英語のジェンダー代名詞の使い方について 結城永人 - 2022年6月6日 (月) 昨今、ソーシャルメディアのプロフィールなどで名前の近くに「she/hei」や「he/him」と添えられていることがある。これはジェンダー代名詞(PGP: Preferred Gender Pronouns or Personal Gender Pronouns)と呼ばれるもので、性自認が直ぐに分からない場合のために自分はどうなのか、他人からどんな性別で扱われるべきかを伝えるために使われる。 ジェンダー代名詞の一般的なもの Person holding white printer paper by Sharon McCutcheon / Unsplash 性自認が女性ならば「she/her」(彼女)性自認が男性ならば「he/him」(彼)性自認が男女以外ならば「they/them」(彼ら) 日本語では誰かを彼女や彼や彼らと呼ぶことは少ないけれども英語ではしょっちゅう行われるから有用性が高いようだ。それでなくとも自分の受け入れる性別を人々に明らかにできるのは良いと思う。余程、差別されて危険でもないかぎり、日本語でやってもおかしくはないだろう。 男女のどちらでもない人は一人でも複数の「彼ら」に相当する「they/them」を使うけど、これはSingular theyという用法で、性の多様性に配慮した用法として世界的に普及したもので、文法などが間違った英語というわけではない。 ロンドンに拠点を置く脚本家でありパフォーマーのアムル・アルカディ(『Unicorn: Memoir of A Muslim DragQueen(ユニコーン:イスラム教徒のドラァグクイーンの回顧録)』の著者)にも同様の経験があるようだ。女性でも男性でもないノンバイナリーの立場を取るアルカディは、ほぼ毎日、代名詞を間違われているという。 「確かに、出生時の性別は男性です。でも、私は男性ではないので、代名詞に『They/Them』を使っています。言葉で言い表すのは難しいけれど、やはり、誰かに男性だと思われるといい気持ちはしません。私が思う自分とはあまりにかけ離れていて、『ちょっと待って。あなたは私の本質を見ていない。誰のことを話しているの?』って思うんです」 これまでずっと、男らしく振る舞うことができなかった一人として、アルカディは「They/Them」の代名詞を使った会話を耳にすると、まるで「リラックス効果のあるエッセンシャルオイルを入れた湯船に身を沈めるような」気持ちになるという。アルカディの話を聞いていると、相手の代名詞を正しく使うことは、単に形式的な礼儀というだけでなく、相手の本質を認め、男女二択の性別に該当しない人を受け入れるメッセージにもなるのだとわかる。 あなたはどう呼ばれたい? 多様性時代の代名詞考察。|Vogue|コンデナスト・ジャパン 性別に合わない代名詞を使われることは名前を間違えられて過ごすことに匹敵する虚しさを与える。バイナリーという従来の男と女は感じることがないものなので、どちらでもない人や見た目で判別できない人を積極的に配慮する必要がある。 ジェンダー代名詞の特殊的なもの Why Gender Pronouns Matter|Seventeen 男女以外の性別、または性別がない場合にSingular they以外の人称代名詞の造語が使われることもある。 汎用的なもの ze, zie or sie hir hir/hirs hirself (zee | here | here/heres | hereself) ze, zie or sie zir zir/zirs zirself (zee | zir: sir with a "z" | zir/zirs | zirself) xe or xie xem xyr/xyrs xemself (zee | zem | zir: sir with a "z"/zirs | zemself) they(彼ら)に近いもの e em eir/eirs eirself (ee | em | air/airs | airself) ey em eir/eirs emself (ei | em | air/airs | emself) person(人)に近いもの per per per/pers perself (per | per | per/pers | perself) neutral(中性)に近いもの ne nem nir/nirs nemself (nee | nem | near | nemself) sheとhe(彼女と彼)に近いもの ve ver vis/vis verself (vee | ver | vis/vis | verself) ※種類は他にも、沢山、あり、又、同じものでも活用や発音が異なる場合もある。 参考サイトHistorical, regional, and proposed gender-neutral singular pronouns|Wikipedia 色んなものがあって人それぞれの好みに合わせて自由に使われているようだ。 一方でまだあまり知られていないのは、特にノンバイナリーやジェンダーフルイドの人々が複数の代名詞を使っていたり(たとえば、sheとthey、あるいはheとthey)、代名詞を避けてファーストネームで呼んでもらいたい人もいたりするということ。 多様なジェンダー表現のために!新しい代名詞とその使い方|コスモポリタン|ハースト婦人画報社 性別が継続的か一時的か定まらない人もいるので、その場合はジェンダー代名詞も「they/them」や「ze/hir」などから一つだけとはかぎらない。二つ以上を使い分ける可能性もある。または代名詞自体を使わない方が良い、名前だけで呼ぶべきという選択肢が出て来るかも知れないのを覚えておきたい。 関連ページLGBTQIA+で考える性の多様性 コメント 新しい投稿 前の投稿
コメント