ラドヤード・キップリングのタブーのお話の日本語訳 結城永人 - 2022年10月15日 (土) イギリスの作家、小説家で詩人のラドヤード・キップリングの童話集その通り物語(1902)の収録作品のタブーのお話の日本語訳を行った。 ラドヤード・キップリングのタブーのお話の英語の出典 The Tabu Tale by Rudyard Kipling/ラドヤード・キップリングのタブーのお話原文:Wikisource(作品集)朗読:LibriVox(ティム・バルクレイ) 両方ともパブリックドメイン(著作権なし)だから無料で自由に使って構わない。 関連ページラドヤード・キップリングのタブーのお話の原文と注解 ラドヤード・キップリングのタブーのお話の日本語の訳文 A Girl Doing a Shushing Finger Gesture by Franck Denis / Pexels テグマイ族のタブーこそテグマイ・ボプスライと彼の親愛な娘、タフィマル・メタルマイについて最も重要なもので、ボプスライ家の全てだった。 良く聞いて覚えおいてくれ、おぉ、諸賢;私たちはタブーについて知るのだからね。 タフィマイ・メタルマイ(さてや、依然、タフィーと呼ぶことができるね)はテグマイと狩りをしに森へと出かけた、静かにすることはなかった。本当に静かにしないでいた。朽葉の中で踊った、そうだった。彼女は小枝を折り取った、そうだった。岸や窪みを滑り降りた、採石場や砂の窪みをそうした、そうだった。彼女は湿地や沼地を撥ねかけた、そうだった;凄い音を立てた! だから彼らの狩りの全ての動物たち――栗鼠、ビーバー、獺、鹿、兎――はタフィーとその父さんがいつ来るのかが分かって走り去った。 そのとき、タフィーは「本当にご免なさい、お父、ねぇ」といった。そのとき、テグマイは「ご免なさいが何の役に立つか? 栗鼠は去ったし、ビーバーは潜ったし、鹿は跳ねたし、兎は穴の深くにいる。お前は叩かれるべきだし、おぉ、テグマイの娘よ、もしもお前を愛するに及ばなかったら私もそうしただろう」といった。丁度、そのとき、一匹の栗鼠が梣の木の幹を捻れて見回すのが見えた、すると彼は「しっ! 私たちの昼飯だぞ、タフィー! 黙っていられさえすれば」といった。 タフィーは「どこ? どこ? 見せてよ! 見せて」といった。湯気立つ牛を恐がせるだろう怒りに喘ぐ囁き声でそういうのだった、そして蕨の茂みの辺りにさっさと進んだ、興奮し易い子供なので;すると栗鼠は尻尾をひょいと動かして大きくて繋がれない輪っかの脚でサセックス州の真ん中辺りまで止まることはなかった。 テグマイは激しく怒った。全く静かに立ってタフィーを煮るか皮を剥ぐか入れ墨をするか髪を切るか口付けなしに寝かせるのが良いだろうかと決心するつもりだった;そして彼が考えている間にテグマイの主族長が鷲の羽根を纏って森を抜けて来た。 彼はテグマイの全部族の高度と低度と中度の医学の最高長で、タフィーとはどちらかといえば友達だった。 彼は「どうしたのか、おぉ、ボプスライのお頭? 怒っているようだ」とテグマイにいった。 「怒って〈いる〉さ」といったテグマイ、すると主族長にタフィーが森で静かにしないことを全て話した;さらに獲物を恐がらせてしまうことを;さらに走るときに後ろを見るから湿地に落ちたことを;さらに自分の両側をしっかり掴まないから木から落ちたことを;さらに脚を池やそこらの浮草ですっかり緑色にして洞窟にバシャバシャと鳴らして来たことを。主族長は額の鷲の羽根と小さな貝殻がジャラジャラと鳴るまて頭を振った、そうすると「まあ、まあ! それについては後で調べよう。深刻な問題について、おぉ、テグマイ、貴方に話したいんだ」といった。 