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些細な日常

風のシエスタの第一部|詩集

メリーゴーランド

母親と子供が乗っている
それぞれの馬の背に
父親は乗り込んでいた
小型の馬車で
空席もあるのだ

以前は馬車に
彼氏と彼女が乗り込んだ
十回目のデートで
馬の背に乗っている
少年は面識もなく
男子と女子だった
前方の栗毛の馬は男子で
後方の黒鹿毛の馬が女子で
成年の二人を牽いている
白馬には
客人は皆無だった

飛行機もある
プロペラが付いていて
丸みを帯びたフォルムだ
側面に52と刻印が打たれ
全体的な塗装は灰色の
明るめな一人用で
子供の次に
飛び続けている

父親は目先の白馬を越し
妻へ眼差しを注ぐ
右横には四歳の息子がいて
見ていると瞳が曇った
向かいのビルの影で
陽光も浴びない

七月十八日の午後三時
シフォンケーキと似通う
かくも鮮烈みたいな
黄褐色の天幕へ
突き出した三角錐が
風にも動かされないまま
天使がいるのかとも
想わされ兼ねない
喜びを細かく放つのだった
太陽を反射しながら
母親のリボンも
半袖の袖口に
揺れないではいなかった

入れ替わる直後で
大型の馬車が走って来る
四頭で牽かれる
前列も後列も鹿毛だ

職員が手をかける
鉄柵は薄緑色だった
所々のペンキも剥げてなく
新品そのもので
出入口も同様だったのだ
錠前で閉じられていた

無人の飛行機が来る
先程とは相違して赤かった
二人用の縦長のボディで
身を乗り出す子供も
感じているのかどうか
追い付けやしないにしろ
最も気に入るかぎり
何れは飽き足らなくなると
楽しみにさせられて

へっちゃら

思想の闇に触れると
脅かされる恐怖がある
謀らずも共有しない無知の
自分は他人ではない
富士山を背景にしながら
写真を撮影しても
幸せな気分にはならないで
邪悪よりも現れて来ず
蝕まれざるを得ない
どうせならば行おうはずか
認めるべきと喝を入れる
勇気を持ってこそ
進み出さなくては不味い

もはや笑い種なんだ
嵌まった檄の飛んでもなさ
地球を恰も火星の如く
感じないでやいられない
精神的に崩壊しないかしら
一人ぼっちぞ有り触れず
見聞するのは異様だらけ
理性だけがただ堅持させた
さもないと打たれている
不快感で胸が焼かれて
取り合えない心理のかぎり
終末の世の中へ居座るな
まるで殻を破るように
地へ足を着けながら
再出発してみたかったんだ
尽きない現実性がある
弱くても保ったまま

へっちゃら
断乎と呼びかける
へっちゃら

反響も起きないで
へっちゃら
生命の喜ばしさだ
へっちゃら
錯乱を超えていた

肝心要の和みではないか
平らではなかったにしろ
たとえ起伏が激しくとも
争いを気に入らないような
内面よりも考え付かない
なんて長丁場だろう
三十年目の初志として
明白に受け入れているんだ
もしや桜吹雪へ
懐かしめなくもなければ
切れ切れの雲間だった
広範囲へ貫徹される
今も昔も変わらないも――
子供から大人まで
遥かな宇宙が恋しかった

