英語の発音記号:母音と子音の発音の特徴
日本人が英語が不得意な最大の原因は発音の違いにあると思う。英語には日本語にない発音が倍以上も含まれている。全てしっかり覚えておかないと聞き取りはもちろん伝わるように話すのも困難になるから注意したい。

本稿で発音記号は国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)を使う。巷では他のものが使われている場合もあるけれどもIPAは比較的に詳しく発音を区別して表せるからしっかり覚えるには適していると思う。
同じ単語でも地域などで発音が違う場合があるので、世界で使われる頻度が高そうな発音記号を集めている。
英語の発音の特徴の日本語での置き換えはどれも完全に正確というわけではない。部分的に同じものしかなさそうで、かりに重なるとしても実際の発声の仕方が似たかぎりなんだ。日本語による英語の発音の表記は概して学習の補助として便宜的に捉えているので、そのままですっかり当て嵌まると混同してはならない。
良く使われる母音
短母音
短く発音する母音。
- ʌ
- あ_深めのあ|Run(rʌn)|半開後舌非円唇母音
- ə
- ぁ_弱めのあ|About(əˈbaʊt)|中段中舌母音
- ɚ
- ぁ~_るへ向かう弱めのあ|Mother(ˈmʌð.ɚ)|R音性の中段中舌母音|アメリカ英語に多い
- ɜ
- ぃあ_いのようなあ|Cut(kɜt)|半開中舌非円唇母音|アメリカ英語に多い
- ɝ
- ぃあ~_るへ向かういのようなあ|Bird(bɝd)|R音性の半開中舌非円唇母音|アメリカ英語に多い
- æ
- ぇあ_えのようなあ|Cat(kæt)|準開前舌非円唇母音
- i
- い_浅めのい|Happy(ˈhæp.i)|準狭準前舌非円唇母音
- ɪ
- ぇい_えのようない|Ship(ʃɪp)|準狭準前舌非円唇母音
- u
- ぉう_おのようなう|Manual(ˈmæn.ju.əl)|狭後舌円唇母音
- ʊ
- うっ_引き戻すう|Book(bʊk)|準狭準後舌円唇母音
- ɛ / e
- え_強めのえ|Bed(bɛd / bed)|非円唇前舌半広母音
- ɒ
- ぁお_あのようなお|Not(nɒt)|開後舌円唇母音
長母音
長く発音する母音。発音記号は短母音に長音符の「:」が付く。
- ɑ:
- ぉあー_伸びたおのようなあ|Calm(kɑːm)|開後舌非円唇母音に長音符
- ɜː
- ぃあー_伸びたいのようなあ|Bird(bɜːd)|半開中舌非円唇母音に長音符|イギリス英語に多い
- iː
- いー_伸びた浅めのい|Peak(piːk)|準狭準前舌非円唇母音に長音符
- u:
- ぉうー_伸びたおのようなう|Pool(puːl)|狭後舌円唇母音に長音符
- ɔː
- おー_伸びた強めのお|Source(sɔːs)|半開後舌円唇母音に長音符
二重母音
二つ重ねて発音する母音。発音記号は短母音が二つ並ぶ。
- aɪ
- あぇい_浅めのあにえのようない|Time(taɪm)|開後舌非円唇母音に準狭準前舌非円唇母音
- aʊ
- あうっ_浅めのあに引き戻すう|House(haʊs)|開後舌非円唇母音に準狭準後舌円唇母音
- əʊ
- ぁうっ_弱めのあに引き戻すう|Go(ɡəʊ)|中段中舌母音に準狭準後舌円唇母音|イギリス英語に多い
- ɪə
- ぇいぁ_えのようないに弱めのあ|Here(hɪə)|準狭準前舌非円唇母音に中段中舌母音|イギリス英語に多い
- ʊə
- うっぁ_引き戻すうに弱めのあ|Pure(pjʊə)|準狭準後舌円唇母音に中段中舌母音|イギリス英語に多い
- ɛə / eə
- えぁ_強めのえに弱めのあ|Air(ɛə / eə)|非円唇前舌半広母音に中段中舌母音|イギリス英語に多い
- ɛɪ / eɪ
- えぇい_強めのえにえのようない|Case(kɛɪs / keɪs)|非円唇前舌半広母音に準狭準前舌非円唇母音
- ɔɪ
- おぇい_強めのおにえのようない|Boy(bɔɪ)|半開後舌円唇母音に準狭準前舌非円唇母音
- oʊ
- ぅおうっ_うのようなおに引き戻すう|Low(loʊ)|円唇後舌半狭母音に準狭準後舌円唇母音|アメリカ英語に多い
