ラドヤード・キップリングの海で遊んだ蟹の日本語訳 結城永人 - 2022年8月5日 (金) イギリスの作家、小説家で詩人のラドヤード・キップリングの童話集その通り物語(1902)の収録作品の海で遊んだ蟹の日本語訳を行った。 ラドヤード・キップリングの海で遊んだ蟹の英語の出典 The Crab that played with the Sea by Rudyard Kipling/ラドヤード・キップリングの海で遊んだ蟹 原文:Wikisource(作品集) 朗読:LibriVox(ティム・バルクレイ) ※一部に誤字があってbe breathed→he breathed、U.Y.K.→N.Y.K.が正しいようだ。 両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。 関連ページラドヤード・キップリングの海で遊んだ蟹の原文と注解 ラドヤード・キップリングの海で遊んだ蟹の日本語の訳文 Illustration to The Crab that played with the Sea from a collection of short stories Just so stories (c1912) Garden City, N.Y. : Doubleday & Co., Inc / Public domain Illustration to The Crab that played with the Sea by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain 古の良い時代に、おぉ、諸賢、始まりの時が来た;つまりそれは古老の魔術師が物体を用意することになる日だった。最初に地が用意された;それから海が用意された;そうすると彼は出て来て遊べると全ての動物たちに伝えた。 すると動物たちは「おぉ、古老の魔術師よ、私たちは何ごっこしようか?」といった。すると彼は「私が教えよう」といった。そして象――その頃の全ての象――を捕まえると「象になって遊べ」といった、するとその頃の全ての象は遊んだ。彼はビーバー――その頃の全てのビーバー――を捕まえると「ビーバーごっこしろ」といった、するとその頃の全てのビーバーは遊んだ。彼は牛――その頃の全ての牛――を捕まえると「牛ごっこしろ」といった、するとその頃の全ての牛は遊んだ。彼は亀――その頃の全ての亀――を捕まえると「亀ごっこしろ」といった、するとその頃の全ての亀は遊んだ。一つずつ全ての獣や鳥や魚を捕まえると何ごっこするかを伝えるのだった。 しかし夕べに向けて、人や物が落ち着かずに疲れて来るとき、男性(自分の小さな娘子を連れた)が現れた――そうだ、自分の最も愛すべき小さな娘子を肩に座らせながら彼は「この遊びは何ですか、古老の魔術師?」といった。すると古老の魔術師は「ほぉ、アダムの息子、これは正しく始まりの遊びじゃよ;しかしお主はこの遊びに賢過ぎる」といった。すると男性は敬礼して「はい、私はこの遊びに賢過ぎます;ですが貴方は全ての動物たちを私に従わせると分かります」といった。 さぁ、二人が一緒に話している一方、蟹のパウ・アマが遊びに控えていたが、横向きに逃れ出ると海へと進み、「僕は深い水の中で一人で遊ぶし、こんなアダムの息子に従いはしない」と自分にいうのだった。彼が消え去るのを気付いたのは男性の肩に凭れた小さな娘子だけだった。そして遊びは動物がもはや順序構わずに残されなくなるまで続いた;ついに古老の魔術師は細かい埃を自分の手から拭い去ると動物たちがどのように遊んでいるかを見ようと世界を歩き回った。 Illustration to The Crab that played with the Sea by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain これは古老の魔術師が男性と小さな娘子に話している間に走り去る蟹のパウ・アマの絵だ。古老の魔術師は自分の魔法の玉座に腰を下ろし、自分の魔法の雲に包まれている。 