英語の小説、アーネスト・ヘミングウェイの父さんの日本語訳で気になった英文法に特殊な関係代名詞の連鎖と二重と並列があった。
連鎖関係代名詞はthat節を導く動詞を持つ
He'd ask me questions about things and some of the things I'd say he'd laugh.
彼は何かのことやちょっと笑うと思われることについて質問を僕に行った。
連鎖関係代名詞は先行詞の直後に関係代名詞がない特殊な関係代名詞の一つで、that節を導く動詞を持つ文章が必ず先行詞に続いていて分けるとそれともう一つの二つの文章になる。
例文だと「I'd say he'd laugh」が関係詞節(sayの後のthatが省略されている)、「some of the things」が先行詞(直後の関係代名詞のwhichかthatが省略されている)で、二つの文章に分けると先行詞とその前の方の「He'd ask me questions about things and some of the things」と先行詞とその後の方の「some of the things I'd say he'd laugh」になる。
二つの文章が共通点の「some of the thing」を介して繋がって一つの文章になる、すなわちそれを先行詞として関係代名詞が形成されるけれども連鎖関係代名詞の場合は先行詞の前の方と後の方の二つだけの文章に分けられる。
つまり一つの先行詞に対してthat節を導く「I'd say」とthat以下の「he'd laugh」を直接と間接の関係詞節として分けて三つの文章になるようには捉えられない。
that節を導く動詞を持つ文章から成るという連鎖関係代名詞にかぎっては見かけが先行詞に対して直接と間接の複数の関係詞節が続く(それぞれが同じ先行詞にかかっている)だけで、事実上、that以下の文章はそれを導く文章の一部でしかないわけだ。
このことから連鎖関係代名詞ならではの性質が出て来る。先行詞が関係詞節のthat以下の主語や目的語からしか取られず、that節を導く文章は全く関与しない。さもないと通常の関係代名詞か他の複数の関係詞節の二重関係代名詞になってしまって意味が異なる。
非常に紛らわしいけれども連鎖関係代名詞かどうかを見分けるには三つの条件が挙げられる。
- 先行詞に続いてthat節を導く動詞を持つ文章がある
- that以下の主語か目的語が先行詞に取られて消える
- 関係詞節内に接続詞のthatがあるか省略されている
連鎖関係代名詞はthat節を導く動詞を持つ文章が先行詞に続くからそれがあれば連鎖関係代名詞の可能性が高い。
先行詞に続く文章のthat以下に主語と目的語が両方とも揃っているとそれは通常の関係代名詞に他ならない。いい換えるとthat節を導く動詞を持つ文章自体が先行詞を修飾するだけなので、つまり複数の関係詞節を持たないから連鎖関係代名詞と判断される余地はない。
先行詞に続く文章のthat以下に主語か目的語がなく、先行詞に取られて消えている場合は複数の関係詞節を持っていて連鎖関係代名詞か二重関係代名詞になる。
どちらかを決める十全な方法はなさそうで、可能性が高いかどうかで判断することになる。
一つはthatがある場合で、それが接続詞ならば連鎖関係代名詞で、関係代名詞ならば二重関係代名詞なんだ。thatが接続詞かどうかは導く動詞の種類で捉えるしかない。思うとか考えるなんて内面が主体の動詞へのthatは接続詞の可能性が高い。
連鎖関係代名詞を成し得る動詞の例
- think(考える)
- believe(信じる)
- suppose(思う)
- say(言う)
- know(知る)
- see(見る)
- hear(聞く)
- tell(話す)
- find(見付ける)
接続詞のthatと共に良く使われる動詞があってそれが導くthatは接続詞で連鎖関係代名詞かも知れない。対して歩くとか座るなんて動作が主体の動詞へのthatは関係代名詞の可能性が高くて二重関係代名詞かも知れない。文法上、何れも完全に決まっているわけではないけれども概してそのように判断できる。
もう一つはthatが省略される場合で、概して二重関係代名詞では関係詞節内の関係代名詞を省略しないらしいので、thatがなければ連鎖関係代名詞と即座に判断できる。
およそ関係詞節内で接続詞のthatが使われることはなくて連鎖関係代名詞の場合でも良く省略されるので、すると一つ目の関係代名詞の後のthatの有無に最初から着目すれば二重関係代名詞とどちらの可能性が高いか、なければ連鎖関係代名詞、あれば二重関係代名詞という大きな手がかりが得られるし、それだけ速く見分けられるようになるだろう。
