ラドヤード・キップリングの踏み付けた蝶の日本語訳 結城永人 - 2022年9月19日 (月) イギリスの作家、小説家で詩人のラドヤード・キップリングの童話集その通り物語(1902)の収録作品の踏み付けた蝶の日本語訳を行った。 ラドヤード・キップリングの踏み付けた蝶の英語の出典 The Butterfly that Stamped by Rudyard Kipling/ラドヤード・キップリングの踏み付けた蝶原文:Wikisource(作品集)朗読:LibriVox(ティム・バルクレイ) ※一部に誤字があってSabie→Sableが正しいようだ。 両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。 関連ページラドヤード・キップリングの踏み付けた蝶の原文と注解 ラドヤード・キップリングの踏み付けた蝶の日本語の訳文 Illustration to The Butterfly That Stamped from Garden City, N.Y. : Doubleday & Co., Inc / Public domain Illustration to The Butterfly That Stamped by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain これは、おぉ、諸賢よ、ある物語――新しくて素晴らしい物語――他の物語とは全く異なる物語――最も賢い国王スレイマン・ビン・ダウド――ダヴィデ王の息子についての物語だ。 スレイマン・ビン・ダウドについての物語は、三百五十五、ある;しかしこれはそれらの一つではない。水を発見した田計里やスレイマン・ビン・ダウドを暑さから防いだ戴勝の物語ではない。硝子の歩道や曲がった穴を持つルビーやバルキスの金の延べ棒ではない。踏み付けた蝶の物語なのだ。 さぁ、もう一度、良く聞きな! スレイマン・ビン・ダウドは賢かった。彼は獣がいうことを理解した、鳥がいうことを、魚がいうことを、虫がいうことを。岩々が地面深くで互いに減り込み合って軋んだときにいうことを理解した;さらに彼は木々が午前の間にさらさらと音を立てるときにいうことを理解した。判事席の高位な聖職者から壁のヒソップまであらゆることを理解した、そにてバルキス、彼の第一王妃、最も美しい王妃のバルキスは殆ど彼と同じくらい賢かった。 スレイマン・ビン・ダウドは強かった。右手の三番目の指に指輪を着けていた。それを、一回、回したときはアフリートとジンが地面から現れて彼がいうことを何でも行った。二回、回したときは妖精が空から下りて来て彼がいうことを何でも行った;そして、三回、回したときは非常に偉大な天使、剣のアズラエルが水運搬人のような装いで現れて三つの世界――上空――地下――ここの情報を伝えた。 そしてまだスレイマン・ビン・ダウドは高慢ではなかった。滅多に自分を誇示しなかったし、したときは申し訳なく感じた。かつて世界中の全ての動物たちに食べ物を一日で与えようとしたが、食べ物が用意できたとき、ある動物が深い海から現れるとそれを三口で平らげた。スレイマン・ビン・ダウドは非常に驚いて「おぉ、動物よ、お前は何者か?」といった。すると動物は「おぉ、王よ、永遠に生き給え! 私は三万の兄弟の中で最も小さな者で、私たちの家は海の底にあります。私たちは貴方が世界中の全ての動物たちに食べ物を与えるつもりだと聞きました、そして私が正餐がいつ用意されるかを訊くために兄弟たちから送られました」といった。スレイマン・ビン・ダウドはこれまで以上に驚いて「おぉ、動物よ、お前は私が世界の全ての動物たちのために用意した正餐を全て食べてしまった」といった。すると動物は「おぉ、王よ、永遠に生き給え、しかし貴方は本当にそれを正餐と呼ぶのですか? 私が出て来たところで、私たちは、各々、食事の合間にその二倍を食べます」といった。そのとき、スレイマン・ビン・ダウドはばったり倒れて「おぉ、動物よ! 