彼の前の三つの花は三つの魔法の花だ。丘の頂きにその頃の全ての象とその頃の全ての牛とその頃の全ての亀が古老の魔術師が伝えたときに遊びへ出ている。牛は瘤を持つ、なぜならその頃の全ての牛だったからだ;つまり後に生まれる全ての牛のためにその頃の全てを持っていなくてはならなかった。丘の下には自分たちがやるべき遊びを教えられた全ての動物たちがいる。 その頃の全ての虎がその頃の全ての骨に笑うのが見える、そしてその頃の全ての箆鹿とその頃の全ての鸚鵡とその頃の全ての兎が丘の上にいるのが見える。その他の動物たちは丘の向こう側にいるので、私は描かなかった。丘を上がる小さな家はその頃の全ての家だ。古老の魔術師はそれを男性から家の作り方を求められたときに作って教えた。あの尖った丘の周りの蛇はその頃の全ての蛇で、その頃の全ての猿と話しており、猿は蛇に失礼な態度を取っており、蛇は猿に失礼な態度を取っている。 男性は古老の魔術師と話すことに大変に忙しい。小さな娘子は走り去るときのパウ・アマを見ている。手前の水の中のその瘤のようなものがパウ・アマだ。当時は普通の蟹ではなかった。彼は蟹の王だった。そうしたわけで、異なって見える。男性が立ち入っている煉瓦のように見えるものは大きな迷路だ。男性は古老の魔術師と話し終えたら大きな迷路を歩くのだ、なぜならそうしなければならないからだ。 男性の足元の石の印は魔法の印で、その下へと私は魔法の雲と混ざり合った三つの魔法の花を描いた。この絵の全ては大きな呪術で、強い魔法だ。 彼は北へ行った、諸賢、そしてその頃の全ての象が己の牙で穴を掘っては己のために用意された気持ち良く新しい綺麗な地面を己の足で踏み付けているのを見付けた。 「〈クン?〉」といったその頃の全ての象、意味するに「これは正しいか?」。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師、意味するに「それは全く正しい」;そして大岩とその頃の全ての象が投げ上げた土塊へ息を吹きかけるとそれらは巨大なヒマラヤの山々となり、もはや地図に見出される。 彼は東へ行った、そしてその頃の全ての牛が己のために用意された野原で草を食んでいるのを見付けた、すると牛は一度で森全体を巡って舌舐めずりして飲み込むと座って食い戻しを噛んだ。 「〈クン?〉」といったその頃の全ての牛。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師;すると牛が食べてしまった何もない一画と牛が座っていた場所に息を吹きかけて一つはタール砂漠、もう一つはサハラ砂漠となり、もはや地図に見出される。 彼は西へ行った、そしてその頃の全てのビーバーがビーバーダムを己のために用意された広い川の口に交わして作っているのを見付けた。 「〈クン?〉」といったその頃の全てのビーバー。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師;すると倒木と静水に息を吹きかけてそれらはフロリダ州のエヴァーグレーズ湿地となった、もはや地図に見出されよう。 それから彼は南へ行ってその頃の全ての亀が己のために用意された砂を水掻きで引っ掻いているのを見付けた、すると砂と岩は空を切ってぐるぐる回りながら遠くの海へと落ちた。 「〈クン?〉」といったその頃の全ての亀。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師;すると砂と岩に息を吹きかけたが、それらは海に落ちてしまったところでボルネオとセレベスとスマトラとジャワとマレー諸島の残りの最も美しい島々となり、もはや地図に見出される。 やがて古老の魔術師は男性とペラ川の岸辺で会って「ほぉ! アダムの息子よ、全ての動物たちはお主に従うか?」といった。 「はい」といった男性。 「全ての地はお主に従うか?」 「はい」といった男性。 「全ての海はお主に従うか?」 「いいえ」といった男性。