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些細な日常

do one's bestは頑張る気持ちを積極的に表す熟語ではない|英文法

英語の小説、チャールズ・ディケンズの信号手の日本語訳で気になった英文法に積極的な気持ちを表す熟語ではないというdo one's bestがあった。

最善を尽くすという意味があるにせよ

A disagreeable shudder crept over me, but I did my best against it.

気持ち悪い戦慄に徐々に襲われたが、私は抗って最善を尽くした。

The Signal-Man by Charles Dickens(太字と訳文は筆者)

日本語だと「一生懸命に努力する」とか「死に物狂いで尽力する」なんて頑張る気持ちを意味するのが最善を尽くすという表現で、それ自体に価値があって人間的に素晴らしいみたいな世界観から積極的に使われるけれども英語では必ずしもそうではない。意味は同じだけれども反対に消極的に使われてしまうようで、そのままでは大きな価値はなくてすなわち良い結果こそ強く求められるために頑張る気持ちとして重視されるのも第一ではなくなる。

do one's bestは何がどうなるかも分からない状況、特に不幸や恐怖などの自分の力が発揮し難い負の感情(悲しみ)と共に激しく苦闘するとか厳しく奮闘するなんてニュアンスが非常に大きいようだ。

または良い結果が強く求められない場合、何かと初心者が失敗しがちだったり、打ち負かすのが無理な相手や物事に立ち向かったり、上手く行かなくて当たり前なときに「やれるだけはやる」という意味合いで使われることもある。

do one's bestと似た表現にtry one's bestもあって最善を尽くす気持ちを表すけれども「やるだけをやってみる」という意味合いが増して良い結果に結び付くかどうかはさらに不明で、どうなるかは自信が持てないと消極的に使われる度合いが一層と高くなるらしい。

日本語の最善を尽くすに近い英語表現

良い結果を強く求めながら頑張るという日本語の最善を尽くすの気持ちに近い英語の表現は他に考えられる。

I am committed to the work.

私は仕事に専心する。

実際に取り組むという頑張り。

I won't let you down.

私は貴方を落胆させない。

きっと成果を齎すという頑張り。

I'll get it done.

私はやり遂げよう。

着実に終わらせるという頑張り。

You can count on me.

私を宛てにして良い。

期待に応えるという頑張り。

Leave it to me.

私に任せなさい。

頼りになるという頑張り。

I'll take care of it.

私が引き受ける。

途中で投げ出さないという頑張り。

相手を応援するときの頑張れの英語表現

これもdo one's bestやtry one's bestを使うと意味は最善を尽くせ、頑張れでも英語では先が見えない、良い結果に自信が持てないというニュアンスが増して日本語の気持ちに相応しくない。

Good luck!

幸運を!

相手の成果を期待する気持ち。

You can do it!

君にはできる!

不安や迷いを払拭させる気持ち。

Keep it up!

そのままで!

好調を保って欲しい気持ち。

Hang in there!

持ち堪えろ!

諦めないで欲しい気持ち。

Go for it!

やってみて!

怖れないように励ます気持ち。

慣用句

Break a leg!

頑張れ!

意味は脚を折れだけれども演劇で「Good luck!」というと却って「Bad luck」(悪運)を呼び寄せて不吉――緊張し過ぎるせいか――だから反対に前以て不吉な言葉をかけておく、または役者が演技に成功して最後に観客に何度もお辞儀すると脚を折った(膝を曲げた)格好になるからそのような良い結果を得るのを見越していうなどの説がある。

I’ll keep my fingers crossed!

幸運を祈る!

意味は私は指を交差しておくだけれどもアメリカでは手の人差し指に中指をかける仕草が十字架を表すので、神の加護による厄払いを得て物事が捗って目標へ上手く行くように期待する言葉になる。

その他、スポーツの観戦などで端的に励ましの声をかけたり、檄を飛ばしたりする場合には「Go!」(行け!)や「Come on!」(来た!)が良く使われる。前者は良いぞと好調をさらに増すような景気付け、後者はこれからだと下がり調子を持ち上げるような活気付けのニュアンスがある。別々の状況によって使い分けられる。

参考サイト
  • ブログの投稿者: 結城永人
  • タイトル: do one's bestは頑張る気持ちを積極的に表す熟語ではない|英文法
  • 最終更新: 

コメント

  1. メールで“仕事は大変と思いますが、頑張って下さい”と言いたくて"do your best"を使ったのですが、別の人に「このメールを受け取った人に、自分はよくないのか、と思われてしまうかもしれないよ」と言われました。何を言われているのかよくわからなかったのですが、この記事を見てなるほどと思いました。次回から“Good Luck”を使うようにします。有難うございました。

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