心拍数と寿命の関係:動物が呼吸の酸化ストレスで老化してしまう身体的な特徴 結城永人 - 2018年5月18日 (金) Ears of golden wheat by Marisa_Sias / Pixabay 大分前、もう十年か、はたまた二十年以上が経過したようだけれども心拍数と寿命の関係を覚えていた。改めて調べると本川達雄のゾウの時間 ネズミの時間が世の中で目立って取り沙汰される最初の切欠だったらしい。1992年に出版された本で、体格の大きな象と小さな鼠は心拍数と寿命が互いに相反する事実が著されていた。平常時、前者は心拍数が少なくて寿命が長いし、後者は心拍数が高くて寿命が短い。 象の心拍数と寿命一分で約三十回と七十歳程鼠の心拍数と寿命一分で約六五十回と二年半程 非常に興味深いのは寿命に対する通算の心拍数が十五億回付近(多ければ二十億回くらい)で重なって来る。 他の多くの動物でも同様の傾向を持っていて体格が大きいほどに平常時の心拍数が少なくて寿命が長い。 本川達雄のゾウの時間 ネズミの時間では動物の平常時の心拍数:心周期(一回の拍動の長さ/人間ならば大抵は一秒前後)が自然界の時間として捉えられたのが白眉だった。どんな動物も略十五億回の鼓動を打って死んで行くので、詩的にいえば心臓のリズムに差はない、長生きする象も早死にする鼠も生きる感覚そのものは変わるところがない。 そうした自然界の時間によればそれぞれに寿命は違っても死ぬまでの通算の心拍数が似通っている動物たちは同じくらい、すなわち平等に暮らしていると驚かされるわけなんだ。 いい換えれば天寿とは何かへの一つの科学的な認識/生物学的な知見が心周期に表現されているようだった。 動物は生きる感覚だけが本当に違うし、寿命よりも独自的で、例えば象は大きいゆえにゆったりして鼠は小さいゆえにせかせかしているのが生来のキャラクターと考えられなくはない。 実は、こういった時間を計り、体重との関係を考えてみると、どれも体重が重くなるにつれ、だいたいその4分の1(0.25)乗に比例して時間が長くなるということが分かっています。 4分の1乗というのは分かりにくい数字かもしれませんが、関数電卓でルートを2回押せば答えが出ます。まぁ、大ざっぱに言えば、動物の時間は体長に比例すると考えてもいいですね。 つまり、体のサイズの大きい動物ほど、心周期も呼吸も筋肉の動きなんかもゆっくりになっていくということなんです。 本川達雄/ゾウの時間・ネズミの時間 本川達雄 氏|こだわりアカデミー|アットホーム 体格の大きさが動物の平常時の心拍数や寿命に影響するのはなぜかについては取り分け体重が挙げられる。 調べると体重を維持するために身体の必要とする代謝が増えるとそれだけ平常時の心拍数が上がって寿命も短くなるようだ。 3/4乗則と呼ばれる。生物の代謝量は体重の3/4乗に比例する可能性が高い(完全には当て嵌まらないらしい)。体重が重いと生存を保持するエネルギーが多く必要なのは当たり前だろうけれどもその割合もやはり似た感じで動いているんだ。すると身体の代謝には代謝以外の要因は少なさそうなので、普通に考えてもエネルギーを産生する日頃の食事や呼吸を増やすために3/4乗則の代謝量が大きいほどに平常時の心拍数が上がって寿命が短くなるし、反対だと真逆の結果を得る、すなわち平常時の心拍数が下がって寿命が長くなると推測するのは易しい。 Silence of bookshelves by Marisa_Sias / Pixabay 日本で本川達雄のゾウの時間 ネズミの時間が出版されてから二十年以上が経って近年は動物の心拍数と寿命の関係が実質的にさらに詳しく細かく分かるようになって来ている。 