「昼一回と夜一回、海はペラ川を駆け上がって真水を森へと追い戻します、そのために私の家は水浸しになります;昼一回と夜一回、それは川を駆け下りて全ての水を引っ張って行きます、そのために泥以外には何も残りませんし、私のカヌーは引っ繰り返されます。それが貴方の遊ぶように伝えたものですか?」。 「否」といった古老の魔術師。「それは新しい悪い遊びだ」。 「見て下さい!」といった男性、すると喋るに連れて大海がペラ川の口を上がって来、川を暗い森中に何マイルも何マイルも溢れ出して男性の家を水浸しにするまで後ろの方へ追っていた。 「これは酷い。カヌーを下ろせ、すれば誰が海で遊んでいるかが分かるだろう」といった古老の魔術師。彼らはカヌーに踏み込んだ;小さな娘子は一緒に来た;そして男性はクリス――炎みたいな刃の湾曲する波状の短剣を持って来た――ついに彼らは川へ船出した。それから海はどんどん走り戻り始めてカヌーはペラ川の口から吸い出されるとまるで糸に引っ張られたようにセランゴール州とマラッカ州とシンガポールを過ぎてビンタン島へと出て行った。 それから古老の魔術師は立ち上がると「ほぉ! 獣と鳥と魚、私は真っ先に手に取り入れてするべき遊びを教えたが、お主らの誰が海で遊んでいるか?」といった。 それから全ての獣と鳥と魚が「古老の魔術師、私たちは貴方から教えられたように遊んでいる――私たちと子供たちの子供たち。さてや私たちの誰も海で遊んでない」と一緒にいった。 それから月が海に大きく満ちて上ると古老の魔術師はいつの日か世界を捕まえようと望んだ釣り糸を紡ぎながら月の中に座る傴僂の老爺に「ほぉ! 月の釣り師よ、お主が海で遊んでいるか?」といった。 「いいえ」といった釣り人「私はいつか世界を捕まえるべき糸を紡いでいます;さてや海で遊びませんよ」。すると彼は自分の糸を紡ぎ続けた。 さぁ、いつも老いた釣り人の糸を作られるが早いか齧る鼠も月の中にいて古老の魔術師は「ほぉ! 月の鼠よ、〈お主〉が海で遊んでいるか?」と彼にいった。 すると鼠は「私はこの老いた釣り人が紡いでいる糸を齧り通すことに忙し過ぎる。海で遊ばないよ」。すると彼は糸を齧り続けた。 それから小さな娘子が美しい白い貝殻の腕輪を着けた柔らかい茶色の腕を上げて「おぉ、古老の魔術師! 父さんがここで真っ先に貴方と話しながら動物が自分の遊びを教わっている間に私が父さんの肩に凭れていたとき、一匹の動物が自分の遊びを貴方から教わる前に海へと反抗的に去って行った」といった。 すると古老の魔術師は「見ながら黙るとはどんなに賢い童子だろう! 動物はどんなふうだったのか?」。 すると小さな娘子は「丸くて平らだった;そして目は柄の上に伸びていた;そしてこんなふうに横向きに歩いた;そして背中は硬い鎧に覆われていた」といった。 すると古老の魔術師は「真実を喋るとはどんなに賢い童子だろう! さぁ、パウ・アマが行ったと分かったぞ。パドルを渡しなさい!」といった。 そこで彼はパドルを取った;しかしパドルは必要なかった、というのも水は大穴があって世界の中心へ導いて行くと共にその穴の中に一対の木の実を付ける素晴らしい木、パウフジャンジが生えているプサットタセク――海の中心――と呼ばれる場所へ来るまで全ての島々を過ぎて絶え間なく流れるためだった。それから古老の魔術師は己の腕を深くて温かい水と蟹のパウ・アマの広い背中に触れるパウフジャンジの根の下を通して肩までするりと動かした。するとパウ・アマはそれによって大人しくなり、海全体は手を盥へと差し入れるときの水と同じくらい上がった。 「あぅ!」といった古老の魔術師。「さぁ、誰が海で遊んでいたかが分かったぞ」;すると彼は「何をしているのか、パウ・アマ?」と大声で呼んだ。 もはやパウ・アマは下の深くから「昼一回と夜一回、私は餌を探しに出て行く。昼一回と夜一回、私は戻る。一人にしてくれ」と答えた。 それから古老の魔術師は「聞け、パウ・アマ。お主が己の洞穴から出て行くとき、海の水はプサットタセクへと流れ込む、すると全ての島の全ての浜は何もないままになり、もはや小さな魚は死ぬし、ラジャ・モヤン・カバン、象の王、彼の足は泥だらけになる。