私は自分が何と偉大で裕福な王かを示すためにそうした正餐を与えた、つまり本当に動物たちに優しくしたかったからではない。もはや恥ずかしいし、身から出た錆だ」といった。スレイマン・ビン・ダウドは本当に真実に賢人だった、諸賢。その後、自分を誇示することは愚かだと忘れることはなかった;そして今や私の物語の本当である部分が始まる。 Illustration to The Butterfly That Stamped by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain これは海から現れてスレイマン・ビン・ダウドが世界中の全ての動物たちのために用意した食べ物を全て食べた動物の絵だ。本当に全くの良い動物で、母さんは彼と海の底に棲む二万九千九百九十九匹の他の兄弟たちを可愛がった。彼がその中で最も小さかったと分かるね、そのために彼の名前は小さなポーギーズとなった。彼は全ての動物のために用意されていたああした箱と包みと梱と荷を全て食べた、一度も蓋を外したり、紐を解いたりもしないまま、そして害されることは全くなかった。食べ物の箱の後ろの突き出たマストはスレイマン・ビン・ダウドの船の一部だ。小さなポーギーズが岸へ来たときにそれらは食べ物をもっと持って来ることに忙しかった。彼は船を食べなかった。船は食べ物の荷下ろしを止めると小さなポーギーズが食事をすっかり終えるまで海へ離れて行った。幾つかの船が離れて行き始めたのが小さなポーギーズの肩のそばに見えるね。私はスレイマン・ビン・ダウドを描かなかったが、丁度、絵の外側にいるんだ、物凄く驚愕しながら。隅の船のマストから下がる包みは本当に鸚鵡が食べるための生の棗椰子の実が入っている。船の名前は分からない。それでその絵の中にある全てだ。 彼は実に多くの妻と結婚した。九百九十九人の妻、さらに最も美しいバルキスとも結婚した;そして彼らは全て噴水のある素敵な庭の真ん中の豪華な金色の王宮に住んだ。彼は本当に九百九十九人の妻を望まなかったが、当時は誰もが実に多くの妻と結婚したし、もちろん王は正に自分が王だと示すために実に多くの妻ともっと結婚しなければならなかった。 妻の何人かは良かったが、何人かは端的に酷かった、そして酷い者は良い者と喧嘩して彼女らも酷くさせた、そうして彼女らは全てスレイマン・ビン・ダウドと喧嘩するのだったし、彼にとっては酷かった。ところが最も美しいバルキスはスレイマン・ビン・ダウドと喧嘩することがなかった。彼女は彼を余りに愛し過ぎた。金色の王宮の自分の部屋に座るか王宮の庭を歩いては真実に彼を気の毒に思った。 もちろん彼が己の指輪を回してジンとアフリートを呼び出そうと望んだら彼らは魔法でそんな九百九十九人の喧嘩好きな妻を全て砂漠の白いラバかグレイハウンドか柘榴の種に変えただろう;ところがスレイマン・ビン・ダウドはそれは自分を誇示することだと考えた。なので彼女らが余りに喧嘩し過ぎたとき、彼はただ美しい王宮の庭の一部を独りで歩きながら自分が生まれて来なかったことを望んだ。 ある日、彼女らが、三週間、喧嘩していたとき――九百九十九人の妻が全員で一緒に――スレイマン・ビン・ダウドはいつものように穏やかに静かに出て行った;そしてオレンジの木々の中で最も美しい、スレイマン・ビン・ダウドを余りに心配したせいで、非常に悲しむバルキスと会った。すると彼女は「おぉ、主人で大切な人よ、貴方の指輪を回してあれらのエジプトやメソポタミアやペルシアや中国の王妃たちに貴方が偉大で恐ろしい王であると示して下さい」と彼にいった。しかしスレイマン・ビン・ダウドは頭を振って「おぉ、奥方で大切な人よ、海から現れて私が自分を誇示したせいで、世界中の全ての動物たちの前で恥ずかしめられた動物を思い出してくれ。今やもしも私が自分をあれらのペルシアやエジプトやアビシニアや中国の王妃たちの前で誇示したら彼女らは私を心配するだけだから私は今までよりもさらにもっと恥ずかしめられるかも知れない」といった。 