日本人がジャニーズ事務所で行われた性加害よりも恐れていること 結城永人 - 2023年6月23日 (金) イギリスの公共放送のBBC(British Broadcasting Corporation/英国放送協会)が日本のジャニーズ事務所の創業者のジャニー喜多川の性加害について取り上げたドキュメンタリーのJ-POPの捕食者:秘められたスキャンダルに衝撃を受けた。 目次ジャニー喜多川の性加害は三重苦の酷さだったマスコミがジャニーズ事務所の問題を伝えたがらない日本人の犯罪を黙認する感覚が社会を歪ませる他人に迷惑をかけないことで維持される平和の危険性日本人のジャニーズ事務所への矛盾点の捉え方善と悪の二面性の見方には自己欺瞞が必ず潜んでいる無責任な世の中を広げて駄目になって行く日本国の統治者が悪いとやはり国民も同じように悪くなる ジャニー喜多川の性加害は三重苦の酷さだった BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」【日本語字幕つき】|BBC News Japan ジャニー喜多川が自身のジャニーズ事務所に所属する新人の未成年の男性に性行為を行っていた。状況的にセクハラとパワハラと少年虐待の三重苦の様相を呈していて犯罪としても他に例がないくらい悪質だった。長年、続けられていたので、被害者の数も相当に多いのではないかと推測される。本当に耐え難い事実だった。 マスコミがジャニーズ事務所の問題を伝えたがらない もう一つの衝撃は日本のマスコミが殆ど取り上げなくて未だに知らない人が大多数みたいな印象を与える。元々は日本の週刊文春が1999年に取り上げた内容で、これ自体が僕も知らなかったけど、その後、出版社の文藝春秋が名誉棄損でジャニーズ事務所から訴えられた裁判が起こり、奇しくもジャニー喜多川の性加害が認定されていた。2003年に東京高等裁判所で示され、最終的に2004年に最高裁判所で確定された。にも拘らず、日本のマスコミはちゃんと取り上げなかったわけで、BBCが発表する今年までジャニー喜多川を日本の芸能界の最大の功労者と思ってしまっていた。 マスコミがジャニー喜多川の性加害を取り上げないのはジャニーズ事務所から拒絶されると不都合があるためと考えられる。実際、暴露した週刊文春は人気のジャニーズ事務所の芸能人と関係を絶たれて会社の売り上げに支障が出たかも知れない。それを知ってか知らずか恐れて他のマスコミは全て避けているんだろう。例えばTOKIOの山口達也の性暴力のようなジャニーズ事務所の芸能人の犯罪は取り上げるけれども社長のジャニー喜多川は比べ物にならないくらい酷いのに何一つ触れない。 報道機関としての存在価値が疑われるし、金銭欲で動かされて社会的な責任を果たせない情報しか受け取れないならば出されるものは事実ですらも怪しまざるを得ないし、改めて注意しなくては行けない。 日本人の犯罪を黙認する感覚が社会を歪ませる はなきんの街並み by タケル しかし以前から気になっていた日本人の問題を大きく感じる。例えば時太山を稽古と称して惨殺した時津風部屋があった大相撲を僕は決して観ないのに未だにやっていて観る人が多くいるのはなぜか。厳しくいうと日本人が人殺しを許すという結果になっている。本当に驚きを禁じ得ないけど、すると僕ならばジャニー喜多川の性加害が酷いどころかそれに迎合する人ばかりのジャニーズ事務所をもう観たくなくなるのに何も変わらずにやり続けていられるのは同じなんだ。性暴力が許されているとも過言ではない。 日本人が犯罪という反社会的な行為を毎回ではないにせよ、取り分け大相撲とかジャニーズ事務所なんて人気のあるものに関して無責任に放置させる傾向がある。賞味期限切れの食品や点検しない車を売る会社ならば酷くても嫌って潰れると生活に支障が出るから仕様がなく受け入れるという可能性はあるかも知れないけど、しかし娯楽産業などの生活に直結しないところでも責任を求めることがなかったりする。だからこそマスコミも合せて良い加減にならざるを得ないというか、気にしなくなる前提条件――人々が大相撲やジャニーズ事務所を嫌えばそれらと関わると潰れるから止めようと判断するはず――だと考えられる。 