麻衣で憩う日曜日

ぽつねんと
広がって行くような
大きさの中の小ささがある
まるで涙だった

通って来る
たぶん天使とすれば
遊泳せずにはいない状態だ
一目散なのかも

早く急いで
海水の鮪たちよりも
縮んだ距離こそ感じさせて
とことんと翔る

久々に泣け
神様も渋く及ぼした
現実そのものの風情なのか
殆どは長らえず

どうしても
超えられ得ないまま
有さなくてはならなかった
熱望と似ている

Eなエラ

希望があれば何だって
できなくはないだろう
気に召すのも否定せず
神様ぞ激怒していない

誰だって実際でないと
したくなくなるかぎり

理性は助け合いを願う
正義は殺し合いを断る
真理は信じ合いを募る

誰だって現実でないと
したくなくなるかぎり
普遍があれば何だって
できなくはないだろう
心に兆すのも非難せず
神様ぞ泣哭していない

善良は啀み合いを疎む

意に介すのも反対せず
神様ぞ侮蔑していない

社会は認め合いを熟す
世間は寄り合いを祈る
宇宙は離れ合いを憂う
生命は張り合いを遺す
夢路は愛し合いを閃く

どうであれ

現世へ疲弊した
色味は寂れた黄緑で
駆け巡っている
模様も心理の外観を
恰も虚ろな如く

昨日の今日の
頭が揺すられながらか
今日の明日の
揺れるだろう頭ならば
明日の昨日の
頭を揺らせるのだった

人生を棒に振り
生活も無に帰しては
居付けやしない
波浪が吹き上げると
終わりに終わる

昨日の今日の
回想されないながらか
今日の明日の
されてまい回想ならば
明日の昨日の
回想されるべきだった

地平で為し得る
実効的な芽生えこそ
斜交ってしまい
象徴化された内包へ
愛着を就かせて

セビリアが好き

今日という日を
忘れ去った今こそ
薔薇が散り忘れ
誇り高くも薔薇は
咲き誇っていた

美しいスペインの風のなか

日を忘れ去った
今こそ薔薇が散り
忘れ誇り高くも
薔薇は咲き誇っていた
今日という

去った今こそ
薔薇が散り忘れ誇り
高くも薔薇は咲き
誇っていた今日という
日を忘れ

咲き誇っていた
誇り高くも薔薇は
薔薇が散り忘れ
忘れ去った今こそ
今日という日を

アンダルシアの土地のうえ

誇っていた誇り
高くも薔薇は薔薇が散り
忘れ忘れ
去った今こそ
今日という日を咲き

薔薇が散り
忘れ誇り高くも
薔薇は咲き
誇っていた今日という
日を忘れ去った今こそ

遥かなスペインの空のもと

散り忘れ誇り
高くも薔薇は咲き
誇っていた今日という
日を忘れ去った
今こそ薔薇が

誇り高くも
薔薇は薔薇が散り
忘れ忘れ去った
今こそ今日という日を
咲き誇っていた

シェルターブロー

人間は叫ばずに
口を閉じたまま
子猿を抱き抱え
満足そのものだ

僕の他には誰もいない
他の何かが僕ではない
何も僕には他ならない

子猿は殺さずに
腹を据えたまま
人間を覗き込み
快活そのものだ

他の誰かが君ではない
誰が君かは何でもない
君の何だと誰もいない

どんどん壁を叩くな
全く煩いではないか

引き返せない現実性がある

君の他には僕もいない
他の何かが君ではない
何も君には他ならない

ぼこぼこ間を壊すな
全く酷いではないか

詩歌は責めずに
罪を咎めたまま
生活を作り直し
充足そのものだ

引き返せない現実性がある

うかうか気を窶すな
全く汚いではないか

僕の何かが誰ではない
何が誰かは君でもない
誰の君だと何もいない

ベリーゴールド

真夜中の
人影もない街角で
信号機が灯る交差点に
端くれの野良犬が立ち寄り
雑草を舐めると
旗を掲げた車が来て
停まりながら
連れ去ってしまったのか
空白が残る

子供は遊んだ
砂場で山や川を造った
高く固めて
トンネルを掘ったり
刻んだりした細さがある
次いでホースで
水を流してみるや
遠くに海が現れるのだった

ひっそり
防風林で囲われる庭自体へ
太陽が笑いかけた
宙には雀が翔け回って
気候も温暖だ
咲いた葵は疎らに揺れる
なんて快いのだろう
行商人も訪れず
家屋の棚ぞ
帽子と得ない

真昼間の道中に
赴けば長くもなろうか
台所では鯉が捌かれていた
手術される癌は治りかけ
寺院も教条を励む
チェーンが華々しく
響き渡るんだ

クールメソッド

肝心要なのはではない
好奇心よりも
逆理的だと期待外れだった

引っ張り上げろ
まるで魚釣りのように
透き通る歌を
張り上げるんだ
まるで花盛りのように
上げてしまって
魂が現れ来る

強度的ならば肝心要だろう
期待通りこそ

対岸を色付ける
かくも絵描きみたいな
向こうがある
かくも音作りみたいな
向こうがある
気付ける対岸を
かくも仕込みみたいな
味付ける対岸を
向こうなんだ
かくも手捌きみたいな
対岸を糊付ける
向こうなんだ

好奇心としてというか
社会性でなくてはならない
肝心要にせよ

去り行く歌へ
芸術ではないか
まるで墓参りのように
消え往く魂は
まるで肌寒さのように
情緒でもないか
立ち退く頃だ
まるで数多くのように
現実ではないか

好奇心だった
逆理的では強度的ではない

インタールード

頭を冷やした
終の住処といいながら
なんて幽閉的だろう
苦しみは愛ではなかった
豆腐屋の角を曲がり
一息を吐いて
知恵の輪も解けたにせよ
ハムスターが走る

気の毒な話だ
誰が蒔いた種なのか
悲しみが哀しみへ変わる
財産で何を得たのか
哀しみで喜びも遠くなる
辛抱せざるを得ないだろう
明け渡しと引き換えに
大らかなビジョンを
埋没して……