「続けて、おぉ、主族長」といったテグマイ、すると二人とも礼儀正しく腰を下ろした。 「注意して見ておくれ、おぉ、テグマイ」といった主族長。「テグマイの部族は今まで余りに長く、そして今まで余り多く、過度に魚を獲って来た。結果、どんな大きさのどんな鯉も殆どいなくなった、つまり小さな鯉でさえも消えることになった。全員に六ヵ月の魚獲りを中止させるためだが、貴方は大きな部族のタブーをそこに置くことをどう考えるか?」。 「それは良い計画だ、おぉ、主族長」といったテグマイ。「しかし私たちの民の誰かがタブーを犯せば結果はどうなるだろうか?」。 「結果は、おぉ、テグマイ」といった主族長、「彼らに棒と刺草と泥の塊で理解させよう;そしてそれで教えられなければ上等で自在な部族の模様をムール貝の切れ易い先端で彼らの背中に描こう。一緒に来ておくれ、おぉ、テグマイ、そして部族のタブーをワガイ川に公示しよう」。 それから彼らは主族長の本家まで行ったが、そこにはテグマイの部族の魔術品の全てがあった;すると大きな部族のタブー柱を持ち出したが、木で作られており、テグマイの部族のビーバーと他の動物たちの姿が上に彫られて全てのタブー印が下に掘られていた。 それから彼らはテグマイの部族を唸り轟く大きな部族の角笛とキーキーガーガー鳴る中くらいの部族の巻き貝とコツコツドンドン叩く小さな部族の太鼓で呼び集めた。 彼らは愉快に騒ぎ立てた、そしてタフィーは小さな部族の太鼓を叩くことを許された、なぜなら彼女は主族長とどちらかといえば友達だったからだ。 部族全員が主族長の家の前に集まったとき、主族長は立ち上がるといって歌った:「おぉ、テグマイの部族! ワガイ川は魚を多く穫られ過ぎてしまって鯉は恐がっている。誰も、六ヵ月、ワガイ川で魚獲りをしてはならない。両岸と真ん中のタブーだ;全ての島と泥岸で。魚獲りの簎を持って川岸へ、十歩以上、近付くことはタブーだ。タブーだ、タブーだ、最も特別なタブーだ、おぉ、テグマイの部族! 今月と翌月と翌月と翌月と翌月と翌月と翌月のタブーだ。さぁ、行ってタブー柱を川のそばに立てて一人も知らない振りをさせるな!」 それからテグマイの部族は叫び声を上げるとタブー柱をワガイ川の岸のそばに立てて勢い良く両岸へ(一方と他方の岸に部族の半分ずつ)走って行った、そして川でザリガニを探していたために会議に参加してなかった全ての小さな男の子を追い払った;そうすると彼ら全員が主族長とテグマイ・ボプスライを称えた。 テグマイは、この後、帰宅したが、タフィーは主族長と残った、なぜなら彼らはどちらかといえは友達だったからだ。彼女は大変に驚いた。かつてタブーが何かに置かれるのを見たことはなかった、すると彼女は「タブーは正確に何を意味するのか?」と主族長にいった。 主族長は「タブーは犯されるまで何も意味しない、おぉ、テグマイの一人娘;しかし犯さればそれは棒と刺草とムール貝の切れ易い先端で背中に描かれる上等で自在な部族の模様を意味する」といった。 それからタフィーは「自分のタブー――遊べるちょっとしたタブーを持てないか?」といった。 それから主族長は「お前にちょっとの自分のタブーを与えよう、正しくあの絵文字、いつの日かABCになるものを作り上げたのだから」(タフィーとテグマイがアルファベットを如何に作り上げたかを覚えているね? そうしたわけで彼女と主族長はどちらかといえは友達だった)といった。 彼は自分の魔法の首飾りの一つを外すと――二十二個、持っていた――それは桃色珊瑚の欠片で作られていた、すると「もしもお前がこの首飾りを自分自身のものの何かに置けばお前が首飾りを取り除くまで誰もそのものに触っては行けない。