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些細な日常

終わらなくてもの第二部|詩集

かんかんウィーク

土台
にっちもさっちもならない
皆が僕を
宿世へと押し上げたか
鮪の刺し身で
些やかな倖せを貰い
承けた

いいたくても
吸い物まで誂えられるから
附せておいた
縮緬雑魚と若布が
ぷかり漂うので
口も慎み
味わわざるを得なかった

漆に被れて
包帯を巻いた手の甲は
治ったにせよ
人が変わるのも
容易では
ない

免じるべきだった
君が何か淋しく
肩も疎まないでいるので
立ち後れたと
してみるんだ
諸共に
摘み取る鉄線や
有機質なので

落下傘ナウ

及んで丸まる
かくも白玉みたく
気持ちを捏ねて
日本晴れと
謎かける
心は透き通っていた
緘黙の口を
尖らせがてら
とにもかくにも

不世出な
身に余る栄えが
受け兼ねた
想いだったのではないか
大袈裟に
取り持たれてや
照れる
生活面なんだ

僕自身も
落下傘ナウ
琵琶の音へ耳を貸した
詮索もしてぞ
荒まずにいない人間性の
向後へ鑑みる
真っ平な
気持ちを伴った
君こそ
奇縁もありやしないと

日本晴れ
想いだったのではないか
真っ平な
とにもかくにも
照れる
詮索もしてぞ

首を回すのは
吝かではなく
くすり兆すにしろ
転がり込んでは行けない
段々畑へ
紋白蝶が翔んでいた
境遇の近く

瑞験

明るくなって来た
先細いとはいえ
少しずつ確保して行くんだ
紛れもない

気負うほどに
息も洩らさないまま
手に付かなかったので

錬成するかどうか
着実に続かせるんだ
遂げ切ってやしなかった
尚一層とは

地歩を固めて
僅かでも捉えていた
幸徳へ注ぎ込んでこそ

胸臆歌

匂い立つような
ブーゲンビリアが咲く丘で
待ち倦ねている

貴方は現れない
およそベルギーの暗夜月を
齧ったにしてみては
筋違いでもなかったか
出出しが耳新しく
触れ合った言付けも
日増しと膨らみ行くので
ただ目立たないだけに
透かし得る面差しへ
名高いばかりと考えられた
仕舞いに――

アンドロメダへ眩暈だ
工夫された小説を読み耽り
入り組んだ格子路で
不覚と蹲ってしまったのは
嬉しがれずも哀しめない
境涯の押し込みだった

誂え向きの白木机の下に
丸まって置き身がてら
まじなわずにはいなかった
灌漑の手長海老こそ
知覚するまで振動するから
ともあれ錬成なんだ
物笑いの種よりも遥遠な
生き直しとして――

担ぎ上げる僕がせずにいた
愛の一本槍を手堅く

秋晴れ

追い付かないか
出遅れては涙ながらに訴えられる
生き延びようと抱えていた夢を果たせば
秋晴れが思念を催す折りも折り
殻を破って行くという
そうだ
親切な思い遣りを優しさと履き違えたんじゃない
いつもどこか
階段を自力で降りて行かないような裏悲しさに煽られる
なんだ
蜘蛛ならば防ぐし
頼みにされるや快く引き受けよう
行き過ぎではない
涙も
清らかさの余り
秋晴れは空と眩しげに均一化していた
醸される
面白くないなんて身勝手だったとか要した
かくも咲き急いで
付き合いが散ってしまうと影も象もありはしないもん
今再び考える
実生活を
染みる
存分にだ

日夜の詩

僕を過った魚がいる


岩礁の人魚や森の釈然との間の浅瀬付近だ
段差の中に住処がある
魚は僕へもてなした
引き入れて英気を養わせるんだ
死ななくて良かった
まさか認めずにいないらしい
僕は魚に連れられて帰趨する

粘ったとは出し切らなさだ
泣いても喚いても乾いた浜岸で感じるのが涙の海ではなかったか
魚へ僕は表した
たとえ浅瀬付近の住処は引き払われるとしても遣り残さないように
渾身だった

バラの花のもとに

かねて見詰めた皃は一月の寒さへ結び付いた
芝生と宵
大きな照明でぽっかり切り取られていたんだ
付き合いが長くなると欄外なのか

     *

とても大事だったにも拘わらず
解き放たれて徐々に徐々に要らなくなってしまっている
試しに正反対ならば余りに幸せ過ぎたといおう
まるで物語のようだ
手に入らなくとも咲き出してしまった
常識に迷い
揺れたのも習慣だった
やはり誤魔化しこそあり得ない気がする
辺りは煌めきで満杯だった
とりわけ考えた
バラの花のもとに
――楽しいな
沈黙がずっしり身に堪える今となってや言葉も谺するばかりだ
冷めない情熱を得ながら口を噤んだのは性格かしら
臨むほどに彩られた
皃以外を見詰めない

心の支え

蝶が翔ぶ
黒い羽根に碧い文様がある
なんて名称なのか
忘れた   というよりも覚えてない

分かっておいで
歩み寄るまで除けるんじゃない
 降り出しそうな天候の水溜まりで幾匹か戯れ合っていた

どうか認めて 欲しい
覚えてないのは忘れてないんだ


胸に留めなかった
雨雲が嵩んでも 仄照る空と     羽搏いて舞う
光沢も閃く
まさか悲しみは悟られない

   翔ぶ蝶だ

野末

息長く走りながら
子兎は遊んでいた
ところがぐったりする
淋しい気持ちで
終わりを予感したのか
ならば力を貸そう
活かすんだ
君が知る通り
夢にも思われない
つまり限界だった
走るには足が重くなる
越えて行け
出会いへ