考え通りではない
非常に良いんだ
心得の風流が丘の上へ凝る
余りに求め過ぎていた
執着だったんだ
たとえ熱烈だとされても
臍を噛むような
思い通りでもなければ
バナナを剥こうか
烏が羽搏く夕焼けの空には
釣り合いなので

一言もなかった
ムルチコーレが繁り
行き去った日は戻らないと
改めて知ってみて尚も
分からずにいないのは
程々と詰めるべき根なんだ
憔悴しては免除されない
打って出たかった世の中へ
悖るのが太々しく

そこはかとなく

地球に揺れる
足の裏から頭の先まで
歌われながら
胸へ響く生命を感じた
揺れているや

世相は恰も風貌の如く
漂うのだった
気不味くならないまま
印象が揺れる
町の端より村の際へと
歌われながら
心に響く歴史を感じた
揺れているや
旅程ならば天文だろう

漂うのだった
傍の光でも央の闇でも
揺れる状態か
堪り兼ねてしまうには
歌われながら
愛と響く霊魂を感じた
揺れているや

肝が据わりもしながら
漂うのだった
連綿と織り成されてぞ

主意考

カフェオレを飲んで
ベーグルを食べた
琥珀の首飾りを眺め
椅子を座り傾ける

立方体が溶けたんだ
多角形が出来る
正六面体だったのが
潰れてしまった
平らではなくなると
球体へ膨らんだ

ポスターは北海道だった
店の壁へ貼られていて
四隅がピンで刺してあり

何がいいたいのか
何もいわされたくないんだ
誰にいうべきかは
誰もいわせたがってなくて

BGMが流れている
窓際で人通りを覗けば
本は読んでなかった
気持ちも悪くなかろう
冗慢に過ごしたまま

窪んだ球形がある
恰も勾玉の如く
穴が貫通するんだ
五円か五十円か
貨幣と類似しては
粉々になるので
消滅してしまった

ストローの口を丸めて
蝶が羽根を動かした
静かに飛び立ちながら
宙で猶予うも美しい

美しい気持ち

ではないか
ズバリ
どんな話も止めにしよう

あちらでは
口付けを交わす恋人たちが
抱き締め合っていた

こちらにも
咲き誇っている花弁たちだ

そちらだと
宝石たちは輝き出しながら
光を放ち続けていて
明るいのだった

思いやする
どんな話も浮かぶならば
ピポパ

恋人たちは手を繋いで
ベツレヘムの庭園を徒いた
あちらだと

花弁たちが夜露に程濡れる
こちらでは

明るいばかりの宝石たちが
光を放ち続けてさえぞ
益々と輝き出した
そちらにも

ホロロ
どんな話も尽きないまま
でしまった

ネオンテトラ

人生の流れを泳ぐ
二度と繰り返されはしない
自己発見の生き写しだ

なぜか気付かずに
知りも分かりもしなかった
問いで満ち溢れながら
向上するべき魅力を
纏っているので

考えて動いたとしても
正しかったのどうか

水中で彷彿させる
昔の日毎が思わしいと
まるで心を擽られるような
知覚力を掻き立てて

考えずにいないはずだろう
たとえ変わり果てても

胸に残る当時へ
感じ取らずにいなかった
幸徳が一度きりなんだ
取り逃さない魂胆の
行き先も穿つ

率直な話

生きたいと
生きていたいと
感じているにも拘わらず
手遅れなのか
遠回しに打ち殺される
打ち殺させている
肯い得ない罪深さではなく
僕を感じたのだった

僕は幾年も
認められなかった
生きるべき世の中ではない
世の中に生きてはいない
生きてはならないと
認めざるを得なかった
幾年も幾年も
僕は気に入らず
存在こそ
生きず

最近になり
気が変わったんだ
生きていられる
世の中であるかぎり
生きなくてはならなかった
出遅れなのか
僕を認められるにせよ
精根が尽き果ててしまう
気もする

死にたくない
死にたくないんだ
死んでしまえば
死ななくなるだろう
死ぬべきでもなくなり
死ねはせず
死ぬよりかないどころに
死にさえやしないとしても

急遽だ
僕には感じられる
心残りがなく
恋愛も仕事も遊戯もなくて
生きたくなった
因縁もない
心残りそのものがなくて
生きたくなるのだった
感じられてならない
如何にも
然り

  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 風のシエスタの第一部|詩集
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