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些細な日常

救いの手の第一部|詩集

緩い風

無理はするな
付いてるじゃないか
君には僕が
さもなければ放られて
良いんだよ
頑なにならなくても

やってごらん
できるから
優し過ぎたのは
可笑しみのせいだろう
どんなときも
嘘ならば本当さ
考えてもみないか
諦めないで

林檎なんか
欲しくなくたって
くれるかぎりだもの
貰っておくに
越さないね
只淋しいにしてが
人らしくあり

運も君へと
叛かれやしないんだぞ
歯に衣を着せずに
今正しく
余計みたいだったか

板を割るそばにしかし

見かけたんだ
通り過ぎて行く君を
又戻って来るかどうかも
俄かには示せないまま
少しだけ咽ぶような心地で
食い留めもせず

追い払ったりもしない
はぐらかすばかりだった
日々の切なさへと

回した腕が
廃れないまで
益しな方だろう
情緒を持ち上げるために
風も立ちつつ

互いに暮らす
身を寄せ合って
睦まじい仲ならば
板を割るそばにしかし

僕も消えてしまい
知られながら芳しいほどの
夢物語だったにせよ

尚ではないのかしら
微かとも探るように緑色だ
放り出せやしないで
遠ざかるとしても
背けられない

ダイアモンド

どこへも行きはしない
呼びかけているのに
心より嘘偽りなく
いなくなってしまうとか
信じられなくて

暗い街が眠り続ける
真っ白な雪に覆われながら
問われ得る絆も深く
あるはずだったり

君は可愛い
可愛い僕の
恋人だから
だからもう
出ておいで

姿隠さずに
完璧だった全てならば

どこへも遣りはしない
訴えかけているけど
心より空衒いなく
いなくなってしまうやら
断じられなくて

狭い街が交え続ける
真っ当な熱に包まれながら
解かれ得る絆も強く
あるはずだったし

僕の可愛い
可愛い君ぞ
恋人ならば
ならばさあ
来てごらん

形違えずに
魔法だろう全てなので

君は可愛い
可愛い僕の
恋人だから
だからもう
出ておいで

姿隠さずに
完璧だった全てならば

清純な川

疲れに疲れて
争いすらもない
人の世で待たれた
死へ赴くよりも
表したいかぎりで
平和を好む

参るほどの
疲れだが……

身に染みて
感じるためか
嬉しさも格別で
止まらないくらい

参れども
参れども
僕以外ではなくなって
気分こそ
まさか激しくも
萎え衰えつつにせよ
煮え滾るんだ

本物が良い
不断に所有される
原則なのか

地球の食卓

僕たちはべきだ
首肯する
しない欲望ではなく
伸びて行くを
山帽子の木

立たせながら
立つと思いながら
思わせない立ちにこそ

祈るようにも
頼むようにでも
縋るみたくか
叩くようにとも

する木肌の
するする滑る
滑りたいする
する木肌の
せざるを得ない
するするの手によって
木肌のする
感触を留めながら

胸に
心にするする
忍び寄る影のような
手によってかも知れない
する木肌の
子猫を撫でた
するするの
するするの手によってかも知れない
する木肌を

僕たちは
僕たちは
僕たちは

べきだ
べきだ
べきだ

忍従しながら
消化された全ての
ナツメグのために
するする問う
何をよりももっとずっと
遠くへ

べきだ
僕たちは
とでもかとでもより
北へ向けて
とにかく
ビッグバンへ
寄せてではなく
狙って
ふほ

捧げ持て
引き絞るを
弛みなく
変え行け
