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些細な日常

最愛物語の第一部|詩集

果物時計草

一端でチラノサウルスと憐察を考え付いた
つまり赤と黒が流行している
百億光年も貞節で
潔癖な気立てというか
貴方に相応しく貢ぐ
貢ごう
貢げば恐らく
亜熱帯への旅回りか
手を貸した
たとえ赤道を跨いでも黒雲に覆われるみたいでは毟り取ってみせる
地点はボリビアでアルゼンチンとの国境沿いだった
実り
たわわに膨らみながら唾を呑み下させる
貢ごう
日曜日の大道芸もさながらに
遅れがちな足踏みは愛らしく
さぞや苦笑いを引き起こしていた
流星の輝きへ珈琲を啜るともない
貴方なので
夕暮れは帰り際に及ぼした
偲んだ
性根と厳かだった

アンティーク

分かっていても廉潔では
詮ずるのは止そう
とかく芝居だとすれば
腰を上げざるを得なかった
夢物語で良いと

うっかり見過ごして
てっきり
先送りしない
思い違うところだったんだ

然らしむべき虫が
ヘラクレスか
長くて円やかな角を
突き出している
まるで硝子の海豚のように
撓やかな象りだ
けども

怒鳴り込みやしない
可哀相になってしまうので
懸念させられたほどに

クリアネス

渡さずにはいなかった
背を向けるような格好で
かくも危なっかしく
手並みと仕組むよりか
あけすけな感じを

僕は何なのか
誰なのかを君こそ
問い詰めなくてはならずに
超新星が瞬き出したので
いっそ遣り通すんだ
前例もなかった

時局のためならば
どんな断層も辞さなかった
狭苦しいらしいがてら

気付かれなくとも
良かったのかどうかは
考えても考えても
涙を禁じ得ないにせよ
人の世なんだ
学べない仲も
働けない柄も恐らく
なくはなかろう

玉葱を教えるまで
効かない彫像も適したと
骨休めするべきだから
火が燃えたのか

逆光な炎

遠くから見てみよう
抑え込まれた領分よりも
もっと離れて

泣いたのが初めてだと
感じるくらいずっと

何を目にしたのか
話してごらん
苦しくもないのに言葉は
出て来ないはずだけど
忘れないよ
君ならば僕が永遠なんだと
しかしながら
たぶん通り過ぎるのが
早かった

星が転がり落ちるまで
見てなかったら
必ずや

肯いたくなる
どんな迎え入れだとしても
肉体は降って湧くように
軽いわけなのさ
歴史へ刻みながら

話せないか
見付けていたものを
示さなかったので
追い越すべく

雨垂れを聞きながら
冬の暮れにしとしと鳴った
認めたくない事件もなく
すっかり穏やかな心で
打ち濡れ続ける
辺りは朝靄だった

静けさが広がり
頭を休ませるには
ピッタリの日にちか
辛気臭い批評家も大概は
生活を楽しんでいると
畏敬させられてしまう……

やおら煙立った
空気感を通じて遠くの
耳慣れない音が
響いて来るのだった

祭典を片付けるような
中止されたらしい
先延ばしにしてそうで
たぶん初めてだと
イメージが湧くかぎり

引きかけた雨垂れへ
心は平和そのものなんだ
春先の匂いがする
通りは濡れ放したまま
晴れ上がる様相ではないも
うっすら明るい

境遇

世の中が麗しく感じられた
些かも心に刻み付けたいと
まるで密かな証しのように

草木の生い茂る小公園では
陽当たりの風が優しかった
揺らめく光こそ眩し過ぎず
殆ども胸支えしない緑へと
空気の変わり様が快かった

些かも心に刻み付けたいと
