英語の小説、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの死体泥棒の日本語訳で気になった英文法に不可算名詞にも使われる数量詞のsomeやanyがあった。
someやanyが付くのは可算名詞だけではない
Thus he made it his pleasure to gain some distinction in his studies, and day after day rendered unimpeachable eye-service to his employer, Mr. K—.
こうして彼はそれを自分の喜びとして中々の立派な成績を自分の学究で上げようとしながら、日毎、非の打ち所のない面従後語を己の雇い主、K――氏へ示した。
数量詞のsomeとanyは何れも名詞の前に付いて「幾らか」から「可成の」まで任意の数量や性質の度合いを意味する。
どちらも数に関係する限定詞/決定詞なので、または日本では形容詞の限定的用法(名詞に付いて使われて直接的に修飾する場合の形容詞)として捉えられもするけど、その対象となる名詞は同じように数に関係する可算名詞だけだと思いがちながら必ずしもそうではなかった。
例文の「distinction」のように数がはっきりしない抽象概念や性質、または液体や固体や粉といった形が定まらないような物体などの不可算名詞にもsomeやanyという数量詞が使われる場合があって可算名詞に使われるのと等しく任意の数量や性質の度合いを意味することになる。
日本語からすると非常に分かり難いものの一つかも知れない。不可算名詞は数がはっきりしないから数とは関係ないと捉えると数量詞のsomeやanyは全く付かないと思ってしまう。しかしそれははっきりしなくても数がないわけではなく、何となくはあって確かに数えられないだけなのではないか。数量詞が可能名詞にしか付かないわけではないかぎり、不可算名詞を数と関係があるものと捉え直すとsomeやanyが使われることももっと分かり易くなる。
不可算名詞にsomeやanyが付く場合の意味合い
数量詞のsomeとanyは何れも名詞の単数形と複数形に付く場合に意味合いが異なる。
someとanyの単数と複数での意味合いの違い
- someと単数形の名詞
- 何かの~:性質の推定的な意味合い
- some person/何かの人/ある人
- someと複数形の名詞
- 少しの~:数量の制限的な意味合い
- some persons/少しの人/数人
- anyと単数形の名詞
- 何れの~でも:性質の全般的な意味合い
- any person/何れの人でも/どんな人でも
- anyと複数形の名詞
- 少しの~でも:数量の網羅的な意味合い
- any persons/少しの人でも/何人でも
※someは「相当な」や「可成の」など、名詞の数量や度合いを反対に増やしたり、高めたりする意味でも使われることがある。
どちらも単数形に付くと名詞の性質の度合いの意味が増して複数形に付くと名詞の任意の数量の意味が増す。
someとanyが可算名詞に付く場合はそれらの後は「person」か「persons」のように単数形か複数形ではっきり分かれるから意味合いも直ぐに明らかだ。
不可算名詞に付く場合は単数形しかないけれどもsomeとanyの意味合いは必ずしも単数形の方だけとはかぎらないらしくて注意を要する。内容上、それ自体の数がはっきりしないせいか、場合によって複数形の意味合いの方も含むことが可能になっている。
I drink some coffee.
私は何かの珈琲を飲む/私は少しの珈琲を飲む。
Do you need any love?
君はどんな愛でも必要か?/君は少しの愛でも必要か?
someもanyも付く名詞が単数形の場合に性質、複数形の場合に数量の意味合いに向かうけれども不可算名詞だと単数形しかなくても複数形の意味合いを含むことがあり、それ自体では判別できないから前後の文脈からどちらの意味合いかを捉えなくてはならないとされる。
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