打ち込みを
紛いなく
飲み込め

染み切れ
考え抜け
浮き立つを
呼び戻せ

皆が助けてくれるなんて
気持ちだけで嬉しいよ
どんなにか辛くとも
宥らかな愛で守られていたら
大丈夫に決まってる

頑張り過ぎるな
自分しか見えてない
傷付きたいのか
およそ暴発らしく
痛々しいぞ

声にも溢さないまま
弱みを察しては
一人ぼっちの暗がりで
笑えもしなかった

頑張り過ぎるな
自分しか見えてない
傷付きたいのか
およそ必死らしく
痛々しいぞ

責め苛まれずに
空こそ見上げてみて
傷付けやしない
だから本当なのに
思い遣りも

得てして
力を発揮したにも拘わらず
知らなかったようだ
情けへ触れるまでは
優しさの深さにね
恥ずかしくなるばかりを
引き隠らせる

声にも溢さないまま
弱みを察しては
一人ぼっちの暗がりで
笑えもしなかった

構いはしないさ

世界に刻まれる言伝て

影の身
どこかへ失せて呻きもない
責を負った余りに惨め過ぎる状態を帳消しにされた後で
聞かれていた歌も略同じく
なくなり
四散した――

僕は魚釣りに励んだ如く
恰も竿を持ち堪える格好だ
離れて行った情愛は
やはり近付いて来ないという
様子で肩を
叩かれだのしない
没入らしく

身の影
祈りは神の代わりに天使こそ呼び寄せた
終わらない歌が流れるや
機械の辺りも汗塗れだった
日本人が団子を食べる
風は穏やかに吹き遣りながら休息を取らせる
光に
殆ども見えて来ずに及ぼす闇の彼方へ
月と太陽の間でひく付く虫の腹が弛むと
死海に浮かぶ玩具の雛が
手を離れた
心も

戯けてみせる胸裏は
芸術的な格子を徐々に徐々に突き上がり
湯気ならば硫黄から立ち昇っていた
自然の全てが薄紫に包まれるままだった
目を擦っても
仄かな火へ油を継ぎ足せども
剥げ落ちない

交錯する
想いの刺繍も枯れ切って
花輪を稚拙に掴ませた
冷たい孤独感で
腰回りが空くくらいしか
現実は訪れず
そして優しく蹴飛ばされた犬が
頭へと出戻って
糸巻きの地球を考えても
意向せず
重力は薄らいでいた

爪痕

鯉が泳いでいる
カルナック神殿の近くで
焚き火を囲むはずならば空想だ
ナイル鰐か
実家の池のどちらでも
手は挙がる

富士山の八合目から
突き出して来る螺子回しは誰のものでもなく
傷んだ写真の
隙間風を越えたところに
飛んでいた雁が視界をゆっくり逸れて行くや否や
朝早く湯あみされた
風呂場の脱衣所へと
太陽は目を瞑るのだった

森が走り
石臼は嘆くように倒れ
カムチャツカ半島も急いで後を追った
早いのはケチャップだ
死ではない
まるで訴えている
エリマキトカゲの獅噛み付く
ペルシャ絨毯を焦がすな
尻こそばゆい気がして

釘を打つ
胸は刺さない
除外されたエクソシズムか
蛇腹状の置物ならば
玄関先で恐らく
帰りを待っているかも知れない
懐かしい人間性の
決まりが悪いと
力が入らずにいない熱も籠る
動作だ

犯した罪を
自身で裁いて償った青年がいる
実際は勘違いだった
愛に騙されたよりも
恋が読めなくてこそ
青年は人混みに紛れて打つかり合った親好の薄い乳房へ
嫌らしさを企てるしかなく
罵りを噛ましながら
泣きじゃくった十五年後に
額が晴れたと感じたかぎりか
輝く星へ青年も
正義を宣った

こっそり
氷を溶かしたまま
奥まった水を溢れさせる池で
幾つかの光も滑らずにいず
辺りへ凛とした佇まいが生じた
空気は静かに
流れてしまうようだ
瞬く間に生きるといった
考えを抱かせる

