昭和天皇の戦争責任についての記者会見での完璧な日本語 結城永人 - 2023年7月7日 (金) 昭和天皇がアメリカを初めて訪問した後、1975年10月31日にテレビで記者会見を行った。 アメリカ訪問を終えて(PDF) そのとき、戦争責任について訊かれて応えていた。非常に難しい場面だったと思うけど、聞きながら僕は納得して民主主義を良く理解している昭和天皇だけに素晴らしいし、尊敬に値するのはいうまでもないと甚く感心した。ところが巷では誤解されることが多くて、全然、反対の意味で、酷いと唾棄すべきみたいに最低の取られ方までしていることに気付いた。 考えると分かり辛いというか、微妙なニュアンスが込められているというには日本語として完璧な表現なので、むしろ慣れてない人にとっては真意がずれてしまいそうなところもあるせいだ 昭和天皇がいいたいこと、皆に伝えたい気持ちは何なのか、少なくとも僕が心から驚かされるくらい良い言葉だと喜ばされる所以を明らかにしたい。 関連ページ昭和天皇の原爆投下についての記者会見の完璧な日本語 昭和天皇の「言葉のアヤ」という戦争責任の意味 報道の日 2015 ニッポン・ゼロからの70年|TBS 昭和天皇は戦争責任について語ることを「言葉のアヤ」と捉えてさらに明らかにすることは何もなかった。 中村康二(ザ・タイムズ):天皇陛下のホワイトハウスにおける「私が深く悲しみとするあの不幸な戦争」というご発言がございましたが、このことは、陛下が、開戦を含めて、戦争そのものに対して責任を感じておられるという意味と解してよろしゅうございますか。また陛下は、いわゆる戦争責任について、どのようにお考えになっておられますか、おうかがいいたします。 天皇陛下:そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究もしてないで、よくわかりませんから、そういう問題についてはお答えができかねます。 アメリカ訪問を終えて|日本記者クラブ 普通に考えると昭和天皇は戦争責任を本気で考えてないから第二次世界大戦の当時の日本の元首として馬鹿だったし、今でも変わらないから唾棄すべきと取られても不思議ではない。 昭和天皇を日本の恥晒しと捉えることが非常に難しい理由 完璧な日本語として特別に考えると戦争責任が自分にあることは語るに及ばない自明の理だという意味になって「言葉のアヤ」という気持ちは記者が挙げた「私が深く悲しみとするあの不幸な戦争」をそれ以上にどうにも上手く表現できないし、皆に分かって貰うことは残念ながらできないみたいな、要するに言葉にならないという感じなんだ。 これは本当なのか。僕の取り方が正しいと思うし、完璧な日本語は本心なしには不可能で、偽りが入ると完璧ではなくなる。しかし普通に考えて昭和天皇は馬鹿で、元首として良い加減というのも意味としては成り立つし、正しいかも知れないので、本人が戦争責任についてどう考えていたのかを他の言葉から確認しておく。 ダグラス・マッカーサーも感動した昭和天皇の戦争責任の自覚 General of the Army Douglas MacArthur smoking his corncob pipe by Unknown / Public domain 昭和天皇の戦争責任への言葉というと第二次世界大戦で敗戦した日本を占領した連合国軍の最高司令官のダグラス・マッカーサーの記憶に基づいたものが最も有名なんだ。 私は戦前には天皇陛下にはお目にかゝったことはありません。始めて御出会いしたのは東京の米国大使館内であった。どんな態度で、陛下が私に会われるかと好奇心をもって御出会いしました。しかるに実に驚きました。陛下はまず戦争責在の開題を自ら持ち出されつぎのようにおっしゃいました。これには実にびっくりさせられました。すなわち、“私は日本の戦争遂行に伴ういかなることにもまた事件にも全責任をとります。また私は日本の名においてなされたすべての軍事指揮官、軍人および政治家の行為に対しても直接に責任を負います。自分自身の運命について貴下の判断が如何様のものであろうとも、それは自分には問題でない。構わずに総ての事を進めていただきたい 私は全責任を負います” これが陛下のお言葉でした。私はこれを聞いて興奮の余り陛下にキスしようとした位です。もし国の罪をあがのうことが出来れば進んで絞首台に上ることを申出るというこの日本の元首に対する占領軍の司令宮としての私の尊敬の念はその後ますます高まるばかりでした。 ダグラス・マッカーサー/重光葵【天皇陛下讃えるマ元帥】|読売新聞 ダグラス・マッカーサーは昭和天皇と初めて面会したときに「私は全責任を負います」と国民への命懸けの思いを聞かされて大変な感動を覚えたと伝えられている。 彼の記憶だけでは事実かどうかは怪しいにせよ、その他の関係者からも同じようなことがちらほら聞かれるので、大体、合っているようだ。 近年、NHKスペシャルの【昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録“拝謁記”~】では宮内庁長官の田島道治の拝謁記から私はどんな犠牲を払つてもいゝといつた/そしてその時は裁判に掛けられる事になつても仕方がないと思つたのだと内大臣の木戸幸一の木戸幸一日記から戦争責任者を連合国に引渡すは真に苦痛にして忍び難きところなるが/自分が一人引き受けて退位でもして納める訳には行かないだろうかという昭和天皇の戦争責任についての言葉が紹介されていた。 