易しい読書感想文用の小説集 結城永人 - 2022年8月12日 (金) 学校の課題などの読書感想文用に文字数が少なくて速く読める短編か中編小説から内容が比較的に易しくて主に小学生か中学生に向いた作品を紹介すると共にそれぞれのあらすじと読書感想文を書くときのヒントを纏めた。 Reading boy by Eastman Johnson / Public domain L・フランク・ボームの素晴らしいポンプラドヤード・キップリングの豹はどのように斑点を得たかオスカー・ワイルドの星の子ヘンリー・ローソンの家畜追いの妻サキの侵入者 どれも僕が和訳した英語の海外の小説集から選んでいて内容の読み取りが平易と思われる順番で並べている。 その他に中学生以上のための中々のものと高校生以上のための難しいものも用意している。 L・フランク・ボームの素晴らしいポンプ 作者 L・フランク・ボーム(1856〜1919) 国籍 アメリカ 作品 素晴らしいポンプ(1901) 分野 童話/幻想 長さ 短編(七千五百字程度) 素晴らしいポンプのあらすじ 田舎に貧乏な夫婦が住んでいた。妻が遠くの川の水汲みに出かけたとき、道端で引っ繰り返って動けないた甲虫を見付けて善意から元に戻した。次の日も同じで、又、やると甲虫が命を救ってくれたお礼がしたいから家のそばに穴を掘ってポンプを置けという。妻が夫に伝えてやってみると最初は穴を掘るだけで駄目だったけれども再び甲虫に聞いた通りにポンプを置いたニ回目は金貨が大量に出て来て夫婦は瞬く間に大金持ちに変わった。そこで礼拝に通う教会にいつもよりも多くの献金をするが、まさか見ていた牧師から不審に思われて問い質される。甲虫が人々から盗んだ可能性があり、妻は不安になって訊きに行くと虫の王だから虫の民の多くが少しずつ拾い集めたものをポンプに入れて渡したと応えられた。伝えて夫も知って喜び、二人で町で浮かれ捲って散財する。すると見ていた悪党が夫婦の家に盗みに入って夫婦は恩義ある甲虫から得た並外れた資産を全て失う。残されたのは貧乏の頃と変わらない労働に支えられる暮らしだけだった。 読書感想文を書くときのヒント 命拾いした甲虫の無上の思い突然の大金を得た夫婦の気持ち牧師の欲望に目が眩まない見方悪党に狙われる無頓着な行動最も大切なのは金銭ではない 文学に触れるのは可哀想な甲虫を助けた人間性や財産以上に貴重なものとして示された労働などがある。 ラドヤード・キップリングの豹はどのように斑点を得たか 作者 ラドヤード・キップリング(1865〜1936) 国籍 イギリス 作品 豹はどのように斑点を得たか(1902) 分野 童話/幻想 長さ 短編(五千五百字程度) 豹はどのように斑点を得たかのあらすじ 昔、アフリカ南部のハイヴェルト台地で、麒麟や縞馬などの草食獣を食べようと狙って肉食獣の豹とアフリカのエチオピア人が一緒に狩りをしていた。砂や砂のような岩や黄色っぽい茂みばかりで、それらに同化する姿だった豹とエチオピア人が狩りに有利だったけど、ある頃から草食獣たちは姿が見えなくなってしまった。豹とエチオピア人は獲物を失ったひもじさからバフィアンという最も賢い動物に教えを乞うた。すると豹は「早く他の点へと向かうこと」、エチオピア人は「早く変化すること」という助言を貰った。分からないまま、手がかりの土着植物を求めて影の多い森へ移動すると匂いや声で、見えない獲物を捕まえることができた。考えると見えないのは影の多い森に入った草食獣たちに同化する模様――麒麟の斑や縞馬の縞など――が新しく付いているせいだと突き止めた。エチオピア人はバフィアンの「変化」を理解して皮膚を黒くして豹はバフィアンの「他の点」を理解して斑点を付けた。以降、狩りが上手く行って生き延びることができて現在でもそのままになっている。 読書感想文を書くときのヒント 食うものと食われるものの実情逃げ切れた草食獣たちの安堵感豹とエチオピア人の瀕死の苦悩バフィアンの奇跡的な有り難み活路は考えて行動して得られる 文学に触れるのは抜き差しならない世界の悲喜交々の生活や生きるための窮極的な力の証明などがある オスカー・ワイルドの星の子 作者 オスカー・ワイルド(1854〜1900) 国籍 アイルランド 作品 星の子(1891) 分野 童話/幻想 長さ 中編(一万二千七百字程度) 星の子のあらすじ 貧しい樵が冬の最中に空から降って来る星の光を財宝と思って追いかけると地上で見付けたのは赤ん坊だった。捨て子らしく、このまま、死なせるのは不憫だと家に連れて帰って星の子として育てることにした。