一般に小動物は小さければ小さいほど、呼吸数、心拍数が多い。その理由は体表面積と体重との関係から次のように説明することができる。小動物は小さく見えるが、単位体重あたりの体表面積は大きい。ざっと計算してみよう。ヒトの場合、体重50キロ、身長160センチの人で、体表面積はだいたい1.5平方メートル。およそ畳1畳分弱である(ネットを検索すると、体重、身長から計算してくれるサイトが多数見つかる)。体重1グラムあたりに直すと、約0.3平方センチメートル/グラム。対するマウスは、体重はわずか40グラムだが、身長が直径7センチの球体だと考えると、その表面積は、約150平方センチ、単位体重あたりで考えると、3.8平方センチメートル/グラムとなり、ヒトの10倍以上となる。 ハツカネズミと人間|福岡伸一の生命浮遊|ソトコト 動物の心拍数は「単位体重あたりの体表面積」に主に基づく。二十日鼠ならば人間の十倍以上もあるらしい。だから日頃のエネルギー産生が忙しくて呼吸数と共に心拍数が上がり捲って寿命も縮んでしまう。念のために繰り返しておくと心周期は人間とも変わらずに生涯で十五億回付近まで行くから自然界の時間/生きる感覚は等しいし、二十日鼠が早死にするのはもっと長生きする人間などと比べて必ずしも可哀想とはかぎらないかも知れない。 どうして通算の心拍数という略十五億回の鼓動が寿命を決定付けるかは酸化ストレスから理解され易い。老化の最大の要因と目される細胞の錆び付きなんだ。呼吸で酸素を取り込んで代謝という身体を維持するための細胞の更生が行われるけれども同時に障害も現れずにいない。活性酸素のフリーラジカル(スーパーオキシドやヒドロオキシラジカルなど)が原因で通常は免疫力を高めるものの不安定な性質を持つために病原菌よりも自らの細胞を攻撃するようにもなり易いんだ。諸々の器官の働きが日に日に弱くなってさらに細胞の遺伝子も損傷されて悪くなってもはや病気にもかからざるを得なくなってしまい兼ねないのを老化と捉えて良い。 なのでアンチエイジング/若返りでは酸化ストレスを減らすための取り組みに他ならないつまりは抗酸化の健康法が真っ先に重視されもするわけだ。 熱を生産する細胞(おもに肝臓と褐色脂肪組織)の数は、だいたい体重に比例する。褐色脂肪組織は背中、肩甲骨のあいだに広がっている。熱の生産、それがとりもなおさず、呼吸ということである。酸素を取り入れて、摂取した栄養素を燃やす、そのとき熱が発生する。そこで血液が温められ、その熱は全身に運ばれる。体重が重ければ、その分、たくさんの熱を生産できる。一方、体重あたりの体表面積が大きいことは、それだけ細胞の生産する熱が外へ逃げやすくなってしまうということを意味する。熱は最終的に体表から拡散されていくからである。つまり、体重あたりの体表面積が大きいことは、体温を維持するために、より多くの熱の生産が必要になるということ。 ハツカネズミと人間|福岡伸一の生命浮遊|ソトコト 心周期には熱が根本的に影響していてなぜ体重が重いと心拍数が減るかは「熱を生産する細胞」(肝臓、または肩や肩甲骨に広がる褐色脂肪組織)が多いためなんだ。併せて体表面積が狭いほどに熱が外へ逃げないから一層と効率化されてもいる。 動物は体温が余分に下がると死へ近付く。いい換えると食事や呼吸で全身的に代謝が少なければ熱が生産されずに減るし、完全に止まった時点で、そうした個物の生命は終わりを迎えているわけだ。 各々の寿命が略十五億回の鼓動で決定付けられる事実は固有の体重と体表面積と熱の仕組みから基本的に捉えられる。 性質上は活性酸素のフリーラジカルの酸化ストレスを中心とした老化によって諸々の器官が生存するために必要なくらい機能しなくなるまでの心拍数が略十五億回に相当すると理解できる。 