雪山の崖を登る熊の親子への感動と野生を脅かすドローンハラスメントへの懸念 結城永人 - 2018年11月13日 (火) ロシアのマガダン州で熊の親子が雪山の崖を登るという野生の動画が撮影された。大自然を生き抜く動物のドラマが大きくて真っ白い空間に小さくて真っ茶色な存在で極めて対照的に分かり易く描き出されていて観る間に感動を呼び起こされずにいない。 取り分け子熊が可愛くて堪らない Fallen Bear Cub Climbs Back to Mama|ViralHog 親熊が先へ行くのを追いかけるけれども雪山の崖を直ぐに登り切れなくて何度も滑り落ちる。ずるずる面白がって遊んでいるのと変わらない様子だけれども親熊に置いて行かれるのは不味いし、少しでも間違えばどうしようもなく現世に別れを告げるばかりの今此処を命懸けで這い上がって行く姿に胸打たれるんだ。 一度は非常に大きな落下を余儀なくされる。岩肌に激突して死にかけるけれどもまるで不死鳥のように諦めないところがクライマックスというと本当に自然の芸術以外の何物でもない美しさに驚かされるんだ。もしも作者がいたならば人間ではなく、正しく神だろう。 子熊は最終的に雪山の崖を登り切って親熊に生きて追い付く。安堵してほっと胸を撫で下ろす瞬間、透き通った涙で心が甚だ清らかに洗われるように受け取るべき言葉をも忘れる。大自然を生き抜く動物のドラマ、すなわち野生のドキュメントにそうした無言の境地を味わいながら呼び起こされる感動に心は忽ち新たに包まれるばかりで、本当に素晴らしい雪山の崖を登る熊の親子の動画だと頷く。 巷ではSNSへの共有などから大きな話題になっていて公開されたYouTubeでの再生回数も一週間で百万回を越えたりもしていて凄い。 人々は勇気を貰ったと狂喜する Crowd with hands up by OrnaW / Pixabay 滑り落ちては這い上がる子熊の勇姿に人生の教訓を覚えるのは確かだ。小さくて弱くても諦めずに負けない気持ち、または挫けない心で頑張り抜いている感じがするのは抜群に格好良いと認めるし、可愛いだけでもないわけだ。魅力的な存在そのものの命の輝きに満ち溢れている子熊ではないか。人間にとっても現世に必要な真実は同じだから見習うには事欠かない。 どんなに辛く苦しい毎日を強いられても頑張り抜いてこそ望むべき明日を手に入れられるに違いないだろう。 しかし本当に素晴らしい雪山の崖を登る熊の親子の動画を観ていて一つだけ違和感が生じるのを否定できない場面があって訝しいんだ。 この動画が有名になるきっかけとなったのは、世界自然保護基金(WWE)のスタッフのツイート。17万リツイートもされたというが、「クマはドローンを怖がっている。」「ドローンハラスメントだ」といった怒りの声が集中したという。 崖を登るクマの親子をドローンで撮影⇒「クマがドローンを怖がってる!」と批難殺到!|ニコニコニュース|ドワンゴ いわれてそうかという感じなんだけれども子熊が最初に雪山の崖を登り切りかけたところで親熊が上から近付いて右手で追い払うような仕草を行った。追い付きそうな子熊を邪魔して反対に落とそうしているのではないか。あり得ない場面だと驚く。例えば三島由紀夫(小説家)が嘆いたような人間社会の不仲な親子関係ではないだろう。見方によって親熊は右手を伸ばして子熊を愛しく抱え込みたいのに無器用に失敗しているとも感じなくはないので、一つの切なさから何となく納得してはいたもののドローンのせいかも知れなかった。 ドローンの音だけでも、野生動物に与える影響は大きい。音を聞いた動物たちは、食べたり異性をめぐる争いを中断するだろう。影響がないように見える動物もいるが、大きな反応を示す動物もいれば、天敵を前にしたときのように警戒を強める動物もいる。 ドローン撮影の功罪 野生動物への影響懸念|ナショナルジオグラフィック日本版サイト|ナショナルジオグラフィック協会と日経ナショナルジオグラフィック 親熊は動画を撮影するために飛行中のドローンを聞こえる音などから敵と判断して子熊を愛するゆえに遠ざけて守るべく、敢えて右手で突き放したとすると本当に恐ろしい結果が人間によって招かれてしまっているわけなので、嘆かわしいかぎりだともはや呆れるしかない。 ドローンハラスメントと呼ばれる Drone in flight by Powie / Pixabay 英語でハラスメント:harassmentは悩ましや嫌がらせを意味する。動物の周囲にドローンを飛ばすのは固有の日常生活を妨害し兼ねない。自然保護の観点からは野生を脅かす。 かりに雪山の崖を登る熊の親子の動画はドローンハラスメントだとすると親子の余計な警戒で子熊が崖から落下して死んだ原因にもなり得たから酷かった。 熊の親子が横向きに雪山の崖へ入って行くのも不自然な印象を幾らか与えるけれども偶々と飛んで来たドローンから逃れるために普通ではない方向へ歩き出してしまった可能性もないわけではなくて最初から最後まで全てがなくて良かった動画ではないとはいい切れないのが懸念を募らせる。 オリジナルの動画はСпасение медвежонка на скальном обрыве(岩壁の子熊を救助する)で、撮影したMrDKedrovも金目当てや人気取りのためにドローンハラスメントで自分勝手に動物のやらせを企てるつもりはなさそうにせよ、もう本当に人類こそ地球上に最高権力を以て君臨するような時代ではないので、万物が共存する現実を理解しながらなるべく繰り返さないで欲しい。 ドローンハラスメントは昔はなかったドローンに纏わる新しい社会問題だ。気付けば人間は動物の写真や動画をただ撮影するだけだからどんな使い方でも構わないわけではなかったんだ。自然破壊に他ならない一つの野生を脅かす危険性を良く覚えていつでも注意して控える必要がある。 参考サイト息をのむ恐怖と絶望… 雪山を滑り落ちる小熊の逞しさにネットが絶賛 コメント 新しい投稿 前の投稿
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