悪いものを世の中に無責任に通させてしまう日本人の感覚があって不可解なわけだけれども社会を歪ませると懸念する。それ自体は病的なまでにおかしい。誰でも犯罪をやって良いんだという雰囲気として広がっているためにあちこちでいじめや虐待やハラスメントなどの余計な悲しみが増やされているのではないか。BBCが取材したジャニー喜多川の性加害への人々の反応に良く出ていたからなぜかを良く知って改善できるようにしたい。 他人に迷惑をかけないことで維持される平和の危険性 僕が考えるとジャニー喜多川の性加害が社的に軽視されたり、ジャニーズ事務所が殆ど叩かれない根本的な要因は日本人の他人に迷惑をかけなれば何もしても良いみたいな因習にある。俗に「事なかれ主義」といわれる。騒動があれば波風を立てずにやり過ごすことが一番だから犯罪も隠されてしまわずにいない。当事者は知らない振りをして第三者に気付かれないように努める。結果、平和が維持されることになる(たとえ上辺だとしても)。皆を騙しているわけで、心がチクリと痛む人もいるかも知れないけど、しかし起きたこと以上に世の中に争いを増やすよりは益しとすれば悪いともかぎらない。美徳とまで捉えられるので、もはや止めることは難しい。 このことはBBCでも指摘されていてジャーナリズムとしても流石だと感心した。 日本は、礼儀正しさを誇りとする国だ。無作法な振る舞いは迷惑あるいは失礼とみなされるだけでなく、社会的にも許されない。多くの日本人は、他人に迷惑をかけることは何としても避けなくてはならないと、そう考えている。こうした考えは、性的加害への懸念について声を上げれば他の人に負担をかけるという空気につながりかねない。 加害が明るみに……それでも崇拝され 日本ポップス界の「捕食者」|BBCニュース|BBC 見立ては本当に素晴らしいけど、しかし個人的に足りないと感じるのは他人に迷惑をかけないことが罪と相殺され得る実質的な部分だけだ。人々が良いと思ってやっていると考えると、所謂、「平和ボケ」と区別できない。日本人は祭りなどで無意識に浮かれることが良くあるし、そういう場合は何も分からないにせよ、事件については異なる。隠すならば悪いことだとはっきり分かってやっているのが日本人なんだ。街頭のインタビューでも確かにそうで、ジャニー喜多川を完全に許したり、ジャニーズ事務所を全く問題視しない人は少ない。社会的に危ないのは業績などから「神様」とか「尊敬する」なんて声が上がるように犯罪が置き去りにされるところだ。BBCの取材したジャーナリストのモビーン・アザーは理解できないと何度も頭を悩ませていたけれども「礼儀正しさ」という日本人の表向きの言動からは捉え切れない。 日本人のジャニーズ事務所への矛盾点の捉え方 Johnny & Associates by Beryllium Transistor / CC BY-SA どうして日本人は犯罪を黙認してしまうのか。「平和ボケ」ならば只の馬鹿だし、生活のためならば苦渋の決断があるだろう。興味深いのはそういうのは日本の多数派ではない。繰り返すとジャニーズ事務所は娯楽産業の一種だから多くの人にとって失われても大きな不幸ではない。しかし存続することが求められるような世論(そのままでも別に良いではないか)か形成されてしまう。 理由を訊けばたぶん今まで有り難うみたいな感謝の気持ちから罪を許したり、責任を問わないと応える日本人が多いかも知れないけど、ただしそれも「礼儀正しさ」から来ていて悪くても構わないというと世の中に犯罪を増やして迷惑をかけるからいいたくないという気持ちがもっと深くにある。 日本人も良く分からないし、矛盾点を解き解そうと考えた途端に頭がこんがらかるほどの感覚といって良い。 大体、善と悪の二面性として捉えて最終的に結論を出すんだ。大相撲やジャニーズ事務所だと犯罪の悲しみよりも娯楽の喜びの方が大きいし、社会に役立つから存続させたいという考えを持つ。または理屈としては善と悪の二面性を比べてどちらかを選ぶことが最も有益で、人と社会に対して整合性を持つものになっているようだ。 