狼の五つ子が
出回っているとすると
インドネシアが想像されたのは
生活苦のためらしい
さもなければ地だ
空洞化した道筋がある
平和への

辛子色の服を着た町巡り

似合わないと考えながら
選ぶなんて可笑しいにしろ
気分的には避けられなかった

行くところ
嫌われたと案じて
行くところ
情けないと省みる

暫くして精神的に参った頃には
何でもかんでも外見のせいにし

辛子色の服を着た町巡り
止めた方が良いかどうかで
行ってしまうのだった

自分を出してみたら
まさか苛まれ放しとは
好きも嫌いもありはしない
願い下げるくらい
辛子色の服を着た町巡り

迂闊なのかも知れない
七日もやらなくても
手を引きたくなる
来たくてしたとすれば
舌を覗かせる自分がいた
競り合うべき値打ちか

辛子色の服を着た町巡り
人気を保たれ得るようにも
行ってしまうのだった

欲するや概ね運ばない物事が
内面性を蝕むわけだから
殆ども感じ過ぎな頭を緩ますと
苦痛は癒されるに違いない

鈴蘭水仙が咲いていたんだ
水仙よりも可愛いげな
麗しさは鈴蘭ではない
可愛いげな麗しさで

神経を尖らせるほどに
途轍もなく呼び覚まされて
感動そのものかしら

夜中に生じた嵐で
落雷の衝撃が走った
裂け目は椎の木の幹を穿ち
傷も大雨で流れ去られた

捉えなくては
認めなくてはならない

日差しの明るく垂れ込む教室で

昼休みなどに同級生の男女を
二人組の名前で黒板に記した学生が考え難い

嘘臭いのも日常的にはかしら
もしも本当ならば熱々で結婚したのかも知れない
一緒になる気持ちとしては分からなくはない

むしろ良い話のようだった
持ちかけられた本人たちが急いで消すかどうかで判断されるにせよ
止めて貰わないと困るのでなければ恥ずかしく照れている心の声に他ならない

多少とも広まるや外堀を埋めて堆く聳える城のように初めての結び付きが生じないともかぎらない
仲人もしてやったりと満足げに拍手を贈る場合だってある

または黒板に名前といえば日直の欄にしか出て来ないよりか目立ちそうだ
有り難いとも吝かではないだろう
皆に認められて知られているわけなので
しかも望み通りの恋人同士となりながら思い出にも花が咲き乱れるくらい

大した経験もなかったなんて卒業と同時に嘆いたりしなくて済むんだ
可能性ですらは否定されないところか
噂話で持ち切りな昼休みなどに

敵わない貴方こそ

片割れの桜桃を投げ落とした
沼は執拗に黒光りしているが
記憶を沈め去るに任せたまま
思念も呑み込まれて行った

停められた自転車は小さい
切り株を跨いで風を封鎖して
涙の井戸も汲み上げられると
鳴く鶯の声が忽ち通って来るし

弁当箱を開けて胃袋を満たした
水筒の飲み物で喉も潤してか
草地で引っ繰り返ってみたんだ

胸の上に紋白蝶が留まるので
却って動かされない現実だった
過ごし易さに一眠りしておく
少しだけ軽くなる心情だとわ

好きで好きで堪らない

恋人を性格で選ぶ
顔に出ているとすると面食いだ
良いのはどんなか
一言では思い遣りに尽きる
難しく考えるな
だって食い違いも生じ得るから
自分は思い遣るにも拘わらず
相手に受け取って貰えない
となると
性格で選ぶためには
結果を気にしてはならないんだ
感じ方が重要で
感じ方が共通かどうか
翻ってみるやとかく
相手にも無理だったんだ
自分こそ思い遣りがなければ
なのでやはり
人間を磨くのが正しい
思い遣りで判断されるかぎり
なくてはならないという
恋人を引っ捕まえられるのも
感じ方に基づくし
放り出されなくなるように
幸せが手に入る

