合成界面活性剤のラウリルアルコールの硫酸系は皮膚の健康に注意して使いたい 結城永人 - 2019年10月19日 (土) 市販のシャンプーやボディーソープやハンドソープの洗浄成分に広く使われている合成界面活性剤は汚れを良く落とすものの皮膚に触れて何の支障もないとはかぎらないから注意して使わなくてはならないと考える。 Soap dispenser on bathroom sink by congerdesign / Pixabay 目次最も悲しいのは皮膚から水分が失われて乾燥や角化を招く皮膚の奥まで皮脂を減らすラウリルアルコールの硫酸系頻用されるラウリルアルコールの硫酸系の六つの洗浄成分化粧品の成分表示の名称と医薬部外品における成分名ラウリルとラウレスの違いと中和剤から来る性能の差各々の洗浄成分を皮膚の刺激性から捉えた安全な順番 最も悲しいのは皮膚から水分が失われて乾燥や角化を招く いつも表皮や表皮の一番外側の角質層の皮脂(油)が空気中へ水分が蒸発するのを覆うように防いでいる。皮膚を健康に保つバリア機能の一つだけれどもこれを脅かすのが合成界面活性剤なんだ。落とすのは汚れだけではなく、皮膚の健康に欠かせない皮脂も減らすのがどうにも避けられない。 普段、手を水に着けただけでも離して暫くすると手の水分が蒸発してパツパツに突っ張って感じる。合成界面活性剤のシャンプーやボディーソープやハンドソープを使うと皮脂が減るから水分が蒸発するのを止められず、パツパツが著しく増して来る。皮膚の乾燥が酷いと角化によってひびやあかぎれという傷ができたり、外部の刺激に弱くなって発疹や湿疹などの色んな皮膚炎を生じ易くなるから危ない。 因みに皮膚以外でも皮膚から体内に取り込まれた合成界面活性剤が細胞の発癌性を誘発するなどの病気の可能性が指摘されている。半年以上も排出されないらしくて皮膚から体内に取り込まれる合成界面活性剤の量は非常に少ないから実際の健康被害は殆どないだろうけれども留意したい。 巷の市販品のメーカーは合成界面活性剤の欠点をもう既に分かっていてそれを配合した洗浄剤には皮膚の低下したバリア機能を補填するための保湿剤や回復剤を追加するのが当たり前になっている。 しかし使った後に皮膚をパツパツに突っ張って全く感じないわけではないし、皮膚のバリア機能を維持する保湿性能は製品によって千差万別にせよ、何も考えずに須く安心して使って構わない状況ではないのも確かなんだ。 合成界面活性剤の中でも高級アルコール系、または石油由来の洗浄成分が多用されて数多くの洗浄剤が商品化されている。 高級アルコール系というのは分子式の炭素原子:Cの数が多いアルコールを指している。6以上、または12以上と聞く。取り分け合成界面活性剤で多く見かけるのは12のラウリルアルコール(1-ドデカノール/ドデシルアルコール)なんだ。分子式はCH3(CH2)11OHになる。ラウリルアルコールに基づく高級アルコール系の合成界面活性剤のうちで、さらに硫酸系が洗浄力や気泡力に優れて特に有用だけれども皮膚への刺激も大きいらしいから注意して使うために覚えておくと良いと思う。 皮膚の奥まで皮脂を減らすラウリルアルコールの硫酸系 炭素数が十二のラウリルアルコールの高級アルコール系の洗浄成分でリン酸系とカルボン系と比べて硫酸系は表皮内の一番外側の角質層まで皮脂を減らすと分かっている。 洗浄剤の疎水部には炭素数12のアルキル基が多く用いられている。そこで疎水基を一定にし親水部構造の異なる洗浄剤により過酸化脂質及び皮表脂質の除去率の違いを評価するため,KDP,KL,KDSの3品について洗浄試験を行った。過酸化脂質の場合,いずれの洗浄剤も角層深部まで除去していた。皮表脂質については,その結果をFig.-7に示した。 リン酸(白線)と硫酸(影線)とカルボン酸(黒線)が個別に表される。 図―7 違うタイプの界面活性剤で角層深部に関して表皮脂質が残された割合。 ※テープストリップ法と吸着法(セロハンテープと化粧用吸取紙)を順次と組み合わせて採取した皮脂の試験の回数毎の残余量の割合が計測されている。 これから分かるように,過酸化脂質を角層深部まで除去し,皮表脂質は角層表層のみを多く除去する洗浄剤は3品の中ではリン酸系のKDP,硫酸系のKDS,カルボン酸系のKLの順であった。また,KDPやKLは表層の皮表脂質しか除去しないのに対し,KDSは角層内部の皮表脂質も除去していた。硫酸ドデシル=ナトリウムは皮膚乾燥落せつ(屑)を人工的に起こすものとして良く知られている界面活性剤である。