お前自身の洞窟の中で働くだけだよ;そしてもしもお前が自分のものを何か置き去りにしてはならないところにそうしたならばそのものが適切な場所に戻して置かれるまでタブーは働かないよ」といった。 「どうもありがとう」といったタフィー。「さて貴方は真実にそれがお父にどう働くだろうと思うか?」。 「はっきりとは分からない」といった主族長。「床に身を投げ出して叫び声を上げるかも知れないし、痙攣するかも知れないし、正にばた付くかも知れないし、悲しく、三步、踏み出して泣き言をいうかも知れない、そうするとお前はそうしたければ彼の髪の毛を、三回、引っ張ることができる」。「するとお母にはどうなるだろうか?」といったタフィー。「民の母さんにはどんなタブーもない」といった主族長。 「どうしてないのか?」といったタフィー。 「もしも民の母さんにタブーがあったら民の母さんはタブーを朝ご飯と夕ご飯と午後食に置けるし、部族にとって酷いことになろうからな。ずっと前から部族はタブーをどこでも民の母さんに持たないことに決めた――何一つ」 「では」といったタフィー、「貴方はお父が私に働く自分のタブーを何か持つかどうかは分かるか――私がタブーをうっかり犯したら?」。「お父はタブーを今までに何か自分に置いたことがあった」といった主族長、「というつもりでは〈ない〉んだな」。 「ない」といったタフィー;「私は『駄目!』といわれて怒られるだけだよ」「あぅ! 彼はお前を子供だと考えているんだろう」といった主族長。「さぁ、もしもお前が彼に本物の自分自身のタブーを持つと示せば彼が幾つかの本物のタブーをお前に置くとしても驚かないぞ」。 「ありがとう」といったタフィー;「さてや私は自分の庭を洞窟の外に持つし、もしも構わなければこのタブー首飾りを庭の前の野薔薇にかけて民が入り込んだら済まないというまで出られないようにするために貴方に働かせて貰いたい」 「おぅ、良く分かった」といった主族長。「もちろん正しく自分の庭をタブーにできるよ」。 「ありがとう」といったタフィー;「それでは帰宅してこのタブーが真実に働くかどうかを確かめる」 彼女が洞窟に戻ったとき、夕食の時間に近かった;そして扉に来たとき、テシュマイ・テウィンドロウ、彼女の親愛な母さんは「どこへ行っていたのか、タフィー?」という代わりにまるで大人であるかのように「おぉ、テグマイの娘、入って食べな」といった。それはタフィーの首にタブー首飾りを見たからだった。 彼女の父さんは夕食を待ちながら火の前に座っていて全く同じことをいった、するとタフィーは甚だ有力だと感じた。 彼女は洞窟をすっかり見回して自分のもの(鮫の歯と骨の針と鹿の腱の糸が入った自分用の獺の皮の修理袋;樺の樹皮の泥濘靴;簎とブーメランと弁当籠)がすっかり適切な場所にあると分かった、そうすると自分のタブー首飾りを全く素早くするりと外して水を良く汲んでいたバケツの把手に引っかけた。 それから彼女の母さんが全く思いがけず、「おぉ、テグマイ! 夕食用の飲み水を少し取ってくれないか?」とテグマイ、彼女の父さんにいった。 「分かった」といったテグマイ、すると跳んでタフィーのタブー首飾りが載ったバケツを持ち上げた。次の瞬間、バタンと床に倒れて叫び声を上げた;それから彼は縮こまりながら洞窟を転げ回った;それから立ち上がると、数回、ばた付いた。 「ねぇ」といったテシュマイ・テウィンドロウ、「どうもまるで誰かのタブーを犯したかのように私には思える。痛いかな?」。 「酷く」といったテグマイ。悲しく、三步、踏み出すと頭を片端に寄せながら「タブーを犯した! タブーを犯した! タブーを犯した!」と叫んだ。 「タフィー、ねぇ、あれはお前のタブーを犯したに違いない」といったテシュマイ・テウィンドロウ。