翻って十分な心拍数、または健康的な心臓のリズムと歌っても良い日常生活を条件付ける体重と体表面積と熱の仕組みが壊れなければ皆に死は訪れないのではないかと面白い疑問が浮かんで来るんだ。 すると確かに酸化ストレスを抑えるアンチエイジング/若返りが寿命を伸ばすのに役立つように略十五億回の鼓動が天寿そのもの――神に定められた余りに揺るぎなさ過ぎるほどの享年――を表現してはいないらしい。 People in the city by Marisa_Sias / Pixabay 最も顕著なのは人間なんだ。人間の平常時の心拍数は一分で約七十回なので、寿命が略十五億回の鼓動で示されるならば一年分の心拍数(70×60×24×365)で割って四十年七ヵ月程と逆算される。または本川達雄のゾウの時間 ネズミの時間の体重の4分の1乗で心周期を得ての限界寿命の計算式では「6.1×106×M0.20」(Mは1kgに対する体重比率:60kgならば60など)に近似する値(分)らしくて60kgの人間ならば二十六年三ヵ月くらいまで生きられると推定されるんだ。どちらも実際とは、全然、合ってない。地球上、動物として心拍数で計るよりも長生きの人間が明らかに多いのは寿命を実質的に左右する老化を遅らせる他の要因に基づくはずだ。 でも、現代人の寿命と動物の寿命とを同列に論じるのは無理があります。こんな話があるんですよ。動物園のゾウは50歳を過ぎると歯が磨り減ってきてうまく食べられなくなり、食が細ると身体も弱ってきて、そう長くは生きられなくなるんだそうです。「ゾウに入れ歯をすれば、もっと長生きするよ」と動物園の方が言っていました。 本川達雄/ゾウの時間・ネズミの時間 本川達雄 氏|こだわりアカデミー|アットホーム 分けても人間は様々な道具を作り出して日常生活に組み込んでしまうから寿命も身体的な特徴だけでは説明できない部分も余程と大きそうだ。 本川達雄のゾウの時間 ネズミの時間では呼吸についても指摘されていてどんな動物でも呼吸一回当たりに心臓には四回の拍動が行われるのが共通している。寿命には酸化ストレスによる老化が実質的に大きく影響するかぎり、心拍数が関係するならば同じように呼吸数も関係するのはやはり本当に当然だろうと頷く。 生活習慣の専ら食事と運動と睡眠を健康的に改善すれば寿命を伸ばすのは可能だと思うし――人の世も衛生や医療の技術革新によって進歩しながら平均寿命が伸び続けて、昨今、日本ならば八十歳を越えて百歳まで見えて来るほどに向上していたりするのは実際に明らかだ――僕は種々と研究しながら長生きをいつも目論んでいるけれども心拍数や呼吸数を身体的な特徴の一つの指標として捉えるのは大事だとも思う。 ある限界へ向けて心拍数ならば略十五億回とか呼吸数ならば略三億七千五百回なんて増えるほどに寿命が縮まって行く傾向を殆ど全ての動物が必然的に持っているわけならばそれ自体を和らげるような方法も又一つのアンチエイジング/若返りに繋がる知見なのを期待できるに違いないだろう。 端的に受け入れるのは難しい、ただし。心拍数は血流に、呼吸数は酸素に関与していて何れも健康には必要不可欠な要素だから只単に減らしても逆効果にしかならないだろう。短命に近付くのではまさか期待外れに厳しく注意しなくては行けない。 飽くまでも身体的の特徴の一つの指標として酸化ストレスを強めて老化を加速するなどの過剰な仕方をなるべく抑えるための参考に止めながら寿命を伸ばすのに役立てたい。 参考サイト活性酸素の中の「フリーラジカル」とは? コメント 新しい投稿 前の投稿
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