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谷川俊太郎の詩人なんて呼ばれてはすんなり感涙できる現代詩の心の故郷だ

谷川俊太郎詩人なんて呼ばれての詩の朗読を聞いてみたらとても良いと素直に認められた。

感じ入れば不意に泣けて来るような人生の尊い有り難みが表現されていてこんなにすんなり感涙できる、いい換えれば物凄く分かり易い現代詩が詠めるのかとちょっとびっくりさせられるくらい上手い。印象上、谷川俊太郎の詩に昔からあったような気がしたけれども調べてみると、全然、そうではなくて新作の書き下ろしだった。

昨年の秋の2007年10月31日に発表されたばかりの詩人なんて呼ばれて(同一タイトルの談話集の一部に収められた詩)という。本人は1931年12月15日生まれの八十五歳だったわけで、老いて尚も詩人として素晴らしく進化しているのを称えたくなる。そして新しく好みに合って来た言葉遣いは個人的にも嬉しいかぎりだ。

端的にいって心の故郷が歌われているのが堪らなく魅せられる

本当は呼ばれたくないのです
空と呼ばれなくても空が空であるように
百合という名を知る前に子どもが花を喜ぶように
私は私ですらない何かになりたい

初雪の朝の無心の白の輝きを
言葉で上書きしてしまうのをためらうのです
人声と文字が静謐を乱しはしまいかと

それなのに言葉を連ねずにはいられない
誰かが私を待っていてくれるから
いや私が誰かを待っているから

虚空から名は生まれない
名づけ切れない世界の豊かさ!
その chaos を受胎して
私はコトバの安産を願うだけ

谷川俊太郎の詩人なんて呼ばれて

二連目の出だしの「初雪の朝の無心の白の輝きを」に全てがいい尽くされているようだ。これから始まるだけの世界を綺麗に捉えて清純に味わわせてくれる。振り返ると人生の終着点として俳人の小林一茶の「是がまあつひの栖か雪五尺」(これがまあついのすみかかゆきごしゃく/七番日記)という名句を思い起こさせもする。心の故郷を冬の情景に重ね合わせる言葉遣いは人生の終着点の発想に基づいているに違いない。または小説家のフランツ・カフカも代表作のでは雪国を舞台にしながら心の故郷から社会そのものを革新的に考え直させる飛んでもなく素晴らしい世界観を唯一無二に提示していた。誰もが無邪気なキャラクターを内に秘めている。見方が揺るぎなく狂いなく汚れない境地に達してないと読者は世界を綺麗に清純に受け取れないし、作者も表現できないはずだ。谷川俊太郎の詩人なんて呼ばれての取り分け二連目の出だしは決定的に美しいと感嘆するし、本当にもはや心の故郷としか頷けなくなってしまう。

内面にノスタルジーを煽る。人々との繋がりを断ち切って個人に帰って行くところが正しく現代詩の所以だ。生き方が詩人ではないという方向性は谷川俊太郎に特徴的な真実だけれども詩人なんて呼ばれては見事に身を翻しながら皆を退けてさては一般常識の仲間意識を抉るかのように社会から離れ去っている。孤独の極みを印象付ける筆致が切ない。現代詩ならではの個人の境地を教えて止まない。

涙も溢れざるを得ないわけだけれども谷川俊太郎の詩人なんて呼ばれてで最も興味深いのが孤独の極みから心の故郷を想像するんだ。

老いて死期が迫ってどうしようもないせいか、一人ぼっちに追い詰められる悲しみが避けられないとしても人間、または歌うならば詩人の内面に何もないわけではない。

谷川俊太郎は「言葉」を切欠にして懐かしい世界というか、ノスタルジックなイメージを掴んでいるわけだ。余りに淋し過ぎて何もないはずの自分自身へかつて来ていた思い出が残されている。忘れ難い経験といって良いし、実質的に命だろうけど、精神においては要するに人生の情趣こそ「言葉」だと捉えられている。一方では今此処の気分を害される(代わりに思い出に浸れなくならされる意識の意味で辛い)ために「ためらうのです」と避けるけれども他方では生存確認を得られる(思い出として抱き締められる感性の意味で素晴らしい)から「連ねずにはいられない」と求めるんだ。前者と後者の気持ち、自己表現ならば歴史的か芸術的かの二つのスタンスがあらゆる時空で互いに交錯するような生き方がある。どちらかを選ぶよりもどちらでも受け入れるのが谷川俊太郎の考え方の柔軟性だけれども詩人なんて呼ばれての現代詩の心の故郷のモチーフにもなっている。

現れては消えて行きつつも思い出に掴まれる世界が尊く有り難いと涙ながらに感じる。ずっと続いて行く気持ちから永遠を夢見たり、命に支えられた人生の意義に触れられるわけだ。本人は「豊かさ」とか「chaos」(カオス/混沌)なんて詩的にも抽象的に取り上げているようだ。しかしそうした驚きから迷いまで全ての感情は湧き出す泉のように今日で終わらないかぎり、人々にとってもはや希望を与える対象以外の何物でもないのではないか。微笑んではどんな不幸も追い払ってくれる心の故郷がつとに恋しい。

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