「父さんの髪の毛を、三回、引っ張った方が良いよ、さもないと昨夜まで叫び続けなくてはならないだろう;もはや、一度、始まればどんなふうになるかは分かるね」。 テグマイが屈み込むとタフィーはその髪の毛を、三回、引っ張った、すると彼は己の顔を拭って「私の部族の誓い! お前のタブーは恐ろしく強いぞ、タフィー。どこから手に入れたのか?」といった。 「主族長から貰ったの。もしも犯したらお父は痙攣してばた付いくといわれたよ」 「全く正しいな。しかし印のタブーについては何もいわなかっだな?」 「いわなかった」といったタフィー。「もしも私がお父に本物の自分のタブーを示したらお父は、十中八九、本物のタブーを何か私に置くだろうといわれた」。 「全く正しい、一人娘や」といったテグマイ。「お前に実に驚くだろうタブーを何か与えよう――刺草のタブー、印のタブー、黒と白のタブー――多数のタブーを。さぁ、良く聞くんだ。これが何を意味するかが分かるか?」。 テグマイは己の人差し指を蛇風に空中に操った。「お前が夕食を取るときに身を攀じることへのタブーだぞ。重要なタブーで、もしもお前が犯せば痙攣するだろう――私がしたのと同じに――さもなければあるいはお前の全身に入れ墨をしなくてはならないだろう」。 タフィーは夕食を通して全く静かに座っていた、そうするとテグマイが指を揃えた右手を自分の前に上げた。「静かのタブーだぞ、タフィー。私がそうしたときはいつでもお前は、そのまま、止まらなくてはならない、何をやっていても。もしも縫っていれば針を鹿の皮に通した途中で止めなくてはならない。もしも歩いていれば片足で止まらなくてはならない。もしも登っていれば枝一本で止まらなくてはならない。私がこんなふうにするのを見るまで動かないんだよ」。 テグマイは右手を掲げると、二三回、顔の前で振った。「やり続けろの合図だぞ。私がそうやるのを見たときはお前は何でも自分かしていることを続けて良い」。 「そのタブーの首飾りはないのか?」といったタフィー。 「ない。赤と黒の首飾りはある、もちろん、しかし鹿や兎を見てお前に静かにして欲しい度にどうして静かのタブー首飾りを与えようと羊歯の茂みを抜けててくてく歩いて来られるのか?」といったテグマイ。「私はお前が良い狩人だとそれ以上に考える。ほら、静かのタブーをお前に置いた後直ぐに矢をその頭の上に放たなくてはならないかも知れない」。 「しかしどうしてお父が射ようとするものが分かるのか?」といったタフィー。 「私の手を見ろ」といったテグマイ。「鹿は走り去り始める前に、三回、跳ぶと分かるな――こんなふうに?」。彼は己の指で、空中に、三回、輪を描いた、するとタフィーは頷いた。「私がそうするのを見たら鹿が見付かったと分かるだろう。小さく軽く揺らす人差し指は兎を意味する」。 「はい。兎はこんなふうに走る」といったタフィー、すると己の人差し指を同じ仕方で軽く揺らした。 「栗鼠は空中で長く登って捻る。こんなふうに!」 「木の周りを捻れる栗鼠と同じ。分かる」といったタフィー。 「獺は空中で長く速やかに真っ直ぐに波打つ――こんなふうに」 「淀みを泳ぐ栗鼠と同じ。分かる」といったタフィー。 「そしてビーバーは、丁度、私が誰かを平手でピシャリと打っているようにする」 「ビーバーの尻尾が恐がったときに水をピシャリと打つのと同じ。分かる」 「それらはタブーではない。全く私が何を狩ろうとしているかをお前に教える合図だよ。静かのタブーはお前が注意しなくてはならないものだ、大きなタブーだからな」 「私も静かのタブーを置ける」といったテシュマイ・テウィンドロウ、鹿の皮を縫い合わせていたが。「お前に置くよ、タフィー、騒ぎ過ぎて眠らなければ」。 