ラドヤード・キップリングのアルファベットはどのように作られたかの日本語訳 結城永人 - 2022年7月22日 (金) イギリスの作家、小説家で詩人のラドヤード・キップリングの童話集その通り物語(1902)の収録作品のアルファベットはどのように作られたかの日本語訳を行った。 ラドヤード・キップリングのアルファベットはどのように作られたかの英語の出典 How the Alphabet was Made by Rudyard Kipling/ラドヤード・キップリングのアルファベットはどのように作られたか原文:Wikisource(作品集)朗読:LibriVox(ティム・バルクレイ) 両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。 関連ページラドヤード・キップリングのアルファベットはどのように作られたかの原文と注解 ラドヤード・キップリングのアルファベットはどのように作られたかの日本語の訳文 Illustration to How the Alphabet was Made from Garden City, NY : Garden City Pub. Co. / Public domain Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 父さんの簎や見知らない人や絵文字等などについてちょっと失敗してから一週間後、タフィマイ・メタルマイ(依然として彼女をタフィーと呼ぼう、諸賢)は父さんと再び鯉釣りに出かけた。母さんは家に残って獣皮を新石器時代の洞窟の外の物干し竿に干すのを手伝って欲しがったが、タフィーはこっそり朝早く父さんへ去って二人で釣りをした。間もなく彼女はくすくす笑い始めて「良い加減にしろ、こら!」と父さんはいった。 「でも駆り立てられなかったかな!」といったタフィー。「種族長がどんなに頬を膨らませたか、それに見知らない良い人が泥んこの髪でどんなに面白く見えたかを覚えてないの?」 「良く覚えている」といったテグマイ。「二枚の鹿革――房飾り付きの柔らかいもの――を私たちがしたことのために見知らない人に払わなくてはならなかったな」 「〈私たち〉は何もしなかったよ」といったタフィー。「したのは母さんとその他の新石器時代の女性たちや泥だった」 「そのことについては話すまい」といった父さん。「お昼にしよう」。 タフィーは髄入りの骨を取りながら、十分間丸ごと、鼠のように静かに座っていた、一方で父さんは鮫の歯で樺の樹皮片を引っ掻いていた。それから彼女はいった、「お父、秘密の驚き物を考えたよ。音を立てて頂戴――どのような音でも」。 「ah!」といったテグマイ。「最初から大丈夫なのか?」。 「大丈夫」といったタフィー。「開いた口が鯉とそっくりだよ。もう一度、いってよ」。 「ah! ah! ah!」といった父さん。「酷い目に遭わすな、お前」。 「酷い目に遭わすつもりじゃない、本当に真実に」といったタフィー。「秘密の驚き物の考えの重要な部分なんだ。〈ahといって〉、お父、そして口を最後に開けたままにしてその歯を貸して頂戴。鯉の口を大きく開けて描くことにする」。 「何のために?」といった父さん。 「分からないの?」といったタフィー、樹皮を引っ掻き遣りながら「私たちの小さな秘密の驚き物なんだよ。口を開けた鯉を私たちの洞窟の煙色の奥で描いたとき、もしも――お母は気にしないね――それがあのah音を思い起こさせればね。そのとき、私たちはそれが暗闇から跳び出してあの音で驚かせる私と見做せる――私がこの前の冬にビーバー湿地でやったのと同じに」。 「本当に?」といった父さん、大人たちが真実に良く聞くときに使う声で「続けな、タフィー」。 「おぅ、嫌だ!」、彼女はいった。「鯉を十分に描けないけど、鯉の口を意味するものは描ける。泥の中を掘りながら逆立ちしている様は分からないかな? じゃあ、ここに見せかけの鯉を(私たちは残りの部分が描かれていると見做せる)。ここには口を、つまり〈ah〉を意味するのを」。すると彼女はこれを描いた。(1) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「悪くないな」といったテグマイ、すると独りで樹皮片を引っ掻いた;「しかし口に交わす髭を忘れているぞ」 「でも描けない、お父」 「口と交わす髭以外には何も描く必要はない。そうすれば鯉だと分かるだろう、パーチや鱒に髭はないからな。ここをご覧、タフィー」。すると彼はこれを描いた。(2) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「では、それを写そう」といったタフィー。