表立っていわれてないから胡散臭さが残ってしまうけど、とにかく終戦の直後は日本側と連合国側のどちらも昭和天皇を日本に存続させたい意向があったために本人の戦争責任の自覚があっても極東国際軍事裁判(東京裁判)で戦犯扱いになって処刑されないように隠していた事情があったせいかも知れない。 昭和天皇の戦争責任についての言葉が世の中に現れ始めるのは終戦から十年くらい過ぎた頃だった。 日本の復興のための戦争責任については容易く認められる 昭和天皇の記者会見の「言葉のアヤ」という戦争責任の見解は終戦から三十年後で、それ自体の特別な意味とその他の記録から略確実に自覚があったと考えられる。 終戦までの部分は僅かに疑問もないわけではないけど、しかし終戦からは疑う余地がない。 ダグラス・マッカーサーの連合国軍総司令部によって昭和天皇は敗戦国の元首ながら生き延びて日本に天皇制も残り、新たに国と人々を象徴する存在として政治的な権力を持たないまま、日本の復興を目指してアメリカの統治下だった沖縄県を除いて全国を巡幸して物資不足で困窮する人々を励ますという役目を果たした。 言葉にならない戦争責任という意味で、特別に「言葉のアヤ」を考えたとき、死ぬまで全うしなくてはならないくらい重く受け留める(終わりなく果たし続けるべきだ)からそうなると捉えられるので、人として誠実そのものと称えることも正しく吝かではなくなるんだ。 関連ページ昭和天皇の第二次世界大戦の戦争責任を巡る曖昧な一般論と明確な特殊論 昭和天皇を「言葉のアヤ」で恨み抜くことは可能か 人生を変える“言葉” 韓国で出会った茨木のり子|NHKニュース|NHK 日本の復興のための戦争責任に関しても意義を唱えることは無理ではない。 昭和天皇の「言葉のアヤ」を普通の意味で最も的確に捉えたのは詩人の茨木のり子の言葉だったかも知れない。僕が知るかぎり、昭和天皇の印象を悪くするだけではなく、さらに本心に迫り得る日本人で唯一の認識を示していた。 戦争責任を問われて その人は言った そういう言葉のアヤについて 文学方面はあまり研究していないので お答えできかねます 思わず笑いが込みあげて どす黒い笑い吐血のように 噴きあげては 止り また噴きあげる 三歳の童子だって笑い出すだろう 文学研究果さねば あばばばばとも言えないとしたら 四つの島 笑(えら)ぎに笑(えら)ぎて どよもすか 三十年に一つのとてつもないブラック・ユーモア 野ざらしのどくろさえ カタカタカタと笑ったのに 笑殺どころか 頼朝級の野次ひとつ飛ばず どこへ行ったか散じたか落首狂歌のスピリット 四海波静かにて 黙々の薄気味わるい群衆と 後白河以来の帝王学 無音のままに貼りついて ことしも耳すます除夜の鐘 茨木のり子の四海波静 昭和天皇の「言葉のアヤ」を主題にした四海波静だけど、とにかく内容としては昭和天皇の戦争責任は上辺――真面目に応える代わりに可笑しく誤魔化された絵空事――でしかないと叩いている。 作中の「後白河以来の帝王学」が味噌で、十二世紀の平安時代に後白河法皇が日本第一の大天狗と呼ばれたような敵を出し抜いて難を逃れながら当時の院政という権力の座に長く留まったことから来る天皇家の謀略的な強かさみたいなものを指している。 昭和天皇もそのように人々を出し抜いて裏で舌を出しているから「ことしも耳すます除夜の鐘」と寂しくて虚しいみたいな感じの詩になっている。 茨木のり子は「言葉のアヤ」を暫く考えさせて欲しいみたいに捉えたのかも知れないし、人々が忘れるまでか時間を稼ぐことが責任逃れ(最初から決意や覚悟もない糞っ垂れ)なんだという見方をしていると思う。 すると終戦前は悪意を持って独断と偏見に基づいて攻撃的に振る舞った昭和天皇の姿が見えて来るけれども終戦後も変わらないという印象を与えるから例えば全国巡幸も見せかけの善意に過ぎないみたいに受け取られる。 本心を考えるとそれは本人にしかはっきり分からないんだ 昭和天皇の戦後の日本の復興に尽力した思いは普通に考えても善意として嘘偽りはなくてそこから捉えたら却って戦前や戦中に想定される悪意こそ疑わしくなるほどのものなので、もしも無責任だったとすればかつて主権者として戦争を止めることができなかった能力的な部分にのみ限定されるしかなくなる。 茨木のり子は昭和天皇の本心を視野に入れることによって戦争責任を自覚しない悪意を全面的な見方から解放しているところが非常に面白い。 つまり本心は分からないから悪意も完全には分からないという仕方で、昭和天皇が日本の復興に努めるほどに恨みが晴らされる可能性が齎される。 日本人は昭和天皇を「言葉のアヤ」で信用できなくなるとしても全てを決め付けないかぎり、希望を持って良い。いうと当たり前だけど、ただしそれは戦後にまるで罪を償うような善意を見せた昭和天皇がいたからこそ正しいという事実を忘れては成り立たない。 参考サイトマッカーサーを感動させた、昭和天皇のお覚悟と天真の流露昭和天皇・マッカーサー会談の「事実」考証 昭和天皇・マッカーサー元帥第一回会見(PDF)茨木のり子の戦後 コメント 新しい投稿 前の投稿
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