「それを犯せばどうなるか?」といったタフィー。「タブーはうっかりしなければ犯されない」。「けども私がそうしたら」といったタフィー。 「自分のタブー首飾りを失うんだ。主族長に返さなくてはならなんだ、そして、又、タフィーとのみ呼ばれるんだ、テグマイの娘ではなく。さもなければきっとお前の名前はタブマイ・スケルムズライ――タブーを守れない悪い子――に変えられて、多分、昼も夜も口付けされないんだ」 「うーん!」といったタフィー。「タブーは面白いと全く思わないな」。「まぁ、タブー首飾りを主族長に返して、又、子供でありたいといいな、おぉ、テグマイの一人娘!」といった父さん。「否」といったタフィー。「タブーについてもっと教えて。部族をびっくりさせる――自分の――自分だけの強いタブーをもう少し持てないかな?」 「駄目」といった父さん。「お前は部族をびっくりさせることが許されるくらい十分に大きくない。あのピンクの首飾りでとても良いのさ」。 「ならばタブーについてもっと教えて」といったタフィー。 「しかし眠いよ、娘や。タブーを太陽が丘の後ろに沈むまでタブーを自分に話しかける人に置くだけだな、そして夕べに出て行って兎を捕らえられるかどうかを確かめるのさ。他のタブーについては母さんに訊きな。お前がタブー少女だと大いに安心だ、もう私は一度ならず、何も教えなくて良いのだから」 タフィーは太陽が正しい場所に入るまで母さんと静かに話した。それからテグマイを起こすと二人とも自分の狩りの道具を用意して森の中へ出て行った。しかし、丁度、タフィーは洞窟の外の自分の小さな庭を通るときに自分のタブー首飾りを外すと薔薇の茂みに引っかけた。庭の境界は白い石で示されるだけだったが、彼女は薔薇を本物の門と呼んでいて部族全員がそれを知っていた。 「捕らえられるのは誰だと思うか?」といったテグマイ。「帰るまで様子を見て」といったタフィー。「主族長はそのタブーを犯した人は私が出してやるまで私の庭にいなくてはならないんだといった」。彼らは一緒に森を抜けて行ってワガイ川を倒木で渡った、そして羊歯の茂みに沢山の兎がいる大きな禿げ山の頂上に登った。 「タブー少女だと今や思い出せ」といったテグマイ、タフィーがさっさと進んで兎を狩らずに問いかけ始めたとき;そして彼が静かのタブーの合図を行うとタフィーはまるで一個の固い石にすっかり変えられたように止まった。靴紐を結ぶために屈んでいて紐に手をやってじっとして(そんな類のタブーは分かるよね、諸賢?)父さんを見詰めるだけだったが、静かのタブーがかかればいつもそうしなければならないのだ。間もなく、彼が歩いて遠ざかったとき、振り向くと続けろの合図を行った。なので彼女はずっと父さんを見ながら蕨の茂みを抜けて静かに前に歩いた、すると兎が彼女の目の前に跳び上がった。テグマイが静かの合図を行うのを見たときは棒を投げようとだけしていて彼女は口を半開きにブーメランを持って止まった。兎はテグマイの方へ走った、するとテグマイはそれを捕らえた。それから羊歯の茂みを渡ると自分の娘に口付けして「それが私が優秀な娘子と呼ぶものだ。今やお前と狩りをすることは相当に嬉しいよ、タフィー」といった。 少し後、兎がテグマイの見えないところに跳び上がったが、タフィーには見えてもしもテグマイが恐がらせなかったら自分の方に来ることになると気付いた;なので彼女は手を上げて兎の合図を行った(彼は彼女が面白くないと気付くに違いないわけだ)そして静かのタブーを自分の父さんに置いた! やった――本当にやるのだった、諸賢! テグマイは古い木の幹を乗り越えようと片足を上げたまま、止まった。