軌跡としての身体

泳ぐように生きていると

様々な認識が自分のものになり
共通点で囲まれる世の中だった

生きていると気にかかる

他人のままのものも多いらしく
実りを得た蜜柑とも似通われど
毟り取って食べられはしないで
只単に手を付けるのも憚られた

どちらでも
印象的には等しく
現状も持ち越されるにせよ
等しいから感じられる
ぶくぶく出て来た泡の現状には
新しさを覚える

気にかかるほどに考えた

自分のものになる様々な認識と
多いらしい他人のままのものは
存在の知られた形に違いはない

どちらでも
奥深いところが可愛くて
どちらでも
豊かなところが美しくて
分かってしまわずにいなかった
関わり合いを受け入れるや
新しさを覚える

考えたみたく泳ぐように

変わり過ぎた殆どの感じ

社会はグラタンに近い
出来立ての美味しそうな状態で
絶え間なく加熱されている

思想によって
見方が違って来た
暫くして漸く慣れた頃に
焦点も定まるという

存在が姿を現すのだった
薔薇の鎖で繋がれて
非常に流動的な仕方だ
隣り合いながら化身はある
事物も埋め尽くされるままに

方法を打ち砕いた
認識へ向き出して
本質が跳び跳ねる

現象としては
ドーベルマンに吠えられ
驚かされたカメラが
少しだけ動くんだ

生命の時空も裏返してみれば
波動に起因する主体性か

人間へ帰り着いていた

金蚊が遣って来た

円盤型の蓋を引き上げる
水底から圧力を受けながら
紐が切れるかも知れないと
手繰る腕に緊張が走った

物事の過程しか興味もなく
目的や結果も要らないとき
関心のある対象は触発的で

金蚊が遣って来た

命一つ包まずに
緑の背中に黄の光沢こそ放って
太陽が覗いた縁側を
のっそり進んで行くのだった
飾りの掛け軸は揺れている
年老いた夫婦も昼寝か
尻尾を立てて嗅ぎ付かれ
身を固めているや
子猫のそばで

金蚊も遣って来る
金蚊で遣って来て
金蚊は遣って来い
金蚊が遣って来た
金蚊の遣って来れ

高く上がる花火が失せると
寂しげな虚しさに襲われるんだ
況んや気持ちも一杯では
必要を迫られる仕残しだけに
泣きは入らなかったし

理想像

何を考えていたの
貴方は何を

分かるようで分からない
分かりそうならば
分かりたくない

もしや連れ戻したって
笑ってしまうにせよ
分からないままでは悲しいよ

笑えなくなると
白塗りでお化けの振りでもして
こっそり出て来て
又笑わせられた
貴方こそ知っていたんだ
想えばきっと本当に
考えていたから

声ならば声だといって
置き去らないで
応じてくれれば
有り難かったのは
知っているのではないかしら
誰でも有り難かった
貴方が誰でも
応じてはくれなかった
貰われもしないで

碌でもないね
勘を働かせても
分からなければ酷い
真実みたいなね
恥ずかしげもなく

人生は綺麗だったのだろうか
知らないとはいわせない
いわせられなかった

生気的な宇宙

寛ぎを味わいつつも
手術台は引き浚われて
金木犀の香が広がった
辻馬車が坂を駆け上がると
静けさを増した巷で
小料理屋の暖簾が揺れている
額に撫で付ける風を受けた
希望が地へ落ちたまま
転がって行く石は崖に消えた
海は荒々しく波立ち
土砂降りの雨が夜を覆った
巣穴で千鳥の雛は震えるも
轟く雷鳴に血の気を引いて
灯台へ漁船も向かって来た
林檎が立っていた
天狗猿は樹上を降りる
驚きで包まれた精神に
意識は飛んだ
口当たりは大根の葉だった
可愛さが胸を抉った
机に蜂蜜を溢されるや
月輪熊も冬眠から覚めて
森ならば微笑ましく迎えた
八ヶ月後に歴史が動いた
永遠と運命の入れ替わりか
明らかな芸術性がある
沈んだ牡蠣は仰向けの格好だ
心魂が突っ切って行った

高校時代の少年期には

本ばかり読んでいた
一人でいつも過ごされた
胸に誓った言葉があり
友達は要らない

考え出してみると
進学するべきではなく
戒めの気持ちとして
孤独を課したはずなんだ

不確かな現状なのか
勉強へも大して身が入らず
のんべんだらりと生きて
本しか読まなかった

本こそ狙いたがり
打ち込むように読書へ耽る
発見しようとしたのかも
確かな現状を掴み取るために
正しく書かれている
本が好きだった

自分探しの旅で
知らない世界へ飛び込めば
惨めさも免れるほどの
本と出会うという

避けられないし
貪りながら疎まれもしないや
本のみ求め切る

  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 救いの手の第一部|詩集
  • 最終更新: 

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