参考:Vowel Sounds Diphthong Sounds
良く使われる子音
有声音
声帯の振動を伴って発音される子音。
- b
- ば/び/ぶ/べ/ぼの出だし|Beautiful(ˈbjuː.tɪ.fəl)|有声両唇破裂音
- d
- だ/で/どの出だし|Dinner(ˈdɪn.ə)|有声歯茎破裂音
- dʒ
- ぢの出だし(舌を上の口蓋に叩く )|Jump(dʒʌmp)|有声後部歯茎破擦音
- g
- が/ぎ/ぐ/げ/ごの出だし|Great(ɡreɪt)|有声軟口蓋破裂音
- j
- や/ゆ/よの出だし|Yes(jes)|有声硬口蓋接近音
- l
- 舌を付けたら/り/る/れ/ろの出だし(息を舌の横に抜く)|Lemon(ˈlem.ən)|歯茎側面接近音
- m
- ま/み/む/め/もの出だし|Salmon(ˈsæm.ən)|両唇鼻音
- n
- な/に/ぬ/ね/のの出だし|Nice(naɪs)|歯茎鼻音
- ŋ
- 鼻へ向けたん(息を鼻に稍詰める)|Sing(sɪŋ)|有声軟口蓋鼻音
- ɹ / r
- 舌を離したら/り/る/れ/ろの出だし(息を舌の上に抜く)|Red(ɹed / red)|歯茎接近音|イギリス英語に多い
- ɻ / r
- 舌を軽く巻いて/反らして離したら/り/る/れ/ろの出だし(息を舌の上に抜く)|Red(ɻed / red)|有声反り舌接近音|アメリカ英語に多い
- ð
- 舌を上の歯に触れたづの出だし(息を舌と上の歯の間から出す)|Then(ðen)|有声歯摩擦音
- ʒ
- じの出だし(息を舌と上の口蓋に通す)|Leisure(ˈleʒ.ə)|有声後部歯茎摩擦音
- v
- 下唇を噛んで震わせる|Very(ˈver.i)|有声唇歯摩擦音
- w
- 強めのわの出だし/弱めのう|World(wɜːld)|有声両唇軟口蓋接近音
- z
- ざ/ず/ぜ/ぞの出だし|Zero(zɪə.rəʊ)|有声歯茎摩擦音
無声音
声帯の振動を伴わずに発音される子音。
- f
- 下唇を噛んで吹かせる|Figure(ˈfɪɡ.ə)|無声唇歯摩擦音
- h
- は/ひ/ふ/へ/ほの出だし|Hood(hʊd)||無声声門摩擦音
- k
- か/き/く/け/この出だし|Kitchen(ˈkɪtʃ.n)|無声軟口蓋破裂音
- p
- ぱ/ぴ/ぷ/ぺ/ぽの出だし|Pocket(ˈpɒk.ɪt)|無声両唇破裂音
- s
- さ/す/せ/その出だし|Space(speɪs)|無声歯茎摩擦音
- ʃ
- 深めのしの出だし(息を舌と上の口蓋の奥から通す)|Machine(məˈʃiːn)|無声後部歯茎摩擦音
- t
- た/て/との出だし|Night(naɪt)|無声歯茎破裂音
- t̬
- tの弾き音、アクセントを置かれないtが前後を母音で挟まれるとdに近付いてɾ(歯茎弾き音)のように軽く発音される|better(ˈbet̬.ɚ)|無声歯茎破裂音|アメリカ英語に多い
- tʃ
- ちの出だし|Peach(piːtʃ)|無声後部歯茎破擦音
- θ
- 舌を上の歯に触れたつの出だし(息を舌と上の歯の間から出す)|Thunder(ˈθʌn.də)|無声歯摩擦音
個人的に英語の発音が聞くのも話すのも難しいと思うのは子音が大半を占めている。日本語の子音は母音と常に結び付いている。なので子音だけを把握するのは本当に慣れなくて大変なんだ。加えて発声する速度も子音が幾つも出て来ると速く感じて慌てながら分からなくなってしまい易い。
英語は子音だけの発音が日本語とは全く異なるので、真っ先に覚えておくと言葉として身に付けるのには得策ではないかと考える。
母音も日本語の「あいうえお」の五つと比べると英語はさらに細かく分かれるから注意しなくてはならないけれども何れも通じ合う発音なのは確かだからさほど気負わずに学べる。
参考:付録:英語の発音表記/IPA・SAMPA・AHD対応表 英語の発音の種類・特徴・正しい発音の方法【総まとめ】 発音記号の読み方と覚え方 Phonetic Chart Explained
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