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些細な日常

副詞の最上級にtheを付ける場合|英文法

英語の小説、ロード・ダンセイニのウェレランの剣の日本語訳で気になった英文法に副詞の最上級にtheを付ける場合があった。

名詞なしに定冠詞が使われる

His horse it was whose cold neck Rold most loved to stroke, and it was Welleran whom the watchers at sunset on the mountains the most clearly saw as they peered towards the city.

彼の馬をその冷たい首をロルは撫でるのを何よりも愛したし、山脈の日没の見張りたちが町の方を熟視するときに最もはっきり見るのはウェレランだった。

The Sword of Welleran by Lord Dunsany(太字と訳文は筆者)

定冠詞のtheは名詞を特定するために使われて最上級では「the fastest runner」のように名詞を修飾する形容詞(限定的用法)の前に必ず付く。名詞が省略されて「the」と形容詞しかない場合でも文法上の位置付けは変わらない。

形容詞が「beautiful」とか長い場合の最上級には副詞の「most」が使われて「the most beautiful actress」なんて名詞を修飾する形になる。

副詞に定冠詞のtheが付く場合、形容詞の最上級の一部で、それらで名詞を修飾する、すなわち形容詞を介して最終的に名詞にかかっていると分かり易い。

ところがtheの使い方の例外として副詞の最上級、名詞のための形容詞ではなくて動詞を修飾するだけのときでもtheが付けられることがある。

例文の「the most clearly」は副詞の「clearly」に副詞の「most」を付けて最上級として扱っているけれどもそれらで修飾するのは動詞の「saw」だけにも拘わらず、先に定冠詞の「the」が付けられている。

副詞の最上級はtheを付けなくて構わないし、名詞を特定する定冠詞の一般的な用法からすれば必要ないとさえもいえるので、theを付けた副詞の最上級があるのは面喰らう。

なぜ副詞の最上級にtheを付けるか

名詞にかからなければ形容詞の場合(叙述的用法)でも最上級でtheを付けなくて構わないし、動詞を修飾するだけの副詞の最上級にもtheは付けなくて構わないわけだけど、付く場合があるのはなぜか。

調べると二つの理由が挙げられる。

  • 最上級だから付ける
  • 強調する意味がある

一つには英語で最上級が最も多く使われるのは名詞を修飾する形容詞の場合で、名詞が省略されて形容詞にしか付かない文章もあったり、先に定冠詞のtheが付くのが当たり前と捉えられるようになったせいか、動詞を修飾する副詞の場合でも同じようにするのが感覚的に合うために行われるといわれる。

むしろ付けない方が正式ではないというか、雑談などのちょっとした日常会話で付かないことが増えるし、付ける方が逆に幾らか畏まった印象を与えるかも知れない。

もう一つには副詞の最上級にtheを付けると付けないよりも印象がはっきりするように強調する意味があるといわれる。

定冠詞の名詞を特定する効果、内容を輪郭付けて伝えるような仕方が副詞にも当て嵌まって受け取られるかも知れない。

因みに日本の英語教育は形容詞でも副詞でも最上級にtheを付けると今世紀から変わって来ているらしいから近年だと副詞の最上級にtheを付けるよりもむしろ付けない方が珍しいと驚かれるかも知れない。

参考サイト
  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: 副詞の最上級にtheを付ける場合|英文法
  • 最終更新: 

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