すると最も美しいバルキスは「おぉ、主人で肝心な人よ、どう為さるつもりですか?」といった。 するとスレイマン・ビン・ダウドは「おぉ、奥方で重要な人よ、私は頻繁に喧嘩して煩わされるあれらの九百九十九人の王妃たちのせいによる運命に耐え忍び続けるのだ」といった。 そこで彼は庭に生えた百合と枇杷と薔薇とカンナと濃厚な香の生姜の間を進み続けてはスレイマン・ビン・ダウドの樟と呼ばれる大きな木へやって来るまでだった。さてやバルキスは樟の裏の高い菖蒲と染み付きの竹と赤い百合の中に隠れた、自身の真の恋人、スレイマン・ビン・ダウドに近付くために。 間もなくニ匹の蝶が木の下に喧嘩しながら飛んだ。 スレイマン・ビン・ダウドは一方が「君がこんなふうに私に話すのは図々しいのではないかと思う。かりに私が自分の足で踏み付ければスレイマン・ビン・ダウドの王宮とここの庭の全ては雷鳴と共に消える失せるんだと知らないのか」と他方にいうのを聞いた。 そのとき、スレイマン・ビン・ダウドは自分の九百九十九人の煩い妻を忘れて蝶の自慢話を樟が揺れるまで笑った。そして己の指を開くと「小さな者、こっちへ来い」といった。 蝶は物凄く恐がったが、何とかスレイマン・ビン・ダウドの手まで飛び上がると扇ぎながらしがみ付いた。スレイマン・ビン・ダウドは俯くと「小さな者、お前が踏み付けても、草葉一本、曲がるまい。何でそんな嫌な嘘を自分の妻に吐くのか?――恐らく彼女はお前の妻だから」と本当にそっと囁いた。 蝶はスレイマン・ビン・ダウドを見ると最も賢い王の目が霜降りの夜の星みたいに煌めくと気付いた、すると己の羽根で勇気を奮い起こしながらその頭を片端に寄せると「おぉ、王よ、永遠に生き給え。彼女は私の妻〈です〉;もはや貴方は妻がどんな者かが分かるでしょう」といった。 スレイマン・ビン・ダウドは髭面で微笑みながら「うむ、〈私〉は分かる、小さな兄弟」といった。 「何とかして適切に保たなくてはなりませんし」といった蝶、「彼女は私と朝からずっと喧嘩していました。あれは静かにさせるためにいいました」。 するとスレイマン・ビン・ダウドは「静かになると良いな。妻へ戻って、小さな兄弟、何をいうのかを聞かせよ」といった。 戻って蝶は自分の妻へ飛んだが、彼女は葉の裏側で非常に興奮しており、「彼は貴方を聞き入れた! スレイマン・ビン・ダウド本人が貴方を聞き入れた!」といった。 「聞き入れたさ!」といった蝶。「もちろんそうした。私は聞き入れられるつもりでいった」。 「すると何といわれたのか? おぅ、何といわれたのか?」 「まぁ」といった蝶、何にも増して扇ぎながら「君と私との間だしな――もちろん私は彼を貶めない、彼の王宮は費用が、大層、かかったに違いないし、オレンジが実っているところだ――彼は私に踏み付けないように頼んだ、そして私はしないと約束した」。 「おやまあ!」といった彼の妻、そして静かに静かに座っていた;しかしスレイマン・ビン・ダウドは涙が悪い小さな蝶の厚かましさで己の顔に走り落ちるまで笑った。 最も美しいバルキスは赤い百合の中で木の後ろに立ち上がると独りで微笑んだ、というのもこの会話の全てを聞いていたためだった。彼女は「もしも私が賢ければまだ主人をあれらの喧嘩好きな王妃たちから救うことができる」と考えた、そして指を開くと「小さな者、こっちへ来て」と蝶の妻へそっと囁いた。上がって蝶の妻は飛んだ、非常に恐がったけど、するとバルキスの白い手にしがみ付いた。 バルキスは美しく俯くと「小さな者、お前は夫が今いったことを信じるか?」と囁いた。 蝶の妻はバルキスを見ると最も美しい王妃の目が星明りの差した深い水溜まりみたいに輝いていると気付いた、すると両方の羽根で勇気を奮い起こしながら「おぉ、王妃、永遠に素敵であり給え、〈貴方〉は男連中がどんな者かが分かるでしょう」といった。 すると王妃バルキス、シバの聡明なバルキスは唇に手を置いて微笑みを隠しながら「小さな姉妹、〈私〉は分かる」といった。 