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些細な日常

真っ只中の第一部|詩集

小楢の秋

銃声は止んだ
卓球のラケットも
セロリも静まり返って

ミシンが発端となり
七つの海を突っ走る金塊だ
まるでヒドラのように
止んだ銃声だった

またしても
味わっている
舌で転がしながら
ただの団栗だったんだ
旨い気持ちがして
呑み込みたい
またしても

静寂を切り裂いて
団栗も止んだ
止んだ団栗なんだ
野山へ落ちる

幾多の轟音が生じたのか
まさか不可避らしく
妄想は大陸を飛び回り
どんな明かりも灯さないで
感じ返す頃合いに

殺伐を打ち破って
またしても
蟋蟀が尋ねている

ファンシー

箱を開けよう
入れておいたんだ
僕が君に中身を
まるで菓子みたいな
執着できないという
中身を僕が君に
入れておいたので
心根も塞ぐな

窓を開けよう
渡したかったんだ
僕は君へ対象も
まるで模型みたいな
計算できないという
対象も僕は君へ
渡したかったので
今頃も外すな

葢を開けよう
取っておくべきだ
僕に君も明白の
まるで道具みたいな
策略できないという
明白の僕に君も
取っておくべきで
気骨も潰すな

素っ頓狂

どんな想いがあるだろう
通じ合う二人になって
嫌気が差した頭の不快も
悩みを抱くには早かったと
閑かに歩き出しながら

恋は魔的な力強さで
互いの心と体を引き離さず
まるで久遠に同じような
恐ろしくも安らいでいたい
生こそ実現されたら

なんと駆け巡るのだろう
二人ではなくなっても
喜びの機縁があるかぎり
野山を越えて市街を抜けろ
突く風に遅巻きがてら

雪豹という博愛

煮え立つ味噌汁を口に入れ
熱がらざるを得なかった
豆腐も油揚げも味わいつつ
舌こそ火傷してしまった

発揮すれば真価だとしても
不如意だろう本領がある

君は大人でも頼りなかった

冷まして食べるかどうか
箸を置くと次第に納得する
少々の葱が回転したので

立派だから懸念させられた

平装りの飯粒を掻き込み
焼き魚も容易く噛み砕ける
宥らかさを維持したまま

有理として死守したくなる
我慢しないのも知解的に

茄子が胃袋へ染み渡ってる

シンシア

吹き募る逢瀬は妖しく煌めいて
宛てもない羊皮紙に認められた時刻を留める
清純な香が岩陰で充満していた
鼬を追いかけて芽生えたアネモネに実効性は痺れを切らす
はぐれ雲の行方も粛々と得られないまま
産まれる鴕鳥の雛を抱き支える情景へ浸透する潤いがある
強かに打ち付けた風で野麦は倒れ伏してしまい
ラピスラズリの原石こそ純化された夜の気配を反映していた
調べは恰もスズメバチとカナブンの樹液を巡る対決が終息する如く豊かだ
流氷へ取り残された三角定規も赤道を急ぎたがらない
完成するやジグソーは空豆の散乱だった
飛行機が歴史的な事実として始祖鳥を称える
毒茸は成熟しつつ水煙で被われたラフランスも絶妙に垂れ下がる所以で
艶めかしさを呑み込んだ精彩が保たれた

上弦の月

山陵へ翔け出した時鳥は闇に紛れた
象牙を拾う子供たちも就寝を計り
繁華街の路地裏で陣取りながら念願する
頼もしさが末永くあり得るか
秋桜も萎れて心理性は硝酸を嗅いだ
空腹の溝鼠が走り回っている
絵にならなくて曲にならなくて
只者として記録板を成立させよう
不具合な夜が明けないかぎり
幾つかの水銀灯も不格好ならば
虻の屍に腰を屈めてはいられない
閉鎖された炭坑で化粧水が拡張しても
罠と捕らえられる大根は不味かった
緩やかな仕掛けも動作しないで
年季の城を渺茫に感じられる

