英語の小説、オスカー・ワイルドの星の子の日本語訳で気になった英文法にnoneの複数と単数の扱い方の違いがあった。
noneは単数でも複数でも使われ得る
...... and a crowd of citizens followed him, and cried out, 'Surely there is none so beautiful in the whole world!'
……すると市民の群衆が彼を追って「確かに満天下にそんな美しい人はいない!」と叫び出した。
誰も~ではないという代名詞のnobody、またはno oneという表現が単数扱いで、同じような代名詞のnoneも単数扱いなのかどうか、果たして複数扱いもあり得るのかとちょっと疑問が生じた。
引用のnoneは誰も~ではないという意味の用法で、直前の「is」がbe動詞の現在形の単数だから単数扱いになっていると分かるけど、調べると実際にはnoneは両方の扱いが可能で、現在は複数扱いが主流らしくて単数扱いになるのは昔の英語に多いかも知れない。
例文は十九世紀後半の英語で、それ以外のnoneにかかる動詞も数で変わる現在形は単数にしかなってない。
複数で扱われるnoneの条件
noneが他の名詞や代名詞に関して「none of ~」の用法で、~の誰/一つもないという意味で使われるとき、noneの複数扱いの条件は他の名詞や代名詞が複数の場合にかぎり、単数扱いとどちらでもあり得るけれども特に口語/気軽な話し言葉で複数扱いになることが多い。
None of them come to that place.
彼らの誰もその場所には来ない。
この用法で名詞や代名詞がもう既に分かっていて繰り返しを避けるためにofと共に省略されてnoneだけになっても元の省略されない場合と等しい扱いのままになる。
They wanted that place, but none seem to come.
彼らはその場所を望んだが、誰も来ないようだ。
纏めるとnoneが複数で扱われるのはそれだけの用法では現在の通例になり、他の名詞や代名詞に関する「none of ~」の用法では複数の対象のみが特に口語/気軽な話し言葉で多く、of以下が省略されてnoneだけになっても変わらない。
単数で扱われるnoneの条件
noneだけで誰も~ではないと使われる場合は複数扱いが今は多い。単数扱いになるのは昔の英語かも知れず、noneの用法としては廃れてしまった。
それが他の名詞や代名詞に関して「none of ~」の用法で、単数扱いになるのは対象の名詞や代名詞が単数扱いの場合、すなわち不可算名詞か可算名詞で単数のもの、さらに可算名詞で複数のものも一般的に含まれる。
不可算名詞に関するnone
None of the money was left in my wallet.
私の財布には金が一つもなかった。
可算名詞の単数に関するnone
There is none of an apple pie on the table.
机にアップルパイが一つもない。
可算名詞の複数に関するnone
None of the ten people goes out because of the storm.
嵐のために十人の誰も外へ出ない。
可算名詞の複数に関するnoneは単数扱いと複数扱いのどちらでも可能なんだ。
大抵は単数扱いになって複数扱いになるのは口語/気軽な話し言葉が多いけれどもニュアンスも幾らか異なる。単数扱いは複数扱いよりも個別性を強調することもできる。つまり「誰一人/一つとして~ではない」という意味合いが増して来るので、このために敢えて複数扱いではなく、単数扱いが選ばれる場合もある。
この用法で名詞や代名詞がもう既に分かっていて繰り返しを避けるためにofと共に省略されてnoneだけになっても元の省略されない場合と等しい扱いのままになる。
I spent my money on eating out, so none was left in my wallet.
外食に金を使ったので、財布に一つもなかった。
纏めるとnoneが単数で扱われるのはそれだけの用法では昔の英語だから現在は殆どなく、他の名詞や代名詞に関する「none of ~」の用法では不可算名詞と可算名詞の単数の場合、可算名詞の複数でも特に口語/気軽な話し言葉で複数扱いになる場合を除くか、そうした場合でも敢えて対象の個別性を強調したいときには単数扱いになる。
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