お主が戻ってプサットタセクに座るとき、海の水は上がって小さな島の半分が冠水するし、男性の家は水浸しになるし、ラジャ・ラブドゥーラ、クロコダイルの王、彼の口は塩水で一杯になる」といった。 Illustration to The Crab that played with the Sea by Kipling, Rudyard, Gleeson, Joseph M. (Joseph Michael), or Bransom, Paul, 1885- (ill.) / Public domain これは蟹のパウ・アマが三つの火山の煙と同じくらい高く海から起きている絵だ。私は三つの火山を描かなかった、なぜならパウ・アマはとても大きかったからだ。パウ・アマは魔法を使おうとしているが、只の愚かな蟹の王なのだ、つまりだから彼は何もできない。全ての脚と爪と空っぽの中身のない甲羅が見える。 カヌーは男性と娘子と古老の魔術師がペラ川から渡って来たものだ。海は黒くて揺れ動くばかりだ、なぜならパウ・アマが、丁度、海から起き上がったところだからだ。プサットタセクは下にあるために私は描かなかった。男性は湾曲するクリスのナイフをパウ・アマに振っている。小さな娘子はカヌーの真ん中に静かに座っている。彼女は自分が父親と一緒で全く安全だと分かっている。古老の魔術師は魔法を使い始めながらカヌーの反対の端に立ち上がっている。彼は魔法の玉座を浜に置いて来ており、濡れないために衣服を脱いでしまった、そして船を転覆させないために魔法の雲も背後に置いて来ている。 実際のカヌーの外側のもう一つの小さなカヌーのように見えるものは舷外浮材と呼ばれる。棒に繋がれた木造品で、カヌーが転覆されるのを防ぐ。カヌーは一つの木材から作られており、片端にパドルがある。 それからパウ・アマは下の深くから笑って「自分がそんなに有力だとは知らなかった。これからは、一日に七回、出て行こう、もはや水が静まることはないだろう」といった。 すると古老の魔術師は「お主のための遊びをやらすことはできない、パウ・アマよ、真っ先に私から逃げたのだから;しかし恐れなければ来い、そして私たちとそれについて話そう」といった。 「私は恐れない」といったパウ・アマ、すると月明かりの海の上に起き上がった。パウ・アマよりも大きなものは世界に誰もいなかった――というのも彼は全ての蟹の中の王だったためだ。普通の蟹でなくては蟹の王なのだ。彼の大きな甲羅の一端はサワラク州の浜に触れた;もう一端はパハン州の浜に触れた;そして彼は三つの火山の煙よりも高かった! 素晴らしい木の枝を抜けて起き上がったときには大きな一対の果実――人を若返らせる魔法の二倍仁の木の実の一つをもぎ取った――すると小さな娘子はそれがカヌーの舷側に揺れ動くのを見た、そして引き込むとその柔らかな中心部を己の小さな金の鋏で摘み取り始めた。 「さぁ」といった魔術師、「本当に有力だと示すべく、パウ・アマよ、魔法を使え」。 パウ・アマは目を回しながら脚を振ったが、海を掻き回すに過ぎなかった、なぜなら蟹の王だったけれども蟹でしかなかったからで、古老の魔術師は笑った。 「結局、お主はそんなに有力ではない、パウ・アマ」、彼はいった。「さぁ、私にやらせてみろ」、そして彼は己の左手――左手の小指だけで魔法を使った――すると――いやはや仰天、諸賢、パウ・アマの硬い青と緑と黒の甲羅が椰子の実の殻のように自身から落ちた、そしてパウ・アマはすっかり軟らかい――時々、浜で見付ける小さな蟹のように軟らかいままになった、諸賢。 「実際、お主は非常に有力だ」といった古老の魔術師。「男性にここでお主をクリスで切るように頼もうか? ラジャ・モヤン・カバン、象の王にお主を牙で貫くように呼びに遣ろうか? さもなければラジャ・アブドゥーラ、クロコダイルの王をお主を噛むように呼び寄せようか?」。 するとパウ・アマは「私は恥ずかしい! 背中に硬い甲羅を返してプサットタセクへ帰らせてくれ、すれば餌を取りに、昼一回と夜一回、動き出すだけだろう」といった。 すると古老の魔術師は「否、パウ・アマよ、甲羅は返すまい、というのもお主はもっと大きく誇らしく強くなるだろうし、恐らくは約束を忘れてさらに海で遊ぶだろうからな」といった。 