絶唱詩吟

穏健も走破線を跨げずに
大気層を突き貫いたセスナのスコップで掘り起こした
針金のアプリコットで満ち足りている

要求されたユートピアは
カカオの農園で寛ぎながら甚く繰り延べられた終日を
寝返りも行わない鋤や鍬に括れていて

まさか気に入らない
爆竹を鳴らす幕開けだ
どんな悲喜劇が催されるか
幕引きは地図で調べろ
気に留めないらしい

打ち進む宇宙船の表面へ
インコが目を丸くして巣穴のビーバーも小耳に挟んだ
若さを中心したジギタリスは花開くと

ドーナツ

過ぎ去った日々は還らない
心を洗い流した月夜の晩や
朝焼けが魂を繋ぎ留めても
先々へ動き出した鼓動こそ
某かの訪れを受け入れない

昔話は笑いの渦に包まれた
人差し指で紙相撲を行って
流石に分かり合えないまま
厭わしさと嫌らしさなので
穴があれば入りたいはずか

思い出は洗面台の鏡に写り
居間の扉付近で記憶された
還らない日々の思い出とは
記憶できた付き合いだった
匂わせる涙が止まらなくて

実情を見据えられないんだ
紙相撲を行った人差し指も
耳障りな顛末と変わり果て
独り占めしたくはならない
生得の穏やかさが良かった

さぞかし詳らかなまま

思い悩んだはずの日柄の佳さも
潰えて恰も早晩だった如くあり
癇癪ならば忽然と惜別に等しく

膝で頬杖を突きながら考えていた
沈丁花は香も豊かに可愛らしく
手向けたい消息は千鳥で構わない
専横的な呪縛よりか解き放たれ

代償だったと嘆かわしい暴風雨で
石灰岩の窖も崩れ落ちずにいられない
闇雲で切り取られた愉快が汚される

十年の葡萄酒を希少と呷ったり
御馳走を平らげたりできるかな

徹底しなくてはならなかった

パトス

命を尽くしながら
輝くのを止めないで
見る影もない亡骸たちは
神の御胸で安らいでた
発てる弔鐘を聞く方もなく
皆が眠りに就いた
暗い夜伽に
祈りを念じる気配がして
霊性を呼び覚まさせる
匂いこそ甘く
衝撃する憂鬱の
晩餐会も繰り広げられたか
直ちに引き上げたのだ
馬車を駆る余情で
荒んだ世の中が凍結される
草花は停留していた
切り開かれた常日頃を
火も灯さない
律動的な道理の償いに然く
眩さで満ち溢れると
生きなくてはならない

交遊録:パリ

互いに支え合えると
乾杯したシャンパンで
晴れやかな人間性か

エッフェル塔を臨め
賑やかなレストランだ
凱旋門へ日が暮れる

舌平目のムニエルを
注文しながら口惜しく
萎れない椿はないさ

ネオンが煽り立てる
薄暗い真夜中の天蓋も
気持ちには相応しい

浮かび上がるだろう
ルーブル美術館ならば
かりに施錠も行われ

二人きりで疾走した
プジョーのドライブわ
石畳を打ち鳴らして

移ろう街並みも抜け
サン‐ジェルマンへと
澄み渡らずにいない

明け方を迎えがてら
神の仕業と恐縮だった
耳目も尽きる至純よ

リリック

予感した死は来るのか
社会の分岐点に立たされて
まるで稲妻のようだ
急激な変化がない現代でも
悲しみに囚われていた

どんな活路もあり得ない
縛り付けられる時間だった
鉄則は設けておきながら
事態的に打開できないのだ

子豚が昏迷してる
まるで精髄を傷めたように
迷走した子豚たち
かくも天災で怯えるみたく
子豚は迷走してる
かくも傷みが根深いように
昏迷した子豚たち
まるで怯えも頑張るみたく