成長すると見た目は美しかったが、性格が意地悪く、自分が助けて貰った恩も考えず、弱い者への攻撃を好んだ。しかし探しに来た乞食の母親を馬鹿にして追い払うと蟇の顔とヨーロッパ鎖蛇の体に変わってしまう。天罰と悟った星の子は不快な乞食の母親へ謝罪するために一人で旅立とうと決心した。すると行く先々で醜い見た目から酷い嫌がらせを受け続けて最終的に奇術師へ奴隷として売り払われることになる。奇術師は町の木叢に隠された白と黄色と赤の金貨を一枚ずつ見付けて持ち帰るように命じる。一枚目の白が見付からず、嘆いていると星の子は罠にかかった兎を見付けて可哀想だと助けた。兎はお返しに目当ての金貨の場所を教える。星の子は喜ぶが、途中で癩者(ハンセン病患者)に物乞いを受けて可哀想だと渡して帰り、奇術師から百発の鞭打ちを受ける。二枚目の黄色も兎に助けられるが、可哀想な癩者に渡して三百発の鞭打ちを受ける。奇術師は三枚目の赤が手に入らなければ星の子を殺すことを宣言して送り出す。やはり兎に助けられるが、目当ての金貨を可哀想な癩者に渡してしまい、もはや星の子は死を待つばかりのところで、世界が一変する。城に迎え入れられて素晴らしい王子だと人々から称えられることになる。乞食の母親は王妃で、物乞いの癩者は王だったと明かされた。星の子が慈悲深く生まれ変わって治めた国では育ての親の樵が感謝されて裕福になったり、人でなしの奇術師が追放されたりして平和と充足が広がるばかりだった。 読書感想文を書くときのヒント 樵の我欲を越えた思い遣り星の子の意地悪さからの改心星の子の正しく生きるための努力兎の義理堅さや助け合いの精神星の子の王としての謙虚さ 文学に触れるのは優しさから嫌がらせまでの人情を巡る展開や個人から社会までの幸不幸の様々な現実などがある。 ヘンリー・ローソンの家畜追いの妻 作者 ヘンリー・ローソン(1867〜1922) 国籍 オーストラリア 作品 家畜追いの妻(1892) 分野 現代/人間 長さ 短編(七千三百字程度) 家畜追いの妻のあらすじ オーストリアのブッシュ(叢林地)に暮らす家畜追い(家畜を飼育や売買などの目的で長く移動させる人)の一家があった。夫が仕事に出て暫く帰らない間、妻と四人の子供たちとアリゲーター(飼い犬の名前:鰐のような噛み止め器具を付けたため)が残されていた。子供たちが家の外で遊んでいると蛇が出たと叫んで聞き付けた妻は誰も噛まれないように捕まえようとするが、失敗する。家の隙間から再び出て来ないか、長男は自分がやると望むけれども妻は宥めながら子供たちを全て寝かし付けた後、アリゲーターと共に夜通しで見張りを行う。その間に自身の生活について思い巡らせる。夫との結婚、亡くした子供、蛇と何度も戦った飼い犬のこと、火事や洪水に巻き込まれたこと、病気の牛を治療したり、狂った牛や鶏を狙う烏や鷲と戦ったりしたこと、サンダウナー(日没に良く姿を見せるスワッグマン:所有物を入れた品袋を背負って地方を巡回する労働者)に食料どころか宿泊さえも迫られてアリゲーターと共に追い払ったこと、子供たちと良い身形で日曜日に町へ行くこと、普段は女性的な優しさを見せる暇もないこと、アボリジニ(オーストラリア原住民)に薪を頼むと予想外に良くやってくれてお礼の煙草を多めに渡したこと。思わず、妻は涙を溢すが、拭おうとして取り出した穴だらけのハンカチに笑ったりしていると夜明けが近かった。アリゲーターの警戒が厳しくなり、部屋に蛇が現れ始める。長男が起きていて加勢しようとするも妻は制する。暫くの対決の末、アリゲーターが蛇を咥えて引き出したところを妻が棒で叩き潰した。外へ持って行って焼いていると涙が光った。見付けた長男が感極まって抱き付いたところで、丁度、夜明けが訪れた。 読書感想文を書くときのヒント 子供を危険から守る親心人を必死に助ける犬の忠誠心妻のありのままの生き方殺さざるを得ない蛇への寂寥親心を察した長男の感興 文学に触れるのは妻の一人の女主人としての強さや敵でさえも憎み切らないほどの温情などがある。 サキの侵入者 作者 サキ(1870〜1916) 国籍 イギリス 作品 侵入者(1919) 分野 現代/人間 長さ 短編(四千九百字程度) 侵入者のあらすじ ヨーロッパの中央と東を結ぶカルパティア山脈の一角にフォン・グラドウィッツ家の森があり、所有権を望んだ裁判に負けても不服のズネーム家と後の三世代に亘って争っていた。今、前者のウールリックと後者のジョージが殺しも辞さない血腥い確執を引き継いでいたが、ある夜、嵐の森の中で手にライフル銃を構えながら鉢合わせすることになった。