連鎖関係代名詞は先行詞とthat以下を結び付けて一つの関係代名詞として捉えるとthat節を導く動詞と主語などの部分はそれらの間に置かれているだけだから関係代名詞と挿入節の組み合わせと見做されることもある。
例文だと先行詞の「some of things」とthat以下の「I'd laugh」の間にthat節を導く動詞と主語などの部分の「I'd say」が挿入節として置かれていると見做されもする。
連鎖関係代名詞を二重関係代名詞と見分けるとき、内面が主体の動詞が使われていることを主眼にするとthatが省略されている場合にそうだともっと早くできなくはないけど、ただし当の動詞が連鎖関係代名詞に本当に適しているかどうかは全体の文意などから総合的に捉えなくてならないし、慣れて連鎖関係代名詞や二重関係代名詞がどういう仕方で良く使われるかを予め多く知ってないと間違え易いのは変わらないだろう。
二種類の連鎖関係代名詞の特徴
ある動詞のthat以下から取られる先行詞は主語と目的語があり、通常の関係代名詞の場合と同様に前者のものを主格、後者のものを目的格の連鎖関係代名詞と呼ぶ。
連鎖関係代名詞で使われる関係代名詞は事実上は一つで、二つ目のthatは複数の関係詞節を導く関係代名詞に見えるけれども只の接続詞でしかないけど、とにかくどちらも省略されることができる。
接続詞のthatは省略されることが多いみたいなので、それが省略されているかどうかは似たような位置に関係代名詞が置かれることが多い二重関係代名詞と見分ける手かがりにもなる。
主格の連鎖関係代名詞について
関係詞節のthat以下の主語が先行詞に取られる。
He is the man (who) you know (that) is smart.
彼は君が賢いと知る男だ。
例文は二つの文章の「He is the man」(彼は男だ)と「You know that the man is smart」(君は男が賢いと知る)に分けられる。翻って両方の共通点の「the man」が先行詞となって連鎖関係代名詞を形成しながら一つの文章に変われる。
特殊なのは通常の関係代名詞の主格では省略されないはずのwhoかwhichかthatの関係代名詞も連鎖関係代名詞の主格では省略されるというところで、または他の二重関係代名詞の主格でも同じだから複数の関係詞節を導く関係代名詞に共通する特徴となっている。
目的格の連鎖関係代名詞について
関係詞節のthat以下の目的語が先行詞に取られる。
I play tennis (which) everybody told (that) she loved.
私は皆が彼女が大好きと話したテニスをする。
例文は「I play tennis」(私はテニスをする)と「everybody told that she loved」(皆は彼女がテニスが大好きと話した)が「tennis」を先行詞として結び付けいているけれども先行詞の「tennis」は関係詞節では「loveed」の目的語なんだ。つまり「everybody told that she loved tennis」のthat以下の目的語から先行詞が取られているわけで、that節を導く方からではない。
目的格の連鎖関係代名詞は先行詞の後で主語と動詞に基づく文型が繰り返されるから関係詞節内にthat節を含む通常の関係代名詞と複数の関係詞節を持つ二重関係代名詞のどちらとも似通っていて非常に紛らわしくて連鎖関係代名詞を見付ける三つの条件の全てと照らし合わせて判断する必要がある。
二重関係代名詞は先行詞を含意して修飾する
一つの先行詞が複数の関係詞節を持つという文型が実質的なのは二重関係代名詞(二重限定)か並列関係代名詞だけだ。後者は途中に接続詞が入るので、関係詞節内で主語や目的語が唐突に失われて文章の構成が不可解に感じるのは前者なんだ。見かけは連鎖関係代名詞も同じだけど、ただしそれは二つ目のthatが本当は只の接続詞でしかないから複数の関係詞節を持つとしても形式的なものに止まる。
二重関係代名詞はそれこそ複数の文章で一つの対象を先行詞として修飾するから修飾される先行詞とその前の方の文章に加えてその後の関係詞節の数の文章に分けて三つになる。
Sapporo is the big city (that) Tom has lived in which is the most attractive.