「彼らは怒ります」といった蝶、素早く扇ぎながら「全く何でもないことに、されど私たちは彼らの機嫌を取らなくてはなりません、おぉ、王妃。彼は決していうことの半分も意図しません。私の夫が私が信じると信じることに満足しなければスレイマン・ビン・ダウドの王宮をその足で踏み付けて消し去ります、、〈私〉は気にしませんが。彼はその全てについて、明日、忘れますよ」。 「小さな姉妹」といったバルキス、「お前は全く正しい;しかし次に彼が自慢し始めたときはその言葉を真っ正直に受け取りな。踏み付けるように頼んで何が起きるかを確かめな。〈私たち〉は男連中がどんな者かが分かるよね? 彼は物凄く恥ずかしがるよ」。 去って蝶の妻は自分の夫へ飛んだ、そして、五分間、彼らはこれまで以上に酷く喧嘩していた。 「思い出せ!」といった蝶。「もしも足を踏み付ければ私に何ができるかを思い出せ!」。 「貴方のことはこれっぽっちも信じない」といった蝶の妻。「如何にもその出来を確かめたいものよ。今踏み付けたらどうだろう」。 「スレイマン・ビン・ダウドとしないと約束したし」といった蝶、「自分の約束を破りたくはないよ」といった。 「破るかどうかは問題じゃないよ」といった彼の妻。「貴方は草の葉を踏み付けて曲げられない。やってみなよ」、彼女はいった。「踏み付けろ! 踏み付けろ! 踏み付けろ!」。 スレイマン・ビン・ダウドは樟の下に座りながらこうした言葉を、全部、聞いていてかつて人生でなかったほどに笑った。自分の王妃についてすっかり忘れた;海から現れた動物についてすっかり忘れた;自分を誇示することについて忘れた。彼は正しく嬉しくて笑った、そしてバルキスは木の反対側で自身の真の恋人がとても嬉しがっていたために微笑んだ。 間もなく蝶は非常に激して息を切らして樟の影の下にぐるぐる回りながら帰って来ると「彼女が私に踏み付けて欲しがります! 何が起こるかを確かめたがってます! おぉ、スレイマン・ビン・ダウドよ! 私にはできないと分かりますね、さて今度は彼女は私がいう言葉を信じることはありません。私は死に行く日まで笑われるのです」とスレイマン・ビン・ダウドにいった。 「否、小さな兄弟」といったスレイマン・ビン・ダウド、「二度と笑われまい」、すると彼は己の指輪を回した――小さな蝶のためだけに、自分を誇示するためではなく――すると、いやはや仰天、四人の大きなジンが地面から現れた! 「奴隷たち」といったスレイマン・ビン・ダウド、「私の指のこの紳士」(それは厚かましい蝶が座っているところだった)「が左前の足を踏み付けたら私の王宮と庭を雷鳴と共に消し去るんだぞ。もう一度、踏み付けたらそれらを慎重に元に戻すんだ」。 「さぁ、小さな兄弟」、彼はいった、「妻へ戻って行って思いのままに踏み付けよ」。 去って蝶は自分の妻へ飛んだが、彼女は叫んでいた、「やってみなよ! やってみなよ! 踏み付けろ! 早く踏み付けろ! 踏み付けろ!」。バルキスは四人の巨きなジンが中央に王宮を持つ庭の四隅に屈み込むのを見た、そしてそっと手を叩きながら「ついにスレイマン・ビン・ダウドは自分自分のためにずっと前からやるべきだったことを蝶のお陰でやるんだ、もはや喧嘩好きな王妃たちは恐がらされるぞ!」といった。 そのとき、蝶は踏み付けた。ジンたちは王宮と庭を空中へ、数千マイル、ぐいと投げ込んだ:甚だ凄まじい雷の一鳴りがあってあらゆるものが黒いインクになった。蝶の妻は闇の中をひらひら飛び回り、「おぉ、私は良くするよ! いったのは本当に悪かった。庭を元に戻してくれさえすれば、親愛な夫よ、私は二度と逆らわないよ」と叫んでいた。 Illustration to The Butterfly That Stamped by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain これは蝶が踏み付けてから瞬時に四人の鴎の翼のあるジンがスレイマン・ビン・ダウドの王宮を持ち上げた絵だ。