「見れば分かるかしら?」。すると彼女はこれを描いた。(3) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「完璧」といった父さん。「どこかでそれを見れば驚かされたも同然だろう、まるでお前が木の後ろから跳び出して『ah!』といったように」。 「では、別の音を立てて」といったタフィー、非常に誇らしく。 「yah!」といった父さん、非常に大きく。 「ふむ」といったタフィー。「それは混ざった音だ。最後の部分が鯉の口のahだ;でも最初の部分については何ができるか? 〈yer-yer-yer〉と〈ah!〉 〈ya!〉」 「鯉の口の音と良く似ている。鯉の口をもう少し描いてそれらを繋げよう」といった父さん。〈彼〉もすっかり駆り立てられた。 「駄目。繋がれれば私は忘れる。別々に描いて。尻尾を描いて。もしも逆立ちすれば尻尾が最初に来るでしょ。自分でも尻尾は最も簡単に描けると思うよ」といったタフィー。 「良い考え」といったテグマイ。「ここに鯉の尻尾を〈yer〉音として」。すると彼はこれを描いた。(4) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「やってみるね」といったタフィー。「同じようには描けないと覚えておいて、お父、尻尾の分かれた部分とそれが繋がるところの下にくっ付いた線を描くだけでも大丈夫かな?」。すると彼女はこれを描いた。(5) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 父さんは頷いた、そしてその目は興奮でぴかぴかに輝いた。 「上出来」、彼女はいった。「では別の音を立てて、お父」。 「oh!」といった父さん、非常に大きく。 「それは全く簡単だ」といったタフィー。「口は卵や石みたいに真ん丸だ。だから卵や石みたいでそれには大丈夫だね」。 「いつも卵や石に気付くわけじゃない。丸い何かみたいなものを引っ掻かなくてはなるまい」。すると彼はこれを描いた。(6) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「おや!」といったタフィー、「何て多くの音絵を作ったか――鯉の口、鯉の尻尾、卵! では他の音を立てて、お父」。 「ssh!」といった父さん、すると独りで顔を顰めたが、タフィーは音に駆り立てられ過ぎた。 「それは全く簡単だ」、彼女はいった、樹皮を引っ掻きながら。 「えぇ、何だ?」といった父さん。「私は考えていて邪魔されたくないつもりだった」。 「全く同じ音だよ。蛇が立てる音だよ、お父、考えていて邪魔されたくないときに。〈ssh〉音を蛇にしよう。これで大丈夫かな?」。すると彼女はこれを描いた。(7) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「ほら」、彼女はいった。「別の驚きの秘密だよ。シューッという蛇を簎直しの小さな奥の洞窟の扉のそばに描いたら私には頑張って考えていると分かるんだ;すると〈最も〉鼠のように静かになるんだ。またはそれを釣りのときに川のそばの木の上に描けば私には最も〈最も〉鼠のように静かにして欲しいと分かるんだ、岸を揺らさないために」。 「完璧に真実」といったテグマイ。「するとこの企てには考えるよりも多くがあるな。タフィー、なぁ、私はお前のお父の娘がかつてテグマイの部族が簎の頭に燧石の代わりに鮫の歯を使い始めて以来の最も優れた事柄に思い当たったと考える。私たちは世界の大きな秘密〈を〉見付け出したと信じるぞ」 「どうして?」といったタフィー、そしてその目は駆り立てられて光りもした。 「教えよう」といった父さん。「テグマイの言葉で水は何か?」。 「ya、もちろん、そしてそれは川も意味する――ワガイ〈ya〉みたく――ワガイ川」 「飲んだら熱病になる悪い水――黒い水――沼の水は何か?」 「〈yo〉、もちろん」 「ではご覧」といった父さん。「これがビーバー湿地の水辺のそばで引っ掻かれているのを見たらどうだろう?」。すると彼はこれを描いた。(8) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「鯉の尻尾と丸い卵。二つの音が混ざった! 〈yo〉、悪い水」といったタフィー。「もちろん悪いといわれると分かるから私はその水を飲まないよ」。 「しかし私は水の近くにいる必要は全くない。何マイルも離れていても良いんだ、狩りをしながらそれでも――」 「それ〈でも〉まるでお父がそこにいて『立ち去れ、タフィー、さもなければ熱病にかかるぞ』というようなのと全く同じなんだ。