補色と色相の関係 結城永人 - 2023年3月29日 (水) 人間の視覚には補色残像という現象、または効果があるけれども補色残像は補色のタイブの心理補色に含まれていて最初に発見したのは作家として知られるゲーテだった。 補色のタイプと色相の種類 Starry Night by Vincent van Gogh / Public domain 補色は色相(およそ光の波長)が反対の色で、いい換えると彩度と明度/輝度を抜いた色の中でコントラストが最も強くなるような組み合わせになるものなんだ。 絵画などで補色が使われると互いに引き立て合う色の相乗効果があって強力なインパクト:補色対比や独特なイメージ:補色調和を与えることができる。 補色には二つのタイプがある。 物理補色互いに混ぜ合わせると無彩色になるもの。照明などの光の三原色:赤と緑と青に基づく加法混色では白か灰色になる。絵の具などの色の三原色:シアンとマゼンタとイエローに基づく減法混色では黒か灰色になる。心理補色人間の視覚の補色残像の影響で見えるもの。 補色は色の表し方によって変わるので、それ自体は必ずしも一定ではないけど、とにかく一つの色相の種類において反対側に位置するものが補色として捉えられる。 物理補色に近い色相を持つもの混色系:元の色を決めて混ぜ合わせる色の表し方オストワルト表色系RGB表色系XYZ表色系心理補色に近い色相を持つもの顕色系:色の三属性(色相と彩度と明度/輝度)で調整して配列する色の表し方マンセル表色系PCCS(Practical Color Co-ordinate System/日本色研配色体系)NCS(Natural Color System/自然色体系) 例えば赤の補色は物理補色に近い色相だと水色に、心理補色に近い色相だと緑色に似るという傾向があるように変わって来る。 参考サイト補色とは? 効果・意味・反対色との違いを解説補色とは(物理補色と心理補色)混色系(こんしょくけい)と顕色系(けんしょくけい) ゲーテが発見した心理補色 Portrait of Johann Wolfgang von Goethe by Gerhard von Kügelgen / Public domain 十八から十九世紀のドイツの作家、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが色彩論(1810)が心理補色によって補色と色相の関係を初めて示したものと考えられる。 色彩が光と闇の中間にあって両者が作用することで生み出されると捉えられていてすなわち行為という生きるものであって人間の目の感覚と自然から来る光の共同作業によって生成する。 ゲーテは、光の美しさを描いた詩人である。しかし、私たちの生きる世界を豊かで多様に彩る色彩は、光の陰りであり、受苦である。光と闇の間、肯定と否定の終わらない相克の運動が色彩の本質であり、世界に色彩を産出する契機こそ「行為」なのである。 [色彩のゲーテ]1/下西風澄|筑摩書房 ゲーテは科学者のニュートンが光学(1704)で主張した光のスペクトル(太陽光をプリズムに通して分かった七色の成分)に基づく色彩の概念に意義を唱えた。 実際の見え方が必ずしも一定ではないから色彩そのものを只単に自然物として捉えるのは精確ではない。 ニュートンへの反論として明るい場所と暗い場所では色が同じように見えないことを挙げた。 チェッカーシャドー錯視で確かめる The checker shadow illusion by Edward H. Adelson, vectorized by Pbroks13 / CC BY-SAチェックリセット 二箇所のAとBは同じ色で描かれているのに周りの明るさが異なっていて違った明るさの別の色に見える。 チェックを押して周りの色を一様に塗り潰してみるとAとBが同じ色で描かれていると初めて分かる。 ゲーテは明るさと暗さが新しい色を生み出すと考えて自然には分極性の働きがあるために色彩は光と闇から生成されると主張した。 そして黄色を最も明るい色(光)、青を最も暗い色(闇)として独自の色相環を作った。これもニュートンが先に作っていた光の七色を示したニュートンの円盤(回転すると白に見えることから光は七色で成り立っているとする自説を証明したもの)に対抗したのかも知れない。 ゲーテのオリジナルの色相環 Farbenkreis zur Symbolisierung des menschlichen Geistes- und Seelenlebens by Johann Wolfgang von Goethe / Public domain 色彩は光と闇という対立概念から現れるということを示すために用いられたのが補色残像だった。赤の後に緑、黄色の後に紫、青の後に橙色の残像が見えることからそれらは互いに対立概念として成り立つということを証明したわけだった。 ゲーテの色相環に象徴される色彩の認識が心理補色の魁となり、色は自然物として光の中に波長として客観的に存在するばかりか経験物として人の中に感覚として主観的に存在しさえもすると知られたし、補色と色相の関係を捉える新しい色の表し方も様々に出て来た。 参考サイト芸術と科学の対立が築いた「色」の基礎色彩の歴史と色彩についてゲーテとニュートンの色の環ゲーテ色相環について コメント 新しい投稿 前の投稿
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