兎がタフィーを走り過ぎるとタフィーはそれを自分のブーメランで仕留めた;しかし興奮した余り、静かのタブーを、ニ分間、全く外すことを忘れた、するとその間ずっとテグマイは片脚で立って敢えてもう片方の足を下ろそうともしなかった。それからやって来て彼女に口付けすると空中に放り上げて彼女を己の肩に乗せて踊りながら「部族の誓いと証よ! これが私が正しくも娘を持つと呼ぶことだ、おぉ、テグマイの一人娘!」といった。するとタフィーは甚だ凄まじく飛んでもなく喜んだ。 彼らが帰宅したときは殆ど暗かった。五羽の兎とニ匹の栗鼠と一匹のマスクラットも持っていた。タフィーはマスクラットの皮を財布にしたかった。(人々は財布を買えないからマスクラットを当時は仕留めなくてはならなかったが、マスクラットは他の生き物と全く同じに貴方と私にとって昨今はタブーだと分かるね)。 「お前を外に出して少し遅くなり過ぎたと思う」といったテグマイ、彼らが家に近付いたとき「もはや母さんは私たちに喜ぶまい。家に走れ、タフィー! 洞窟の火がここから見えるな」。 タフィーは走って行った、そして、正しくその時、テグマイは何か茂みでパチパチと音を立てるのを聞いた、すると大きくて痩せた灰色の狼が跳び出してタフィーの後を静かに早足で行き始めた。 さぁ、全てのテグマイ族の民は狼を嫌ってできればいつでも殺したにせよ、テグマイは自分の洞窟にそんなに近寄ったものをかつて見たことはなかったのだった。 タフィーの後を急いだが、狼は聞き付けて茂みへ跳び戻った。ああした狼は大人を恐れるが、部族の子供を良く捕らえようとした。タフィーはマスクラットを揺らして独りで歌っていた――父さんはタブーを全て外していたのだった――なので彼女は何も気付かなかった。 洞窟の近くには小さな牧草地があって洞窟の口のそばでタフィーは背の高い人が薔薇の庭に立っているのを見たが、暗過ぎて十分に判別できなかった。 「私のタブー首飾りが真実に誰かを捕らえたと思うんだ」、彼女はいった、そして調べようと駆け上がっていたのが、丁度、父さんが「静かに、タフィー! 私が外すまで静かのタブーを!」というのが聞こえたときだった。彼女はいたところに止まった――マスクラットを片方の手に、ブーメランをもう片方の手に――続けろの合図に準備して頭を父さんの方へ只向けるのだった。 それは、終日、彼女に置かれた最も長い静かのタブーだった。テグマイは森へ近寄って下がると片方の手の石の投げ斧を上げていた、するともう片方の手で静かの合図を行っていた。 それから彼女は黒い何かが草地を渡って自分の横に忍び寄るのが見えたと思った。それはどんどん近付いて来、それから少し戻って動いた、そうするとさらに近寄ってそろそろ歩いた。 それから彼女は父さんの石の投げ斧がヒューッと山鶉と同様に自分の肩を越えて飛ぶのを聞いた、と同時にもう一つの手斧がヒューッと彼女の薔薇の庭から飛び出した;ついに吠え声があって大きくて灰色の狼が草地を蹴りながら横たわり、死に絶えた。 それからテグマイは彼女を持ち上げると、七回、口付けして「部族の誓いとテグマイの証よ、タフィー、さてやお前は自慢の娘だ。それが何かが分からなかったか?」といった。 「良く分からない」といったタフィー。「けども狼だろうとは思った。お父が私に害を与えさせないだろうと分かった」。 「良い娘」といったテグマイ、すると狼に屈み込んで両方の手斧を拾い上げた。「おや、主族長の手斧があるぞ!」。彼はいうと主族長の大きな緑色岩の頭を持つ魔法の投げ斧を上げた。 「そうだ」とタフィーの薔薇の庭からいった主族長、「もはやそれを私に持って来てくれれば大変に有り難く思うぞ。今日の午後、お前たちを訪ねに来てタフィーの薔薇の木のタブー首飾りに気付く前にうっかり彼女の庭に踏み入れた。