鯉の尻尾と丸い卵の何もかも! おぉ、お父、お母に伝えるべきだね、急いで!」。するとタフィーは彼の周りをぐるりと踊った。 「否、まだ」といったテグマイ;「もう少し先へ向かわないと。見てご覧。〈yo〉は悪い水だが、soは火にかけた食べ物じゃないか?」。すると彼はこれを描いた。(9) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「うん。蛇と卵」といったタフィー。「つまり夕食が準備できたと意味するんだ。それが木の上に引っ掻かれているのを見ればお父は洞窟へ来る時間だと分かるね。私もそうだね」 「まぁ!」といったテグマイ。「それも真実だ。しかしちょっと待て。難しさに気付く。〈so〉は『来て夕食を取れ』と意味するが、〈sho〉は私たちが獣皮をかける物干し竿を意味する」。 「酷く古い物干し竿!」といったタフィー。「重くて熱くて毛深い獣皮をかけるのは手伝いたくない。蛇と卵を描いてくれて私が夕食を意味すると考えて森から入って来てお母がニ枚の獣皮を物干し竿にかけるのを手伝わなくてはならないと見付けたらどう〈しよう〉?」。 「お前は腹を立てるな。お母もそうだな。私たちは〈sho〉のために新しい絵を作らなくてはならない。〈sh-sh〉と音を立てる斑模様の蛇を描かなくてはならないぞ、すると無地の蛇は〈ssss〉とだけ音を立てると見做せるだろう」 「斑の入れ方がはっきりしないよ」といったタフィー。「それに恐らく急いで〈い〉たら忘れるかも知れないし、私は〈sho〉でも〈so〉と考えるんだ、そうするとお母にやはり捕まえられるんだ。〈駄目!〉 酷く高い正しくそのものの物干し竿の絵を描いた方が良いし、必ずそうして。シューッという蛇の直ぐ後ろに入れるよ。見て!」。すると彼女はこれを描いた。(10) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「恐らく最も間違いないな。私たちの物干し竿にそっくりだ、何れにしても」といった父さん、笑いながら。「ではその中の蛇と物干し竿の音と共に新しい音を立てよう。〈shi〉といおう。簎のテグマイ語だぞ、タフィー」。すると彼は笑った。 「揶揄わないで」といったタフィー、自分の絵文字と見知らない人の髪の泥を考えながら「描いて〈頂戴〉、お父」。 「私たちはビーバーや丘を今度は持つまい、えぇ?」といった父さん。「簎の直線を描くだけだな」。すると彼はこれを描いた。(11) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「母さんもそれならば私が殺されたと間違えない」。 「お願いだから止めて、お父。私は気持ち悪い。もっと音を立てて。素晴らしく続けて行く」 「えーふむ」といったテグマイ、見上げながら。「〈shu〉といおう。空を意味するぞ」。 タフィーは蛇と物干し竿を描いた。それから止まった。「その最後の音には新しい絵を作らなくてはならないよね?」。 「〈shu-shu-u-u-u!〉」といった父さん。「丸い卵音を細くするのとそっくりなわけだ」 「ならば細く丸い卵を描いて何年も何も食べてない蛙を真似したらどうだろう」。 「駄〜目」といった父さん。「急いで描いたら丸い卵そのものと間違えるかも知れない。〈shu-shu-shu!〉 どうするかを教え〈よう〉。丸い卵の最後に小さな穴を開けてO音が如何に細く、〈ooo-oo-oo〉と全てなって行くかを示すのさ。こんなふうに」。すると父さんはこれを描いた。(12) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「おぅ、可愛らしいね! 痩せ蛙よりもずっと良い。続けて」といったタフィー、自分の鮫の歯を使いながら。父さんは描き続けた、するとその手が興奮で震えた。これを描いてしまうまで続けた。(13) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「見上げるな、タフィー」、彼はいった。「テグマイの言葉で意味するものが分かるかどうかをやってみろ。もしもできれば私たちは秘密を見付けたんだ」。 「蛇――竿――割れた卵――鯉の尻尾と鯉の口」といったタフィー。「〈shu-ya〉。空の水(雨)」。丁度、そのとき、一滴が彼女の手に落ちた、というのも日が雲で覆われてしまったためだった。「おや、お父、雨が降っている。〈それ〉が私に伝える意味か?」。 「もちろん」といった父さん。「もはや一言もいわずにお前に伝えられるよな?」