変遷

微かな光が見えて来た


まるで隧道を抜け出すような心持ちがする





残りは少しだ

極々






真っ暗な闇が蔓延るにせよ




割れないばかりの行く手か



広がる

内々

地球上へ足が降りた
人生とは何事だろう
ヒントがある
即して吹いた
まるで果てしなく遠く至り着いた心情が厭世観を洗い直すようだ
星も瞬く
今晩はゆっくり眠れるかな
マダガスカルの猿たちを思い浮かべて
誰の手も借りずに向かった先だ
やおら自転車を引っ張り出すには滋養しておく
嘆かわしくも記した
拠り所がなかった

沼部で想うと白鷺

僕は引き擦ってない
ラッパズボンにチューリップハットも似合わないか
とはいえど
聞かせたい歌がある
青春の忘れ物のような
まるで憧れにソックリの心意気だった
分かるのか
危ない香がするわけではない
触れ合いもドタバタしないにしろ
疎外される一方なんだ
ただ焚き付けたのは君しかいない

リメンバー

悔やんでますか、彼女を。自分も同じように弾けたはずだ。言葉は要らない。とすればニッコリ笑って看守ってあげて下さい。彼女は僕を察しない。もちろん考えてやしてもみないんです。坂道を転がって行く斑猫に興味を引かれた子供ではないにせよ、なんて可愛いだろうと心も繋がる想いがします。しませんか。危険を冒し、キキーと車のエンジンをかけてアフリカでは最南端の地、すなわち希望峰から飛び降りるつもりでも出任せだと存じます……。僕は貴方と遭遇して夏を覚った。真っ盛りの熱情そのもので、写真立てと懐かしむのも一苦労では済みません。いっそ連れて行きたかった、ワンダーランドへ。ありますよ。きっとどこかに推量するまでもなく、恋人が手招きを行っているのは明らかですから。永遠は遠い。字句通り、涯しもない永さで分析されるにや頭を如何程と抱え込ませたでしょう。彼女は貴方ではない。いっても円柱のゲートを泳いだりなんぞ相応しくないとするのが正式でした。慌てず、怯まず、拱かず。まるで自身と御座れだった。通り過ぎたって殆ども交えたのが仕残しとしてです。僕は羨みません。

オンリーデス

優しくて可愛い
凹んだ友誼に明るく振る舞うのも情が通い合っている
さもないと不味いと判るんだ
正統的ではない
誤解されるような真似はしないとは年の功か
裏返せば何度も邪険にされたはずだ
取り返しは付く
ある人は永代に素晴らしかった
天使として扱うと少しずつ悪魔に似て来てしまう
何を考えてか
意向があるとすれば誰のゆえに武者震いも示さないのだろう
可愛い嚔を聞いた
目にする動作も優しさに溢れるばかりだ
さてや顔立ちこそ忌まわしくなったのは社会上の諍いでもない
譲られて通い合う情へ想いが行き届かなかった
全く以て呑み込まされる
洞察するにしろ
キングコブラが毒牙を剥いて乞わずにいなかったのではないかしら
噛み付くな
今日
憐れみが嫋やかに消え沈んで行くにも拘わらず

メンタリティー

星は穏やかに楽しんで
追い抜いても後ろに控えていると
知らせるだろう清らかさを返せば
余程の眼差しが質した宇宙へ
過ごし方も慎ましく
考え入るのだった

ゴシックの寺院が
闇へと溶けるような雰囲気だ
専ら物陰で潜む
虫の息に総毛立つほどの
感覚こそデモーニッシュとはいえ
冴え冴えな頃合いの磁力か
引き寄せられる働きで
静かに喜びを願いながら

およそまるで
走り去った黒豹に従って
人形劇が幕を降ろし
取り越されもしなくなる
謎めきを残したまま
日の出を迎える世の中と
せずにいない

些やかな詩を献じた
弱くても心の繋がりがないよりや
益しなのは誤りないケースなので
剽軽にぼやけてしまったともあれ
勢い付いたんだ

常久の三日月への連作

小さい嚔
見逃さないよ
だから
意地悪になるなんて
古い古い
恋じゃないの

――守り方も片思い


首飾りが庇った
気立ての彼女は
限りない想いこそ伝えずも
日々に慈しんで

――ワウスイート


瞳を凝らして
見詰めてみると
罪作りなのは
君よりも僕かどうか
確かめるにや
心持ちが広かった

――アンバランス


恋泥棒め
引っ叩いて止して貰うぞ
貴方が痩せ細って
干からびる以前に
縁起でもなかった
飾り付けられた節制だ
澄ました感触を

――水玉紀行


振られないでね
手厚い仕打ちへ
込み入らないと

――素晴らしい人

ナイーブ

これからだよ
ホントに

大空も見当たるかどうか
想っているのさ
好きだから
心ごと惹かれながら
引き上げはしなかった
考えてごらん
優しくした友達こそ
同じではないと
さもなければ
美しかったはずだ
惜しまれる胸のうちも

僕以外だって
眩し過ぎるくらい
ただ立ち去ってしまっちゃ
堪らなかったわけで

何が何でも
変えたりやしないんだ
可愛いな

  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 終わらなくてもの第二部|詩集
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