だからもちろんタフィーが帰って来て出してくれるまで私は待たなければならなかった」。 それから羽根と貝殻を纏った主族長は頭を方端に寄せて悲しく、三步、踏み出して「タブーを犯した! タブーを犯した! タブーを犯した!」というとその頭の鷲の羽根が地面に付きそうなまでタフィーの前で重々しく威厳を持ってお辞儀した、そして「おぉ、テグマイの一人娘! 私は起こったことを全て見た。お前は真のタブー少女だ。非常に嬉しいぞ。初めは嬉しくなかった、私は六時からお前の庭で待たなくてはならなかったからな、もはやお前はタブーを面白がって庭に置いただけだったと分かる」 「否、面白くない」といったタフィー。「私は真実に自分のタブーが誰を捕らえるかを知りたかった;けども私のものみたいな小さなタブーは貴方みたいな大きな主族長に働くんだとは知らなかったな」。 「私はお前に働くといった。それは私自身がお前に与えていた」といった主族長。「もちろんそれは働くのさ。しかし構わない。私はお前にいいたい、タフィー、なぁ、お前が父さんに置かれた最後の静かのタブーをどんなに素晴らしく守ったかを知るためには六時だけではなくて十二時から庭にいても構わなかったんだと。私は第一にお前にいっておく、タフィーよ、あんな狼が草地を渡ってそろそろ歩いてやって来たら部族の大多数の者はタブーをお前が守ったように守れなかったんだと」。 「狼の皮をどうするつもりかな、おぉ、主族長?」といったテグマイ、なぜなら主族長の投げ斧を受けた動物は全てテグマイの部族の慣習によって主族長のものだからだった。 「タフィーに与えるつもりだ、もちろん。冬のクローク用に、さらに正に彼女自身の魔法の首飾りを歯と爪から作ろう」といった主族長;「そしてタフィーと静かのタブーの物語を部族のタブー問題の森に描かせるつもりだ、それで部族の娘子は全て見て気付いて思い出して理解することができる」 それから三人全員が洞窟に入って行くとテシュマイ・テウィンドロウは彼らに甚だ素晴らしい夕食を出して主族長は鷲の羽根と全ての首飾りを外した;そしてタフィーが自分の小さな洞穴で眠りに就く時間になったとき、テグマイと主族長がおやすみをいいに入って来た、すると彼らは洞穴中を巫山戯回ってタフィーを鹿の皮の床の上で引き摺った(誰かしら暖炉の前の敷物を引き摺られるのと同様に)獺の皮のクッションを投げ散らかして壁にかけられた多くの古い簎と釣り竿を打ち倒して終わった。ついに物音が余りに騒々しくなってテシュマイ・テウィンドロウが入って来ると「静かに! 貴方たち皆に静かのタブーを! どうすれば子供が眠れると思うのか?」といった。もはや彼らはおやすみを本当にいってタフィーは眠った。 その後、どうなったか? おぅ、タフィーは私たちの知る誰かしらと同様に覚えた。頬白鮫のタブー、食事を遊ばずに食べ切らせることを覚えた(つまりそれは緑と白の首飾りに伴うんだね);成長のタブー、新石器時代の女性が呼ぶときには話さないことを覚えた(つまりね、青と白の首飾りがそれに伴う);梟のタブー、知らない人をじろじろ見ないことを覚えた(つまり黒と青の首飾りがそれに伴う);開いた手のタブー(つまり純白の首飾りがそれに合うと知られる)、人々が自分のものを借りたときに噛み付くようにがみがみいわないことを覚えた;さらに彼女は他の五つのタブーを覚えた。 しかし彼女が学んだ主要なことで、うっかりしてさえも犯すことのない一つは静かのタブーだった。 そんなわけで、彼女は父さんが行く〈あらゆるところ〉へ連れて行かれた。 参考サイトThe Tabu Tale コメント 新しい投稿 前の投稿
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