KDSも同様な作用があると推測されるので,角層を乱し内部まで浸透することにより細胞間脂質を始めとして天然保湿成分等を流出させ,ついには角層のバリアー機能の低下をもたらす可能性も考えられる。したがって,皮膚疾患を未然に防ぐためにはリン酸系,カルボン酸系,硫酸系の中ではリン酸系の洗浄剤が好ましいと思われる。 遠藤正行と鷺谷広道も真知田宏の角層中における過酸化脂質及び皮表脂質の分布と洗浄による除去(グラフの文章の翻訳と※印の説明は筆者) 皮膚のバリア機能の一つの皮脂を減らす高級アルコール系の洗浄剤は必ずしも健康的ではないけれども研究によるとラウリルアルコールの硫酸系に可成の刺激の強さがあって使うと皮膚疾患を未然に防ぐには好ましくないように皮脂を回復するのも大変になってしまう。 一般的にいって物質の分子量が五百以下で水にも油にも溶ける性質がないと肌から浸透しないようだけれども洗浄成分の界面活性剤はそれ自体の特徴として親水基と親油基を持つから後者の条件を間違いなく、そして前者の条件もラウリルアルコールの硫酸系などは三百前後が多くて大抵は満たしているわけだ。 実用上、大きな問題は起きないにせよ――さもなければシャンプーやボディーソープやハンドソープといった商品に配合して認可されるべきではないだろう――皮膚が弱って乾燥や角化を招き易い状態だと用心するには越さないと感じる。 頻用されるラウリルアルコールの硫酸系の六つの洗浄成分 市販のシャンプーやボディーソープやハンドソープはパッケージの裏のラベルの成分表示で、どんな洗浄剤が配合されているかが確認できる。 幾つもあってどれが洗浄成分かは示されないけれども使われている分量が多いほどに先に記載されていて、大体、洗浄剤の洗浄成分は中心的な素材として他よりも多く使われているから成分表示の最初の方に並んでいる。 高級アルコール系のラウリルアルコールの硫酸系に注目する。何れも陰イオン(アニオン)界面活性剤のタイプに含まれて乳化や分散性に優れ、泡立ちが良くて温度の影響も受け難く、洗浄成分として便利なんだ。さらにラウリルアルコールにかぎらず、硫酸系は石鹸よりも洗浄力が強くて水を選ばず――ミネラルが多く含まれる硬水でも効力を発揮する――他の成分と混ぜて加工し易く、人体や環境への病毒性も極めて少ないから化粧用の洗浄剤のシャンプーやボディーソープやハンドソープなどに相応しい。目下、洗浄成分として頻用されるのは六種類が見付かる。 化粧品の成分表示の名称と医薬部外品における成分名 ラウリル硫酸Naラウリル硫酸ナトリウムラウレス硫酸Naポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムラウリル硫酸アンモニウムラウリル硫酸アンモニウムラウレス硫酸アンモニウムポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液ラウリル硫酸TEAラウリル硫酸トリエタノールアミンラウレス硫酸TEAポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン ※Naは「ナトリウム」や「塩」の表記もある。 ※ポリオキシエチレンは「POE」(Polyoxyethylene)の表記もある。 ※ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液はエチレンオキシドの付加モル数が通常よりも少なくて1の場合(比較的に洗浄力が強くて泡量が多いタイプ)に「(1E.O.)」が追加されてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)と記載される。 ※ポリオキシエチレンの表記はエチレンオキシドの付加モル数によって「ポリオキシエチレン(2)」や「ポリオキシエチレン-3」のように数字が追加されることがある。 商品によって洗浄成分そのものは同じでも表示名が変わる場合があるから混乱しないようにしたい。 市販のシャンプーやボディーソープやハンドソープは「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」(化粧品公正取引協議会)によって化粧品に分類されて商品の成分表示の名称は「化粧品の成分表示名称リスト」(日本化粧品工業連合会)に従って付けられる。ただし化粧品の能力だけではなく、殺菌や保湿などに薬効があって医薬部外品に指定された商品にかぎって成分表示の名称が変わってしまう。