蟻の全身と頭部の基本的な各部の名称 結城永人 - 2019年11月9日 (土) 虫の身体は頭と胸と腹の三つに分かれていて胸の上に左右の羽根が二枚ずつ、下に左右の脚が三本ずつ生えているのが共通の形態だ。 One black ant on yellow petals in spring by kie-ker / Pixabay 蟻にかぎっては羽根が種類毎に働きアリ以外の交尾前の産卵しない女王アリ(交尾後の産卵する女王アリは羽根を落とす)と雄アリだけにしか付いてなかったり、胸と腹の間に双方を繋ぐ柄が長く付いていて一つか二つの節目を伴うはっきり括れた形を取っていたりするのが他の虫ではおよそ見られない外観上の最も目立つ特徴になっている。 蟻の全身の基本的な各部の名称 Glossary ant Myrmicine by Steve Shattuck / CC BY-SA 頭部(とうぶ/head:ヘッド)目(目/eye:アイ)触覚収容溝(しょっかくしゅうようこう/antennal scrobe:アンテナルスクローブ)触覚(しょっかく/antenna:アンテナ)柄節(へいせつ/scape:スケープ)鞭節(べんせつ/funiculus:ファニキュラス)頭盾(とうじゅん/clypeus:クリペウス)大顎(おおあご/mandible:マンディブル)中体節(ちゅうたいせつ/mesosoma:メソソーマ)前胸背板(ぜんきょうはいばん/pronotum:プロノタム)中胸背板(ちゅうきょうはいばん/mesonotum:メソノタム)後胸溝(こうきょうこう/metanotum groove:メタノタムグルーヴ)前伸腹節(ぜんしんふくせつ/propodeum:プロポデウム)基節(きせつ/coxa:コクサ)転節(てんせつ/trochanter:トロカンター)腿節(たいせつ/femur:フィーマー)脛節(けいせつ/tibia:ティビア)脛節刺(けいせつし/tibial spurs:ティビィアルスパーズ)付節(ふせつ/tarsus:タルサス)爪(つめ/claw:クロー)腹柄節(ふくへいせつ/petiole:ペティオール)柄部(へいぶ/peduncle:ペダンクル)丘部(きゅうぶ/node:ノード)腹柄節下部突起(ふくへいせつかぶとっき/subpetiolar process:サブペティオラープロセス)後腹柄節(こうふくへいせつ/postpetiole:ポストペティオール)丘部(きゅうぶ/node:ノード)腹部(ふくぶ/gaster:ガスター)尾節(びせつ/pygidium:ピジディウム)刺針(ししん/sting:スティング) ※フタフシアリ亜科の働きアリに基づく主な形態で、全ての蟻に全ての部位が共通して存在するわけではない。 蟻の目は個眼(こがん/facet:ファシット)が密集した複眼(ふくがん/compound eye:コンパウンドアイ)になっている場合が多い。 大顎は日本語では大腮(だいさい)ともいう。 蟻の胸部(きょうぶ/thorax:ソラックス)は有翅体節(ゆうしたいせつ/alitrunk:アリトランク)とも呼ばれる。 中体節、または有翅体節は前胸(ぜんきょう/prothorax:プロソラックス)と中胸(ちゅうきょう/mesothorax:メソソラックス )と後胸(こうきょう/metathorax:メタソラックス)と前伸腹節を纏めたものをいう。 働きアリでは一般的に後胸は退化によって失われているか後胸溝が痕跡として微かに残っているだけの場合が多い。 蟻の特徴として胸部後方の側面腹側、後脚の基節の背側に後胸腺(こうきょうせん/metapleural gland:メタプルーラルグランド)があって自身や巣の細菌感染を防いでいる。一部、細菌感染が少ない樹上で生活して自らで多く手入れするツムギアリ属やオオアリ属やトゲアリ属、そして奴隷と暮らして多く手入れさせるサムライアリなどでは後胸腺が消えている。 前伸腹節の後方に尖った形状の突起物の前伸腹節刺(ぜんしんふくせつし/propodeal spine:プロポディールスパイン)が付いている種類もある。 前伸腹節と腹柄は形態学上の腹部(ふくぶ/abdomen:アブドメン)に含まれ、その第一節と第二節か、後腹柄節もあればその第三節までを構成する。 または形態学上の腹部から前伸腹節を除いて腹柄節と後腹柄節を残して後体部(こうたいぶ/metasoma:メタソーマ)とも呼ぶ。 腹柄の後の膨腹部のみを腹部と呼ぶのは見た目の簡略的な語法で、中体節/有翅体節を胸部、腹柄を腰部(ようぶ/waist:ウェスト)としたときに良く当て嵌まる。 腹部は腹柄が一つの種類では五つの節、腹柄が二つの種類では四つの節に分かれる。 因みに腹柄が一つの種類のコヌカアリ属では腹部の最後の節:尾節が下に折れ曲がっていて背中側から見たときに四つしか分からなくなっている。 腹部の各節は上下/背腹に分かれていて上側を背板(はいばん/tergite:テルガイト)、下側を腹板(ふくばん/sternite:ステルナイト)と呼ぶ。 刺針は付いてない種類もあり、何もないか、または蟻酸などを噴出できる毛に縁取られた筒口(つつこう/acidopore:アシッドポアー)が付いた種類もある。 蟻の各胸板、前伸腹節、腹柄、腹部の一節目と二節目の左右には気門(きもん/spiracle:スピラクル):呼吸用の小さな穴が開いている場合が多い。 