札幌はトムが暮らした中で最も魅力的な大都市だ。
例文は先行詞とその前の方の文章の「Sapporo is the big city」と先行詞の後の方の文章は一つ目の直接の関係詞節の「(that) Tom has lived in」と二つ目の間接の関係詞節の「which is the most attractive」の三つから成っている。
二つの関係詞節の先行詞は何れも「the big city」で、先行詞に直接の方は「Tom has lived in the big city」から目的格(目的語を先行詞に取るもの)、間接の方は「the big city is the most attractive」から主格(主語を先行詞に取るもの)の関係代名詞を形成している。
二重関係代名詞の文章の意味の捉え方は二つの関係詞節で先行詞を修飾するけれども一つ目の直接の方を「~の中で」のように包含して修飾してから二つの目の間接の方でさらに修飾することになる。
すなわち二つ目の関係代名詞は一つ目の関係代名詞で修飾された先行詞(先行詞と一つ目の関係詞節の文章全体)にかかっているわけだ。
意味の捉え方の順番は変えてはならない。さもないと二つ目の関係詞節の内容を持つのに一つ目の関係詞節の内容を持たないような意味合いが出て来てしまう。かりに例文を「札幌は最も魅力的な中でトムが暮らした大都市だ」とすれば「最も魅力的な中」には「トムが暮らした」だけでなくてトムが暮らさないという反対のニュアンスも同じくらい含まれるだろう。本当の意味から少なからず、はずれてしまう。
二重関係代名詞は連鎖関係代名詞のように一部が挿入節のようなものではなく、一つの先行詞に対して複数の関係詞節で完全に構成されている。関係詞節に連鎖関係代名詞で良く使われる動詞のthinkやbelieveなどのthat節を導く内面を主体とするものが含まれていると二重関係代名詞ではないかも知れないから見分けるのが難しくなるけれどもその場合の重要な特徴として二つ目の間接の関係代名詞が概して省略されないことが挙げられる。一つ目の関係代名詞は省略されることがあって連鎖関係代名詞と同じだけれども二つ目の関係代名詞があれば二重関係代名詞と判断する手かがりになるし、それがthat以外ならば間違いなく連鎖関係代名詞でないんだ。
二重関係代名詞の見分け方自体は文章が一つの先行詞に対して複数の関係詞節を持つ、または通常ではない関係代名詞が含まれると分かれば似た者同士の連鎖関係代名詞と見分けられるかどうかに全てはかかっている。
だから両方とも一緒に覚える必要があると思うけれども二重関係代名詞の視点からいうと一つの目の関係詞節の種類が主格で、主語を先行詞に取られて欠いていれば主語と述語で挿入節のようになっているはずの連鎖関係代名詞ではあり得ず、二重関係代名詞と即座に見分けられる。一つ目の関係詞節の種類が目的格で、主語と動詞があると連鎖関係代名詞と同型なので、先程の二つ目の関係詞節が省略されず、that以外があるか、whoかwhomかwhichならば二重関係代名詞なのは間違いない。何もなければ連鎖関係代名詞なので、最後、thatならば一つ目の直接の関係詞節の動詞から見分ける他はない。決まっているわけではないので、可能性が高いだけだけど、二重関係代名詞はどんな動詞でも使われるのに対して連鎖関係代名詞はthat節を導く内面が主体の動詞しか使われないので、もはやそうした点を踏まえながら文章全体に照らし合わせて相応しい方を選ばなくてはならない。
並列関係代名詞は接続詞を持つ
一つの先行詞に複数の関係詞節がかかる文型として並列関係代名詞(並列限定)が二重関係代名詞の他に挙げられる。接続詞のandやbutやorなどで複数の関係代名詞が使われて先行詞にかかるようになる。並列関係代名詞は文章内で何がどこに繋がっているかが接続詞によって分かり易い関係代名詞なので、二重関係代名詞やそれと見かけがそっくりの連鎖関係代名詞よりも混乱することはないと思う。
That is a stray dog (which) barked yesterday, but which don't bark today.
あれは、昨日、吠えたのに、今日、吠えない野良犬だ。
例文は先行詞とその前の方の文章の「That is a stray dog」と先行詞の後の方の文章は一つ目の直接の関係詞節の「(which) barked yesterday」と二つ目の間接の関係詞節の「but which don't bark today」の三つから成っている。
並列関係代名詞の文章の意味の捉え方は二重関係代名詞と同じように一つの先行詞に対して複数の関係代名詞を持つけれども全く違う。一つ目の関係詞節が二つ目の関係詞節を含意する「~中で」のような固有の意味はなく、只単に複数の関係詞節が一つの先行詞をその間に使われた接続詞の内容に応じながら続けて修飾する。
文意として一つ目と二つ目の関係詞節の内容(先行詞の修飾)は対等関係にあってどちらかが先行詞を条件付けて残りの方の意味を制限することはない。
並列関係代名詞は一つ目の関係代名詞は省略されることがあって二つ目の関係代名詞は省略されることは概してなく、これは二重関係代名詞と全く同じだ。並列関係代名詞かどうかは二つ目の関係代名詞の直前に接続詞が入ることで分かる。すると似たような連鎖関係代名詞や二重関係代名詞には当て嵌まらないから間違えないものの接続詞によって文章が切れて関係詞節が先行詞以外の部分と繋がるように見えるのは注意しなくてはならない。
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