。 「まぁ、一瞬で分かったと〈考える〉けど、その雨滴には確信が持てた。もういつでも思い出せる。shu-yaは雨か『雨が降りそうだ』を意味する。おや、お父!」。彼女は立ち上がって彼の周りで踊った。「お父が私が起きる前に出かけて〈shu-ya〉と煙色の壁に描いたらどうだろう。雨が降りそうだと分かってビーバーの皮のフードを取るんだ。お母は驚かないかな!」。 テグマイは立ち上がって踊った(父さんは、当時、そんなことを気にかけはしなかった)。「もっとだ! もっとだ!」、彼はいった。「私がお前に雨は大して降りそうではないし、川へ行かなくてはならないと伝えたければどうだろう、何を描こうか? テグマイの喋り言葉を先ずはいいな」。 「〈shu-ya-las, ya maru〉(終わるは空の水。行くは川)。何て多くの音! 〈私〉にはどう描けるかが分からない」 「私がやるさ――私がやるさ!」といったテグマイ。「少しだけ良く聞け、タフィー、つまり今日はもう何もするまい。〈shu-ya〉を申し分なく得たよな? しかしこの〈las〉は難問だ。〈la-la-la!〉」。すると彼は鮫の歯を振った。 「最後にシューッという蛇と蛇の前には鯉の口がある――〈as-as-as〉。私たちは〈la-la〉が欲しいだけだ」といったタフィー。 「それは分かるが、〈la-la〉を作らなくてはならない。もはや私たちは今までそれをやってみたという全世界で初めての人なんだ、タフィマイ!」 「まぁ」といったタフィー、欠伸しながら、というのも稍疲れたためだった。「〈las〉は終わると同様に割れるや済んだを意味するよね?」。 「そうだ」といったテグマイ。「〈yo-las〉はお母が料理するためのタンクに――丁度、私が狩りに行こうとするときにも水がないことを意味する」。 「そして〈shi-las〉はお父の簎が壊れていると意味する。もしも私が〈それ〉を見知らない人として間抜けなビーバーを描く代わりに考えさえしていたら!」 「〈la! la! la!〉」といったテグマイ、棒を振って顔を顰めながら「おぅ、嫌だ!」 「〈shi〉ならば全く簡単に描けたのに」、タフィーは続けた。「ならば壊れ果てたお父の簎を描いてしまおう――こうして!」。すると彼女は描いた。(14) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「そのもの」といったテグマイ。「それは全くの〈la〉だ。その他の印には少しも似てない、どちらにも」。すると彼はこれを描いた。(15) 「次は〈ya〉だ。おぅ、前に扱ったね。次は〈maru〉だ。〈mum-mum-mum〉。〈mum〉は口を閉じるよな? こんなふうに閉じた口を描こう」。すると彼は描いた。(16) 「それから鯉の口が開く。それは〈ma-ma-ma!〉となる。しかしこの〈rrrr〉物についてはどうか、タフィー?」 「全く粗くて鋭く聞こえる、お父がカヌーの厚板を切り出すときの鮫の歯の鋸みたいだ」といったタフィー。 「端が全く鋭いという意味だな、こんなふうに?」といったテグマイ。すると彼は描いた。(17) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「正確に!」といったタフィー。「けどもその歯は全て要るのではない:二つ置くだけだ」。 「一つ入れるだけにしよう」といったテグマイ。「私たちのこの企てが私が考える通りになるとすれば私たちの音絵は簡単に作れるほどに皆にとっても良い」。すると彼は描いた。(18) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「〈ついに〉できたぞ」といったテグマイ、立ち上がりながら。「それらを全て魚みたいに一続きで描こう」。 「少し棒か何かをそれぞれの言葉の間に置いた方が良くないかな、まるで鯉と同じようにそれらが互いに擦れ合ったり、競り合わないために?」 「おぅ、空白をそのために置こう」といった父さん。すると非常に駆り立てられてそれらを全く止まらずに描いた、大きくて新しい樺の樹皮片に。(19) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 「〈shu-ya-las ya-maru〉」といったタフィー、一音ずつ読み上げながら。 「今日は十分だな」といったテグマイ。「しかもお前は疲れている、タフィー。まぁ、気にするな。