蟻の頭部の基本的な各部の名称 Glossary ant front head by Steve Shattuck / CC BY-SA 頭部前面(とうぶぜんめん/frontal head:フロンタルヘッド) 目(め/eye:アイ)前頭葉(ぜんとうよう/frontal lobe:フロンタルローブ)額隆起縁(がくりゅうきえん/frontal carina:フロンタルカリーナ)触覚収容溝(しょっかくしゅうようこう/antennal scrobe:アンテナルスクローブ)触覚挿入部(しょっかくそうにゅうぶ/antennal socket)触覚(しょっかく/antenna:アンテナ)柄節(へいせつ/scape:スケープ)鞭節(べんせつ/funiculus:ファニキュラス)頭盾(とうじゅん/clypeus:クリペウス)大顎(おおあご/mandible:マンディブル)単眼(たんがん/ocelli:オチェリ) 蟻の目は個眼(こがん/facet:ファシット)が密集した複眼(ふくがん/compound eye:コンパウンドアイ)になっている場合が多い。 額隆起縁は種類によって痕跡しかないか消失したものもある。 左右の額隆起縁と頭盾が接する二点と頭盾の上側の一点を頂点とする三角形の部分を額域(がくいき/frontal area:フロンタルエリア)といい、種類によって額域から後頭部に伸びる額溝(がっこう/frontal groove)という線が付いている。 触覚の先端の何節かが種類によって膨らんだ形状になっていて棍棒部(こんぼうぶ/club:クラブ)と呼ばれる。 大顎は日本語では大腮(だいさい)ともいう。 大顎の先には歯(は/tooth:トゥース)が幾つか付いているのが一般的だ。 Glossary ant under head by Steve Shattuck / CC BY-SA 蟻の口器(こうき/mouthparts:マウスパーツ)は大顎の他に下口片(かこうへん/hypostoma:ハイポストーマ)や小顎(こあご/maxilla:マクシラ、日本語では小腮:しょうさいともいう)と上唇(じょうしん/labrum:レイブラム)と下唇(かしん/labium:レイビアム)などがある。小顎には小顎鬚(こあごひげ/maxillary palpus:マクシラリーパルパス、日本語では小腮鬚:しょうさいしゅともいう)、または小顎肢(しょうがくし/maxillary pulp:マクシラリーパルプ、日本語では小腮肢:しょうさいしともいう)や下唇には下唇髭(かしんしゅ/labial pulpas:レイビアルパルパス)、または下唇肢(かしんし/labial pulp:レイビアルパルプ)という感覚用の触鬚(pulpas:パルパス)、または口肢(pulp:パルプ)が付いている場合が多い。 蟻は大顎と小顎と上唇と下唇を利用する。大顎は食料を粉砕する力強い顎の力で閉じられる。大顎の陰、小顎はそこで食料を「味わう」(砂糖のようなものを楽しみ、食料源が魅力的かそうでないかを判断する蟻の性向に見える)。最終的に上唇と下唇が食料を噛み、そして食料は最後の食事と消化のために口の中へ移動する。 原文 Ants utilize mandibles, maxillae, labium and labrum. The mandibles are closed by powerful jaw muscles that break the food down into smaller pieces. Behind the mandibles, the maxillae is there to 'taste' the food (showing the propensity of ants to enjoy items like sugar, and judge whether the food source is something they find appealing or not). Finally, the labium and the labrum chew the food and the food then goes into the mouth of the insect for final eating and digestion. External Anatomy of Honey Bees|Insect Identification(訳出) 一対の大顎の間に上唇と下唇が頭盾から底面の方へ縦に並んでいて下唇の両側に一対の小顎が付いている。 下口片は口腔(こうくう/buccal cavity:バッカルキャビティー)内の底面の奥へ向かってU字型となる皮膜の付属肢(ふぞくし/appendage:アペンデージ)だ。 蟻の単眼はどんな種類にも付いているわけではなく、同じ種類では女王アリと雄アリに比べて働きアリで退化している場合が多い。 後頭部を頭頂と頬から分割する部分を後頭隆起縁(こうとうりゅうきえん/occipital carina:オクシピタルカリーナ)といい、種類によって顕著に発達している。 参考サイトMorphological TermsアリのかたちGuide昆虫/主要用語解説形態用語辞典Glossary コメント 新しい投稿 前の投稿
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