少ない涙の感触を受け
どんな方針も得てなかった
資質へ取りかかるにせよ
究極的な善意が草案できず
せめて落胆したくない
烈しさに包まれてもいる

哀願する女

茅葺きの屋根に
湯気が立ち昇っていた
冬も間近な十一月の朝で
太陽は低い光を差しながら
山並みで囲まれた
集落を照り映えさす

男は眩しくて
刈り取った蜜柑を剥くのも
渋い表情で煩わしくなり
網袋へ入れるのだった
村の民家を眺めると
安息に興じ
扉も出て行った

啄む白鷺がいる
午前九時の泥濘を
餌と錯覚したのかしら
冷たい風も吹き及ぶ
板切れは恰も斑猫の如く
吐かれて跳ね
汚れたまま
再び密やかに沼と同化した

溺れても溺れても男だ
必死な抵抗は止むを得ない
払い除ければ鼻歌だろう
暇も惜しまなかった
草地で寝転んでる

エレジー

成就しない事柄を長引かす
想いは別れを告げた悲運で
強制されるべきというのか
総じて好きになりたくない

神様が生んだ慈善によれば
気に入らなかったとしても
包摂する力能も完璧なので
断じて好きになれるはずだ

なんとも紛糾してしまって
素敵な過去も明日の綺麗も
とにかく断絶されるかぎり
決して好きにならなかった

天性で受け入れる世間とは
かくも被造物みたいなんだ
同じでありつつ異ならない
やはり好きになりたかった

セクシーなD!!

恋に落ちる
乙女は出会した
想定外の容貌である
勇者と
周遊船に乗り込んで
語らいを
止められなかった
奇抜な乙女にも拘わらず
微塵も離反しないで
連れ合う勇者が
現れたのかと仰天だった
頬を抓りつつ
恰も偽りの如く察する
乙女は付き添い
世直しをするんだ
小躍りの勇者へ
涙も湛えた

ひたむき

肉体は衰えたし
気力も蝕まれちゃ
貧相そのもの

笑うなよ

聞いてやろう
もしも歯軋りならば
土星へ目覚めたように
まさか見てあげたい
挟む口らしく
まるで守護だった

良いや――

境遇とはいえ
洒落た宿願を透して
機知に富んでら

エロチック

貴方は美しい人間、僕を魅了した女神のような
金槌で攻める堕天使の軍勢も平伏したがる。
なんて芳香を撒き散らしているのか
貴方は美しい人間、僕を魅了した女神のような
まるで不可逆な廃屋も軽減してしまう
以前ならば没頭したはずの望ましさも
貴方は美しい人間、僕を魅了した女神のような
金槌で攻める堕天使の軍勢も平伏したがる。

貴方は愛しい身体、僕を誘惑した女神のような
大砲で攻める堕天使の軍勢も底抜けたがる。
なんて快音を響き渡らせているのか
貴方は愛しい身体、僕を誘惑した女神のような
まるで過不足な要塞も洗練してしまう
当初ならば奮起しただろう尊ばしさも
貴方は愛しい身体、僕を誘惑した女神のような
大砲で攻める堕天使の軍勢も底抜けたがる。

貴方は麗しい他者、僕を悩殺した女神のような
包丁で攻める堕天使の軍勢も空回りたがる。
なんて福徳を展き開かしているのか
貴方は麗しい他者、僕を悩殺した女神のような
まるで不可分な荒地も低落してしまう
以後ならば躍動するだろう願わしさも
貴方は麗しい他者、僕を悩殺した女神のような
包丁で攻める堕天使の軍勢も空回りたがる。

僕は角笛を聞いて

運河へ進入する汽船を眼下に収めながら
覗いてみた双眼鏡は新しい
甲板で整列する水夫たちが見える
あるいは谷間の商人たちも
先刻よりか遥かに鮮やかな風趣だった
汽船は鉄材を積んで貿易港へ向かう

豆腐屋を曲がると公衆便所や如何わしい看板があった
往き交わす学生も会社員も鞄を携えて忙しく
木々が生い茂る広場の片隅へ出て来ると
軽鴨の親子が池を閑かに泳いでいたのだった
烈しく乱反射する陽射しは音も発てずに弾けて揺れた
子供が飛び出すや直ちに煉瓦道を走り抜ける

僕は角笛を聞いて
港町の川縁にある展望台へ昇ろうとした
老いた観光客が煎餅や緑茶で寛いだロビーを
上へ上へと思い出も深い最上階に
行きたくなったのだ

エレベーターが停まる

いわゆる
天国に近しい島で
吹かれたはずの角笛なのだ
肉眼でも判別された
汽笛ならば煙も上げて汽船が鳴らし
少しずつ蔽い尽くす
猫が霞んだ

  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 真っ只中の第一部|詩集
  • 最終更新: 

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