それからパウ・アマは「私はどうしようか? プサットタセクに隠れられないくらい大きいし、たとえ他の場所へ行っても今ほどもすっかり軟らかくては鮫や角鮫に食べられるだろう。そしてプサットタセクへ行っても今ほどもすっかり軟らかくては安全だけれども餌を取りに動き出せはしないので、死ぬんだ」といった。それから脚を振りながら嘆き悲しんだ。 「聞け、パウ・アマ」といった古老の魔術師。「お主のための遊びをやらすことはできない、なぜならお主は私から真っ先に逃げたからだ;しかしお主が望むならば私は全ての海のあらゆる石とあらゆる穴とあらゆる雑草の房を永久にお主とお主の子供たちの安全なプサットタセクにすることができる」。 それからパウ・アマは「それは良いが、まだ望まない。見よ! 真っ先に貴方と話したあの男性がいる。彼が貴方の気を引かなかったならば私は待ち疲れて逃げ去らなかったはずだし、こんなことは起こらなかっただろう。彼は私のために何をする〈かな〉?」といった。 すると男性は「君が望むならば私は深い水と乾いた土の両方が君と君の子供たちの家になるための――君が陸上と海中の両方に隠れられるようになるための魔法を使おう」といった。 するとパウ・アマは「まだ望まない。見よ! 私が真っ先に逃げ去るのを見ていたあの少女がいる。彼女がそのときに喋ったら古老の魔術師は私を呼び戻しただろうし、全てのこんな世界は起こらなかっただろう。〈彼女〉は私のために何をするかな?」といった。 すると小さな娘子は「これは私が食べている美味しい木の実だ。貴方が望むならば私は魔法を使って良く切れる強力なこの鋏を貴方と貴方の子供たちが海から陸へ上がって来たときにずっと椰子の実をこんなふうに食べられるようにあげる;または石も穴も近くにないときは持っている鋏で自分のためにプサットタセクを掘れるよ;そして地面が固過ぎるときはこうした同じ鋏の助けを借りて木を走り上がれるよ」といった。 するとパウ・アマは「まだ望まない、というのも私がすっかり軟らかくてはこうした贈り物は役に立たないだろう。甲羅を返してくれ、おぉ、古老の魔術師よ、そうすれば貴方の遊びをしよう」といった。 すると古老の魔術師は「返そう、パウ・アマ、一年のうちの十一ヵ月間;毎年十二ヵ月目に又軟らかくなるんだ、お主とお主の全ての子供たちが魔法を使われたと思い出して謙虚さを保つためにな、パウ・アマ;というのももしも水中と陸上の両方を動ければお主は大胆になり過ぎるだろうと分かるんだ;そしてもしも木を登ったり、木の実を割ったり、己の鋏で穴を掘れればお主は貪欲になり過ぎるだろう、パウ・アマ」といった。 それからパウ・アマは少し考えると「望むことにする。全ての贈り物を受け取ろう」といった。 それから古老の魔術師は魔法を右手、右手の五本の指全てで使った、するといやはや仰天、諸賢、パウ・アマがどんどんどんどん小さくなってはついにほんの小さな緑の蟹がカヌーの舷側で水の中を泳ぎながら「鋏をくれ!」と非常に小さな声で叫んでいるまでだった。 すると娘子が彼を小さな茶色の手の平に摘み上げてカヌーの底に座りながら鋏をあげた、ついに彼はそれを小さな腕で振ると開いて閉じてパチンと鳴らして「木の実を食べられる。貝殻を割れる。穴を掘れる。木を登れる。乾いた空気の中で呼吸できるし、安全なプサットタセクを全ての石の下に見付けられる。自分がこんなに有力だとは知らなかったよ。〈クン?〉」(これは正しいか?)といった。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師、すると笑って彼を祝福した;もはや小さなパウ・アマは急いで水の中へカヌーの側面を越えて行った;もはや彼は陸上の乾いた葉か海底の死んだ貝殻の陰に隠れられるくらい小さかった。 「良くやったか?」といった古老の魔術師。 「はい」といった男性。「ですがもう私たちはペラへ戻って行かなくてはなりませんし、それはパドルで漕ぐのはうんざりの道程です。