通い路を行きかけるたびに
または眺めてみたとしても
取り立てるほどの差はない

ただ引き込まれただけでも
なんてかけがえなさだろう

現存は流れ去った思い出か
博されるとも期さずにいて
空気の変わり様が快かった

浄福

どうか願いを守らせて

辛さを折り曲げたはずだ
まるで神との会話のように
弾まなくても良かったら
たぶん気は済まずにいない

折り曲げたはずの節度は
会話のように刻み込めよう
良かったら充溢感がある
済まずにいない静粛なので

およそ出会さなければ
短いながら露呈された
体質よりもないのやも
傷付いた涙たちは好き
言語らしく詩情そうな

早くも震え出した辛さを
味わうほどにまるで神との
交流が甚だ弾まなくてぞ
活かせる無類のたぶん気は

よもや守りと祈りたく
まさか祈りと望むべき

敬服

僕とは違う
僕には不可能だ
気合いを入れるよりも
躍動感がなくなる
生命を免れる

世の中に逆行して
何を掴んだのか
計り知れない
僕の手の内にも収まらず
当て嵌まるのは
頑ななまでの
人間味だったから
賛嘆させられざるを得ず
愛憐も覚える

僕では全然と
行えやしないにせよ
生まれ付きならば
否定する余地もなかろう
容易に信じ難いほどの
破格的な現実だ

突発するべき
赤子の第一声が
小さく思えるのは
当たり前だとしても
産声ではないまま
崇めたのだった
如何に心酔か

星辰へ旅立つ
僕にも分かりはすれど
恰も霊験の如く
喪失した実在性で

アミュレット

近頃は鶸の囀りで
臍噛む意識も散り散りな
生活へ潤いを博した

快勝の笑みが齎され
想いは胸空くばかりだ
とても良い気分になって
浮き浮きの体勢だ

取り戻した美しさへ
粋狂している状態なのか
なんて復調だろう

空間を切り崩した場所に
現実は芽吹きを起こした
度重ねと放逸されながら
まるで大海原も猛々しく
遊泳する座頭鯨のような
色鮮やかに編成している
虹たちの光芒が印付けて

画期的な起床から
引き出し得る社会を吸った
ところが息苦しくなり
歴史性へ出向くまで
瞼を封じて感じるべきと

行き先は森厳だった
枯れ草に筬虫が粘っている

ひたぶる香高く
芳醇と触発される風情も
興じられて止まない

こよなし

去り行く日月に笑っていた
手を振ってもない放れ際で

くれぐれ情念を練り直すな
皆目も素知らない大空には
どんな要所が待ち受けるか
貴方へ解き明かさないまま

平坦な足取りで進み始める
かつて幸甚の一頃だったが
厳しい山並みに翻弄されて
停滞せざるを得なくなれど
釈然と生じた出来事なんだ

貴方も手を振らないにせよ
やはり称えられたかぎりか
日月は去り行ってしまうも

遣り遂せたのは賢明だった
あらゆる作為を出し抜いて
廃るはずならば小さい名を
先立つにや思い止まるので

ついぞ示し合わされもした

イノセンス

風が透き通ると
夢が詰まった楽音は止んだ
郷愁を誘われて
聞き耳を立てていた
渋みは
慌ただしい日頃の
休止符だろう交えならば
物象もない
名手の妙技こそ
如才もなく珠玉を
紡ぎ出し続けている
刹那よりも
心に迫り捲る
美しさそのものではないか
開陳される情感が
品性的な芸術も
飛躍しながら
本丸の魅力を打ち消された
家並みへ
見下ろす如く
恰も希薄な
想いがするまで
味わうこともできない
音色なのだから
宥らかに流れ込む内面性で
生まれ出した
絶品ではない趣きにしろ
泣き濡れざるを得ず
篤と惜陰だ

