桃の栄養素と健康効果を覚える
桃はバラ科モモ属の落葉小高木の植物、または果物で、原産地は中国とされる。紀元前四世紀頃、シルクロードからペルシアを経てヨーロッパに渡り、日本では縄文時代前期(七千から五千五百年前)に桃核(桃の種子の内核)が見付かっている。以降、食料、祭祀、薬品、観賞に使われた。中国に桃を食べた仙人が不老長寿になった逸話があって「仙果」と珍重された。明治時代に甘味の強い水蜜桃が輸入されてから食用で大きく普及してさらに様々な品種が作り出された。
桃に含まれる栄養素と100g毎の分量の目安

- 蛋白質_0.6g
- 脂質_0.1g
- 炭水化物_10.2g
- ナトリウム_1mg
- カリウム_180mg
- カルシウム_4mg
- マグネシウム_7mg
- リン_18mg
- 鉄_0.1mg
- 亜鉛_0.1mg
- 銅_0.05mg
- マンガン_0.04mg
- モリブデン_1μg
- ビタミンE_0.7mg
- ビタミンB1_0.01mg
- ビタミンB2_0.01mg
- ナイアシン_0.6mgNE
- ビタミンB6_0.02mg
- 葉酸_5μg
- パントテン散_0.13mg
- ビオチン_0.3μg
- ビタミンC_8mg
- 食物繊維_1.3g
※太字は各栄養素の一日の標準摂取量の一割近くを越えると見込まれる。
出典:果実類/(もも類)/もも/生|食品成分データベース
桃の栄養素は種々と含まれるけれども飛び抜けて多いものはない。最も特徴的なのはビタミンEで、これだけは一日の標準摂取量の一割を越える。健康だけではなく、若返りを通じて美容にも好影響を与えそうだ。次いでカリウムが多めで、体内の塩分を調節して浮腫も抑えるからやはり調子と共に外見にも作用する栄養素だ。銅と食物繊維も決して少なくはないだろう。どちらも全身の調子を整えて免疫力を維持して病気を防ぐから日々の活力を上げる。
栄養素のカリウムの健康効果について
カリウムは多量ミネラルで、主に細胞内にあって細胞外のナトリウム(塩分)と共に浸透圧(水分量)や酸と塩基(アルカリ)のバランスや酵素反応を調整する。腎臓からナトリウムの排出も促す。一部は血液やリンパなどの体液や骨にあって神経の興奮や筋肉の収縮にも関与する。
カリウムの標準摂取量は成人で一日当たり2000~2500mg程度と見込まれる。
カリウムが不足した場合の危険性
カリウムは、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きがあります。また、神経の興奮性や筋肉の収縮に関わっており、体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。ナトリウムを身体の外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立ちます。一方、不足するとこれらの働きに影響することはもちろん、脱力感・食欲不振・筋無力症・精神障害・不整脈などの症状がみられることがあります。なお、大量に摂取した場合でも体内の調節機構が働くので、通常、カリウムが過剰になることはまれであると言われています。
通常の食生活でカリウムが欠乏することは滅多にないけど、塩分のナトリウムと協働するから不足しないためには食事の塩分を減らすことも役立つし、比較的に多く含まれる野菜や果物を絶やさず、標準摂取量を保って不調を引き起こさないように注意したい。
栄養素の銅の健康効果について
銅は微量ミネラルで、半分以上が筋肉や骨、一割程が肝臓、残りが血液や脳にあり、約十種類の酵素の活性部位に含まれてエネルギー産生や鉄の代謝(赤血球やDNAの合成)や細胞外基質の成熟や神経伝達物質の合成や活性酸素の除去に影響している。
銅の標準摂取量は成人で一日当たり70.9~4.0mg程度と見込まれる。ただし女性の妊娠中は0.1mg、授乳中は0.6mgを追加する。
銅が不足した場合の危険性
食事性欠乏における症状は、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、脊髄神経系の異常などである。
不足すると専ら造血や神経伝達に支障を来すけど、体内での回収率が高くて通常の食生活で危険なのはむしろサプリメントでの過剰摂取らしい。酸化ストレスが増えたり、生活習慣病を引き起こす一因になるかも知れないので、標準摂取量を保って不調を引き起こさないように注意したい。
栄養素のビタミンEの健康効果について
ビタミンE(αかβかγかδのトコフェロールとトコトリエノール)は脂溶性ビタミンで、抗酸化作用があり、細胞を活性酸素(エネルギー産生の派生物)による不要な攻撃から守る。免疫力を高めて細菌やウイルスを遠ざけたり、血管を拡張して血液が凝固するのを防いだりする。
ビタミンEの標準摂取量は成人で一日当たり5.0~7.0mg程度(α‐トコフェロール)と見込まれる。
ビタミンEが不足した場合の危険性
ビタミンE欠乏症は神経や筋肉に損傷を与える可能性があります。そうした損傷は、腕や脚の感覚喪失、身体運動制御の喪失、筋力低下、視覚障害を引き起こします。免疫機能の低下もビタミンE欠乏症の徴候のひとつです。
ビタミンEが欠乏症に陥るまで不足することは滅多になく、陥るのはおよそ脂肪の消化吸収を損う疾患に起因しているけど、標準摂取量を保って不調を引き起こさないように注意したい。
繊維質の食物繊維の健康効果について
食物繊維は炭水化物の一種で、糖質以外の消化されず、直接、栄養にならない健康成分だけれども腸内で善玉菌を増やしたり、老廃物(毒素や腸壁細胞の死骸など)や不要物(食品と分泌液の残滓や腸内細菌の死骸など)を排出させたりする整腸作用があり、栄養素と同じくらい健康効果が高い。