王宮と庭とあらゆるものが板みたいな一片になって上がると埃と煙の充満し地面に大きな穴を残した。もしも隅を見れば、ライオンみたいなものに近付き、魔法の棒を持つスレイマン・ビン・ダウドとその背後のニ匹の蝶が分かるね。ライオンみたいなものは実際は石で彫刻されたライオンで、牛乳缶みたいなものは実際は寺院か住居か何かの一部だ。ジンたちが王宮を持ち上げたときにスレイマン・ビン・ダウドは埃と煙を退けるためにそこに立っていた。ジンの名前は分からないな。彼らはスレイマン・ビン・ダウドの魔法の指輪の召し使いで、毎日、がらりと変わった。全く共通の鴎の翼のあるジンたちだった。 下のものはアクレイグと呼ばれる非常に友好的なジンの絵だ。彼は海の小魚に、一日三回、食べ物を良く与えており、その翼は純銅で作られていた。私は良いジンとはどんな者かを示すために入れておく。彼は王宮を上げることを手伝わなかった。それが起きたときはアラビア海の小魚に食べ物を与えることに忙しかった。 蝶は自分の妻と殆ど同じくらい恐がった、そしてスレイマン・ビン・ダウドは、数分間、笑ってから息継ぎを十分に見出すと「もう一度、踏み付けよ、小さな兄弟。私に王宮を取り返せ、最高の魔法使いよ」と蝶に囁いた。 「そうだ、彼に王宮を取り返しな」といった蝶の妻、未だ蛾みたいに闇の中を飛び回りながら「彼に王宮を取り返しな、そしてもはや酷い魔法を持たないようにしよう」。 「まぁ、なぁ」とできるかぎり、勇ましくいった蝶、「口喧しさが何を齎してしまうかが分かるな。もちろんどんな違いも〈私〉には生まない――私はこの類のことに慣れている――しかしお前とスレイマン・ビン・ダウドへの好意として事態を収拾することは構わない」。 そこで彼は、もう一回、踏み付けた、すると、その瞬間、ジンたちは王宮と庭を下げさせた、打つけることもなく。太陽が深緑のオレンジの葉に輝いた;噴水がピンクのエジプトの睡蓮の間に水を噴き出した;鳥が歌い続けて蝶の妻は己の羽根を震わせながら「おぅ、私は良くするよ! 私は良くするよ!」と喘ぎながら樟の下に横になっていた。 スレイマン・ビン・ダウドは殆ど笑って喋れなかった。全く力なく後ろに凭れるとしゃっくりして蝶に向かって指を振りながら「おぉ、偉大な魔法使いよ、もしも同時に浮かれ騒いで殺されるならば私に王宮が返ることに何の意味があるか!」といった。 そのとき、恐ろしい音が来た、というのも九百九十九人の王妃全員が金切り声を出して叫んで自分たちを赤ちゃんを求めて呼びながら王宮から走り出したためだった。急いで噴水の下の大きな大理石の階段を下りた、百人が並んで、すると最も美しい妻のバルキスは彼女らと会おうと品良さそうに前進すると「どうしたのか、おぉ、王妃たち?」といった。 彼女らは大理石の階段に百人並んで立って「〈どうした〉のか? 私たちは金色の王宮に平穏に暮らしていた、いつものように、不意に王宮が消え去って深くて嫌な闇の中に座ったままにさせられたとき;よもや雷が鳴ってジンとアフリートが闇の中を動き回っていた! 〈その〉せいだ、おぉ、第一王妃、もはや私たちは最も極端にそのせいで困っている、今まで知ったどんなものとも違って厄介なものだから」と叫んだ。 それから最も美しいの王妃バルキス――スレイマン・ビン・ダウドの正しく最愛の者――ジンの砂漠からジンバブエの塔まで――シバとセーブルと南の金の川の王妃――殆ど最も賢いスレイマン・ビン・ダウドと同じくらい賢いバルキスは「何でもない、おぉ、王妃たちよ! 妻が自分と喧嘩するから蝶がそれに対して不平をいったんだ、すると主人スレイマン・ビン・ダウドが喜んで彼女に静かな口と謙虚さを思い知らせたんだ、蝶の妻の間で美徳に数えられるものだから」といった。 それからエジプトの王妃――ファラオの娘――が出て喋った、つまり「私たちの王宮が小さな虫のために韮葱みたいに根っこから引き抜かれることはできない。駄目! スレイマン・ビン・ダウドは死んだに違いない、もはや私たちが聞いて見たのはその知らせで雷が鳴って暗くなる地面だった」といった。 