最愛物語

君が思い起こさせる使者は
僕を優しくした基準だった

雨にも倒れず
森の中を彷徨っている
妖精は慕わしく
けども察してしまう
悲しい別れの足音が近い
だから心して
見守るべく泣かず
消え去った

高く掲げられた理想へ
ヒースも咲き並ぶ
大地は素晴らしかったが
なんて冴え様だろう
夜遅く満月が出て来たので
厚い雲に
覆われて湿った
気配がする
虚ろさかしら

使者に考えられる僕がいた
思い起こさない君ではない

新たな日毎も
何のその
こんなはずではなければと
忍ばない手前にああも
小さな光が溢れて行った
希みも薄い
まるで宛外れのような
滲んで暈ける
さもしさやかくて
求めなくてはならないまま
徘徊った町筋だ
雲雀が飛んで来るとは
奇異だった
いきなり
人生も分からないか

憑いていたんだ
基準ではないとしても
繰り返したかった
優しいみたく

アマランス

寝付かれず
薄明かりの垂れ下がる
空を見遣っていた

夜に雷鳴が轟く
雨降りだった

紫で染まる度に
勢いを増して来るんだ
風も相当な強さで
吹き及ばずにいない

月と星も
厚い雲で覆われながら
銀河へ
留めてしまったのか
光を
送り出すのではなかった

稲妻が走る
闇だ
戦ぐ雨粒も
暗い

消灯された室内は
枕へ頭を載せたまま
横臥すばかりだ

微睡みが迫る
夜の闇に
紛れて
静寂が
間もなく
溶け

透明な招待状

愛されて
考えずにいなかった
貴方は旅支度と
出向いた

どこか明るく
気持ちが繰り広げられる
幻のような場所を

知っているか
ナイフを突き止めたか
肉を貫いて骨へ
携わったのか
流れる血は閾の中で
たとえ神秘化されるにせよ
僕が歌うまでか
恋しつつも
ポシャり
世の常が潰れ去っても
死ぬなよな

きっと明るい
気持ちを繰り広げられる
幻みたいな場所だ

掻き集めて
送り届ける人たちに
叫ばれながら
かくも花吹雪だろう
端倪すれば

笑うと良い

デスティニー

気付かないように
目尻で察知して欲しかった
呆けている暇もなく
見出されたはずだから
振り向かないで
結局は押し切れなくても
心を掴んだ
一幕だったと

僕よりも貴方は
生活を輝かしく飾るんだ
きっと幾年が過ぎて
果たされなかった
悲しみこそ疼かれども
相見えないどこかでならば

遣って行け、
星たちも嗾けながら
現れて来る……
光たちは囃しながら。
星たちは遣って行き――、
光たちが現れて来た。

着想よりか恋だ
色味も拐かしく得るので
きっと日時を通じる
まるで見覚えなく
引っ付いていた後目だった
胸では懐けやしない
触れるまでに刹那的な

セピア

謀らずも過ぎ去った

持ち併せる想い出は
忘れ物と取り戻しながら
狙い通りだった慰めを
手に入れる
財産なんだ

僕にとって
吝かではない
さらば異なるだろうか
命題とはいえ
現時点も絶え間なく
かくや心待ちにされた
絆そのものだ
としても

どうやら
築き上げたかったので
入り浸りが淫らしく
蠱惑され兼ねないにしろ
巻き込まれて……

心待ちにしていた
忘れ物と取り戻させる
築き上げなくてはならない

染み付いて来る個人性へだ
今直ぐ振り向くので

ホロロン

僕は吟じているか
発した言葉が残響と共に溶け去って行く
詩は聞いている
天使の耳で、睦まじく
ならば受け入れよう
吟じない僕はいない
沽券に関わる硝酸の溜まり場が捻り出してぞ、
たとえ慚愧の気持ちは此方へ与るよりも、
侵蝕されなかったようだ
なんで不名誉なのか
受け入れろ
詩は聞いている
吟じる僕なんだ
泥塗れの抑圧ではない
取りかかる材料も落ちて来ない滝が流れている
弾くのか、弓琴を
速やかに、天使の指で
するや受け入れるほどに涙が透き通る
僕は吟じないのか
聞かない詩を
まるで食い込まないような森があった
良いのか、迫る形で

  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 最愛物語の第一部|詩集
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