しかし暫しの躊躇いの後、大きな雷が落ちて二人とも負傷して倒されたまま、身動きが取れなくなってしまう。気が付くと直ぐ近くにいる敵同士で、互いに罵倒し合いながら味方が助けに来るのを待つことになった。二人とも自分の方が先に動けたら相手を討ち取れると思っていたが、中々、どちらの味方も現れず、ウールリックが自分と変わらずに殆ど動けないジョージへ同情を抱き始める。手持ちのワインを飲むように勧めると敵の施しは受けないと断られるけど、さらに両家の長年の確執にも疑いを持って他の生き方を探るに至り、友達になることを呼びかける。ジョージは最初こそ否定したものの黙って考えたのか周りの人たちも二人の争いがなければきっともっと幸せに暮らせるだろうと話してウールリックの言葉に同意を示した。二人は最後の力を振り絞るようにいつまでも現れないそれぞれの味方へ声を上げる。すると丘の斜面に人影が見えたと喜んだのも束の間で、実際は狼の群れだったと分かり、助かるところまでは未だ行かない。 読書感想文を書くときのヒント 人間の執着の鬼気迫る恐ろしさ悪意を物ともしない自然の凄まじさ似た境遇や同じ立場による心変わり人生を根底的に考え直させる友情気持ちだけでは儘ならない現実 文学に触れるのは雷で人殺しが阻まれる驚異的な経験や敵同士でも通じ合って和解へ向かう人間らしさなどがある。 小説はあらすじだけの物語ではないので、実際に本文を読んで初めて分かる良さや面白さがあるのを忘れないで欲しい。 読書感想文に何を書くかは必ずしも内容を把握するだけではなくて自分に活かせる部分を掴むということも重要だろう。 読書感想文用の小説の難易度別の紹介 コメント 新しい投稿 前の投稿
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アドセンスの個人のアメリカの税務情報/W-8BEN納税フォームの書き方 アドセンスに利用者の税務情報が必要となり、2021年6月1日以降、YouTubeのサイト広告などで収益を得る場合には税務情報を提出しないとアドセンスの支払いからアメリカの源泉所得税が米国内国歳入法の第三章により、控除される。 Google は、YouTube パートナー プロ...
細川慎二のどうにも泣けて来てしまうストリートライヴのアルトサックス サックス奏者の 細川慎二 のYouTubeチャンネルの Sax in the Night City で出ているサックスのストリートライヴの動画が美しい音色と相俟った街角の雰囲気の良さで心底と泣けて来るほどの感動を催させる。 細川慎二のアルトサックスの美しい音色が響き渡る街角の...
若者たちがFacebookよりもTwitterを多く始めるというソーシャルメディアの利用者数の変化について 僕は Twitter をやって Facebook をやらないので、近年の特に日本の若者たちが似通って来ているのが面白いと思った。 「現在利用しているSNSサービスや動画サイト」について質問したところ、「LINE」の利用率が98.2%、「Twitter」の利用率が81.5%と前...
Imgurで画像URLと埋め込みコードを取得する方法 Imgur は自分でアップロードした画像については画像URL/直リンクを取得して他のサイトにHTMLのimgタグで表示させられる。 そして自分と他の人たちも含めて画像の埋め込みコードを取得して他のサイトのHTMLに、そのまま、記載して表示させられもする。 目次 Img...
後藤浩輝と抑鬱傾向による突発的な自殺 中央競馬でトップ騎手の一人だった 後藤浩輝 が亡くなっていると気付いた。二千十五年だからまだ二年前の死だった。競馬ファンならば誰でも知っているくらい有名なはずだけれどもテレビのバラエティー番組でも見かけていたと思う。個人的には ダービースタリオン (ゲーム)に熱中していて後藤浩輝...
There is / are a lot / number / variety ofの単数と複数の使い分け どうも単数か複数か分かり難い英語の表現があって熟語の「a lot of」(沢山の)や「a number of」(多くの、幾つかの)や「a variety of 」(様々な)なんだけれどもそれぞれがそこにあるというときに単数扱いの「There is」か複数扱いの「There are...
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