桃に含まれる食物繊維は水溶性と不溶性が略半分ずつに分かれている。
桃に含まれる二種類の食物繊維
- 水溶性食物繊維
- 繊維質で水に溶けるもの。ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の餌として腸内バランスを整える。ゼリー状となって胃腸の粘膜を保護する。態糖質の吸収を遅らせて食後の血糖値の上昇を緩やかにする。胆汁酸の再吸収を減らしてコレステロールの増大を抑える。ナトリウムを排出して血圧を下げる。
- 不溶性食物繊維
- 繊維質で水に溶けないもの。ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の餌として腸内バランスを整える。保水性が高くて便量を増加させて腸の蠕動運動を促進して快便を齎す。余分な脂肪や胆汁酸を吸着して排出してコレステロールの増大を抑える。毒素を吸着して排出して大腸癌などの危険性を減らす。
参考:高橋陽子の繊維質と食物繊維
食物繊維は腸内細菌の分解発酵によって1gで最大2kcal程度(糖質の約半分以下)のエネルギーを産生する場合があるけれども炭水化物としての摂取量は糖質と比べて非常に少ないから健康効果は殆ど考えられていない。
食物繊維の分類には繊維質以外、糖質のオリゴ糖やデンプンやデキストリンといった難消化性のものが含まれることもある。加工食品の原材料で良く見かける難消化性デキストリンも玉蜀黍のデンプンから作られたデキストリンの一種だ。何れも繊維質と似たような整腸作用を持っていて健康効果が高い。
食物繊維の標準摂取量は成人で一日当たり18~21g程度と見込まれる。
食物繊維が不足した場合の危険性
食物繊維は栄養素として人体に作用する可能性は非常に低く、腸内細菌を介したり、その他の間接的な利点があるもので、不足した場合もはっきり不味いと分からないらしく、およそ健康効果の反対の結果になると想像する他はない。
食物繊維は、便通を整えて便秘を防ぐうえで欠かせないものです。また、脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きがあるため、これらを摂り過ぎることによって引き起こされる肥満や脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できます。
不足すると便秘や諸々の生活習慣病に繋がったり、または腸内環境は人間の免疫力の七割を司るといわれるから色んな病気にかかり易くなるかも知れないので、標準摂取量を保って不調を引き起こさないように注意したい。
白桃と黄桃の違いとその他の品種
桃の食用の品種は白桃系/白肉種と黄桃系/黄肉種の二つに大別される。前者は甘味が多く、崩れ易いから生食に、後者は酸味が多く、崩れ難いから缶詰めに向くとされる。それぞれの栄養価ほ殆ど一緒ながら、若干、白桃は糖質(甘味成分)、黄桃はβ‐カロテン(黄色成分)などが増すだろう。健康効果に差が出るほどの違いではない。
水蜜桃の白桃も黄桃も果実に毛が生えて毛桃とも呼ばれる。その他、毛が生えずに皮も食べられる椿桃/油桃/光桃/ネクタリンや形が潰れた円盤状の昔から食べられる蟠桃/座禅桃/サターンピーチ/ドーナツピーチなどが知られる。
栄養価は椿桃が水蜜桃の二種よりも全般的に少し高いようだ。皮まで食べるとするともっと上がるに違いない。蟠桃は変わらなさそうだけれども固有の香が強いとされるからクマリン(香気成分)が多めと思われる。桃が不老長寿に繋がる「仙果」と考えられた伝説の品種――中国の十六世紀の小説の西遊記で孫悟空も食べたかも知れない――らしいから本来的な良さが詰まっている。
参考:桃の栄養・効能や旬など、桃の基礎知識 ネクタリンの栄養と知られざる効能について 蟠桃/バントウ/Plattpfirsiche/平桃
ポリフェノールのクマリンの健康効果について
桃に含まれる香気成分のクマリンが特徴的なポリフェノールで健康効果を持つと期待される。
クマリンとは桃の甘い香りの成分であり、抗菌作用や抗血液凝固作用をもちます。
リンパや静脈の流れを順調にする作用があります。体内に蓄積しがちな老廃物も、スムーズに排出させることができます。
健康成分のポリフェノールとして病原菌を減らしたり、血液をサラサラにしたり、浮腫みを防止したり、さらに女性ホルモンと似た働き(エストロゲン様ホルモン作用)を備えたり、ポリフェノールで一般的な抗酸化作用の細胞のダメージを減らして老化を遅らせる健康効果の可能性も指摘されている。
クマリンは血栓防止薬などの医薬品の原料にも使われるらしくて相当なものだと思う。ただし日焼けが進み易くなる面(光感作促進)もあったり、さらに過剰摂取は主に肝臓を弱らせる危険性が増すから注意しなくてはならない。一日の摂取量の上限が成人で体重1kg当たり0.1mgまでといわれる。体重50kgならば5mgだろう。通常の食品からは過剰摂取に至ることは殆どなさそうで、サプリメントでの大量摂取を控える必要がある。
食品にかぎらず、香料でも同じだから注意したい。国内では香料としてのクマリンの使用が禁止されてもいる。甘くて良い匂いにせよ、嗅ぎ過ぎは控えなくてはならない。
参考:ももの歴史と主な品種 桃の驚くべき効果効能 管理栄養士が教える「桃の栄養」について。効率的な食べ方もチェック 桃(もも)の効能、モモの栄養効果、健康機能、桃は糖尿病に効く 桃の選び方と栄養素|買い物で役立つ基本の「き」
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