明日、全てを仕上げよう、そうすれば私たちは知り得る最も大きな木が全て薪に切り刻まれる後の何年も何年も思い出されるだろう」 そこで彼らは帰宅すると、その一晩、テグマイは火の片端に座ってタフィーはもう片端で、〈ya〉と〈yo〉と〈shu〉と〈shi〉の音絵を煙色の壁に描きながら一緒にくすくす笑っては母さんが「本当に、テグマイ、貴方は私のタフィーよりも酷いわ」というまでだった。 「どうか気にしないで」といったタフィー。「私たちの密かな驚き物でしかない。お母、ねぇ、それについてできた瞬間には教えるよ;けども〈どうか〉今は何なのかを訊かないで、さもないと教えなくてはならないでしょ」。 そこで母さんは甚だ用心して訊かなかった;すると翌朝の明るい早くにテグマイは新しい音絵について考えようと川へと向かった、そしてタフィーは起きたとき、洞窟の外で〈ya-las〉と大きな水のタンクに白墨で書かれているのを見た。 「うむ」といったタフィー。「これらの絵音は逆に嫌だ! お父のはここにやって来て私にお母が料理するための水をもっと運べというのと全く同じだ」。彼女は家の裏の泉へ行くとタンクを樺のバケツから一杯にした、そうして川へと走ると父さんの左耳――自分が良いときに引っ張り馴染んだ方を引っ張った。 「さぁ、一緒に来て音絵の残りを全て描こう」といった父さん、すると彼らはそれで甚だ駆り立てられて過ごして途中で素晴らしい昼食を取って二つの企てに騒々しく戯れた。Tに来たとき、タフィーは自分の名前や父さんのや母さんのが全てその音で始まるようだといい、彼らは手を繋ぐ自身の家族構成のようなものを描くことになった。それは、一二回、描くのは構わなかったが、六七回、描くということになるとタフィーとテグマイは引っ掻きに引っ掻いてはついにT音が只腕を広げてタフィーとテシュマイを支える細長いテグマイになるまでだった。この三つの絵からそれがどのように起こったかを部分的に見ることができる。(20、21、22) Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain その他の絵の多くは最初から素晴らし過ぎるばかりだったが、取り分け昼食前、樺の樹皮に何度も何度も繰り返して描かれるほどに明快で簡単になってはついにテグマイも何の落ち度もないというまでだった。彼らはシューッという蛇をZ音へ反対向きに丸く変えたが、それは柔らかく優しいふうに後ろ側にシューッといっているのを示していた(23);そして、丁度、E音へ捻り線を作った、なぜならそれは余りにしょっちゅう絵に出て来るものだからだった(24); Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain さらに彼らはテグマイ族の有り難いビーバーの絵をB音へ描いた(25、26、27、28); Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain そして汚らしい煩い音だったから、丁度、鼻をN音へ描いた、疲れるまで(29);さらに彼らは湖の川魣の貪欲な口をGa音へ描いた(30);そして川魣の口を再びその後ろに簎を付けて引っ掻いて痛々しいKa音へ描いた(31); Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain さらに彼らは少し曲がったワガイ川の絵を良くくねくねとしたWa音へ描いた(32、33); 等など、果たして全ての望みの音絵を引き出すまで同じように続けられてはついに全く完璧なアルファベットになった。 そして何千年も何千年も何千年もの後、つまり象形文字と民衆文字とナイル諸語と難読文字とクーフィー体とルーン文字とドリスの方言とイオニアの方言と全ての種類の堆積と秘訣(なぜならウーンとネグスとアホンと伝統の貯蔵庫は気付いても良いものだけを残すことはなかったから)の後、優れて馴染みの易しい、分かるアルファベット――A、B、C、D、Eと残りのもの――は十分に馴染んだときにその適切な形態に全ての諸賢たちが学ぶために又戻って来た。 しかし私はテグマイ・ボプスライとタフィマイ・メタルマイとテシュマイ・テウィンドロウ、彼女のお母さんを思い出す、もはや全ての日は過ぎ去った。そしてそれは大河ワガイの岸辺で――ちょっと前に――そう――その通りだった! テグマイ・ボプスライがタフィーとアルファベットを作った後にやった最初の一つはテグマイ族の寺院に置いていつまでもいつまでも保たれるように全ての文字で素敵なアルファベットの首飾りを作ることだった。テグマイの部族の全員が最も貴重なビーズや素晴らしいものを持って来てタフィーとテグマイは丸五年を費やして首飾りを纏めた。これが素敵なアルファベットの首飾りだ。糸は最も良質で最も強靭な馴鹿の腱で作られて細い銅線で丸く縛られた。 