チャカ・カーンのI'm Every Womanは命の輝きの爽やかなR&Bだ 結城永人 - 2018年7月27日 (金) 1973年にファンクバンドのルーファスのボーカルとしてデビューしたチャカ・カーンがソロ活動を開始した1978年のデビュー曲に発表したのがI'm Every Womanだった。今から振り返ると四十年前の音楽だけれどもちっとも古びない感じがして改めて良いと思う。 Chaka Khan - I'm Every Woman on Jimmy Kimmel|Chaka Khan R&B(リズムアンドブルース)の楽曲では比較的に珍しくて爽やかな印象を与える。クールなソウルとしてはブランニューヘヴィーズのNever StopやジャミロクワイのVirtual Insanityのようなシャズファンクの乗りが好きな一曲だ。お洒落な心地良さというか、または気持ちから捉えると和やかな楽しさが際立っている。総じて素敵な音楽だろう。 久々に聴いたチャカ・カーンの動画はアメリカのJimmy Kimmel live!に出演した今年の四月二十日の歌唱だった。1953年3月23日生まれだから六十五歳だけれども若い頃の声の張りに衰えを禁じ得ない以上の新しい魅力をはっきり感じる。老いてこそ得られる何かが胸を打つし、心に染みるし、そして魂を揺さぶる。 六十五歳のI'm Every Womanの歌声は伸びやかさの代わりに艶やかさが増しているようだ 楽曲に込められる思いが尊さをより一層と高めているせいではないか。日毎に死が迫り来る死の悲しみが却って生の喜びを自覚させもする。有り難いと神へ祈る場合も少なくない。世の中で命に支えられる存在の重みが分かるかどうかは人間性を大きく左右すると思うし、もはや詩情そのものかも知れないけれども生き方をさらに素晴らしく変え得る。 現在は人生百年の高齢化社会が広まっているために身体的に弱らずに精神的に強まる状態を維持し易くなっているだろう。年を取ってあちこち痛いばかりでは死の悲しみに打ち拉がれるしかないかも知れないんだ。しかし健康で体力のある元気な老人ならば生の喜びをしっかり味わいながら有り難みを手放さずに表現できる。 チャカ・カーンの六十五歳の歌手としてのI'm Every Womanのパフォーマンスは見た目から若々しくて素晴らしいと同時に気持ちが特別に入っているようだから本当に感動せずにいられない。 人生を謳歌する青春の様相を呈しているところは誰にとっても励みになるはずだ チャカ・カーン|Jimmy Kimmel Live 時間と共に近付いて行く死のイメージを完全に凌駕していて老いは終わりではないと教えてくれる。明るい未来を解き放つだけの生のイメージに全てが置き換えられている歌声なんだ。新たな一歩を踏み出すような日々の始まりを伴った表現だから生活が幸せかどうかに年齢は関係ないと正しく認める。絶えず、期待に胸を膨らませて生き続けるというすなわち命の輝きに包まれるかぎり、人間としても頼もしく、純粋に格好良いと称える他はない。 僕がチャカ・カーンのI'm Every Womanを初めて知ったのは青春期にホイットニー・ヒューストンのカバー(Whitney Houston - I'm Every Woman)で聴いたのが切欠だった。映画のボディガードの挿入歌で歌われていた。主題歌のオリジナルのI Will Always Love Youが日本でもカラオケで良く歌われたりしてとても有名だけれども同じくらい衝撃を受けた。何なんだ、この良い曲はと個人的にむしろI'm Every Womanこそ大きく気になったかも知れなかった。ゴールデンボイス(金色の歌声)と評されるホイットニー・ヒューストンの抜群の歌唱力から堪能されるI'm Every Womanは本当に素晴らしい世界を表現しているけど、調べるとチャカ・カーンの持ち歌の一つだったと判明してCDを買って聴いてみたんだ。 当時はさほど驚かなかったし、ホイットニー・ヒューストンのカバーこそ余りに凄過ぎたせいか、オリジナルの魅力は悉く掻き消されでもしたようだった。 嬉しいのはチャカ・カーンの六十五歳のI'm Every Womanの動画でやっと分かって来た 爽やかさが突出している。雰囲気はクールなソウルが明白なR&Bに仕上がっている。命の輝きに魂を込めて歌手ならば歌わなくては恐らく無理だと感じる。 チャカ・カーンは年を取って初めて如実に可能だったのではないか。若い頃の歌声でも全く分からないわけではないにせよ、六十五歳のI'm Every Womanが遥かに優れていてずっと凄いし、たとえゴールデンボイスのホイットニー・ヒューストンのカバーが圧倒的な魅力を誇るのと比べても、全然、聴き飽きない。本当にありのままの表現というか、自分らしさそのものが確実に溢れている。 事実上、音程が外れたり、息遣いが続かなくなったり、歌手として以前よりも肉体は衰えたとしてもかけがえのない内面がきっちり伝わって来るパフォーマンスは本人の生き方と切り放せないし、全てが自然な表現だから個人的に何よりも惹かれる。 参考サイトチャカ・カーンChaka Khanチャンネル コメント 新しい投稿 前の投稿
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