善と悪の二面性の見方には自己欺瞞が必ず潜んでいる こうしたことは全て「礼儀正しさ」から来ていて他人に迷惑をかけないことが前提条件なので、善と悪を同時に受け入れる矛盾点そのものを解消できる認識ではない。 善と悪の二面性という見方は何もかも分かったみたいに知性を錯覚させるものだから注意しなくては行けない。 どちらかを選べばどちらかを捨てたことになるのが真実だろう。選ぶこと自体に自己欺瞞が必ず潜んでいるから思想とは呼べない。それは現実、または本心を何一つ表現しない意識、または意見に過ぎない。 ジャニー喜多川を称える人は全て性加害を笑うに等しいし、蔑む人だけが性加害を悲しむと捉えるのが根底的だ。 むろん彼が反省しないかぎりの話だし、悔い改めてくれれば罪を許すのは誰にとっても吝かではないだろうけど、実際のところは最高裁判所で性加害の事実が認定されてもジャニーズ事務所の要職に就いていたわけで、とにかく自分は悪くないという態度を取り続けたのだから反省してないのは間違いなかった。 無責任な世の中を広げて駄目になって行く日本 日本だけ孤立した国旗カード by すしぱく 日本人の普通に理解できない感覚がジャニー喜多川の性加害を黙認する様子に良く出ているわけだけど、とにかく他人に迷惑をかけなければ何をしても良いみたいな仕方で許してしまう。 傍目にはジャニーズ事務所の中で行われていて被害者も関係者にかぎられているとか被害者の多くも自分が売れるためだから辛くても耐えるしかないなんて受け入れてしまって責任が追求されもしないのは法治国家として法律以上に規範があるみたいな不合理な様相を呈している。 実際、男性に対する性加害が違法と見做されることになったのは2017年以降なので、それまではジャニー喜多川が悪いかどうかも曖昧だったにせよ、違法と見做される現在でも黙認され易いのはなぜか。 日本人の感覚が無責任な世の中を広げてしまって日本が駄目になるんだとかつて誰よりも憂慮したのが作家の三島由紀夫だったと思う。 国の統治者が悪いとやはり国民も同じように悪くなる 三島由紀夫は自衛隊へクーデターを起こして、そのまま、切腹して死んでしまったけど、とにかく日本人が良い加減な人ばかりなることを憲法の象徴天皇制や戦力不保持などから予測して命懸けで何とか立て直そうとした。 僕はそう易々と敵の手に乗りません。敵っていうのは政府であり、自民党であり、つまり戦後体制、全部ですよ。うん。社会党も共産党も含まれています。僕にとっちゃ共産党と自民党と同じもんですからね。えぇ。全く同じもんです。偽善の象徴ですから。 三島由紀夫/三島由紀夫 最後の言葉 彼が考えていたことは複雑だけど、とにかく日本人が良い加減になって日本が駄目になる原因というと「偽善」に集約されていた。取り分け政治的な背徳であって昨今では犯罪と疑惑が当たり前だったり、投票率も絶望的に下がってどうにもならないところまで来ていると思う。 端的にいうと悪い人たちが国を治めているのだから治められる国民が悪くても構わないという発想になる。 ジャニーズ事務所も「偽善」が正しいと考えられるかぎり、もはや仕事をちゃんとやっていればジャニー喜多川の性加害などの裏事情は関係ないと見過ごされる他はない。 日本人の「礼儀正しさ」を裏返すと皆が同じでなくてはならない(迷惑をかけられない生活を誰もが等しく味わうべきだ)ということなので、他人に迷惑をかけないことを重視するほどに嘘を吐くことが人間的に偉いみたいに「偽善」を強く求めることにも繋がるんだ。 自分を裏切るのと同然の生き方だから精神的に病んだり、自殺者も非常に多いのが日本の実態だけど、とにかく悪を許すことは基本的に止めた方が良いと思うし、世の中に合わせることも大概にしたいものだ。 参考サイトBBC「ジャニー喜多川氏性加害」告発番組 全世界放送へ 発覚の原点「週刊文春」1999年ジュニアへのセクハラ告発記事を再公開 コメント 新しい投稿 前の投稿
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