Illustration to How the Alphabet was Made by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 上から始めると最初のビーズはテグマイの部族の祭主が備えた古い銀のものだ;それから三つの紫貽貝の真珠が来る;次は土のビーズ(青と灰色);次はアフリカ(ただし実際にはインド人だったに違いない)から貰った部族からプレゼントとして送られた織物の金色のビーズ;次はアフリカ(テグマイの部族が戦いで奪い取った)からの長くて平べったい硝子のビーズ;それから二つの土のビーズ(白と緑)が来るが、片方に穴があってもう片方に点と筋がある;次は稍欠けた琥珀のビーズ;それから三つの土のビーズ(赤と白)、点付きが二つとその間に鋸歯模様付きの大きな一つ。それから文字が始まって各文字の間にはその文字を小さく繰り返した白っぽい土のビーズがある。文字はこうだ――。 Aは歯――思うに箆鹿の牙に引っ掻かれる。 Bは古い栄光の欠片のテグマイ族の有り難いビーバーだ。 Cは真珠のような牡蠣の貝殻――内側だ。 Dは紫貽貝の一種――外側に違いない。 Eは捻った銀線だ。 Fは割れているが、その残りものは赤鹿の角の欠片だ。 Gは木片に黒く塗られている(Gの後のビーズは小さな貝で、土のビーズではない。なぜそうなのかは私には分からない)。 Hは大きな茶色の宝貝の貝殻のようなものだ。 Iは手で擦り砕いた長い貝殻の内側だ(テグマイはそれを擦り砕くのに三ヵ月を要した)。 Jは真珠層の釣り針だ。 Lは銀の壊れた簎だ(KはJにもちろん続くべきだが、首飾りは、一度、壊れて誤って直された)。 Kは引っかかれて黒く擦られた細切りの骨だ。 Mは薄灰色の貝殻にある。 Nは引っ掻かれた鼻を持つ斑岩と呼ばれるものの一部だ(テグマイはこの石を磨くのに五年を費やした)。 Oは真ん中に穴の開いた牡蠣の貝殻の一部だ。 PとQは欠落している。それらはずっと前に失われた、大戦争で、すると部族は首飾りを乾かしたガラガラヘビの尾の先で直したが、誰もPとQを見付けることはなかった。そうしたわけで、「PとQのものに気を付けろ」とのいい回しが始まった。 Rはもちろん全く鮫の歯だ。 Sは小さな銀の蛇だ。 Tは小さな骨の端で、磨かれて輝かしい。 Uはもう一つの牡蠣の貝殻だ。 Wは大きな真珠貝の内側に見付かった真珠層の捻れた部分で、砂と水に浸した針金で切り落とされており、タフィーはそれを磨いて穴を開けるのに一ヵ月半を要した。 Xはガーネットの原石で真ん中を繋いだ銀線だ(タフィーがガーネットを見付けた)。 Yは象牙の鯉の口だ。 ZはZ型の縞を印されたメノウの釣鐘型の一部だ。Z蛇が軟石を選んで赤土と蜜蝋で擦ることによる縞模様の一つから作られていた。釣鐘の口にはZ文字を繰り返す土のビーズが見える。 それらが全ての文字だ。 次のビーズは小さな丸い緑がかった銅鉱石の一塊だ;次は粗削りのターコイズの一塊だ;次は粗削りの金塊(水金と呼ばれるもの)だ;次はメロン型の土のビーズ(緑の斑点がある白)だ;それから四つの平たい象牙の部分が来るが、ドミノ牌に稍似た点を持つ;それから非常に酷く摩滅した三つの石のビーズが来る;それから端に錆びた穴を持つ二つの軟鉄(それらは魔法をかけられたに違いない、なぜなら非常に共通して見えたからだ);そして最後は非常に非常に古いアフリカのビーズ、青と赤と白と黒と黄色の硝子みたいだ。それから反対側の大きな銀釦に引っかける輪が来て以上で全てだ。 私は首飾りを非常に慎重に複製した。それは1パウンドと7半オンスの重さがある。(……) テグマイの全部族の印象を 与えるものは何も残ってない―― メロウダウンに郭公が鳴く―― 静寂と太陽が残っている。 しかし正確な年月が戻って 傷まない心が又歌うに連れて、 羊歯を抜けて踊るタフィーが現れる サリー州の春を又送るために。 その眉は蕨の羽葉で結ばれている。 そして金の縺れ髪が舞い上がる; その目はダイヤモンドの明るさだ そして空の上よりも青い。 モカシンと鹿革のクロークで、 勇んで気儘な色白の彼女が闊歩して、 少し湿気た木材の煙色が照らす 父さんに闊歩する場所を教えるために。 遠いため――おぅ、非常に遠ざかった、 余りの遠さに彼女は呼びかけられない テグマイ一人が現れて見付けるのだ 自分の全てだったという娘を。 参考サイトHow the Alphabetwas Made 英語の小説の日本語訳 コメント 新しい投稿 前の投稿
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