医薬部外品の化粧品は日本化粧品工業連合会の自主基準として成分表示を行うとされて「化粧品の成分表示名称リスト」とは別の「医薬部外品の成分表示名称リスト」に従って成分表示の名称が付けられる。 医薬品部外品の成分表示の名称に法的な取り決めはなく、商品によって通常の化粧品の成分表示の名称が使われる場合もあるようだ。 ラウリルとラウレスの違いと中和剤から来る性能の差 取り上げる六つのラウリルアルコールの硫酸系の洗浄成分は何れも椰子油などから抽出されるラウリルアルコールを硫酸化してさらに特定の中和剤によって強度の酸性を下げてアルカリ性に近付けて合成されてラウレス硫酸の陰イオン(アニオン)界面活性剤としてシャンプーやボディーソープやハンドソープに使えるようになっている。 種類は使われた中和剤によって大きく三つに分けられる。日本語だと名称の最後の部分のNa(Natrium/ナトリウム:中和剤の水酸化ナトリウムの一部)とアンモニウム(アンモニア)とTEA(Triethanolamine/トリエタノールアミン)なんだ。 ラウリルアルコールの硫酸系の中和剤のタイプ別の詳細記事 ラウリル硫酸Naとラウレス硫酸Naラウリル硫酸アンモニウムとラウレス硫酸アンモニウムラウリル硫酸TEAとラウリル硫酸TEA 三つの中和剤のタイプはさらに二つずつラウリルとラウレスに小さく分けられる。 ラウリルのもの 活性要素の硫酸エステルが直接的で洗浄力と刺激が比較的に強い傾向がある ラウレスのもの 活性要素の硫酸エステルが間接的で洗浄力と刺激が比較的に弱い傾向がある ラウリルのものはラウリルアルコールと硫酸によって陰イオン界面活性剤になる硫酸エステルを直接的に取って来る。 ラウレスのものはラウリルアルコールを先ずはエチレンオキシドの付加重合で加工してから硫酸によって陰イオン界面活性剤になる硫酸エステルを間接的に取って来る。 一般的にラウリルのものがラウレスのものよりも洗浄成分としての能力を完全に発揮できるから洗浄力と刺激が強くなる。 調べるとTEAのタイプはさほど変わらないけど、Naかアンモニウムのタイプは相当に違う。分子量がラウリルのものよりもラウレスのものの方が可成と増えて要するに分子のサイズが大きくなって皮膚の奥まで浸透し難くなっている。油汚れを落とす力は下がるにせよ、皮脂を減らす健康上の弊害は著しく少ない。 概してラウレスのものは皮膚への安全性を高めるためにラウリルのものの改良型として開発されているんだ。 その他、低濃度でも泡立ちが良くなったり、水に溶け易くて直ぐに無色透明にもなったり、洗浄剤に配合するのが適するような性能が増している。 ラウリルアルコールの硫酸系の六種類はどれも硫酸エステルが活性要素として機能して汚れを落とす作用を示すのは変わらない。 追加される中和剤の違いがラウリルアルコールの硫酸系の洗浄剤の性能を左右する。 陰イオン活性剤は一般に強親水性であるからその親水-親油の釣合を変えるには,親油基中のアルキル鎖の炭素数を変えるか(実施に困難 が多い)親水基の塩基の種類を変える必要がある。Na→K→NH4→アルカノールアミン→シクロヘキシルアミンの順に親水性を弱くすることができる。たとえばトリエタノールアミンセッケンはほぼ親水-親油性が釣り合つているので広い範囲に乳化剤として化粧品に応用 される。 川上八十太の界面活性剤の化粧品への応用 ラウリルアルコールの硫酸系の洗浄剤の性能を根本的に変えるのが中和剤から来るタイプ毎の親油性という油への溶け易さになる。親油性の度合いが上がると反対に界面活性剤の水に溶けて油汚れと皮脂を引っ張る力が弱まるから洗浄力と刺激が下がると考えられる。 情報によると三つの中和剤のタイプについてNa、アンモニウム(NH4)、TEA(アルカノールアミンの一種)という順番で親油性が上がるらしいので、反対に洗浄力と刺激は弱まる、いい換えると油汚れを落とし難いものの皮脂を減らさずに皮膚の健康を保ち易くなる。 Naのタイプ親油性が低くて水から油汚れを引っ張る洗浄力は強いアンモニウムのタイプ親油性が稍低くて水から油汚れを引っ張る洗浄力は稍強いTEAのタイプ親油性が高くて水から油汚れを引っ張る洗浄力は弱い この性能の差は化粧用のシャンプーやボディーソープやハンドソープでは保湿成分などの他の何かを配合する際に油性でも取り込み易いという利点にも繋がる。 実際の商品では健康と美容に拘泥ったのはTEAのタイプ、安価で基本的なのはNaのタイプ、両方のバランスを取ったのはアンモニウムのタイプのように使い分けられるかも知れない。 