パウ・アマがプサットタセクから出て行って家に着くまで待っていたら水は私たちを、そのまま、運ぶでしょう」。 「お主は怠け者だな」といった古老の魔術師。「だからお主の子供も怠け者になろう。世界で最も怠惰な民だろう。のらくら者――怠惰な民と呼ばれよう」;そして彼は月を指差しながら「おぉ、釣り人よ、ここに怠け過ぎて漕ぎ帰れない男性がいる。彼のカヌーをお主の糸で家に引っ張ってくれ、釣り人よ」といった。 「いいえ」といった男性。「私が、生涯、怠け者ならば海がずっと、一日二回、私に仕えるようにして下さい。パドルで漕がずに済むでしょう」。 すると古老の魔術師は笑っていった、 「〈パヤークン〉」(それは正しい)。 すると月の鼠が糸を齧るのを止めた;そして釣り人はその糸を海に触れるまで下ろすと深い海全体をビンタン島を過ぎてシンガポールを過ぎてマラッカを過ぎてセランゴールを過ぎてカヌーがペラ川の口へと再びぐるぐる回るまで引っ張った。 「〈クン?〉」といった月の釣り人。 「〈パヤークン〉」といった古老の魔術師。「お主がのらくら者の釣り人たちがパドルで漕がずに済ませられるように海をずっと、昼二回と夜二回、引っ張るともう分かった。しかし激しくやり過ぎないように注意してくれ、さもなければ私はパウ・アマにやったようにお主に魔法を使わなくてはならない」。 それから彼ら全員がペラ川を上って行って眠りに就いた、諸賢。 さぁ、良く注意して聞きなよ! その日からこれまで月はいつも海を引っ張り上げては下げながら潮汐と呼ばれるものを作った。時々、海の釣り師は少し激しく引き過ぎる、そうすると大潮が得られる;そして、時々、彼は優しく引き過ぎる、そうすると小さな潮と呼ばれるものが得られる;しかし殆どいつも彼は慎重だ、なぜなら古老の魔術師のせいだ。 そしてパウ・アマは? 浜へ行けば全てのパウ・アマの赤ちゃんたちが小さなプサットタセクを砂のあらゆる石や雑草の房の下に如何に作っているかを見られるね;自分の小さな鋏を振っているのが見られるね;そして世界の幾つかの部分では彼らは真実に乾いた陸上で暮らして正しく娘子が約束したように椰子の木を駆け上がりながら椰子の実を食べる。しかし一年に一回は全てのパウ・アマたちは自らの硬い鎧を振り払って軟らかくならなければならない――古老の魔術師がやったことを思い出すために。そしてだから古いパウ・アマが愚かにも、大昔、失礼だっただけのためにパウ・アマの赤ちゃんたちを殺したり、狩ったりすることは正当ではない。 おぅ、そうだ! パウ・アマの赤ちゃんたちは自分たちの小さなプサットタセクから取り出されることや漬物瓶に入れて持ち帰られることを嫌う。そうしたわけで、彼らは人を鋏で挟むのさ、つまり人を正しく仕向けるのさ。 中国行きのピーとオーズが パウ・アマの遊び場の近くを過ぎる、 そしてプサットタセクがビーアイズの 最も多くの航路のそばに横たわる NYKとNDLは 海の釣り人が『ベン』とエムエムズとルバッティーノを 知るのと同様に パウ・アマの住処を知る。 しかし(これは、可成、奇異なことだ) エーティーエルズはここに来られない; オーとオーとDOAは 別の道を回って行かなくてはならない。 オリエント線、アンカー線、ビビー線、ホール線は、 全くそんな道を行くことはなかった。 UCSは癇癪を起こすだろう もしも自分かそこにいると気付いたら。 さらにもしも『ビーバー』が船荷を ラゴスの代わりにペナンへ持って行ったら、 または膨れたショーとサヴィルが乗客を シンガポールへ運んだら、 またはホワイトスターが小旅行を スラバヤへすることになったら、 またはBSAがナタールを過ぎて チェリボンへ進んで行ったら、 そのときは大ロイド氏が現れて 綱を持ってそれらを家に引くだろう! 私のなぞなぞが何を意味するかは分かるさ マンゴスチンを食べることがあれば 参考サイトThe Crab that played with the Sea 英語の小説の日本語訳 コメント 新しい投稿 前の投稿
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