それからバルキスはその大胆な王妃へ顔も見ずに手招きすると「来てご覧」と彼女と他の者たちにいった。 彼女らは大理石の階段を百人並んで下りて来ると樟の下で未だ笑って力なかったが、最も賢い王スレイマン・ビン・ダウドが片手に蝶を乗せながらぐらぐら揺れるのが見えた、そして彼が「おぉ、空中の私の兄弟の妻よ、この後は思い出せ、自分の夫をあらゆることで喜ばせることを、彼が苛々して、又々、足を踏み付けると行けないから;というのも彼はこうした魔法に慣れているといったんだ、つまり彼は甚だ抜きん出た偉大な魔術師――正しくスレイマン・ビン・ダウド自身の王宮を盗み取る者だ。平穏にせよ、小さな者よ!」というのを聞いた。そして彼が蝶たちの羽根に口付けするとそれらは飛び去った。 それからバルキス――最も美しくて立派なバルキス、微笑みながら離れて立っていた者――を除く全ての王妃たちはばったり倒れた、というのも彼女らは「蝶が妻に腹を立てたときにこんなことが行われるならば王を喧しい口で多くの日を通して終わらない喧嘩で煩わせる私たちには何が行われるだろうか?」といったためだった。 それから彼女らはヴェールを頭に被ると口に手を当てながら爪先歩きで甚だ鼠のように静かに王宮へ戻った。 それからバルキス――最も美しくて優れたバルキス――は樟の陰の中へ赤い百合を抜けて前進すると己の手をスレイマン・ビン・ダウドの肩に置いて「おぉ、主人で肝心な人よ、喜んで、私たちはエジプトとサブサハラとアビシニアとペルシアとインドと中国の王妃たちにしっかりとはっきりとした仕方で教えたのだから」といった。 するとスレイマン・ビン・ダウドは未だ蝶たちが陽光に遊ぶところを見送りながら「おぉ、奥方で必要な人よ、これはいつ起きたのか? 私は庭に入って来てからずっと蝶を揶揄っていたのだから」といった。そしてバルキスに自分が行ったことを話した。 バルキス――最も優しくて素敵なバルキス――は「おぉ、主人で寛大な人よ、私は樟の後ろに隠れてその全てを見ていた。蝶の妻に蝶が踏み付けるように頼むことを伝えたのは私だった、なぜなら揶揄うために主人が何かの偉大な魔法使って王妃たちがそれを知って恐がって欲しかったから」といった。そして彼に王妃たちがいって知って考えたことを話した。 それからスレイマン・ビン・ダウドは樟の下の座から起き上がると己の腕を伸ばして喜んで「おぉ、奥方で最適な人よ、私が魔法を誇りか怒りのために王妃たちに対して使ったら、あの宴会を全ての動物たちへ催したように、私は確かに恥ずかしい思いをしただろう。しかしお前の賢さによって魔法を揶揄いのためと小さな蝶のために使った、すると――ご覧――それで妻たちの煩わしさというものから救い出されもした! 教えよ、それゆえ、おぉ、奥方で忠実な人よ、どうしてそんなに賢くなったのか?」といった。 すると王妃の美しくて背が高いバルキスはスレイマン・ビン・ダウドの目を見上げながら己の頭を蝶に似付かわしく片端に少し寄せると「第一に、おぉ、主人よ、私は貴方を愛するから;第二に、おぉ、主人よ、私は女連中とは何かが分かるから」といった。 それから彼らは王宮まで行くとその後はずっと幸せに暮らした。 さてやバルキスは良くやらなかったか? バルキスみたいな王妃はいなかった、 ここから広い世界の果てまでも; さてやバルキスは蝶に話しかけた 貴方が友達に話しかけるように。 ソロモンみたいな王はいなかった、 世界の始まりからいなかった; さてやソロモンは蝶に話しかけた 人が人に話しかけるように。 彼女はシバの女王だった そして彼はアジアの支配者だった さてや彼らは共に蝶に話しかけた あちこちに散歩したとき! 参考サイトThe Butterfly that Stamped 英語の小説の日本語訳 コメント 新しい投稿 前の投稿
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