各々の洗浄成分を皮膚の刺激性から捉えた安全な順番 ラウリルアルコールの硫酸系の洗浄成分で懸念される皮膚へのダメージが少ないのは六種類のどれか、バリア機能を司る皮脂を減らす洗浄力の強さによる皮膚の刺激性から捉えておよそ安全な順番を考えてみる。 洗浄剤で使って皮脂を減らさずに皮膚の健康を保つ可能性 ラウレス硫酸TEA_高ラウリル硫酸TEA_高ラウレス硫酸アンモニウム_中ラウレス硫酸Na_中ラウリル硫酸アンモニウム_低ラウリル硫酸Na_低 ※ラウレスのものの肌への浸透力に影響する分子量を決めるエチレンオキシドの付加モル数はTEAのタイプは1で四百十六程度、Naのタイプとアンモニウムのタイプは3で四百二十一程度と四百十六程度を想定している。 ※ラウレス硫酸アンモニウムはエチレンオキシドの付加モル数が1の成分名がポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液のバージョンにかぎって安全性は低くてラウリル硫酸アンモニウムの性能に近い。 全般的にラウリルのものよりもラウレスのものの方が間接的な活性要素で洗浄力が下がるのと分子量が増えて肌への浸透力が下がるから皮膚へのダメージは少なくなる。 そして中和剤はHLBによってNaよりもアンモニウム、アンモニウムよりもTEAの洗浄力が下がるから皮膚へのダメージは少なくなる。 中和剤はそれ自身の分子量が決まっていてNaが二百八十八程度、アンモニウムが二百八十三程度、TEAが四百十六程度で、多いほどに肌への浸透力が下がると考えられる。 TEAのタイプはHLBが低くて分子量がとても多いからNaのタイプとアンモニウムのタイプと比べても皮膚を減らし難くて皮膚の健康を最も保ち易い。 ラウリルとラウレスのどちらが安全か。TEAのタイプは珍しく、分子量の差が付かないようなので、活性要素の効力の差のみからラウレスのものがラウリルのものよりも洗浄力が低いとするとラウレス硫酸TEAがラウリル硫酸TEAよりも洗浄力が弱くて皮膚の刺激性が低くて安全と捉えられる。 Naのタイプとアンモニウムのタイプの洗浄力は殆ど変わらなくて分子量も同じくらいだから幾らか後者が前者よりも弱いだけだ。 それぞれにラウリルとラウレスを比べると同じくらい洗浄力が下がって皮膚の刺激性が上がると考えられる。 逆にいうとラウリルのものはラウレスのものよりも皮膚の刺激性が下がるためにラウリル硫酸Naとラウリル硫酸アンモニウムが安全ではなくて洗浄力の差から後者が多少とも益しだから前者が最も安全ではないと捉えられる。 Naのタイプとアンモニウムのタイプで、それぞれに分子量の差はラウレスのものがラウリルのものよりも明らかに皮膚へのダメージは少ないけど、ただしラウレスのものの分子量はエチレンオキシドの付加モル数によっても差が付いてエチレンオキシドの付加モル数が増えるほどに洗浄成分の分子量が上がるようになるから一概には捉えられない。 巷の洗浄剤には2~4の三つの範囲で良く配合されるらしいので、かりに真ん中の3で考えるとラウレス硫酸Naが四百二十一程度、ラウレス硫酸アンモニウムが四百十六程度で、やはりラウリルのものの場合と同じようにアンモニウムのタイプがNaのタイプよりも肌への浸透力が低くて多少は益し分だけ安全性が高いと捉えられる。 分子量からするとTEAのタイプの四百十六程度と大差がなくなるけれどもタイプ毎のHLBの差が、結構、大きいから肌への浸透力が同じくらいとすればNaとアンモニウムのタイプの二つのラウレスのものは皮膚のダメージが大きくて安全性が下がると考えられる。 ラウレス硫酸アンモニウムの場合、エチレンオキシドの付加モル数が1の洗浄力が強いバージョンも良く見かける。成分名でポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液と数字を付けて記載される。分子量が三百二十七程度だから性能はむしろラウリル硫酸アンモニウムに近付いて皮膚の刺激性は高い。少なくとも通常のエチレンオキシドの付加モル数が2~4のラウレス硫酸アンモニウムと共通点は薄いと注意したい。 参考サイトまずは知ってほしい、石けんと合成洗剤の違い界面活性剤の主な性質と種類化粧品はお肌に浸透……しません! コメント 新しい投稿 前の投稿
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