み立てる家を通りかかり 随分と汗が滴ると悟るもの * 家で食欲は須く出て来ない 天物と豆腐と味噌汁と御飯 取るのを恐れているのでも 脅えられた死でもなかった 不味いとか廃棄しろなんて * 立派な御飯が雪山に見える 丹念に紡いで撚った絹糸の 軋んで滑車は水桶を井戸へ 鵯を追い立てたオカリナも 子供も近所の広場で屈んだ * 水桶に疣蛙が張り付く三秒 淡いゼラニウムの鉢植えを 軒下へ置いて楽観的だった 呑気な野良猫も寝転びつつ 嫌悪する対象は要らないと * 防波堤で待つ風雨であれば 易々と御機嫌でいて欲しい ショックもダメージもなく すっかり笑い合えるだろう 凌いだ夢想の平然な貴方が * 頬を抓ってみて分かったが 華やかなのは気に入るので いっそクラップしてしまえ 余りにも壮重であり過ぎた 密林の奥のタランチュラへ * 乾燥した夜を埋める頌歌へ マングローブは眉を顰めて 渋るパッションフルーツも 貴方が希求した幻影という 剃刀で反故も蓄えるように * ドラゴンフィッシュの沈潜 まるで進展する煙に巻かれ 振動もしない寸刻が耽美だ サテンに包まれた南京錠の 繊細な力は推し量り兼ねる * 不思議を繙いて謎めく真相 よもや耳目が狂乱しそうで 危険へ果敢に挑める貴方も きっと望みたい社会なんだ 羚羊は山坂を素早く登った * どんな必定が覚えられるか 封印された聖所の正面扉で 神威に甚く守護されながら 弱々しさは行き擦りもせず 恰も打ち当たる天使の如く * 砂礫を漱いだ浅瀬へ素足を 浸して素顔も反射を被って 素肌に太陽は温かい運勢に 固めた決意の素手も翳した 実例として普遍的にいうと * やおら静黙を保有したまま 秘匿の素敵な性質を指示し さも明かしてしまうよりか 稠密化された自然の世界で プリズムが魔除けに役立つ 唇詩篇:全一篇 詩や小説などの文芸作品 コメント
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